【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢を契機とする資源・エネルギー、一次産品価格の上昇や、新型コロナウイルス感染症に起因するサプライチェーンの混乱などからインフレが進行する一方、インフレ抑制策として世界的に相次いで金融引き締めが行われ、為替の急激な変動にも繋がるなど、引き続き先行き不透明な状況が続きました。このような状況下、当社を取り巻く環境は、半導体製造装置部門では、民生エレクトロニクス製品分野の設備投資意欲が、需要減少や製品在庫増加により当期後半に顕著に減速しましたが、一方でEV化やカーボンニュートラルに向けた取り組みを背景にパワー半導体向け需要は堅調でした。計測機器部門では、景況感は業種によりまだら模様だったものの、内需におけるものづくり関連需要の全般的な回復基調が続きました。生産面では、部材調達難の影響が一部部材で残ってはいるものの、スロット調整などにより高稼働の生産、出荷を維持しました。その結果、当連結会計年度における業績は、受注高は減少したものの、半導体製造装置部門の伸長を主因として、3期連続の増収、増益となりました。売上高は 146,801百万円(前年同期比12.3%増)となり、利益面は、営業利益34,494百万円(同21.8%増)、経常利益35,297百万円(同21.0%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は 23,630百万円(同10.8%増)となりました。これにより、売上高、各利益とも、既往ピーク実績を更新いたしました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
半導体製造装置半導体製造装置部門では、スマホ、PC、テレビなどの民生エレクトロニクス製品の需要減少により、メモリデバイスやディスプレイドライバ、電子部品向けの装置需要が当期後半に減速し、当社の受注高も前期比で減少しました。一方で、SiCなどのパワー半導体、ウェーハ増産向けの装置需要は相対的に堅調さを維持しました。売上面では、それまでに受注を積み上げてきた5G、サーバ、車載向けなどのロジックデバイス向け装置が期を通じて堅調に推移したことから、当部門の売上高、営業利益は既往ピークを更新しました。中国向けでは検査工程向け装置、加工装置ともに堅調だったほか、検査工程向け装置は台湾、日本向けなどで堅調に推移、加工装置は日本、東南アジア向けなどで堅調に推移しました。このような状況下、当社としては、引き続き顧客のニーズを満たす製品の開発を進めたほか、生産キャパシティや部材調達先の拡充に努めました。この結果、当連結会計年度における当セグメントの業績は、売上高112,365百万円(前年同期比11.1%増)、営業利益29,866百万円(同20.9%増)となりました。
計測機器計測機器部門では、国内のものづくり業界全般において、それまで手控えられてきた設備更新を再開する動きがみられ、需要は緩やかな回復傾向が続きました。自動車業界においては、世界的な半導体不足による生産制約の継続などから、設備投資の回復は相対的に緩やかでしたが、新規分野として注力した半導体製造装置等の機械用途需要をはじめとして、医療、ロボットなどの分野の需要を獲得することができました。これにより、当部門の受注高、売上高は既往ピークを更新しました。このような状況下、当社としては、航空機部品測定用三次元座標測定機、EVなどにおける二次電池用の充放電試験装置など、新規需要の獲得に向けた新規製品の開発を進めたほか、ものづくり全般の自動化ニーズに対応するソリューションの提供、非自動車分野の市場開拓などに努めました。この結果、当連結会計年度における当セグメントの業績は、売上高34,436百万円(前年同期比16.5%増)、営業利益は 4,628 百万円(同27.6%増)となりました。
次に当連結会計年度末時点の財政状態の概要を示すと次のとおりです。
当連結会計年度末時点の当社グループの財政状態は、資産合計209,032百万円(うち、流動資産143,972百万円、固定資産65,060百万円)に対し、負債合計63,004百万円、純資産合計146,028百万円となりました。
i.資産受注・売上増加により売掛債権、棚卸資産が増加したことが主な要因となり、当連結会計年度末の資産の総額は、前連結会計年度末に対し18,745百万円増加しました。
ⅱ.負債仕入債務が減少した一方で、長期借入金が増加したことが主な要因となり、当連結会計年度末の負債の総額は前連結会計年度末に対し3,798百万円増加しました。
ⅲ.純資産2023年2月6日開催の取締役会決議に基づく自己株式取得に伴い「自己株式」が増加した一方で、「親会社株主に帰属する当期純利益」の計上により「株主資本」が大きく増加したことが主な要因となり、当連結会計年度末の純資産の総額は前連結会計年度末に対し14,946百万円増加しました。この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.9ポイント増加し、69.0%となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度中「現金及び現金同等物」は8,970百万円減少し、当連結会計年度末の「現金及び現金同等物」の残高は40,036百万円となりました。
以下、前連結会計年度末と比較して、その内容を営業、投資、財務の各活動別に示すと次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、その入金超の金額が前連結会計年度23,837百万円から当連結会計年度末は1,000百万円へと減少しました。これは主に「税金等調整前当期純利益」が前連結会計年度の29,516百万円から当連結会計年度は33,301百万円へ増加した一方で、棚卸資産の増加12,894百万円、仕入債務の減少8,033百万円、法人税等の支払額7,640百万円、売上債権の増加4,387百万円、減価償却費3,832百万円等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、その支出超の金額が前連結会計年度の8,990百万円から当連結会計年度8,421百万円へと減少しました。これは主に現在建設中である飯能工場の建設中間金等、有形固定資産の取得による支出8,054百万円等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、その支出超の金額が前連結会計年度10,346百万円から当連結会計年度2,174百万円へと減少しました。これは主に長期借入れによる収入10,000百万円があった一方で、配当金の支払額8,540百万円、自己株式の取得1,583百万円等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
半導体製造装置
107,416
+9.0
計測機器
30,121
+17.5
合計
137,537
+10.8
(注) 上記生産実績は販売価額によります。
b.受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
半導体製造装置
99,366
△35.0
89,371
△12.7
計測機器
36,960
+11.5
12,428
+25.5
合計
136,326
△26.7
101,799
△9.3
c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
半導体製造装置
112,365
+11.1
計測機器
34,436
+16.5
合計
146,801
+12.3
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合相手先別の販売実績が連結売上高の100分の10以上となる主要な販売先はないため記載を省略しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度末時点の財政状態の概要は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりですが、業容の拡大に伴い、資産及び負債が急速に増加する中では総資産回転率を向上させ、収益性の確保に努めることが肝要なことになると認識しています。
② 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループの営む半導体製造装置事業及び計測機器事業は、いずれも技術革新のテンポが早く、製品自体にも高度に技術的な要求が求められる競争の激しい事業です。また、特に半導体製造装置事業におけるユーザーの属する半導体業界等は好不況のサイクルが大きな振幅をもって循環的に訪れる業界であり、当社グループの業績も過去幾度となくその影響を受けてきました。このような事業環境の中にあっては継続的に製品開発を続け、市場動向の影響を最小限にとどめることのできるような競争力の強い製品群をつくり続けていくことが何よりも重要なことであると認識しています。ⅰ.売上高当連結会計年度の「売上高」は、半導体製造装置事業が112,365百万円(前年同期比11.1%増)、計測機器事業が34,436百万円(同16.5%増)、両事業合計で146,801百万円(同12.3%増)でした。半導体製造装置部門の翌連結会計年度の業績は、受注の回復には民生エレクトロニクス製品の需要の回復、あるいはメモリデバイスや電子部品の在庫調整が一段落するのを待つ必要があり、年央に底を打った後、本格的な回復は年度後半になるものと想定しています。 その中で、カーボンニュートラル実現に向けたパワー半導体、SiCなどの基板、車載半導体関連需要は一定の水準を維持するものと想定しています。売上高においては、取引先からの納期の調整依頼と、これに伴う生産スロットの調整による対応が続くものと見込んでいます。飯能工場の稼働により生産キャパシティが拡大することで、累積した受注案件の出荷・売上に注力します。なお、部材の調達難は一部部材に残ってはいるものの緩和の方向に向かうものと想定しています。また、2025年3月期に向け、半導体デバイス微細化の限界に伴うアドバンストパッケージ、三次元積層に関連した技術革新投資、各国の補助金政策に伴う投資が本格化すると想定しています。当社は、これらに関連したカスタマイズ要求に応える製品ならびにオプションの開発を進めていきます。計測機器事業では、国内のものづくり業界全般の設備投資は堅調に推移すると想定されるほか、自動車業界においては、内燃機関自動車の生産回復や、EV化の進展による部材の計測、電池測定需要が増加するものと想定しています。このような状況下、当社の計測機器部門業績も、緩やかな増加を見込んでいます。主要ユーザーである自動車業界のみならず、自動化が進むものづくり全般において、オートメーションに関連したエンジニアリング需要を獲得していくほか、医療、航空機など非自動車分野の業容拡大を進めていきます。ⅱ.売上原価、販売費及び一般管理費当連結会計年度の「売上原価」は84,967百万円、「販売費及び一般管理費」は27,339百万円でした。「売上高」に対する「売上原価」の比率は前連結会計年度の59.4%に対し当連結会計年度は57.9%、「販売費及び一般管理費」の比率は前連結会計年度の18.9%に対し当連結会計年度は18.6%でした。ⅲ.営業損益これらの結果、当連結会計年度の営業損益は34,494百万円(前年同期比21.8%増)の利益となりました。セグメント別の損益では、半導体製造装置事業が29,866百万円(同20.9%増)、計測機器事業が4,628百万円(同27.6%増)の利益でした。
ⅳ.営業外収益、営業外費用当連結会計年度の営業外収益は、「受取配当金」「投資事業組合運用益」「受取補償金」等により総額965百万円、営業外費用は「支払利息」「控除対象外消費税等」等により総額162百万円でした。ⅴ.経常損益これらの結果、当連結会計年度の経常損益は35,297百万円(前年同期比21.0%増)の利益となりました。ⅵ.特別利益、特別損失当連結会計年度の特別利益は、在外関係会社を清算した際に生じた「関係会社清算益」等により103百万円、特別損失は「訴訟損失引当金繰入額」「固定資産減損損失」等により2,099百万円でした。ⅶ.税金等調整前当期純損益これらの結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損益は33,301百万円の利益となりました。ⅷ.法人税等当連結会計年度の「法人税等合計」の金額は9,607百万円で、「税金等調整前当期純利益」に対する割合は 28.9%でした。ⅸ.非支配株主に帰属する当期純損益当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純損益は62百万円の利益でした。ⅹ.親会社株主に帰属する当期純利益これらの結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は23,630百万円(前年同期比10.8%増)の利益となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりですが、営業活動によるキャッシュ・フローを入金超過に維持しつつ、その資金を投資及び財務活動キャッシュ・フローの出金超過分に使用できているものと考えています。また、こうして蓄積された資金については、新製品開発と生産能力拡充を継続的に推し進めていくための開発投資、設備投資等に有効に活用していきます。なお、当社グループは、設備投資計画に基づく所要の長期的資金は自己資金の他、主として銀行借入により調達することを方針としており、安定的な資金の財源の確保のためには金融機関との良好な関係を維持していくことも重要なことと認識しています。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末時点における資産及び負債並びに連結会計期間における収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いています。これらは過去の実績をもとに将来の予測を加味した上で、継続的かつ合理的、保守的な評価に重点を置き見積られたものとなっています。なお、新型コロナウイルス感染症につきましては、当社グループの事業全体への大きな影響はなく、現時点では財政状態及び経営成績に与える影響は軽微であるとの仮定のもとに、会計上の見積りを行っています。
(固定資産の減損処理)当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。