【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されたこと等により、緩やかな回復の兆しがみられる一方で、原材料価格やエネルギー費用の上昇、金融資本市場の変動リスク等の影響により、経済の見通しは依然として不透明な状況が継続するものと見込まれます。
このような市場環境のもと、コロナ禍以降のニューノーマル時代における市場環境の変化及び競争環境を鑑み、当連結会計年度においては、経営ビジョンを「全ての魅力にスポットライトがあたる社会へ」、経営方針を「付加価値の追求による企業価値の向上」に刷新、新たな成長戦略を策定し、事業成長を推進してまいりました。
また、事業の選択と集中を伴う事業再編として、国内シェアオフィスサービス「CROSSCOOP横浜」の事業運営を2023年10月31日で終了すること、及び国内シェアオフィスサービス(横浜を除く9拠点)をヒューリック株式会社へ譲渡することを2023年5月12日開催の取締役会にて決議したこと等を受け、固定資産の減損損失516,389千円を特別損失に、繰延税金資産の取り崩しにより144,622千円を法人税等調整額に計上しました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ253,490千円減少し、4,724,089千円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ598,882千円増加し、4,512,316千円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ852,372千円減少し、211,772千円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高4,769,571千円(前連結会計年度比3.0%増)と、増収となりました。また、利益につきましては、営業損失211,747千円(前連結会計年度は、営業利益164,070千円)、経常損失201,373千円(前連結会計年度は、経常利益137,592千円)となりました。また、固定資産等の減損損失516,389千円等を特別損失に計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は876,873千円(前連結会計年度は、親会社株主に帰属する当期純利益28,671千円)となりました。
当連結会計年度における各セグメントの概況は、次のとおりです。なお、数値はセグメント間の取引消去後となっております。
(a) デジタルPR事業
デジタルPR事業は、企業や官公庁・団体等に対して、インフルエンサーPRサービス、新聞・雑誌・Web・SNS等各種メディアのクリッピング(調査・報告)サービス、製品・サービスや事業等に関するリリース配信サービスを運営しております。
当連結会計年度において、クリッピングサービスについては、前年度に引き続きデジタル案件が牽引し案件数は増加(前年同期比9.9%増)しました。インフルエンサーPRサービスは社内教育による施策や、営業体制の見直し、セミナー等の積極的な販促活動に基づいた営業活動の効果もあり、案件数は増加(前年同期比10.4%増)となりましたが、案件数獲得への傾注もあり案件単価は下落し、売上としては減収(前年同期比8.4%減)となりました。リリース配信サービスは、将来の事業価値を増大するためのサービス提供価値向上の投資活動を進めているものの、認知拡大に向けた広告宣伝活動の効果発現の遅延、国内における新型コロナウイルス感染者数拡大を受けた企業のPR活動が軟調な場面もあり、配信数、利用社数ともに減少(それぞれ前年同期比5.1%減、前年同期比1.7%減)となりました。
この結果、デジタルPR事業の売上高は前連結会計年度に比べ63,973千円減少し、2,568,290千円(前連結会計年度比2.4%減)となり、セグメント利益は前連結会計年度に比べ165,263千円減少し、428,448千円(前連結会計年度比27.8%減)となりました。
(b) シェアオフィス事業
シェアオフィス事業は、アジア主要5都市(東京(新宿2拠点、六本木、青山、渋谷、新橋、日本橋)、横浜、仙台、福岡、シンガポール)でシェアオフィスサービス、クラウド翻訳サービスを運営しております。
当連結会計年度において、主要サービスであるシェアオフィスについては、2022年6月に福岡拠点の新規拠点開設をおこない、国内拠点の累積稼働席数は大幅に増加(前年同期比26.4%増)いたしました。海外拠点については、引き続き、日系企業のアジア進出意欲の減退による将来的な事業リスクを前倒しで回避すべく、前年度に決定したベトナム拠点の撤退に加え、2022年7月にタイ拠点の撤退決定を行う等、リストラクチャリングによる統廃合の進行もあり、累積稼働席数は大幅に減少(前年同期比57.5%減)いたしました。
一方で、国内新規拠点においては開設時の一時費用や、継続費用である地代家賃、減価償却費等の固定費用が発生するため損益分岐稼働率までは損失が先行し、かつ原材料不足や円安等による修繕費の増加やエネルギー費用の高騰による運営費用の先行費用負担が重く、シェアオフィス事業の黒字化まで時間を要しております。
この結果、シェアオフィス事業の売上高は前連結会計年度に比べ203,207千円増加し、2,201,280千円(前連結会計年度比10.2%増)、セグメント損失は拠点新設による初期投資費用もあり、241,791千円(前連結会計年度は32,536千円の損失)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は1,014,895千円と、前連結会計年度末に比較して116,171千円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は100,031千円(前連結会計年度は557,512千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失720,449千円、減損損失516,389千円、減価償却費388,859千円等の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は414,097千円(前連結会計年度は260,967千円の支出)となりました。これは主に、差入保証金の回収による収入24,505千円、有形固定資産の取得による支出280,233千円、無形固定資産の取得による支出86,122千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は413,849千円(前連結会計年度は353,298千円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出469,994千円、短期借入金の返済による支出367,000千円、短期借入れによる収入900,000千円、長期借入れによる収入447,000千円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績及び受注実績
当社グループの事業内容は、提供するサービスの性格上、生産実績及び受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(b) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年比(%)
デジタルPR事業(千円)
2,568,290
△2.4
シェアオフィス事業(千円)
2,201,280
10.2
合計(千円)
4,769,571
3.0
(注)セグメント間の取引については消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における資産の額は4,724,089千円と、前連結会計年度末に比べ253,490千円の減少となりました。資産の減少の主な要因は、現金及び預金が116,171千円増加した一方、減価償却の進捗により減価償却累計額が280,274千円増加したこと、減損損失の計上により建物が183,535千円減少したこと等によるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債の額は4,512,316千円と、前連結会計年度末に比べ598,882千円の増加となりました。負債の増加の主な要因は、リース債務(流動負債を含む。)が80,030千円減少した一方、短期借入金が533,000千円増加したこと等によるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産の額は211,772千円と、前連結会計年度末に比べ852,372千円の減少となりました。純資産の減少の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失876,873千円を計上したこと等によるものであります。
(b) 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は4,769,571千円(前連結会計年度比3.0%増)となり、前連結会計年度に比べて139,233千円増加いたしました。セグメント別の売上高については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は1,960,446千円(前連結会計年度比9.3%減)となりました。売上総利益率は前連結会計年度比5.5ポイント減少し、41.1%となりました。これは主にシェアオフィス事業における国内大型拠点の新規開設に伴う家賃の先行負担増によるものです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業損失は211,747千円(前連結会計年度は、営業利益164,070千円)となりました。営業利益率は前連結会計年度比7.9ポイント減少し、△4.4%となりました。これは主にシェアオフィス事業の国内大型拠点の新規開設に伴う先行費用、及びデジタルPR事業のプロダクト価値向上を目的としたメディア連携費用の増加によるものです。
(c) キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループは、事業運営上必要な資金を確保するとともに、経済環境の急激な変化に耐えうる流動性を維持することを基本方針としております。
運転資金及び設備投資については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は2,414,497千円となりました。資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については、長期調達するとともに過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップなどの手段を活用しております。
また、2024年3月期においては、国内シェアオフィスサービスの事業譲渡に伴い、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は黒字化の業績予想であること、かつ有利子負債の返済によるキャッシュ・フローの健全化を推進する見込みですが、事業譲渡の実行(2023年9月1日)までの十分な資金の財源及び流動性を確保するため、金融機関と締結している総額400,000千円の当座貸越契約による借入等、必要に応じ資金確保を行う体制をとっております。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、従来までの売上成長を重視した量の追求方針から、付加価値の追求による企業価値の向上へ方針を変えており、事業ポートフォリオの選択と集中による事業再編を行い、収益率の高い事業へ経営資源を集中させる方針です。併せて、プロダクト価値を向上させることで顧客継続率を高め、顧客数及び顧客単価の向上による売上高と営業利益の増大を図ります。
具体的な計画数値は以下のとおりとなります。
(単位:百万円)
2023年3月期
(実績)
2024年3月期
(計画)
売上高
4,769
3,746
営業利益又は営業損失(△)
(営業利益率)
△211
(△4.4%)
58
(1.5%)
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