【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され経済活動の正常化に向け緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方で、ウクライナ情勢に起因する資源価格の高騰、世界的な物価上昇及び円安方向への為替変動による国内の物価上昇がみられ、景気の先行きは不透明な状況となっております。このような状況の中、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンの下、主に印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」、テレビCM・動画の広告プラットフォーム「ノバセル」を運営してまいりました。
「ラクスル」では、新規立ち上げしたアパレル等の事業が順調に成長しており、事業の伸長に貢献しております。また、ユーザーインターフェースを見直すなど顧客の利便性向上にも努めております。「ノバセル」ではテレビCMの効果分析ツールである「ノバセルアナリティクス」の機能を拡充するとともに、Web広告にも裾野を広げており顧客に多くの選択肢を提供できるようになりました。さらに、いずれの事業でも将来を見据え、登録ユーザー数増加や認知度向上に向けた広告宣伝投資を行っております。なお、当連結会計年度において、ハコベル株式会社を新たに設立し、株式譲渡及び第三者割当増資を実施し関連会社化したことにより「ハコベル」をセグメントから除外しております。
また、2023年7月20日開催の取締役会において、代表取締役の異動及び新経営執行体制への移行を決定し、2023年8月1日から新経営体制への移行が完了しております。第二創業期として、複数事業を運営・最適化しながら、内製の事業立ち上げだけではなく、連続的なM&Aによる拡張を通して事業のさらなる成長へとつなげてまいります。本件の詳細につきましては、2023年7月20日に公表いたしました、「代表取締役の異動及び新経営執行体制に関するお知らせ」をご参照ください。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は41,018百万円(前年同期比20.7%増)、営業利益は1,765百万円(前年同期比281.3%増)、経常利益は1,168百万円(前年同期は経常損失167百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,329百万円(前年同期比30.1%増)となりました。
セグメント毎の状況は、次のとおりであります。
ラクスルセグメント
「ラクスル」においては、国内経済活動の正常化への動きを受け、堅調に拡大しており、取扱商品や法人向けサービスの拡大等、継続的にサービスの拡充に努め、大企業を中心とした顧客の拡充を図っております。また、広告施策の更なる見直しを実施したことで、セグメント利益の拡大につながりました。株式会社ダンボールワンも堅調に売上高が伸長しており事業の拡大に寄与しております。
この結果、売上高は37,751百万円(前年同期比38.2%増)、セグメント利益は3,701百万円(前年同期比23.3%増)となりました。なお、2023年8月1日に当社は株式会社ダンボールワンを吸収合併しております。
ノバセルセグメント
「ノバセル」においては、大企業への顧客層シフト及びSaaS事業の拡大により、業績の持ち直しを図りました。引き続き顧客の新規開拓や継続利用の促進に注力するとともに、効果分析ツールの新商品のローンチ等、顧客にとって価値のあるサービスの提供を続けてまいります。
この結果、売上高は2,652百万円(前年同期比6.1%減)、セグメント損失は15百万円(前年同期はセグメント損失131百万円)となりました。
②当期の財政状態の概況
a.流動資産
当連結会計年度末における流動資産は20,589百万円となり、前連結会計年度末に比べ929百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が962百万円、売上拡大により商品及び製品が80百万円増加、会社分割による資産の移転等により受取手形及び売掛金が184百万円減少したことによるものであります。
b.固定資産
当連結会計年度末における固定資産は12,076百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,102百万円増加いたしました。これは主に投資有価証券の時価評価により投資有価証券が4,391百万円増加、のれんの償却によりのれんが495百万円、繰延税金負債との相殺等により繰延税金資産が773百万円減少したことによるものであります。
c.流動負債
当連結会計年度末における流動負債は8,292百万円となり、前連結会計年度末に比べ518百万円増加いたしました。これは主に売上及び利益の増加により未払法人税等が466百万円、未払消費税等が80百万円、買掛金が65百万円それぞれ増加したことによるものであります。
d.固定負債
当連結会計年度末における固定負債は10,463百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,083百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が1年内返済予定の長期借入金へ振替わったことにより1,965百万円減少、投資有価証券の時価評価により繰延税金負債が892百万円増加したことによるものであります。
e.純資産
当連結会計年度末における純資産合計は13,909百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,596百万円増加いたしました。これは主に自己株式の取得により299百万円減少した一方、投資有価証券の時価評価によりその他有価証券評価差額金が3,014百万円増加、株式報酬費用の計上により新株予約権が411百万円増加、さらに親会社株主に帰属する当期純利益を1,329百万円計上したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は38.5%(前連結会計年度末は29.3%)となりました。
③当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ962百万円増加し、当連結会計年度末には14,644百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,902百万円(前連結会計年度は837百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を2,502百万円、子会社株式売却益を1,588百万円、減価償却費を231百万円、株式報酬費用を652百万円計上したことに加え、売上債権が418百万円、仕入債務が442百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は297百万円(前連結会計年度は2,808百万円の使用)となりました。これは主に、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入685百万円、投資有価証券の取得による支出155百万円、敷金の差入による支出275百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,238百万円(前連結会計年度は2,206百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出2,013百万円、自己株式の取得による支出299百万円があったことによるものであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当社グループで行う事業は、インターネットを利用して、顧客と提携先の印刷会社や広告代理店を繋ぐプラットフォーム事業であり、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
②受注実績
当社グループで行う事業は、インターネットを利用して、顧客と提携先の印刷会社や広告代理店を繋ぐプラットフォーム事業であり、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年8月1日
至 2023年7月31日)
販売高(百万円)
前年同期比
増減額(百万円)
増減率(%)
ラクスル
37,751
10,425
38.2
ノバセル
2,652
△171
△6.1
ハコベル
-
△3,478
△100.0
報告セグメント計
40,403
6,774
20.1
その他
614
262
74.6
合計
41,018
7,037
20.7
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しております。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のためこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループが財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度の売上高は、41,018百万円(前年同期比20.7%増)となりました。国内経済活動の正常化への動きを受け、各事業は堅調に拡大しております。
b.売上原価、売上総利益
当連結会計年度の売上原価は、28,722百万円(前年同期比18.8%増)となりました。この結果、売上総利益は12,295百万円(前年同期比25.4%増)となりました。当社グループは、売上総利益を「プラットフォームの価値を示す、付加価値の総和」として最重要の指標と位置付けております。セグメント毎に利益率が異なるため全社合計での絶対額の増加及び対前年同期比の増加率を重視しております。
「ラクスル」においては、プライシングの最適化を実施し、サプライヤーの生産性や原価改善支援、資材の共同調達による原価改善を行いました。「ノバセル」においては、SaaS事業が拡大をしております。これらの要因により売上総利益率の改善及び増加に寄与しました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、10,529百万円(前年同期比12.7%増)となりました。これは主に、「ラクスル」において登録ユーザー数増加に向けた広告宣伝投資をコントロールしながら行ったことによるものであります。この結果、営業利益は1,765百万円(前年同期比281.3%増)となりました。
③キャッシュ・フローの分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループは、継続的な成長のため、認知度の向上及びユーザー数の拡大に努めてまいりました。今後も広告宣伝投資を実施することにより新規ユーザーを獲得するとともに、高い定着性を有する顧客基盤を構築すべく、システム開発を継続して行う方針であります。また、連続的なM&Aによる拡張を通して事業のさらなる成長へとつなげていく所存です。これらの資金需要につきましては、必要な資金を自己資金、金融機関からの借入、社債の発行及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。
なお、当連結会計年度末においては14,644百万円の現金及び預金を有しており、自己資本比率も38.5%と適正水準を維持しており財務健全性は高い状態にあります。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境の変化、シェアリングによる生産体制、人材の確保・育成、法的規制、自然災害等のリスク、情報システムリスク、訴訟に係るリスク等、様々な要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
また、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され経済活動の正常化に向け緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方で、ウクライナ情勢に起因する資源価格の高騰、世界的な物価上昇及び円安方向への為替変動による国内の物価上昇がみられ、景気の先行きは不透明な状況が続いております。当社グループにおいては2024年7月期においても引き続き不透明な状況にあると仮定しておりますが、今後状況が変化した場合には、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因であると認識しております。
そのため、当社グループは、外部環境の変化に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保することで、経営成績に重要な影響を与える可能性のあるリスク要因を分散、低減し、適切に対応を行ってまいります。
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