【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)業績の状況
当第1四半期連結累計期間におけるわが国経済は、個人消費や設備投資が持ち直す等、全体として緩やかに回復しております。一方で、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなる等、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
当社グループが属する情報サービス産業においては、グローバル化、消費者ニーズの多様化及び国内労働力人口の減少等ビジネス環境の急速な変化や不確実性への対応を目的に、企業・行政のDXに対する意欲が高まり、IT投資を後押しすることから、引き続き成長が予想されております。
当社グループは、「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る。」をミッションに、50年を超えて培ったテクノロジーにより、金融業・流通小売業をはじめとする多種多様な業種向けシステム開発・運用等及びデータ連携サービスを提供しております。前連結会計年度にリリースしたiPaaS(クラウド型データ連携プラットフォーム)である「HULFT Square」を基盤として、より一層の事業構造変革を推し進めるべく、当連結会計年度は戦略として「4つのシフト」(事業シフト・技術シフト・組織シフト・人材シフト)を実行しております。
このような中、当第1四半期連結累計期間における当社グループの業績は、売上高は5,915百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益は629百万円(同27.7%増)、経常利益は648百万円(同30.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は367百万円(同9.2%減)となりました。
売上高は、企業・行政のDX化意欲の向上を受け、HULFT事業、データプラットフォーム事業及び流通ITサービス事業が拡大したこと等により、増収となりました。営業利益及び経常利益は、人的資本への費用投下が進んだ一方、売上高の増加及び「HULFT Square」に関わる開発費用の低減等により、増益となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、データプラットフォーム事業において減損損失を計上したこと等により、減益となりました。
当第1四半期連結累計期間におけるセグメント別の業績は次のとおりであります。以下、セグメント間取引については相殺消去しておりません。
なお、「HULFT Square」について、前連結会計年度までは新サービスの研究開発であったため全社費用としておりましたが、2023年2月にリリースしたことに伴い、当第1四半期連結会計期間より「データプラットフォーム事業」に区分しております。
① HULFT事業
HULFT事業は、国内データ連携ソフトウェアのスタンダードである当社の主力製品「HULFT」、「DataSpider」及び関連製品群の販売・サポートサービスを提供しております。
売上高は、サポートサービスの更新が順調に推移したこと等より、2,366百万円(前年同期比1.2%増)となりました。2023年6月末現在におけるサポートサービス契約本数は、前年同期に比べて、「HULFT」は2,584本増加し60,405本、「DataSpider」は435本増加し5,227本と順調に推移いたしました。営業利益は、売上高の増加等により、1,002百万円(同7.7%増)となりました。
② データプラットフォーム事業
データプラットフォーム事業は、当社の強みである「HULFT」「DataSpider」「HULFT Square」を活用し、企業内・企業間のシステムやデータとSaaSをつなぐことで、業務効率化、経営情報可視化による意思決定支援及び経営刷新に繋げる各種サービスを提供しております。
売上高は、企業のデータ連携基盤構築案件が順調に拡大したこと等により、599百万円(同23.7%増)となりました。一方で、サービスの立ち上げフェーズである「HULFT Square」の原価の発生等により、575百万円の営業損失(前年同期は261百万円の営業損失)となりました。
なお、一部提供サービスの収益が見込まれなくなったため、減損損失として特別損失に87百万円を計上しております。
③ 流通ITサービス事業
流通ITサービス事業は、流通小売業・航空業向けシステム開発・運用等を提供しております。
売上高は、流通小売業・航空業を中心にお客様のIT投資が回復してきたこと等により、790百万円(前年同期比33.9%増)となりました。営業利益は、売上高の増加等により、14百万円(前年同期は74百万円の営業損失)となりました。
④ フィナンシャルITサービス事業
フィナンシャルITサービス事業は、金融業向けシステム開発・運用等を提供しております。
売上高は、既存領域に関わる情報処理サービスの減少等により、2,159百万円(前年同期比11.3%減)となりました。営業利益は、売上高の減少等により、188百万円(同35.5%減)となりました。
(トピックス)
当社グループは、ミッション「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る。」を体現するため、2024年4月に「株式会社セゾンテクノロジー」へ商号変更をいたします。テクノロジーが持つ無限の可能性への誇りを基盤に、当社グループが第一線で提供してきた価値をさらに発展させて社会に届けていくとの決意を込めたものです。当第1四半期連結累計期間におけるテクノロジーに関する施策は以下のとおりです。
・大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)研究会発足 ※1
当社グループは、誰もが普通の言葉で簡単かつ安全にデータを活用できる未来の実現に向け、大規模言語モデルに関する全社的な研究会である「LLM Mavericks ※2」を発足いたしました。本研究会を通じて、先端テクノロジーに関する知見の蓄積や発展を加速させ、自社業務やお客様向け製品サービスへの早期活用を目指しております。
※1 大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)とは、非常に巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された言語モデルのこと
※2 Mavericksとは、新しいアイディアやアプローチを追求する個性的な人々のこと
・サイオステクノロジーとの協業強化
当社グループとサイオステクノロジー株式会社は、ノンプログラミング/ノーコードでシステム間のデータやアプリケーションをつなぐ「DataSpider」と高可用性ソリューション「LifeKeeper」で技術協力し、基幹業務系システムにおけるデータ連携自動化と安定した稼働を実現させる連携ソリューションを共同で推進することを発表いたしました。この協業強化の目的はユーザー企業の要望に応えることです。製品機能や性能についての相互理解を深めることで、ユーザー企業に対してより一層高品質なサポートを提供し続けてまいります。
・データサイエンティスト育成支援の経過公表
当社グループは、これまでのデータエンジニアリングで培ってきたノウハウを活かし、2019年より滋賀大学・帝国データバンクData Engineering and Machine Learning Center(以下、DEMLセンター)で学生のデータサイエンティスト育成を支援しております。DEMLセンター開設後、在籍学生数は約3年間で延べ44名になり、当社提供による「DataSpider」の研修は、同センター以外の学生も含め50名が受講しております。この中から27名がデータサイエンティストとして様々な企業・団体で活躍しております。
(TSR(株主総利回り))
当社グループは、目指す高収益企業にふさわしい株主還元を実現するためのベンチマーク目標として、TSRを経営指標の1つに設定しております。
当社グループの事業構造は、システム開発・運用と自社パッケージソフトウェア販売とがバランスしており、情報技術産業の中でも類似の事業構造を持つ企業が少ないと考えます。したがって、ベンチマークとするTSRは一定数の上場企業を含み、恣意性を排除した対象とするため、GICS(世界産業分類基準)における当社が属する産業グループ(4510:ソフトウェア・サービス)に同様に属する国内上場企業のTSRとしております。
評価期間は、2019年3月末を基準(100%)として評価をしており、その推移は次のとおりです。
2020年3月末
2021年3月末
2022年3月末
2023年3月末
2023年6月末
当社
119.2%
160.5%
149.6%
151.1%
152.4%
同業他社
平均
87.0%
135.6%
121.9%
124.4%
134.5%
なお、当社TSRは業界平均を大きく上回って推移しております。これは、当社も含めたDXに関わる銘柄がコロナ禍を契機にTSRを押し上げたことに加えて、当社がかねてより進めている受託開発型からサービス提供型への事業構造変革が、当社の将来の利益成長につながることを資本市場に理解いただけているためと推察されます。当社は引き続き資本市場との対話に努めてまいります。
(2)財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末より267百万円増加し21,566百万円となりました。主な増加要因は、現金及び預金が同417百万円増加したこと、流動資産のその他に含まれる前払費用が同255百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、売上債権の回収により受取手形、売掛金及び契約資産が同435百万円減少したこと、減損損失の計上及び減価償却等により有形及び無形固定資産が同148百万円減少したこと等によるものであります。
負債合計は同535百万円増加し、7,092百万円となりました。主な増加要因は、前受金が同834百万円増加したこと等によるものであります。また、主な減少要因は、賞与支給により賞与引当金が同308百万円減少したこと等によるものであります。
純資産合計は同267百万円減少し、14,474百万円となりました。この要因は、利益剰余金が、剰余金処分による配当財源への割当てにより同728百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により同367百万円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末より2.1ポイント減少し、67.1%となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間における当社グループが支出した研究開発活動の総額は34百万円であり、製品・サービスの研究開発によるものであります。
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