【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①財政状態
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に対して646億円増加し、1兆3,310億円となりました。これは主に、現金及び現金同等物の減少761億円があった一方で、棚卸資産の増加845億円、売上債権及びその他の債権の増加335億円などがあったことによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に対して316億円増加し、6,322億円となりました。これは主に、社債、借入金及びリース負債の減少185億円があった一方で、仕入債務及びその他の債務の増加347億円、退職給付に係る負債の増加96億円などがあったことによるものです。
なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して329億円増加し、6,986億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上614億円、および在外営業活動体の換算差額を主因とするその他の包括利益の計上188億円があった一方で、配当金の支払い213億円、自己株式の取得261億円などがあったことによるものです。
②経営成績
当第3四半期連結累計期間における経済環境を顧みますと、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、世界的なインフレ進行、各国での金融引き締め等により、中国および欧米を中心に世界経済の減速が強まっています。一方、半導体を中心とした部品調達難は一部を除き改善しており、また物流混雑で長期化した物流リードタイムも改善してきていることから、これまで続いていたサプライチェーンの混乱は、足元で落ち着く動きとなっています。なお、今後につきましては、世界的なインフレ動向、米国や日本等における金融政策、中国ゼロコロナ政策解除に伴う感染拡大および市場回復となる時期等の不確定な変動要因が数多くあり、先行き不透明な状況にありますので、今後の動向を引き続き注視していきます。
当第3四半期連結累計期間の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ136.49円および140.54円と前年同期に比べ、米ドルは23%の円安、ユーロは8%の円安に推移しました。また、中国や南米など新興国の通貨については円安に推移しました。
このような状況の中、売上収益は、プリンティングソリューションズ事業セグメントやビジュアルコミュニケーション事業セグメントで製品供給不足が改善したこと、また値上げによる高値販売の継続、円安進行による為替のプラス影響があったこと等から、前年同期を上回る9,944億円(前年同期比17.4%増)となりました。
事業利益(※)は、部材費や輸送価格、光熱費などの高騰により製造コスト増となりましたが、高値販売の継続、為替のプラス影響等により、前年同期を上回る807億円(同4.9%増)となりました。また、為替差益の計上等により、営業利益は825億円(同5.2%増)、税引前利益は882億円(同11.7%増)となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益は614億円(同0.1%減)となりました
※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
報告セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は増加となりました。インクカートリッジモデルの本体販売数量は減少となりましたが、大容量インクタンクモデルの本体販売数量は、製品供給不足の改善に伴い増加となりました。また、高値販売の継続、さらに為替のプラス影響などがあり、インクジェットプリンター本体の売上は大幅な増加となりました。消耗品売上は、インクカートリッジモデル本体の販売数量減および在宅印刷需要の平常化に伴い、インクカートリッジ売上は減少となりましたが、大容量インクタンクモデルのインクボトル売上が増加しており、さらに為替のプラス影響などもあり、若干の増加となりました。
商業・産業プリンティング事業の売上収益は増加となりました。商業・産業IJP本体については、景気減速の影響を受け、中国や欧米における販売が減速していますが、製品供給不足の改善によって受注残の解消が進んだこと、値上げによる高値販売、為替のプラス影響により、売上増となりました。消耗品売上は、北米で大口の需要があった前年同期に対して減少しているものの、為替のプラス影響により、若干の増加となりました。小型プリンターは、欧米を中心とした値上げ、製品供給不足の改善による販売数量増および為替のプラス影響により大幅な売上増となりました。
プリントヘッド外販ビジネスは、中国ロックダウンによる売上影響が第1四半期にありましたが、第2四半期以降は売上を順調に挽回し、また為替のプラス影響もあり、売上増となりました。
プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、オフィス・ホームプリンティング事業におけるインクカートリッジモデルの消耗品売上減、部材費や輸送価格、光熱費などの高騰による製造コストアップの影響が大きく、大幅な減少となりました。
以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は6,622億円(前年同期比14.0%増)、セグメント利益は670億円(同22.0%減)となりました。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は、堅調な教育市場やホーム市場における売上増、また製品供給不足の改善に伴い受注残の解消が進んだことや、為替のプラス影響などにより、大幅な増加となりました。
ビジュアルコミュニケーション事業のセグメント利益は、増収影響に加えて、費用抑制の継続などにより大幅な増加となりました。
以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,693億円(前年同期比36.1%増)、セグメント利益は288億円(同117.6%増)となりました。
(マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)
マニュファクチャリングソリューションズ事業の売上収益は、中国経済の減速による需要減の影響を受けたものの、為替のプラス影響により前年同期並みとなりました。
ウエアラブル機器事業の売上収益は、国内での売上が好調なことなどにより、増加となりました。
マイクロデバイス事業の売上収益のうち、水晶デバイスは、民生系での需要減などがあったものの、値上げによる高値販売や為替のプラス影響により、大幅な増加となりました。半導体は、堅調な需要が継続して売上増となり、事業全体では大幅な増加となりました。
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントのセグメント利益は、マイクロデバイス事業を中心とした増収影響が大きく、為替のプラス影響もあり、大幅な増加となりました。
以上の結果、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントの売上収益は1,659億円(前年同期比16.2%増)、セグメント利益は256億円(同47.4%増)となりました。
(調整額)
報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る収益、費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△408億円(前年同期の調整額は△396億円)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは359億円の収入(前年同期は873億円の収入)となりました。これは四半期利益が614億円であったのに対し、減価償却費及び償却費の計上518億円、仕入債務の増加225億円などの増加要因があった一方で、棚卸資産の増加679億円、売上債権の増加253億円などの減少要因があったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出402億円などがあったことにより、458億円の支出(前年同期は317億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い213億円、自己株式の取得による支出および預託金300億円、長期借入金の返済による支出180億円などがあったことにより、765億円の支出(前年同期は496億円の支出)となりました。
以上の結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響を合わせて、前連結会計年度末から761億円減少し、2,591億円となりました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、エプソンが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、エプソンが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるエプソンの研究開発活動の金額は334億円です。
なお、当第3四半期連結累計期間において、エプソンの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。