【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
1. 経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1. 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。
① 経営成績
当連結会計年度(2022年1月1日~2022年12月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策のもとで経済・社会活動の正常化が進み、景気は緩やかながらも持ち直しの動きが継続しました。当社グループを取り巻く事業環境についても、ウクライナ情勢の長期化や原材料価格の上昇を背景に一部の顧客に保守的な動きが見られたものの、業務やビジネスの革新にデジタル技術を活用するための企業の投資意欲は強く、堅調に推移しました。
かかる状況のもと当社グループは、当連結会計年度より長期経営ビジョン「Vision 2030」を掲げるとともに、3か年の中期経営計画「ISID X(Cross) Innovation 2024」をスタートさせました。「Vision 2030」では2030年に、多様な人材、多彩なテクノロジー、多種のソリューションを持つ集団として、売上高3,000億円規模の企業グループになることを目指しております。また、その実現に向けての第1歩となる当中期経営計画(2022年12月期~2024年12月期)では、定量目標を売上高1,500億円、営業利益180億円、営業利益率12%、ROE15%と定め、4つの活動方針「事業領域の拡張」「新しい能力の獲得」「収益モデルの革新」「経営基盤の刷新」のもと、事業成長の加速と自己変革に取り組んでおります。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高129,054百万円(前期比115.1%)、営業利益18,590百万円(同135.3%)、経常利益18,354百万円(同138.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益12,598百万円(同140.8%)となりました。
売上高については、4つの報告セグメントすべてにおいて増収となりました。利益につきましても、人員増および業績連動賞与の拡大等に伴う人件費の大幅な増加や、オフィス賃貸借契約の一部解約に伴う賃貸借契約解約損922百万円の特別損失計上等がありましたが、増収効果に加え、ソフトウェア製品を中心とする売上総利益率の向上により、すべての段階利益で大幅な増益となりました。
これにより、売上高および各段階利益のいずれも5期連続で過去最高を更新するとともに、中期経営計画で定めた2024年12月期の定量目標のうち、営業利益、営業利益率、ROEを2年前倒しで達成しました。
なお、当連結会計年度における収益認識会計基準等の適用に伴う影響額は、売上高2,692百万円、営業利益1,318百万円の増加となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
増減
前期比
売上高
112,085
129,054
+16,969
115.1%
営業利益
13,736
18,590
+4,854
135.3%
営業利益率
12.3%
14.4%
+2.1p
-
経常利益
13,224
18,354
+5,130
138.8%
親会社株主に帰属する
当期純利益
8,944
12,598
+3,654
140.8%
ROE
14.3%
18.1%
+3.8p
-
② 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して13,704百万円増加し、121,892百万円となりました。流動資産は、収益認識会計基準等の適用および取引規模拡大に伴う契約資産の増加、サブスクリプション型サービス提供を主因とした前渡金の増加等により、前連結会計年度末と比較して13,166百万円増加し、103,099百万円となりました。固定資産は、顧客向けサービス提供に伴うソフトウェア・無形リース資産の新規取得等により、前連結会計年度末と比較して538百万円増加し、18,793百万円となりました。
なお、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)」に記載の通り、収益認識会計基準等を適用したため、前連結会計年度の連結貸借対照表において、「流動資産」に表示していた「受取手形及び売掛金」は、当連結会計年度より「受取手形、売掛金及び契約資産」に含めて表示しております。
(負債)
当連結会計年度末における総負債は、前連結会計年度末と比較して5,305百万円増加し、48,021百万円となりました。流動負債は、仕入債務の増加、保守料を中心とした契約負債の増加等により、前連結会計年度末と比較して5,211百万円増加し、45,687百万円となりました。固定負債は、主に無形リース資産の増加に伴うリース債務の増加により、前連結会計年度末と比較して93百万円増加し、2,333百万円となりました。
なお、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)」に記載の通り、収益認識会計基準等を適用したため、前連結会計年度の連結貸借対照表において、「流動負債」に表示していた「前受金」は、当連結会計年度より「契約負債」に含めて表示しております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、剰余金の配当があったものの、主に当社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加した結果、前連結会計年度末と比較して8,399百万円増加し、73,871百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金および現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して3,556百万円増加し、53,305百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権及び契約資産の増加、法人税等の支払等による資金の減少を税金等調整前当期純利益および減価償却費が上回り、資金は11,914百万円増加しました。
前年同期との比較においては、税金等調整前当期純利益が増加したものの、主に売上債権及び契約資産の増加により、5,067百万円の収入減となりました。
なお、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)」に記載の通り、収益認識会計基準等を適用したため、当連結会計年度より、前連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書において「営業活動によるキャッシュ・フロー」に表示していた「売上債権の増減額(△は増加)」は「売上債権及び契約資産の増減額(△は増加)」に含めて表示し、「前受金の増減額(△は減少)」は「契約負債の増減額(△は減少)」に含めて表示しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
ソフトウェア等の固定資産の取得等により、資金は3,132百万円減少しました。
前年同期との比較においては、主にソフトウェア等の固定資産の取得による支出の増加により317百万円の支出増となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払およびリース債務の返済等により、資金は5,419百万円減少しました。
前年同期との比較においては、配当金支払額の増加により958百万円の支出増となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
各報告セグメント別の生産、受注及び販売の実績は以下のとおりであります。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年同期比は記載しておりません。
① 生産実績
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
報告セグメント
生産高(百万円)
前期比(%)
金融ソリューション
22,602
-
ビジネスソリューション
11,323
-
製造ソリューション
9,585
-
コミュニケーションIT
22,245
-
合計
65,757
-
(注)金額は、販売価格に換算して表示しております。
② 受注実績
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)における受注実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
報告セグメント
受注高
(百万円)
前期比
(%)
受注残高
(百万円)
前期比
(%)
金融ソリューション
28,538
-
7,782
-
ビジネスソリューション
23,629
-
10,232
-
製造ソリューション
39,251
-
18,325
-
コミュニケーションIT
49,138
-
15,309
-
合計
140,557
-
51,648
-
③ 販売実績
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
報告セグメント
販売高(百万円)
前期比(%)
金融ソリューション
28,125
-
ビジネスソリューション
18,608
-
製造ソリューション
36,453
-
コミュニケーションIT
45,867
-
合計
129,054
-
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
相手先
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
割合(%)
株式会社電通グループ及びそのグループ会社
24,081
18.7
2. 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績につきましては、「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1. 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績等の状況 ① 経営成績」に記載のとおりであります。
報告セグメント別の経営成績の状況につきましては、以下のとおりであります。
単位:百万円
報告セグメント
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
増減額
売上高
営業利益
営業
利益率
売上高
営業利益
営業
利益率
売上高
営業利益
金融ソリューション
25,176
1,494
5.9%
28,125
1,611
5.7%
+2,949
+117
ビジネスソリューション
14,958
2,655
17.7%
18,608
4,704
25.3%
+3,650
+2,049
製造ソリューション
32,031
2,847
8.9%
36,453
4,179
11.5%
+4,422
+1,332
コミュニケーションIT
39,919
6,738
16.9%
45,867
8,095
17.6%
+5,948
+1,357
合計
112,085
13,736
12.3%
129,054
18,590
14.4%
+16,969
+4,854
(注)報告セグメントの情報につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」も併せてご参照ください。
金融ソリューション
金融機関をはじめ企業における各種金融業務を支援するITソリューションの提供を主たる事業としております。
当連結会計年度は、銀行業向けのDX支援案件が顧客接点改革領域を中心に好調に推移したことに加え、その他金融業向けのシステム開発案件が拡大したことにより、増収となりました。利益につきましては、一部案件における売上原価増により収益性が低下したものの、増収効果により、増益となりました。
ビジネスソリューション
会計・人事を中心に経営管理業務を対象とするITソリューションの提供を主たる事業としております。
当連結会計年度は、注力する4つのソリューション、統合人事ソリューション「POSITIVE」、連結会計ソリューション「STRAVIS」、会計ソリューション「Ci*X」、経営管理ソリューション「CCH Tagetik」の販売・導入が、商社、小売業およびサービス業を中心に拡大したことにより、増収増益となりました。
製造ソリューション
製造業の製品開発/製造/販売/保守にわたる製品ライフサイクル全般を対象とするITソリューションの提供を主たる事業としております。
当連結会計年度は、エンジニアリングチェーンのデジタル化の実現を支援するPLMソリューション「Teamcenter」の導入案件が機械業および輸送機器業を中心に拡大したことにより、増収増益となりました。
コミュニケーションIT
マーケティングから基幹業務領域まで企業のバリューチェーンやビジネスプロセスの最適化を支援するITソリューションの提供を主たる事業としております。
当連結会計年度は、マーケティングおよび基幹業務領域における顧客のDX支援案件がサービス業や製薬業向けに好調に推移したことに加え、ERPシステムの更新需要を背景としたSAPソリューションの導入案件も製造業を中心に拡大したことにより、増収増益となりました。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況
当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績等の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループにおける資金需要は、通常の運転資金に加え、事業拡大を目的としたソフトウェア製品の開発及び資本提携・M&A等のための投資資金がありますが、いずれも自己資金を充当することを基本としております。また、当社及び当社国内子会社の間ではCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、グループ内の資金の流動性を高めるよう努めております。
なお、流動資産に計上している預け金は、親会社である株式会社電通グループに対し同社が運営するCMSを通じて預け入れた資金であり、当連結会計年度末は48,846百万円を預け入れております。これは、直ちに利用可能な財源であることから、連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物に含めております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成にあたっては、連結会計年度末日における財政状態並びに連結会計年度の経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社グループは、過年度の実績や現状を踏まえ、合理的と判断される前提・仮定に基づき、かかる見積り・予測を行っておりますが、実際の結果はこれと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たり用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
(4)経営上の目標の達成状況について
当中期経営計画の初年度となる当連結会計年度において、業績が極めて堅調に推移した結果、営業利益、営業利益率、ROEの目標を2年前倒しで達成いたしました。
項目
2024年12月期目標
2022年12月期
差異
売上高
1,500億円
1,290億円
△210億円
営業利益
180億円
185億円
+5億円
営業利益率
12%
14.4%
+2.4p
ROE
15%
18.1%
+3.1p
また、2023年2月10日には、企業ブランドの刷新およびケーパビリティの強化を目的として、2024年1月1日付けで商号を「株式会社電通総研」に変更すること、ならびにコンサルティングビジネスを専業とする完全子会社である株式会社アイティアイディと株式会社ISIDビジネスコンサルティングを当社に統合する方針であることを発表いたしました。これらの状況を踏まえ、2024年12月期の業績目標および成長投資の目標について、見直しを行う予定です。具体的な内容につきましては、確定次第、公表してまいります。
当社グループが取り組むべき経営課題への対応につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)対処すべき課題」に記載のとおりであります。
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