【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が徐々に緩和され、緩やかに経済活動は持ち直しつつありましたが、ウクライナ情勢の長期化や外国為替市場での急激な円安・ドル高を原因とする物価の上昇など景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。当社グループが属するセキュリティ業界においては、ランサムウェア・Emotetに加え、キーボード操作などから機密情報を窃取する遠隔操作型のマルウェアであるAgent Tesla等、多様化するサイバー攻撃被害が激化していることを背景としてセキュリティ製品に対する需要が拡大しており、大規模企業のみならず、相対的にセキュリティ対策が遅れている中堅・中小企業においても新規導入需要が拡大しております。こうした中、当社はトータルセキュリティニーズの高まりに対応するため、主力製品「i-FILTER」、「m-FILTER」、「FinalCode」の連携・機能強化と多様なセキュリティソリューションを追加搭載し、独自の次世代SWG(Secure Web Gateway)の展開に注力しました。従来から提唱している「ホワイト運用」に加えて、安全なWebサイト・メールからの安全なファイルのダウンロード・受信を実現し、セキュリティレベルが向上するだけではなく、マルウェア判定をリアルタイムに確認し、ログの一元管理も可能となり、利便性が向上する新オプション「Anti-Virus & Sandbox」の提供を開始し、順調に受注を拡大しました。また、サイバー攻撃からの被害を最小化するために、SOC(Security Operation Center)やEDR(Endpoint Detection and Response)といったインシデントの検知や対応を行う重要性が高まっていることを受け、当社は、人材の確保やセキュリティコストへの課題を抱えているお客様向けに低コストでインシデントの迅速な検知を実現する新オプション「Dアラート発信レポートサービス」の提供を開始し、インシデントの検知・対応の領域へ進出いたしました。 さらに、未知の脅威や悪性ファイルだけでなく、メールなどからフィッシングサイトに誘導するフィッシングの被害も増加しております。フィッシングサイトは金融機関や通販などのWebサイトを模倣しており、判別は非常に困難であります。このようなフィッシングサイトの脅威を防ぐため、当社独自の技術により安全性を確認したURLのみ認証情報の送信を許可し、安全性を確認できなかったWebサイトへの認証情報の送信をブロックする「クレデンシャルプロテクション」機能を「i-FILTER@Cloud」に新たに追加し、お客様のセキュリティレベルを向上させました。これらの施策を実施したことにより、当社が独自に提唱している「ホワイト運用」の利用者が当連結会計年度に新たに166万ライセンス増加し、1,168万ライセンスとなりました。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。
a.財政状態(資産)当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,807百万円増加し、21,149百万円となりました。これは主として、現金及び預金が1,245百万円増加したことによるものであります。(負債)当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて205百万円減少し、6,975百万円となりました。これは主として、前受金が496百万円減少したことによるものであります。
(純資産)当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて2,013百万円増加し、14,173百万円となりました。これは主として、配当金の支払いによる減少を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加があったことによるものであります。
b.経営成績当連結会計年度における売上高は10,436百万円(前期比15.3%増)、営業利益は4,413百万円(同7.0%増)、経常利益は4,429百万円(同7.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,062百万円(同5.6%増)となりました。
連結経営成績の概況(単位:百万円)
2022年3月期
2023年3月期
増減額
増減率(%)
売上高
9,051
10,436
+1,384
+15.3
営業利益
4,126
4,413
+286
+7.0
経常利益
4,135
4,429
+293
+7.1
親会社株主に帰属する当期純利益
2,900
3,062
+161
+5.6
各市場の業績は次の通りです。
企業向け市場企業向け市場においては、トータルセキュリティニーズへの対応として「i-FILTER」および「m-FILTER」それぞれにアンチウイルス機能およびサンドボックス機能の新機能オプションを提供開始したことにより新規案件獲得に寄与しました。また、PPAP(ファイルをパスワード付きZIPファイルにしてメールで送付し、パスワードを別送するファイルのやり取り)対策やEmotet等の標的型攻撃に対応した機能が高く評価され、「m-FILTER」を順調に拡販することができました。加えて、セキュリティコンサルティングサービスを提供している子会社デジタルアーツコンサルティングが、企業のサイバーセキュリティとDXにおけるコンサルティング需要の高まりを受けて、新規顧客の獲得を進め、売上高が増加しました。 以上の結果、企業向け市場の売上高は、5,316百万円(前期比16.6%増)となりました。
公共向け市場公共向け市場においては、前期以前から続く「GIGAスクール構想」案件の売上計上及び当期より本格化している自治体向けのセキュリティ対策強化に対応したソリューションの提案に注力した結果、地方自治体の受注獲得が好調に推移し、「i-FILTER」、「m-FILTER」の売上高が増加しました。
以上の結果、公共向け市場の売上高は、4,686百万円(前期比15.8%増)となりました。
家庭向け市場家庭向け市場においては、携帯電話事業者やMVNO事業者等との連携、1つのシリアルIDで複数OSでの利用が可能な「i-フィルター for マルチデバイス」の販売に注力しました。
以上の結果、家庭向け市場の売上高は、433百万円(前期比2.6%減)となりました。
当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の売上高
企業向け市場
公共向け市場
家庭向け市場
合計
百万円
百万円
百万円
百万円
2023年3月期
5,316
4,686
433
10,436
2022年3月期
4,559
4,046
444
9,051
(百万円未満切捨)
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、1,245百万円増加し、17,018百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益4,430百万円及び減価償却費884百万円の計上等により、3,147百万円の収入(前連結会計年度は6,169百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得等により、867百万円の支出(前連結会計年度は978百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により、1,051百万円の支出(前連結会計年度は810百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
企業向け市場 (百万円)
5,002
113.7
公共向け市場 (百万円)
4,654
116.1
家庭向け市場 (百万円)
432
97.4
合 計 (百万円)
10,089
114.0
(注) 1 金額は販売価格によっております。
2 当社グループは、セキュリティ事業のみの単一セグメントであるため、セグメントに係る記載は省略しております。
b.受注実績当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
企業向け市場 (百万円)
5,316
116.6
公共向け市場 (百万円)
4,686
115.8
家庭向け市場 (百万円)
433
97.4
合 計 (百万円)
10,436
115.3
(注) 1 輸出販売高はありません。
2 当社グループは、セキュリティ事業のみの単一セグメントであるため、セグメントに係る記載は省略しております。 3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
ダイワボウ情報システム株式会社
2,045
22.6
2,683
25.7
SB C&S株式会社
1,541
17.0
1,747
16.7
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
②
当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下の通りであります。
a.経営成績等の状況(売上高)当連結会計年度の売上高は10,436百万円となり、前連結会計年度と比較し1,384百万円増加(前期比15.3%増)となりました。これは、企業向け市場においてテレワークの普及が追い風となり、i-FILTERシリーズの受注が増加したこと、公共向け市場において「GIGAスクール構想」におけるi-FILTERシリーズの受注が増加したこと、さらにデジタルアーツコンサルティング株式会社において新規顧客による売上が拡大したことが主要因です。
(売上原価、売上総利益)当連結会計年度の売上原価は3,666百万円となり、前連結会計年度と比較し990百万円増加(前期比37.0%増)となりました。また、売上総利益は6,769百万円となり、前連結会計年度と比較し394百万円増加(前期比6.2%増)となりました。
当連結会計年度は、クラウドサービス系製品の拡販に伴うクラウドサーバー費用の増加、デジタルアーツコンサルティングのコンサルタント人員数の増強による労務費の増加等はあったものの、売上高の増加に伴い、売上総利益が増加いたしました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2,356百万円となり、前連結会計年度と比較し108百万円増加(前期比4.8%増)となりました。また、営業利益は4,413百万円となり、前連結会計年度と比較し286百万円の増加(前期比7.0%増)となりました。当連結会計年度は、デジタルアーツコンサルティングのコンサルタント人員数の増強による採用費用の増加等があったものの、売上高の増加に伴い、営業利益は増加いたしました。
(経常利益)当連結会計年度は、為替差益12百万円等を営業外収益に計上したことにより、経常利益は4,429百万円(前期比7.1%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、3,062百万円(前期比5.6%増)となりました。
b. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標についての分析当連結会計年度における客観的な指標は以下の通りであります。契約高成長率と売上高成長率が乖離する理由は、主に従来からの主要製品であるライセンス販売系製品は出荷時に契約高の大部分を一括で売上計上するのに対し、クラウドサービス系製品は、サービス提供期間を通じて月額按分で売上計上するためであります。
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
契約高成長率 (%)
△19.7
10.6
売上高成長率 (%)
32.6
15.3
営業利益率 (%)
45.6
42.3
自己資本当期純利益率(ROE) (%)
26.2
23.3
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
資本政策につきましては、企業価値の持続的な向上を目指し、成長分野に対して迅速に投資可能な水準の内部留保の充実と株主の皆様への利益還元を総合的に勘案し、実施していくことを基本方針としております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は17,018百万円となっているのに対して、有利子負債残高はございません。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、高付加価値なソリューションを提供するために必要な優秀人材の確保と育成に関する人件費等であります。内部留保については人材の確保と育成に対して優先的に充当し、既存事業の安定的・継続的な成長を持続すると共に、新しいニーズの発掘に積極的に取り組んでまいります。
d.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
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