【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、当連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。① 経営成績の状況当連結会計年度におけるグローバル経済は、前連結会計年度第4四半期に顕在化した新型コロナウイルス感染症の拡大が継続し、断続的な経済・社会活動の制限が実施されたことにより、個人消費や企業の生産活動などを中心に景気は低迷しました。一方で、自動車・半導体といった市場が回復基調に転じたことやステイホーム関連製品の需要が喚起されたことは、当社においては好材料となりましたが、全ての事業セグメントにおいて受注・販売が減少する結果となりました。このような状況のもと当連結会計年度の売上高は、第3四半期以降に回復基調となった自動車・半導体市場向け製品やステイホーム需要に支えられた製品の受注増加があり、第3四半期以降は前年同期比で増収に転じましたが、通期では新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、前年同期比4.1%(5,986百万円)減(以下の比較はこれに同じ)の139,055百万円となりました。利益面では、比較的好調に推移した製品の収益改善に加え固定費削減を中心とした原価低減策などにより、営業利益は、3,943百万円増の3,806百万円となりました。また経常利益は、3,770百万円増の3,846百万円、親会社株主に帰属する当期純損益は、固定資産の売却による特別利益もありましたが、早期退職支援制度の実施に伴う特別退職金、連結子会社における減損損失、プロジェクター事業の縮小に伴う費用や連結子会社における訴訟関連費用の計上により、1,114百万円増となったものの9,373百万円の損失となりました。当連結会計年度の対米ドルの平均円レートは106円となりました。 セグメント別の業績は、次のとおりです。 (エネルギー)民生用リチウムイオン電池は、新型コロナウイルス感染症の影響により増加したステイホーム需要が継続し想定以上の増収となりました。また、耐熱コイン形リチウム電池は自動車市場の回復基調を受け第3四半期以降は復調の兆しが見えていますが、スマートメーターを主用途とする筒形リチウム電池などとともに減収となったことにより、エネルギー全体の売上高は、1.0%(392百万円)減の37,811百万円となりました。営業利益は、民生用リチウムイオン電池の増益などにより、32.5%(811百万円)増の3,309百万円となりました。(産業用部材料)半導体市場の回復傾向により、半導体関連組込みシステムなどが増収となりました。また、塗布型セパレーターや自動車市場向け光学部品は自動車市場の回復基調を受け第3四半期以降は復調の兆しが見えていますが、粘着テープなどとともに減収となったことにより、産業用部材料全体の売上高は、6.6%(3,570百万円)減の50,843百万円となりました。営業利益は、自動車市場向け光学部品、塗布型セパレーターなどが減益となりましたが、半導体関連組込みシステムや電鋳部品の増益により、61.4%(545百万円)増の1,432百万円となりました。(電器・コンシューマー)新型コロナウイルス感染症拡大による衛生意識の高まりにより除菌消臭器などの健康関連製品が増収となりましたが、プロジェクター、シェーバーやドライヤーなどの理美容製品などが減収となり、電器・コンシューマー全体の売上高は、3.9%(2,024百万円)減の50,401百万円となりました。営業損益は、健康関連製品の増収に加え、プロジェクターなどの固定費削減により、2,587百万円増となったものの935百万円の損失となりました。
地域ごとの売上高は、次のとおりであります。 (日本)新型コロナウイルス感染症の影響により増加したステイホーム需要による民生用リチウムイオン電池の増収や衛生意識の高まりによる健康関連製品の増収、半導体市場の回復による半導体関連組込みシステムの増収などがありましたが、塗布型セパレーターに加え、粘着テープ、家庭用電気機器、アクセサリーなどコンシューマー製品が減収となったことにより、売上高は0.9%減の87,078百万円となりました。 (米国)プロジェクターが増収となりましたが、スマートメーターを主用途とする筒形リチウム電池、自動車市場向け光学部品などが減収となったことにより、売上高は0.7%減の11,778百万円となりました。 (欧州)補聴器を主用途とするコイン形リチウム二次電池が増収となりましたが、プロジェクター、耐熱コイン形リチウム電池、粘着テープ、家庭用電気機器などが減収となったことにより、売上高は18.4%減の9,507百万円となりました。 (アジア他)プロジェクター、自動車市場向け光学部品、耐熱コイン形リチウム電池、粘着テープ、家庭用電気機器などが減収となったことにより、売上高は8.9%減の30,692百万円となりました。
② 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
エネルギー
37,465
+4.2
産業用部材料
49,858
△9.0
電器・コンシューマー
46,704
△8.9
合計
134,027
△5.6
(注) 1.金額は、販売価格によっております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。3.生産実績には、完成品仕入にかかわる生産実績も含めており、仕入実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(百万円)
前年同期比(%)
エネルギー
1,845
+38.1
産業用部材料
2,062
△18.3
電器・コンシューマー
13,160
△14.5
合計
17,067
△11.4
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b 受注実績需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
エネルギー
37,811
△1.0
産業用部材料
50,843
△6.6
電器・コンシューマー
50,401
△3.9
合計
139,055
△4.1
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、以下の重要な会計方針が、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響等不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報をもとに検証等を行っております。
a 貸倒引当金当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
b たな卸資産当社グループは、たな卸資産の市場状況に基づく時価の見積額が原価を下回った場合に評価損を計上しております。
c 繰延税金資産当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するにあたっては、将来の課税所得を合理的に見積って検討しております。当社及び一部の国内連結子会社は、連結納税制度を適用しており、繰延税金資産の回収可能性の判断については、連結納税グループ全体の課税所得の見積りにより判断しております。
d 退職給付に係る負債退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。当社の年金制度においては、割引率は優良社債の市場利回りを退職給付の平均支給年数で調整して算出しております。なお、当連結会計年度末の退職給付債務に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。長期期待運用収益率は、年金資産の現在及び予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率を考慮しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に退職給付費用の一部として計上されます。なお、当期連結会計年度の長期期待運用収益率の算定の前提となる年金資産の構成割合は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (7)年金資産に関する事項」に記載のとおりであります。
e 減損損失当社グループは、主に管理会計上の区分を考慮して資産グループを決定し、将来キャッシュ・フローの回収額を見積った結果、十分な将来キャッシュ・フローが見込めない事業用資産、処分等の意思決定がなされた資産及び遊休資産について回収可能価額まで減額し、特別損失に計上しております。なお、当連結会計年度における減損損失の兆候の判定及び回収可能価額の算定については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※6減損損失及び※7事業構造改善費用」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 財政状態の分析
(a) 資産総資産は、前連結会計年度末比1.2%減(以下の比較はこれに同じ)の176,807百万円となりました。このうち流動資産は、主にリース投資資産及びたな卸資産が減少したものの、現金及び預金が増加したことにより、0.8%増の85,369百万円となり、総資産に占める割合は前連結会計年度の47.3%から48.3%となりました。一方、固定資産は、2.9%減の91,438百万円となり、総資産に占める割合は前連結会計年度の52.7%から51.7%となりました。セグメントごとの資産は、次のとおりであります。(エネルギー)エネルギーの資産は、8.1%増の33,269百万円となりました。このうち流動資産は、主に現金及び預金並びに売掛金及び受取手形の増加により、21.8%増の24,669百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の65.8%から74.2%となりました。一方、固定資産は、減損損失の計上や固定資産の処分などにより18.2%減の8,600百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の34.2%から25.8%となりました。(産業用部材料)産業用部材料の資産は、3.8%減の52,888百万円となりました。このうち流動資産は、主にたな卸資産が減少したものの現金及び預金の増加により1.9%増の25,826百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の46.1%から48.8%になりました。一方、固定資産は、主に減損損失の計上により8.6%減の27,062百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の53.9%から51.2%となりました。(電池・コンシューマー)電器・コンシューマーの資産は、22.3%減の42,555百万円となりました。このうち流動資産は、主にたな卸資産の減少により16.1%減の28,719百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の62.4%から67.5%となりました。一方、固定資産は、主に事業構造改善に伴う減損損失の計上により32.8%減の13,836百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の37.6%から32.5%となりました。(その他)当社グループの経営統括管理目的に保有している資産は25.4%増の48,095百万円となりました。
(b) 負債負債は、8.4%増の93,210百万円となりました。このうち流動負債は、主に短期借入金の減少したものの、未払費用の増加により21.4%増の48,975百万円となり、これにより流動比率は1.7倍に、また流動資産との差額である手持ち資金は36,394百万円となりました。一方、固定負債は、主に長期借入金の減少により3.0%減の44,235百万円となりました。(c) 純資産純資産は、10.0%減の83,597百万円となりました。主にその他の包括利益累計額が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失9,373百万円の計上及び資本剰余金の減少によるものです。また、自己資本比率は50.6%から45.9%となりました。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度から1,197百万円減少し、13,029百万円の収入となりました。これは、たな卸資産の増減額が前連結会計年度は2,707百万円の減少であったのに対し、当連結会計年度は4,530百万円の減少であったこと、仕入債務の増減額が前連結会計年度は3,004百万円の減少であったのに対し、当連結会計年度は852百万円の増加であったことによる資金の増加と、売上債権の増減額が前連結会計年度は9,441百万円の減少であったのに対し、当連結会計年度は464百万円の減少であったことによる資金の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度から20,137百万円増加し、8,039百万円の収入となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入が14,784百万円あったことによる資金の増加と、有形固定資産の取得による支出が6,268百万円あったことによる資金の減少によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度から10,097百万円減少し、11,888百万円の支出となりました。これは主に長期借入金が1,388百万円減少したこと、短期借入金が5,000百万円減少したこと、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出5,335百万円があったことによる資金の減少によるものです。これらのキャッシュ・フローに現金及び現金同等物に係る換算差額と、現金及び現金同等物の期首残高を合わせた当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末よりも10,377百万円増加し、32,795百万円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2,128百万円から、当連結会計年度は21,068百万円へと増加しました。当社グループは、資金の流動性を考慮して、資金運用については短期的な預金等とし、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用する方針であります。当社グループの運転資金需要は、製品製造のための材料及び部品の購入のほか、加工費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。当社グループの設備投資等の需要は成長が期待できる製品分野及び研究開発分野のほか、省力化、合理化及び製品の信頼性向上のための投資によるものです。当社グループは、事業拡大のための成長投資を進めており、これらの資金需要に対しては主に銀行借入にて賄っております。「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)当社グループが対処すべき課題及び経営戦略 e 資本効率性の向上」を達成するため、今後もレバレッジを活用し、資本構成の最適化を意識したバランスシートマネジメントを追求していきます。
c 経営成績の分析
(a) 売上高売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、前連結会計年度に対し、4.1%減の139,055百万円となりました。なお、為替レートは、前連結会計年度1ドル=109円、当連結会計年度1ドル=106円であります。
(b) 売上原価、販売費及び一般管理費売上原価は、売上高の減少が影響し、7.4%減の108,992百万円となりました。売上高に対する原価率は、前連結会計年度の81.2%から78.4%となりました。その結果、売上総利益は10.0%増の30,063百万円となり、売上高総利益率は、前連結会計年度の18.8%から21.6%となりました。また、販売費及び一般管理費は、主に新型コロナウイルスに伴う旅費及び交通費の減少並びにのれん及び識別可能資産の償却費の減少により、4.4%減の26,257百万円となりました。売上原価と販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は、主にプロジェクター関連(電器・コンシューマー関連)の研究開発費が減少したことにより10.5%減の7,934百万円となりました。なお、売上高に対する研究開発費の比率は前連結会計年度の6.1%から5.7%となりました。
(c) 営業利益又は営業損失営業損益は、売上原価率の減少及びのれん等の償却費の減少により、3,943百万円増の3,806百万円となりました。
(d) 営業外収益(費用)営業外収益(費用)は、前連結会計年度の213百万円の収益(純額)から、40百万円の収益(純額)となりました。受取利息から支払利息を減じた純額は、前連結会計年度の54百万円の収益(純額)に対し、150百万円の収益(純額)へと増加しました。
(e) 経常利益経常利益は、売上高が減少となったものの、売上原価率の減少及びのれん等の償却費の減少により、前連結会計年度の営業損失から営業利益へ改善したことにより、3,770百万円増の3,846百万円となりました。
(f) 特別利益(損失)特別利益(損失)は、プロジェクター事業の縮小や早期退職支援制度の実施に伴う事業構造改善費用の計上及び訴訟関連費用の計上により、前連結会計年度9,502百万円の損失(純額)に対し、11,544百万円の損失(純額)となりました。
(g) 税金等調整前当期純損失税金等調整前当期純損失は、1,728百万円減の△7,698百万円となりました。
(h) 法人税等法人税等は、一部連結子会社の連結納税制度加入時による資産の時価評価も影響し、144.4%増の1,799百万円となりました。非支配株主に帰属する当期純損益は449百万円減少の124百万円の損失となりました。
(i) 親会社株主に帰属する当期純損失親会社株主に帰属する当期純損失は、1,114百万円減の△9,373百万円となりました。1株当たり当期純損失は、前連結会計年度の△205.23円に対し△189.51円となりました。
d 経営戦略の現状と見通し当社グループは、当連結会計年度を事業改革の年と位置付け、事業ポートフォリオ改革や経営基盤の強化に取り組むとともに、2020年7月には経営の基本方針の見直しを行い、独自の強みである「アナログコア技術」に立脚した事業を成長の主軸と位置付け、すべてのステークホルダーに最高の価値を提供する「価値創出企業」となることをめざすこととしています。また、2021年6月に、2022年3月期から2024年3月期までの3年間の中期経営計画MEX23(Maximum Excellence 2023)を策定し、企業価値と利益成長を重視し「価値にこだわる」経営を実践することとしています。MEX23における2024年3月期の経営目標は、連結売上高1,250億円、連結営業利益率10%、ROIC 7%超及び配当性向30~40%としています。加えて、今後の当社グループの事業改革をさらに加速し、中長期的な成長を実現するため、2021年10月1日を効力発生日として、持株会社である当社が主要事業会社であるマクセル株式会社を吸収合併し、当社グループを強力に牽引する新たな経営体制を構築する計画としています。