【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における経済環境を顧みますと、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、世界的なインフレ進行、金融引き締め等により、中国および欧米を中心に世界経済の減速が強まりました。一方、半導体を中心とした部品調達難は一部を除き大幅な改善となり、また物流混雑で長期化した物流リードタイムも改善したことから、これまで続いていたサプライチェーンの混乱は、ほぼ収束となりました。なお、今後につきましては、インフレの高止まり、最近の金融市場の混乱により、消費者信頼感の低下や家計支出と投資の減少に伴う深刻な下振れリスクが懸念される等、先行き不透明な状況にありますので、今後の動向を引き続き注視していきます。
当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ135.44円および140.90円と前期に比べ、米ドルは21%の円安、ユーロは8%の円安に推移しました。また、中国や南米など新興国の通貨については円安に推移しました。
こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。
(億円)
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減金額
増減率
主な増減理由
売上収益
11,289
13,303
2,014
17.8%
[売上収益]
プリンティングソリューションズ事業セグメント+1,224
ビジュアルコミュニケーション事業セグメント+578
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント+235
[事業利益]
プリンティングソリューションズ事業セグメント△171
ビジュアルコミュニケーション事業セグメント+195
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント+52
売上原価
△7,104
△8,636
△1,532
-
売上総利益
4,184
4,666
481
11.5%
販売費及び
一般管理費
△3,288
△3,715
△427
-
事業利益(※)
896
951
54
6.1%
その他の営業収益・
その他の営業費用
48
19
△29
-
マニュファクチャリングソリューションズ事業における減損損失の計上および為替差益の減少等
営業利益
944
970
25
2.7%
金融収益・金融費用
25
66
40
-
為替差益の増加等
税引前利益
971
1,037
65
6.8%
法人所得税費用
△48
△287
△238
-
繰延税金資産の積み増しによる費用減少があった前期に対して、当期は繰延税金資産の大幅な増減がなかったこと等により費用増加
当期利益
923
750
△172
△18.7%
親会社の所有者に
帰属する当期利益
922
750
△172
△18.7%
※事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
報告セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は大幅な増加となりました。インクカートリッジモデルの本体販売数量は減少となりましたが、大容量インクタンクモデルおよびオフィス共有IJPの本体販売数量は増加となりました。また、高値販売の継続、さらに為替のプラス影響などがあり、インクジェットプリンター本体の売上は大幅な増加となりました。消耗品売上は、インクカートリッジモデル本体の販売数量減および在宅印刷需要の平常化に伴い、インクカートリッジ売上は減少となりましたが、大容量インクタンクモデルのインクボトルの売上が増加し、さらに為替のプラス影響もあり、若干の増加となりました。
商業・産業プリンティング事業の売上収益は大幅な増加となりました。商業・産業IJP本体については、景気減速の影響を受け、中国における販売が減速していますが、値上げによる高値販売、為替のプラス影響により、売上増となりました。消耗品売上は、北米で大口の需要があった前期に対して減少しているものの、為替のプラス影響により、増加となりました。小型プリンターは、欧米を中心とした値上げ、製品供給不足の改善による販売数量増および為替のプラス影響により大幅な売上増となりました。
プリントヘッド外販ビジネスは、中国ロックダウンによる売上影響が第1四半期にありましたが、中国向けを中心に第2四半期以降は順調に挽回し、売上増となりました。
プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、オフィス・ホームプリンティング事業におけるインクカートリッジモデルの消耗品売上減、部材費や輸送価格、光熱費などの高騰による製造コストアップの影響が大きく、大幅な減少となりました。
以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は9,023億円(前期比15.7%増)、セグメント利益は893億円(同16.1%減)となりました。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は、堅調な欧米の教育市場やホーム市場における売上増、また製品供給不足の改善に伴い受注残の解消が進んだことや為替のプラス影響などにより、大幅な増加となりました。
ビジュアルコミュニケーション事業のセグメント利益は、増収影響に加えて、費用抑制の継続などにより大幅な増加となりました。
以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は2,168億円(前期比36.4%増)、セグメント利益は348億円(同127.2%増)となりました。
(マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)
マニュファクチャリングソリューションズ事業の売上収益は、中国市場で販売が減速となりましたが、為替のプラス影響により前期並みとなりました。
ウエアラブル機器事業の売上収益は、ムーブメントなどで売上が減少となりましたが、インバウンド需要の増加もあり、国内での売上が好調なことや為替のプラス影響により、増加となりました。
マイクロデバイス事業の売上収益のうち、水晶デバイスは、民生系での需要減などがあったものの、基地局向け売上増、および高値販売や為替のプラス影響により、増加となりました。半導体は、堅調な需要が継続して大幅な売上増となり、事業全体で大幅な増加となりました。
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントのセグメント利益は、マイクロデバイス事業を中心とした増収影響が大きく、為替のプラス影響もあり、大幅な増加となりました。
以上の結果、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントの売上収益は2,154億円(前期比12.2%増)、セグメント利益は283億円(同22.9%増)となりました。
なお、上記のほか、マニュファクチャリングソリューションズ事業において、市場環境の変化等の影響により投資した額の回収が一部見込めない状況となったため、減損損失18億円を計上しております。
(調整額)
報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る収益、費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△573億円(前期の調整額は△552億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは613億円の収入(前期は1,108億円の収入)となりました。これは当期利益が750億円であったのに対し、減価償却費及び償却費の計上686億円などの増加要因があった一方で、棚卸資産の増加602億円、売上債権の増加221億円などによる減少要因があったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出590億円などがあったことにより、616億円の支出(前期は440億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い213億円、自己株式の取得による支出300億円、長期借入金の返済による支出180億円などがあったことにより、793億円の支出(前期は517億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響を合わせて、前連結会計年度末から678億円減少し、2,673億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
エプソンの生産実績は、販売実績と近似しているため、記載を省略しております。
b.受注実績
エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前期比(%)
プリンティングソリューションズ事業(百万円)
902,345
115.7
ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)
216,868
136.4
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業(百万円)
205,415
112.5
報告セグメント計(百万円)
1,324,630
118.1
その他(百万円)
5,701
77.3
合計(百万円)
1,330,331
117.8
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
①経営成績等
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して751億円増加し、1兆3,415億円となりました。これは主に、現金及び現金同等物の減少678億円があった一方で、棚卸資産の増加810億円、売上債権及びその他の債権の増加335億円、有形固定資産の増加176億円などがあったことによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に対して134億円増加し、6,140億円となりました。これは主に、仕入債務及びその他の債務の増加134億円、その他の流動負債の増加210億円などがあった一方で、退職給付に係る負債の減少110億円、社債、借入金及びリース負債の減少98億円などがあったことによるものです。
なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して617億円増加し、7,273億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益750億円の計上、および在外営業活動体の換算差額を主因としたその他の包括利益378億円の計上があった一方で、配当金の支払い213億円、自己株式の取得300億円があったことなどによるものです。
運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して184億円増加し、5,208億円となりました。
(経営成績)
経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
②資金の源泉および流動性
当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は740億円であり、所要資金につきましては、内部資金によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。
エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。
有利子負債の当連結会計年度末残高は、銀行借入の返済などにより前連結会計年度と比較して98億円減少し、2,332億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して678億円減少し、2,673億円となりましたが、手元流動性は十分に確保しております。
また、コロナ禍による先行きが不透明な中、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結しておりますが、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。
なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。
エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。※ 原油、金属などの枯渇性資源
なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
エプソンの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。
