【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴い停滞している経済活動の持ち直しの動きがみられたものの、世界的な海上輸送の混乱や原燃料価格の上昇、及び地政学リスクの高まりなどにより、先行き不透明な状況が続きました。
このような状況のもと、当社グループにおきましては、長期経営ビジョン(2021年3月期〜2030年3月期)及び中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)を推進し、企業価値の向上に向けた諸施策に全力で取り組みました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ57億6千4百万円増加し、2,513億5千万円となりました。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ68億9千6百万円減少し、803億9千万円となりました。
また、純資産は前連結会計年度末に比べ126億6千1百万円増加し、1,709億5千9百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高1,728億1千1百万円(前年度比13.3%増)、営業利益168億9千3百万円(前年度比41.6%増)、経常利益264億5千6百万円(前年度比60.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益166億9千2百万円(前年度比31.6%増)となりました。
セグメントの経営成績は次のとおりです。
化学品事業は、売上高475億9千5百万円(前年度比8.4%増)、営業利益27億9千6百万円(前年度比13.1%増)となりました。
農業化学品事業は、売上高587億5千6百万円(前年度比16.2%増)、営業利益94億7千1百万円(前年度比71.8%増)となりました。
商社事業は、売上高393億5千2百万円(前年度比10.3%増)、営業利益15億2千万円(前年度比29.8%増)となりました。
運輸倉庫事業は、売上高42億7千5百万円(前年度比4.2%減)、営業利益6億7千3百万円(前年度比1.8%減)となりました。
建設事業は、売上高130億7千9百万円(前年度比59.2%増)、営業利益18億9千4百万円(前年度比65.7%増)となりました。
その他は、売上高97億5千1百万円(前年度並み)、営業利益5億7千5百万円(前年度比45.9%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は5億8千6百万円増加し、184億8千4百万円となりました。その主な内訳は、税金等調整前当期純利益242億1千7百万円(非キャッシュ項目である持分法による投資利益78億4千1百万を含む)に加え、減価償却費90億7千8百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入66億6千万円等があった一方、有形固定資産の取得による支出108億7千8百万円、棚卸資産の増加111億6百万円、配当金の支払額59億7千9百万円、法人税等の支払額35億7千8百万円があったこと等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
化学品事業(百万円)
47,567
103.3
農業化学品事業(百万円)
29,393
106.8
報告セグメント計(百万円)
76,961
104.6
その他(百万円)
9,381
89.5
合計(百万円)
86,342
102.7
(注)金額は平均売上実績単価により算出しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.製品・商品仕入実績
当連結会計年度の製品・商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
化学品事業(百万円)
4,899
88.6
農業化学品事業(百万円)
8,585
130.3
商社事業(百万円)
32,746
146.5
報告セグメント計(百万円)
46,231
134.1
その他(百万円)
2,082
108.9
合計(百万円)
48,313
132.8
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
建設事業
15,360
164.1
11,732
124.1
(注)セグメント間の内部振替後の数値によっております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
化学品事業(百万円)
47,595
108.4
農業化学品事業(百万円)
58,756
116.2
商社事業(百万円)
39,352
110.3
運輸倉庫事業(百万円)
4,275
95.8
建設事業(百万円)
13,079
159.2
報告セグメント計(百万円)
163,059
114.2
その他(百万円)
9,751
100.3
合計(百万円)
172,811
113.3
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣はこの判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。また、当社グループは、特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a.固定資産の減損処理
当社グループは主として独立してキャッシュ・フローを生み出す製品グループとして、工場別営業部門別に資産のグルーピングを行っております。また、一部の連結子会社については独立した事業ごとに資産のグルーピングを行っております。収益性の低下等により、投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額となりますが、正味売却価額につきましては不動産鑑定評価額等を基礎として合理的に算定された価格とし、使用価値につきましては将来キャッシュ・フローに基づき算定しております。
なお、当連結会計年度において減損損失9億4千1百万円を計上しております。主たる減損損失については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8 減損損失」に記載のとおりです。
b.退職給付費用及び債務
当社グループ従業員の退職給付費用及び債務は、簡便法を採用している一部の連結子会社を除き、割引率・将来の昇給率・退職率・死亡率及び年金資産の収益率等の前提条件を決定のうえ、数理計算結果に基づき算定しております。退職給付債務等の前提条件のうち、割引率については長期国債の期末における利回りに基づき決定しております。 なお、実際の結果が前提条件と異なる場合や、将来前提条件が変更された場合には、その影響額は数理計算上の差異として累積され、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により処理することとしております。
c.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは繰延税金資産の計上について、将来の課税所得計画を慎重に見積り、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。 繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合は、当該判断を行った連結会計年度において繰延税金資産を取崩し費用として計上いたします。同様に、現時点で評価性引当額として繰延税金資産を計上していない部分について回収可能と判断した場合は繰延税金資産を計上し、当該判断を行った連結会計年度において利益を増加させることとなります。
d.環境対策引当金
当社グループは環境対策引当金の計上について、土壌汚染対策工事費用など、環境対策等に係る支出に備えるため、今後発生すると見込まれる金額を計上しております。
なお、新型コロナウイルス感染症による当社グループへの影響は、収束時期等の見通しが不透明な状況であるものの、現時点においては、会計上の見積りに及ぼす影響は限定的であると考えております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
(a)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、Alkaline S.A.S.の連結除外に伴う有形固定資産の減少や受取手形、売掛金及び契約資産が減少したものの、棚卸資産の増加や、持分法による投資利益を計上したことなどによる投資有価証券の増加により、前連結会計年度末に比べ57億6千4百万円増加し、2,513億5千万円となりました。
負債につきましては、Alkaline S.A.S.の連結除外に伴う支払手形及び買掛金の減少や借入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ68億9千6百万円減少し、803億9千万円となりました。
また、純資産は前連結会計年度末に比べ126億6千1百万円増加し、1,709億5千9百万円となりました。この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は67.3%となりました。
(b)経営成績
当連結会計年度は、農業化学品事業や化学品事業、及び商社事業において販売が増加するとともに、建設事業においてプラント建設工事が増加したこと、また原燃料価格の大幅な上昇を踏まえて、販売価格の改定を実施したこと等により、売上高は1,728億1千1百万円(前年度比13.3%増)、営業利益は168億9千3百万円(前年度比41.6%増)となりました。
経常利益は、持分法による投資利益が増加したこと等により、264億5千6百万円(前年度比60.2%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社であったAlkaline S.A.S.の全株式の譲渡に伴い特別利益を計上したこと、また構造改革の実施に伴い特別損失を計上したこと等により、166億9千2百万円(前年度比31.6%増)となりました。
(c)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営に重要な影響を与える要因には、市場動向、為替動向、原燃料価格の動向等があります。
ケミカルマテリアルにおきましては、連結子会社であったAlkaline S.A.S.が当社連結から除外されたことに伴い、売上高が減少となるものの、引き続き原燃料価格の上昇に伴う価格改定に取り組むとともに、樹脂添加剤「NISSO-PB」や、機能性ポリマー「液状1,2-SBS」、及び医薬品添加剤「NISSO HPC」等の拡販に取り組みます。
アグリビジネスにおきましては、自社開発農薬である殺菌剤「ミギワ」「ピシロック」や殺ダニ剤「ダニオーテ」のさらなる拡販に取り組みます。
当社グループでは、長期経営ビジョン(2021年3月期~2030年3月期)及び2023年5月10日に開示しました中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)の基本戦略である高付加価値事業の拡大と、資産効率性を重視した構造改革と成長投資により企業価値を向上させるべく、諸施策を全力で実行に移してまいります。
なお、2024年3月期より、グループ内セグメントの最適化に伴い、セグメント区分を「化学品事業」「農業化学品事業」「商社事業」「運輸倉庫事業」「建設事業」「その他」の6区分から、「ケミカルマテリアル」「アグリビジネス」「トレーディング&ロジスティクス」「エンジニアリング」「エコソリューション」の5区分に変更しております。
当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす主要なリスクにつきましては、「3.事業等のリスク」に記載のとおりです。
c.資本の財源及び資金の流動性
(a)資金需要
資金需要の主なものは、設備資金、運転資金、借入金の返済及び利息の支払い並びに配当金及び法人税等の支払いであります。
(b)資金の源泉
主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金により対応しております。
なお、運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行2行と総額45億円のコミットメントライン契約を締結しております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、法律を遵守し健全で透明な企業経営を行うことを基本に、「化学」を通じ優れた製品を提供することにより社会の発展に貢献するとともに、お客様、株主・投資家、取引先、従業員及び地域社会等のステークホルダーの皆様からの期待と信頼に応え、また、環境に配慮した事業活動を行うことを経営理念としております。
この経営理念のもと、当社は独自の特色ある技術の活用により高付加価値製品の開発を進め、グローバルな視野で化学を中心に事業を展開する技術指向型の企業グループを目指しております。
当連結会計年度におきましては、親会社株主に帰属する当期純利益166億9千2百万円、ROE10.3%となりました。
中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)におきましては、2026年3月期の数値目標を親会社株主に帰属する当期純利益170億円、ROE10%としております。引き続き目標達成に向け、企業価値の向上に向けた諸施策を全力で実行に移してまいります。
e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[化学品事業]
カセイカリ及び周辺事業の構造改革の実施により工業薬品やエコケア製品の販売が減少したものの、医薬品・工業用殺菌剤や化成品、及び機能材料の販売が増加しました。また、原燃料価格の大幅な上昇に伴う販売価格の改定を実施しました。
この結果、当連結会計年度の売上高は475億9千5百万円(前年度比8.4%増)、営業利益は27億9千6百万円(前年度比13.1%増)となりました。
工業薬品は、販売価格の改定によりカセイソーダが増加したものの、構造改革の実施によりカセイカリや炭酸カリが減少したこと、また青化ソーダが減少したこと等により、減収となりました。
化成品は、二次電池材料や感熱紙用顕色剤が増加したことにより、増収となりました。
機能材料は、樹脂添加剤「NISSO-PB」が減少したものの、KrFフォトレジスト材料「VPポリマー」が伸長したこと等により、増収となりました。
エコケア製品は、販売価格の改定により重金属固定剤「ハイジオン」が増加したものの、水処理剤「日曹ハイクロン」の輸出向けが減少したことにより、減収となりました。
医薬品・工業用殺菌剤は、医薬品添加剤「NISSO HPC」が伸長したことにより、増収となりました。
[農業化学品事業]
海外における旺盛な需要により、殺菌剤や殺虫剤・殺ダニ剤の輸出向けが伸長しました。
この結果、当連結会計年度の売上高は587億5千6百万円(前年度比16.2%増)、営業利益は94億7千1百万円(前年度比71.8%増)となりました。
殺菌剤は、「トップジンM」「ピシロック」「パンチョ」の輸出向けが伸長したことにより、増収となりました。
殺虫剤・殺ダニ剤は、殺虫剤「モスピラン」「ロムダン」や殺ダニ剤「ダニオーテ」の輸出向けが伸長したことにより、増収となりました。
除草剤は、「コンクルード」の国内向けが伸長したことにより、増収となりました。
[商社事業]
各種有機・無機薬品の増加により、当連結会計年度の売上高は393億5千2百万円(前年度比10.3%増)、営業利益は15億2千万円(前年度比29.8%増)となりました。
[運輸倉庫事業]
運送業が減少したことにより、当連結会計年度の売上高は42億7千5百万円(前年度4.2%減)、営業利益は6億7千3百万円(前年度比1.8%減)となりました。
[建設事業]
プラント建設工事の増加により、当連結会計年度の売上高は130億7千9百万円(前年度比59.2%増)、営業利益は18億9千4百万円(前年度比65.7%増)となりました。
[その他]
当連結会計年度の売上高は97億5千1百万円(前年度並み)、営業利益は5億7千5百万円(前年度比45.9%減)となりました。
(3) 次期の見通し
今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症による影響から経済活動が回復に向かう一方で、原燃料価格が引き続き高値で推移する見込みであること、また地政学リスクの高まりや為替変動リスク等により、先行き不透明な状況が続くものと予想されます。
このような経営環境の中ではありますが、当社グループといたしましては、長期経営ビジョン(2021年3月期~2030年3月期)及び中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)の達成に向け、企業価値の向上に向けた諸施策を全力で実行に移してまいります。
ケミカルマテリアルにおきましては、連結子会社であったAlkaline S.A.S.が当社連結から除外されたことに伴い、売上高が減少となるものの、引き続き原燃料価格の上昇に伴う価格改定に取り組むとともに、樹脂添加剤「NISSO-PB」や、機能性ポリマー「液状1,2-SBS」、及び医薬品添加剤「NISSO HPC」等の拡販に取り組みます。
アグリビジネスにおきましては、自社開発農薬である殺菌剤「ミギワ」「ピシロック」や殺ダニ剤「ダニオーテ」のさらなる拡販に取り組みます。
次期連結会計年度の業績予想につきましては、売上高1,640億円、営業利益147億円、経常利益195億円、親会社株主に帰属する当期純利益155億円を予測しております。
また、為替レートは1ドル=130円、1ユーロ=140円を想定しております。