【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、ウクライナ情勢の悪化に伴うエネルギー、原材料等資源価格の高騰や、乱高下を伴う円安の進行等から物価上昇傾向にあり、経済活動への悪影響が懸念される状況が続いております。新型コロナウイルス感染症については、感染の再拡大はあったものの、全体に沈静化し、社会生活は平常化が進みました。
インターネット関連業界においては、感染症の沈静化に伴うオフィス回帰の動きもあり、テレワークへの関心は相対的に低下しました。しかしながら、コロナ環境下で広まったデジタルトランスフォーメーション(DX)への関心は依然高く、ビジネスモデルの変革や販売、効率化等、多くの側面において関連するサービスが注目されています。他方半導体の不足に伴うハードウェアの価格上昇や電気料金値上げの影響から、IT関連サービスにおいてもコスト対応が課題となっております。
こうした環境下、当社グループは動画ソリューション事業において、各種イベントのインターネットライブ配信や、社内情報共有・教育等のオンデマンド動画配信ニーズに対応し、主力サービスである「ライブ中継サービス」や「J-Stream Equipmedia」、コンテンツ配信サービスに関連するシステム開発、運用受託等を中心に提供を進めました。また、業界内での繋がりを通じ、情報通信業界の将来に向けた研究開発、実証実験等の取組みにも積極的に参画を進めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は12,963百万円となり、前連結会計年度末に比べ523百万円増加いたしました。
このうち流動資産は10,561百万円となり、前連結会計年度末より357百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金、受取手形、売掛金及び契約資産が減少したものの、預け金が増加したことによるものであります。
また、固定資産は2,402百万円となり、前連結会計年度末より166百万円増加いたしました。これは主に投資有価証券が減少したものの、ソフトウエアが増加したことによるものであります。
(負債) 当連結会計年度末における負債合計は2,032百万円となり、前連結会計年度末より35百万円減少いたしました。これは主に未払金が増加したものの、買掛金、未払法人税等及び未払消費税等が減少したことによるものであります。
(純資産) 当連結会計年度末における純資産合計は10,931百万円となり、前連結会計年度末に比べ559百万円増加いたしました。これは主に剰余金の配当により372百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益873百万円を計上したことによるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度の業績は、連結売上高12,501百万円(前年同期比0.7%増)、連結営業利益1,663百万円(前年同期比19.1%減)、連結経常利益1,652百万円(前年同期比19.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益873百万円(前年同期比33.3%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ560百万円増加し、7,851百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と資金の増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュ・フローは、1,803百万円の収入(前年同期比2.5%減)となりました。これは主に法人税等の支払額が640百万円あったものの、税金等調整前当期純利益1,446百万円の計上、減価償却費579百万円の計上などの資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュ・フローは、747百万円の支出(前年同期比4.7%減)となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得による支出が643百万円、投資有価証券の取得による支出が104百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、495百万円の支出(前年同期比64.5%増)となりました。これは主に配当金の支払額が372百万円、リース債務の返済による支出が104百万円あったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度の受注状況を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
動画ソリューション事業
14,262,276
111.4
3,818,033
138.0
(注)1.金額は販売価格によっております。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
動画ソリューション事業
12,501,233
100.7
(注)1.金額は販売価格によっております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態 当連結会計年度における財政状況の分析につきましては「4 経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」を参照ください。当期利益の計上により資金は前年に比べ充実しており、積極的な事業展開と投資実施により事業の成長を図ります。
2) 経営成績
(売上高) 販売面においては、戦略市場を医薬業界のEVC(Enterprise Video Communication)領域、医薬以外の業種のEVC領域、放送業界を中心としたOTT領域、と3区分して営業活動を展開しました。
EVC領域(医薬)においては、コロナ環境下で推進されたDX(デジタルトランスフォーメーション)シフトは継続しております。Web講演会用途のライブ配信売上や、講演会への集客等の売上は全体に底堅く推移しましたが、業界全体において一律に積極的展開をするような状況にはなく、顧客製薬企業によって、取組姿勢に差異が見られます。また、コストコントロールを重視する動きは業界全体に広がっており、特に日本の医薬品市場の成長が諸国のそれを下回る状況が続いている中、外資系の企業においてこの傾向が先行する状況となっております。
こうした環境下において、当社の主要顧客である企業においてもイベント実施の絞り込みの動きがありました。WEB講演会関連のデータ分析ツールとして提供している「WebinarAnalytics」や、集客等マーケティング施策についての展開を進めた結果、前年実績を上回る顧客も確保できましたが、取引額の大きい顧客の販促活動抑制が全体の売上実績に大きく影響する結果となりました。この領域全体での売上は、ライブ配信、関連するWEBや映像制作等のサービス全般において、前年には及ばない結果となりました。
EVC領域(医薬以外)においては、コロナ禍の沈静化が企業活動の各側面におけるリアルへの回帰を後押ししましたが、販売促進のためのウェブセミナー、企業や団体内での教育・情報共有に向けた動画の利用は底堅く推移しました。これに伴い、主力サービスである「J-Stream Equipmedia」や「J-Stream CDNext」等のネットワーク関連のサービス売上は順調に推移しました。バーチャル株主総会については、コロナ禍以前に比べれば飛躍的に多数の企業が実施するようになったものの、発行企業の運営負担や実参加を望む株主への配慮も強く見られました。取扱件数は増加したものの、システム化の進行に伴いWEB制作等当社の担当する領域が相対的に狭まったことが単価の下落につながり、想定したほどの売上規模には至りませんでした。映像制作についても期末の駆け込み的需要が乏しく、前年を下回りました。しかしながら、この領域全体ではネットワーク関連売上を中心に前年を上回る結果となりました。
OTT領域においては、放送業界におけるコンテンツ配信向けシステム開発、ウェブサイト運用や関連するWEB制作業務、配信ネットワーク売上が中心となりました。
キー局を中心とした放送業界におけるコンテンツ配信サイトシステムやサイト運用、配信ネットワーク売上、といった継続的な売上に加え、専門チャンネル事業者や放送局向けシステム開発、リアルコンテンツのWEBプロモーション関連のWEB広告や関連するWEB制作において比較的大口の開発納品を実施できた結果、堅調な推移となりました。連結子会社においても放送局向けに大口の機器売上があり、累計でも前年度を上回る水準の推移となりました。
これらの結果、前連結会計年度に比べ0.7%増の12,501百万円となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費) 売上原価については、サービス開発推進に伴い業務委託費用支出が増加した他、システム開発系の売上が増加したことに伴い外注費が増加しました。また、開発体制充実のための社内制度の充実と採用施策の強化を継続的に行っており、従業員増に伴い労務費が増加したことにより、7,514百万円(前年比5.9%増)となり、売上総利益率は前年比2.9ポイント低下いたしました。
販売費及び一般管理費については、採用の推進に伴い求人費が増加しましたが、社内システム開発が一巡したこともあり特段の増加要因はなく推移しました。これらの結果、販売費及び一般管理費は3,324百万円(前年比1.9%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益) 当連結会計年度の経常利益は1,652百万円と前連結会計年度に比べ19.5%の減少となりました。第4四半期連結会計期間において、当社グループが保有する「投資有価証券」に区分される保有有価証券のうち、時価が著しく下落し、その回復の見込みがないと判断したものについて、減損処理による投資有価証券評価損205百万円を特別損失に計上いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ29.5%減の1,446百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ33.3%減の873百万円となりました。
3) キャッシュ・フローの状況の分析 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
4) 資本の財源及び資金の流動性
(資金需要) 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、受注から開発納品、顧客からの支払受領までの期間と、外注支払等とのギャップ部分の運転資金に加え、各事業についての一般管理費などがあります。設備資金の需要としては、サーバ等の設備、比較的少額のオフィス等の機器に関する設備資金需要があります。無形固定資産に関連するものでは、サービスソフトウェア関連の開発投資、サービス開発投資に加え、社内のシステムに関する開発投資に関する資金需要があります。この他、企業や事業の買収に関する資金需要があります。
(財務政策) 近年の売上増大に伴う運転資金需要の増加や、ソフトウェア開発等の資金需要は自己資金で賄っております。運転資金につきましてはグループ企業を含め事業拡大に伴い需要が増加しておりますため、借入等短期資金を効率的に確保する手法を検討いたします。M&Aによる人材・開発能力の確保や新規事業開拓等に伴う資金については、2021年3月期におきまして自己株式の処分による調達を実施し、その後の投資環境、実績を鑑み、2023年3月期第4四半期において、その支出時期を2028年3月までと延長いたしました。こうした状況を鑑み、当面不足は発生しないものと判断しております。
5) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
新型コロナウイルス感染症の流行以降、DXによる産業構造の変化は著しいものがあります。アフターコロナ環境においては、コロナ環境下でのWEB関連施策によって得られた知見を活かし、リアルとのハイブリッドな形で事業展開を行うことが前提となると考えられます。
当社グループでは、医薬関連企業へのマーケティングを中心とした動画コミュニケーション(EVC:Enterprise Video Communication)向けのサービス提供、医薬以外の業種の事業会社によるビジネス全般における動画コミュニケーション(EVC)に向けた動画ソリューションの開発・提供、各種のコンテンツを提供する放送局・コンテンツ事業者に向けた配信基盤やソリューションの提供の3つを軸として市場認識とサービス構成をしております。これら3つの市場各々に向けて、DXの目的達成に最適化されたソリューションや、リアルと合わせたユーザー体験の高レベル化、DXを前提としたセキュリティ強化等、安定して成果を挙げることにつながるソリューションを提供し、業容の拡大に努めてまいります。
医薬関連企業に向けては、リアルとデジタルの差をなくすエンドユーザー体験を提供し、より効果的な情報発信と成果の獲得を支援できる企業となることを目指します。
大きな需要のある製薬企業によるWeb講演会ライブ配信領域では、サービス品質の向上とコストの軽減を両立し、医師と企業のコミュニケーションにおける課題を確認、改善につなげられる機能の開発提供を進めます。集客や製薬企業のオウンドメディアへの送客、カスタマーエクスペリエンスの改善や実績データ分析、新しい開催スタイルのイベントへの最適なソリューション提供を通じて、デジタルマーケティングのより上流工程への関与を深め、製薬企業・医師双方にとっての次世代のMedical DXパートナーとなるべく事業を展開します。
医薬以外の業種の事業会社によるビジネス全般における動画コミュニケーションにおいては、動画を活用する企業と担当者にとってのベストソリューションパートナーを目指します。
企業の販売・営業、マーケティング、業務プロセス、組織、会計、社員教育等すべてのシーンにおいてICT化が進行し、動画の利用される場面が拡大していることを捉え、顧客企業の担当者の活動や、社内の事業プロセスに必要とされるリソースとソリューションを提供します。特に市場規模の大きいセミナー/イベント用途の動画利用に適したサービスを展開、機能強化を続けるほか、株主総会、IRや学会等、個別の利用シーンに合わせたメニューの整備を進めます。同時に、リテラシーの高い顧客企業が、動画の内製を進めることを支援するサービスを構築し、より広い顧客層の獲得を図ります。販売面においては、パッケージ化されたサービスを中心に、パートナーを通じた販売ルートの拡充にも注力します。
放送局・コンテンツ事業者に向けては、コロナ禍も後押しとなったネット配信を拡大する大きな流れや、コンテンツ・インフラ両面でのグローバルプレイヤーの存在感の増大、競合環境の激化に伴うマネタイズニーズの増加等への対応を実現する、動画ビジネスにおけるトータルテックパートナーを目指します。
大規模配信、サイト運用等を総合的に担当するキー局等に向けては、マルチCDN等を利用した配信品質の向上や、安定したサイト運用体制の提供を行い、既存顧客の維持に加えて、新規顧客へのサービス導入を図ります。BS/CS局や、スポーツ、各種公営競技等コンテンツを保有するコンテンツ事業者向けには、コンテンツ配信用のCMSや課金機能など、動画配信だけでなく、海外SaaSを利用した動画配信とも組み合わせて利用できる各種の機能・ソリューションを提供することを通じて顧客獲得を図ります。
2024年3月期については、これら基本戦略の下で経営を進めてまいります。
投資、支出面においては、更にスピードを増してニーズに対応するとともに、需要の拡大に応える案件対応能力、開発能力、バックオフィス能力等、企業体制をより充実させていくことが重要な課題であると認識しております。こうした方面への投資を効率的に行うと同時に、M&Aを通じた事業領域の強化、拡大の機会を積極的に追求します。
当社グループにおいては、インターネット動画を利用したマーケティング活動や情報発信、情報共有や、各種コンテンツ配信市場は成長基調にあると認識しております。こうした環境下においては、導入顧客の動画利用を促進する知識や情報を提供し、利用実績を積み重ねることで目的達成への効果を実感頂き、取引規模を順次拡大していくことが重要であると判断しております。この方針の達成状況を判断するために重視している指標は、特に継続的売上と利益が期待できる配信系のプラットフォーム売上高や取引先数(サービスによっては同一企業に複数アカウントを発行する場合もあるため、アカウント数)、既存取引先の維持率、また新規の取引先獲得数であります。また、構築した配信基盤を利用して、こうした顧客に適切なサービスを提供して利益をあげられているかの目安として、営業利益率を重要な指標としております。
当社の主力サービスである「J-Stream Equipmedia」については、競合企業対策、顧客への配慮から現時点での契約アカウント数は公開しておりませんが、サービス利用の累計アカウント数を随時公表しております。2022年1月末時点で3,000件、2023年2月末時点で3,500件を超えており、コロナ環境下での急増には及ばないものの、着実に獲得が進んでおります。営業利益率については、人員増の影響や管理系システム開発費用の影響が大きく、当連結会計年度において13.3%となり、前期比3.3ポイント低下しております。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
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