【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
通信計測事業の主要市場である情報通信分野においては、各国オペレータが5Gサービスを開始していますが、5Gミリ波の技術的課題やキラーアプリケーションの出現が遅れていることなどにより、世界的に5Gスマートフォンの出荷台数の減少が継続しています。
「Release 17」(*1)の標準化完了によって更に進展した5G利活用の領域では、Automotive分野での5G活用に向けた研究開発や、ローカル5Gのようなプライベート領域での5Gネットワーク構築に向けた調査や実証実験が始まっています。IoT分野では、米国のラストワンマイルで利用されるCPE(Customer Premises Equipment、顧客構内設備)の需要が増加してきており、5G無線モジュールの開発に加えてWi-Fi 6E(*2)の開発需要も生じています。また、次世代の通信規格である6Gの研究開発も始まっています。
5Gのネットワークでは、オペレータが無線ネットワークをより柔軟に構築できるよう、無線アクセスネットワークのオープン化に取り組むO-RANアライアンスが活動を進めてきました。これまでメーカー独自のインタフェースで構成されていた基地局装置に対してO-RANの標準仕様を適用することで、マルチベンダーでの無線アクセスネットワークの構築が容易になりました。これにより、世界各地のオペレータがO-RANの導入を進めています。
また、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増し、ネットワークインフラを逼迫させつつあります。ネットワークの更なる高度化を進めるサービス・プロバイダでは、100Gbpsサービスが本格化するとともに、ネットワーク機器メーカーでは、400Gbps/800Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。さらに、オール光化を目指すIOWN(*3)の研究開発も始まりました。
経営環境については、物価や金利の上昇に加え、地政学的リスクの高まりや部品調達難の長期化が企業業績に対する重要なリスク要因となっています。
当社グループは、主としてモバイル市場の不振による通信計測事業の売上収益悪化の下、原材料価格の高騰やインフレに伴う費用の増加に対して、価格転嫁の推進や業務効率化に取組んでいます。また、部品調達難については一部の部品を除き改善の兆しがありますが、引き続き戦略的な部品在庫の確保などの対策によりリスクの最小化を図っています。以上の結果、当社グループの経営成績は次のとおりとなりました。
当第1四半期連結累計期間は、受注高は23,020百万円(前年同期比22.7%減)、売上収益は22,742百万円(同13.1%減)、営業損失は57百万円(前年同期は3,017百万円の利益)、税引前四半期利益は427百万円(同89.1%減)、四半期利益は241百万円(同91.8%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は250百万円(同91.4%減)となりました。
(*1)3GPPで標準化される規格番号
(*2)第6世代のWi-Fi 6の使用帯域を6GHz帯まで拡張した無線LAN規格
(*3)Innovative Optical and Wireless Networkの略で、IOWN Global Forumが検討を進めている、オール光ネットワークなど革新的技術を用いた新しい通信基盤
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
なお、当第1四半期連結会計期間より報告セグメントを従来の「通信計測事業」及び「PQA事業」の2区分から、「通信計測事業」、「PQA事業」及び「環境計測事業」の3区分に変更しています。前第1四半期連結累計期間のセグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しています。
① 通信計測事業
当事業は、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。
当第1四半期連結累計期間は、世界的な5Gスマートフォンの開発投資需要の減少によるモバイル市場の成長鈍化により、前年同期比で減収減益となりました。この結果、売上収益は15,192百万円(前年同期比18.3%減)、営業利益は424百万円(同87.5%減)となりました。
② PQA事業
当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。
当第1四半期連結累計期間は、食品市場の品質保証プロセスの自動化、省人化を目的とした設備投資需要が堅調に推移し、前年同期比で増収増益となりました。この結果、売上収益は5,368百万円(前年同期比5.6%増)、営業利益は20百万円(前年同期は76百万円の損失)となりました。
③ 環境計測事業
当事業は、EV・バッテリ向け試験装置、ローカル5G向け支援サービス、道路やダム・河川等の映像監視用モニタリングソリューションの開発、製造、販売を行っています。
当第1四半期連結累計期間は、国内においてEV・バッテリ向け試験需要が堅調に推移し、売上収益及び営業損益は前年同期と同水準になりました。この結果、売上収益は824百万円(前年同期比5.9%減)、営業損失は311百万円(前年同期は328百万円の損失)となりました。
④ その他の事業
その他の事業は、センシング&デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。
当第1四半期連結累計期間は、売上収益は1,357百万円(前年同期比16.6%減)、営業利益は68百万円(同71.8%減)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、36,301百万円となり、期首に比べ532百万円減少しました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、1,212百万円のプラス(前年同期は1,287百万円のマイナス)となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果獲得した資金は、純額で2,299百万円(前年同期は299百万円の獲得)となりました。これは、営業債権及びその他の債権が減少したことにより資金が増加したことが主な要因です。なお、減価償却費及び償却費は1,501百万円(前年同期比62百万円増)となりました。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、純額で1,086百万円(前年同期は1,586百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、純額で2,998百万円(前年同期は6,319百万円の使用)となりました。これは、リース負債の返済による支出310百万円及び配当金の支払額2,633百万円(前年同期の配当金支払額は2,699百万円)が主な要因です。
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4) 経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当第1四半期連結累計期間の研究開発投資の金額は、2,511百万円です。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。