【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の流行対策としての経済活動制限やそれに伴う社会不安、米国の政局不安、米中対立等の影響から不確実性が高い状況が続きました。インターネット業界においては、感染症拡大防止のため在宅時間が増加したことに伴ういわゆる「巣ごもり需要」に伴うネット動画視聴の増加や、リアルイベントの代替・補填としてのオンライン配信、ネット通販市場の拡大等が注目されました。また企業にとって感染症対策を進めつつの事業展開は必須となり、テレワークの推進や各種の情報共有、販売促進、研修、面談、会議等のオンライン化など、アフター/ウィズコロナの企業活動の模索が続いています。
こうした環境下、当社グループは動画ソリューション事業において、需要が急増した各種イベントのインターネットライブ配信や、社内情報共有・教育等のオンデマンド動画配信ニーズに対応し、主力サービスである「ライブ中継サービス」や「J-Stream Equipmedia」を中心に、旺盛な需要への対応体制を整備しつつ提供を進めました。同時に、オンラインやリアルイベントの開催に関連する各種サービスを提供する企業との協業・連携をすすめ、共同して市場開拓を図るとともに、顧客企業の多様な利用シーンとニーズに応える、より高品質なサービス提供を行える体制整備を進めました。また、政府・民間による情報通信業界の将来に向けた研究開発、課題・対応策検討にかかる取組にも積極的に参加いたしました。
今後の成長を支えるため、2020年10月16日に大和証券株式会社を割当先とする第1回新株予約権(第三者割当て)を発行いたしました。当連結会計年度において、自己株式の約3分の1に相当する800,000株を充当し、11月の行使終了までに3,426百万円(新株予約権発行に伴う入金含む)を調達いたしました。当社グループでのサービス開発に留まらず、ビッグデータ解析や、様々な機能に特化したSaaS提供事業者との提携や、技術者を中心とした人的リソースの確保などを目的としたM&A・資本業務提携を意図した資金調達及び資本増強と位置付けております。
この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より5,944百万円増加の11,830百万円となりました。このうち流動資産は9,754百万円となり、前連結会計年度末より5,550百万円増加しました。これは主に現金及び預金及び売掛金の増加によるものであります。また、固定資産は2,075百万円となり、前連結会計年度末より393百万円増加しました。これは主にソフトウェアの増加及びのれんの増加等によるものであります。
(負債) 当連結会計年度末における負債合計は2,671百万円となり、前連結会計年度末より974百万円増加しました。これは主に未払金及び未払法人税等、未払消費税等の増加等によるものであります。
(純資産) 当連結会計年度末における純資産合計は9,159百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益1,548百万円を計上、自己株式の処分により資本剰余金が3,273百万円増加した一方で、剰余金の配当75百万円を計上した結果、前連結会計年度末より4,969百万円増加しました。
b.経営成績
当連結会計年度の業績は、連結売上高12,970百万円(前年同期比53.6%増)、連結営業利益2,342百万円(前年同期比328.2%増)、連結経常利益2,350百万円(前年同期比318.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,548百万円(前年同期比521.4%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より4,501百万円増加し、当連結会計年度末には6,525百万円となりました。前年同期に対し、売上利益の急増と自己株式の処分による資金調達を行ったことが影響し、大きく増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と資金の増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益2,334百万円の計上、減価償却費450百万円の計上などの資金の増加要因が資金減少要因を上回り2,066百万円の収入(前年同期比235.1%増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得451百万円、並びに、子会社株式の取得264百万円などにより774百万円の支出(前年同期比81.0%増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の行使による自己株式の処分による収入3,419百万円が資金減少要因を上回り3,209百万円の収入(前年同期は174百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度の受注状況を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
動画ソリューション事業
13,798,574
157.8
3,042,989
137.4
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
動画ソリューション事業
12,970,352
153.6
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態 当連結会計年度における財政状況の分析につきましては「3 経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」を参照ください。当期利益の計上と自己株式の処分による資金調達により資金は前年に比べ充実しており、積極的な事業展開と投資実施により事業の成長を図ります。
2) 経営成績
(売上高) 販売面においては、戦略市場を医薬業界のEVC(Enterprise Video Communication)領域、金融およびその他の業種のEVC領域、そして放送業界を中心としたOTT領域と3区分して営業活動を実施しておりますが、いずれの領域においても堅調な推移となりました。
EVC領域(医薬)においては、従来からDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進していた業界であったことに加え、感染症対策の観点からMRによる訪問、販売促進活動に制限があることも影響し、Web講演会用途のライブ配信売上が、多くの顧客において大幅に増加しました。更に関連するWeb制作、映像制作についても堅調に推移した結果、前年同期の2倍を超える売上となり大きく伸長しました。完全子会社である株式会社ビッグエムズワイのe-ディテール向けCRMコンテンツ制作とライブ配信売上も順調に推移しました。また同社は制作外注先であったアズーリ株式会社を2020年11月末に買収、2021年1月初時点をもって吸収合併し、制作能力を強化するとともに収益力を向上させました。
金融その他業種のEVC領域においては、医薬業界と同様に、販売促進のためのウェブセミナーの実施が普及した他、業界を問わず動画による情報共有、教育等に関するニーズが高まったことが「J-Stream Equipmedia」の売上増につながりました。特に学習塾等による利用が大きく伸長しました。これに加え、関連省庁も含めて数年来議論されてきた「バーチャル株主総会」に関するニーズが感染症対策もあって顕在化し、ライブ配信売上を中心に大きな売上増加要因となりました。また、4、5月の緊急事態宣言下においては案件進行に滞りがあったWeb制作、映像制作についても、Webによる商談等の仕組みや体制が整った夏以降は進展が見られ、売上が増加しました。
OTT領域においては、放送業界において五輪の延期に伴う需要の低減要因がありましたが、秋口において大口のシステム開発が得られました。サイト運用や関連するWeb制作業務、配信ネットワーク売上は堅調に推移し、前年同期を上回る水準となりました。 これらの結果、前連結会計年度に比べ53.6%増の12,970百万円となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費) 費用面においては、売上原価においてはライブ配信案件の急増や、2019年8月に連結子会社化した株式会社ビッグエムズワイの外注費が通期にわたり影響したことから増加しました。しかしながら、開発費用負担が相対的に少なく利益率の高い「J-Stream Equipmedia」の売上増加や、専門性や付加価値の高い医薬系ライブ配信・制作受注が増加したこと、アズーリ買収に伴うグループ内製化の推進等により、売上原価は7,606百万円(前年比37.6%増)となり、売上総利益率は前年比6.9ポイント改善いたしました。 販売費及び一般管理費については、グループ企業の増加のほか、社内システム開発のための業務委託手数料や、業容拡大のための求人費支出により増加しました。また、コロナ環境下での新しい働き方に対応するためのオフィス合理化、生産性向上のためのDX関連の投資に加え、ダイレクト採用を強化する為の採用サイトの構築や広告出稿等も積極的に実施したことにより新たな費用が発生しましたが、売上対比、費用の伸びは抑制できました。これらの結果販売費及び一般管理費は3,021百万円(前年比27.5%増)となり、売上対比少ない増加率に留めることができました。
(親会社株主に帰属する当期純利益) 当連結会計年度の経常利益は2,350百万円と前連結会計年度に比べ318.1%の増加となりました。税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ422.4%増の2,334百万円となりました。 親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ521.4%増の1,548百万円となりました。
3) キャッシュ・フローの状況の分析 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
4) 資本の財源及び資金の流動性
(資金需要) 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、受注から開発納品、顧客からの支払受領までの期間と、外注支払等とのギャップ部分の運転資金に加え、各事業についての一般管理費などがあります。設備資金の需要としては、サーバ等の設備、比較的少額のオフィス等の機器に関する設備資金需要があります。無形固定資産に関連するものでは、サービスソフトウェア関連の開発投資、サービス開発投資に加え、社内のシステムに関する開発投資に関する資金需要があります。この他、企業や事業の買収に関する資金需要があります。
(財務政策) 近年の売上増大に伴う運転資金需要の増加や、ソフトウェア開発等の資金需要は自己資金で賄っております。運転資金につきましてはグループ企業を含め事業拡大に伴い需要が増加しておりますため、借入等短期資金を効率的に確保する手法を検討いたします。M&Aによる人材・開発能力の確保や新規事業開拓等に伴う資金については、当連結会計年度におきまして自己株式の処分による調達を実施したため当面不足は発生しないものと判断しております。
海外との取引については大きな額ではない各種ライセンス程度に限定されており、上述の調達環境を含め、為替、金利変動による直接的な財務リスクは大きくありません。
5) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
新型コロナウイルス感染症の流行以降、インターネットを通じた動画によるコミュニケーションの利用はビジネス用途、エンターテインメント用途双方において増加傾向にあります。この変化は、数年かかって進展するはずであったものが急速に進み、新しいステージに入ったものと認識しております。今後期待される5G環境の普及は、こうした状況を更に加速すると同時に、新たな利用法、ビジネスの糸口になると考えられます。
当社グループでは、安定した需要と成長が見込める医薬関連企業へのマーケティングを中心としたサービス提供、その他ビジネス全般における動画コミュニケーション(EVC:Enterprise Video Communication)に向けた動画ソリューションの開発・提供、今後拡大が見込まれる放送同時配信関連市場や各種の番組を配信する放送局・メディア企業に向けた配信基盤やソリューションの提供の3つを軸として市場認識をしており、各領域において業容の拡大に努めてまいります。
医薬関連企業に向けては、大きな需要のあるWeb講演会領域のライブ配信受託体制の強化に加えて、企業グループとしてプロモーション領域、コンテンツ制作体制を強化し、デジタルマーケティングを総合的に支援できる体制を整えて新たな需要の開拓を図ります。
その他ビジネス全般における動画コミュニケーションについては、企業の販売・営業、マーケティング、業務プロセス、組織、会計、社員教育等すべてのシーンにおいてICT化が進行し、動画の利用される場面が拡大していることに対応し、「J-Stream Equipmedia」を中心としてソリューションを展開いたします。低遅延、双方向性等のニーズに応えるほか、動画配信だけでは解決できない顧客課題に対応するために、有力なSaaS(Software as a Service)、各種サービスプラットフォームとの連携を強化して課題解決の実績を積み重ね、受注の拡大を図ります。
放送局・メディア企業に向けては、放送業界が展開する放送同時配信サービスに求められる、大規模配信やタイムラグのない超低遅延配信、広告配信、番組編成処理機能等、各種の機能要請に応えるサービス開発を進め、拡大する市場におけるプレゼンスの向上を図ります。実績の積み重ねを通じ顧客との関係を強化し、受注の拡大に繋げるほか、EVC向けの利用が主であった「J-Stream Equipmedia」をコンテンツビジネスでの利用に適した形でも展開し、より簡便にコンテンツ配信ビジネスの展開を支援いたします。
2022年3月期についてはこれら基本戦略の下で経営を進めてまいります。昨今の新型コロナウイルス感染症の企業動向への影響に関して、ワクチンの普及や流行の沈静化によって当社の事業領域における需要が減退するのではないかという懸念が存在します。感染症の動向によって、リアルイベントのライブ配信需要等を中心に需要が変動する可能性はありますが、現時点では影響は大きくないものと判断しております。当社グループにおいては、感染症流行後の各社によるDXへの取り組みは、人の往来によるコストの削減も含め、相応の成果を挙げ、不可逆の動きになっていると認識しており、首尾よく感染症が収束した後も需要は堅調に推移するものと判断しております。
投資、支出面においては、更にスピードを増してニーズに対応するとともに、需要の拡大に応える案件対応能力、開発能力、バックオフィス能力等、企業体制をより充実させていくことが重要な課題であると認識しております。こうした方面への投資を効率的に行うと同時に、M&A通じた事業領域の強化、拡大の機会を積極的に追求いたします。
当社グループにおいては、インターネットを通じた各種コンテンツ配信の市場や、動画を利用したマーケティング活動や情報発信、情報共有は成長基調にあると認識しております。こうした環境下においては、導入顧客の動画利用を促進する知識や情報を提供し、利用実績を積み重ねることで目的達成への効果を実感頂き、取引規模を順次拡大していくことが重要であると判断しております。この方針の達成状況を判断するために重視している指標は、特に継続的売上と利益が期待できる動画配信プラットフォームを中心とした取引先数、既存取引先の維持率、また新規の取引先獲得数であります。また、構築した配信基盤を利用して、こうした顧客に適切なサービスを提供して利益をあげられているかの目安として、営業利益率を重要な指標としております。
当社の主力サービスである「J-Stream Equipmedia」については、競合企業対策、顧客への配慮から現時点での契約アカウント数は公開しておりませんが、サービス利用の累計アカウント数を随時公表しております。営業利益率については当連結会計年度において18.1%となり前期比11.6ポイント向上しております。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
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