【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」、「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
(2) 経営成績
当期における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や新型コロナウイルスの感染再拡大などにより、サプライチェーンの混乱とともに原材料やエネルギー価格が高騰し、先行きの不透明感が高まりましたが、緩やかな回復が継続しました。
当社グループを取り巻く市場環境は、国内においては、年度前半における半導体不足や原材料の供給不足などにより、製造業の生産活動の一部に弱さが見られたものの、設備投資は持ち直しの動きが継続しました。海外においては、米国・欧州および中国を除くアジア諸国の景気には回復の動きが見られましたが、中国では新型コロナウイルス感染拡大防止のための都市封鎖や行動制限の影響が残り、景気が減速しました。
このような中、当社グループは、中期経営計画「MVP-22」(Maximize Value Proposition 2022)の最終年度となる当期において、社会やお客様への提供価値を起点とした確固たる収益基盤の確立を目指し、節水やCO₂排出削減、廃棄物削減といった環境負荷低減に寄与するCSVビジネスの拡大や、生産性の向上をはじめとするお客様の課題解決に貢献する総合ソリューションの提案に向けた取り組みを強化しました。また、成長基盤の構築に向け、当社グループ内で展開しているサービス契約型ビジネスのベストプラクティスを水平展開するとともに、より幅広いお客様の多様なニーズに対応すべく、本ビジネスのラインナップ拡充にも努めました。コスト構造改善についてはサプライチェーンの最適化に向けた体制の整備を進めるとともに、原材料や物流コスト上昇への対策を進めました。
これらの結果、当連結会計年度の受注高は374,268百万円(前年同期比18.7%増)、売上高は344,608百万円(前年同期比19.6%増)となりました。利益につきましては、事業利益は38,589百万円(前年同期比17.1%増)、営業利益は29,058百万円(前年同期比18.7%減)、税引前利益は30,151百万円(前年同期比0.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は20,134百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
当連結会計年度においては、その他の収益1,564百万円、その他の費用11,095百万円を計上しております。その他の収益は、前連結会計年度に不動産売却に伴う一時的な利益(固定資産売却益)を計上していたため、前年同期比で4,555百万円減少しております。その他の費用には、クリタ・アメリカ, Inc.(水処理薬品事業)ののれんの減損損失7,646百万円が含まれています。同社ののれんの減損損失は、新型コロナウイルス感染拡大後の水処理薬品市場の変動、物流混乱や物価高騰の影響等を勘案し事業計画を下方修正したこと、および米国におけるインフレ抑制のための政策金利の引き上げに伴う回収可能価額算定に使用する割引率の上昇により影響を受けた結果、回収可能価額が会計上の簿価を下回ったため生じたものです。
また、当連結会計年度において、米国子会社ペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.(水処理装置事業)の株式を追加取得(100%子会社化)するため、当社は、クリタ・アメリカ・ホールディングス,Inc.の増資を引き受け、払い込みを完了しております。この増資決定後に設定した為替予約によるデリバティブ取引差益を金融収益へ計上したことや、前連結会計年度において計上したペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.(水処理装置事業)の非支配株主と締結した株式の先渡契約に係る負債の事後測定による金融費用がなくなったことから、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は増益となりました。
(水処理薬品事業)
国内では、半導体不足などの原材料の供給制約により一部顧客の工場稼働に影響があったものの、値上げの取り組みに加え、顧客の環境負荷やコスト低減に効果のあるサービス契約型案件の提案活動などに注力した結果、受注高・売上高は、ともに前年同期と比べ増加しました。海外では、CSVビジネス等の付加価値の高いサービスの展開による成果に加え、原材料価格や物流コストの上昇を受けた値上げの取り組み、円安が進んだことに伴う海外子会社の円換算額の増加もあり、受注高・売上高は、ともに増加しました。この結果、当社グループの水処理薬品事業全体の受注高は136,863百万円(前年同期比15.6%増)、売上高は136,139百万円(前年同期比15.7%増)となりました。
利益につきましては、主に増収効果が原材料価格や物流コストの上昇などによる費用増加を吸収したことから、事業利益は16,286百万円(前年同期比19.8%増)となりましたが、営業利益は、クリタ・アメリカ, Inc.ののれんの減損損失7,646百万円の計上があり、7,606百万円(前年同期比47.8%減)となりました。
(水処理装置事業)
国内では、電子産業分野向けの水処理装置の受注高は、前連結会計年度の大型案件の受注計上の反動で大幅な減少となったものの、高い水準での受注計上となりました。売上高は、受注残からの売上計上などにより大幅に増加しました。同分野向けのメンテナンス・サービスの受注高・売上高は、顧客の工場稼働率が堅調に推移したことを背景とした、増設および消耗品交換などの修繕案件の受注・売上計上により、ともに増加しました。一般産業分野向けの水処理装置の受注高は、前連結会計年度の大型案件の受注取消があったことにより増加しましたが、売上高は減少しました。同分野向けのメンテナンス・サービスは、メンテナンス需要回復により、受注高・売上高ともに増加しました。電力分野向け水処理装置の受注高・売上高は、減少しました。土壌浄化の受注高は減少しましたが、売上高は中小規模の案件の需要を取り込み、増加しました。海外では、円安が進んだことに伴う海外子会社の円換算額の増加に加え、東アジアの電子産業向けの水処理装置の大型案件の受注・売上計上により、受注高・売上高ともに増加しました。なお、超純水供給事業の国内および海外を合わせた売上高は、当連結会計年度に開始した契約案件の売上貢献もあり、増収となりました。
これらの結果、当社グループの水処理装置事業全体の受注高は237,404百万円(前年同期比20.6%増)、売上高は208,468百万円(前年同期比22.2%増)となりました。利益につきましては、主に、売上高の増加が材料・部品調達に係る費用増加などを吸収し、事業利益は22,378百万円(前年同期比15.4%増)となり、営業利益は21,526百万円(前年同期比1.7%増)となりました。
生産、受注および販売の実績は、以下のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
水処理薬品事業(百万円)
137,300
114.5
水処理装置事業(百万円)
210,223
123.1
合計(百万円)
347,524
119.5
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
②受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
水処理薬品事業
136,863
115.6
6,284
115.1
水処理装置事業
237,404
120.6
112,478
134.6
合計
374,268
118.7
118,762
133.4
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
水処理薬品事業(百万円)
136,139
115.7
水処理装置事業(百万円)
208,468
122.2
合計(百万円)
344,608
119.6
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(3) 財政状態
①資産合計
501,538百万円(前連結会計年度末比31,557百万円増加)
流動資産は196,416百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,020百万円増加しました。これは主に増収影響により営業債権及びその他の債権が11,407百万円増加したことに加え、現金及び現金同等物、棚卸資産がそれぞれ4,737百万円、3,715百万円増加したためであります。
非流動資産は305,121百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,536百万円増加しました。有形固定資産の増加17,703百万円は、主に超純水供給事業(水処理装置事業)に係る設備の新規取得によるものであります。その他の金融資産の減少7,578百万円および繰延税金資産の増加3,913百万円は、主に政策保有株式の一部を売却したためであります。
②負債合計
205,778百万円(前連結会計年度末比13,659百万円増加)
流動負債は109,468百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,459百万円減少しました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの発行と新規の借入を実施したことにより社債及び借入金が20,818百万円増加したものの、その他の金融負債が主に米国のペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.(水処理装置事業)の非支配株主と締結した先渡契約を履行したことで19,610百万円減少したことに加え、営業債務及びその他の債務が6,502百万円減少したためであります。
非流動負債は96,310百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,119百万円増加しました。これは主に第2回無担保社債10,000百万円の発行と新規の借入を実施したことにより社債及び借入金が17,805百万円増加したためであります。
③資本合計
295,759百万円(前連結会計年度末比17,897百万円増加)
主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより利益剰余金が17,566百万円増加したためであります。
当連結会計年度末における資産をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(単位:百万円)
報告セグメント
調整額
(注)
連結財務諸表
計上額
水処理薬品事業
水処理装置事業
計
セグメント資産
144,467
303,233
447,701
53,836
501,538
(注)主なものは各報告セグメントに配分していない全社資産であります。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は50,468百万円(前連結会計年度末比4,737百万円増加)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は48,631百万円(前年同期比19,894百万円増加)となりました。これは主に税引前利益30,151百万円、減価償却費、償却費及び減損損失37,276百万円などで資金が増加したものの、法人所得税の支払額17,094百万円、営業債権及びその他の債権の増減額(△は増加)10,172百万円などで資金が減少したためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動で使用した資金は46,274百万円(前年同期比6,345百万円増加)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入8,854百万円で資金を得た一方で、有形固定資産の取得による支出53,384百万円などで資金を使用したためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動で得られた資金は1,101百万円(前年同期比9,028百万円増加)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出23,272百万円、配当金の支払額8,699百万円などで資金を使用したものの、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの純増減額(△は減少)18,722百万円、長期借入れによる収入9,988百万円、社債の発行による収入9,955百万円などで資金を調達したためであります。
当社グループは事業運営上必要な流動性確保と安定した資金調達体制の確立を基本方針としております。短期運転資金、設備投資やその他成長分野への投資資金は自己資金を基本としつつも、必要に応じて債券市場での調達や銀行借入を実施しております。なお、当連結会計年度末において、当社は取引金融機関2社とコミットメント・ライン契約を締結しております(借入実行残高 -百万円、借入未実行残高 20,000百万円)。
(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「MVP-22」に対する達成状況については、以下のとおりであります。
2023年3月期実績
2023年3月期目標
売上高年平均成長率
(M&A等による上積みを除いた自律的成長分)
3.7%
3%以上
売上高事業利益率
11.2%
15%
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)
7.1%
10%以上