【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大による個人消費の大幅な冷え込み、世界的な社会・経済活動の停滞から急速に悪化いたしました。段階的な経済活動の再開により、一部回復の兆しが見られましたが、新規感染者数の増加に伴う飲食店などへの営業時間短縮要請などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。このような経営環境の下、当社グループは、グループの持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上を図るべく、中長期戦略「長期ビジョン100」で掲げた、重要課題である5本の柱を軸として、「中期経営計画2023」の目標達成に向けた取組みを引き続き進めてまいりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は、77,712百万円(前期比3.0%増)となりました。利益面では、事業再編やコロナ禍での活動自粛による販売費及び一般管理費の減少により、営業利益は2,221百万円(前期比26.7%増)、経常利益は2,248百万円(前期比28.8%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は1,147百万円(前期比3.9%増)となりました。
当社が重視する経営指標は次のとおりとなりました。
前連結会計年度(令和元年12月期)
当連結会計年度(令和2年12月期)
中期経営計画目標値(令和5年12月期)
売上高
75,444百万円
77,712百万円
90,000百万円
経常利益
1,745百万円
2,248百万円
3,000百万円
売上高経常利益率
2.3%
2.9%
3.3%
1株当たりの配当金
7円
7円
10円
ROE
5.7%
5.8%
9.0%
セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。
<酒類事業> 酒類事業におきましては、国内の人口減少や少子高齢化、飲酒機会の減少により市場の伸張が期待しにくく、価格競争も激化しております。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、アルコール消毒液の需要が増大したほか、飲用シーン別では、飲食店向けの焼酎・清酒等が減少する一方、巣ごもり消費の拡大による家飲み需要の高まりにより、チューハイなどのRTD分野が拡大しております。このような環境の下、売上高は70,412百万円(前期比4.5%増)となり、利益面につきましては、1,281百万円の営業利益(前期比300.9%増)となりました。 和酒部門のうち焼酎につきましては、本格焼酎の「博多の華」シリーズ、甲類乙類混和焼酎の「すごむぎ」「すごいも」シリーズが好調に推移し、売上高は増加いたしました。発売40周年を迎えた「博多の華」シリーズでは、「博多の華ブランド40周年大感謝祭」として販促キャンペーンを大々的に行い、日頃のご愛顧に感謝するとともに、新たなファン層の獲得に向け、SNSを活用した情報発信を行ってまいりました。その他、本格焼酎「博多の華 麦カップ 12%」が、10年以上販売されている本格焼酎カテゴリーの商品の中で売上NO.1であったとして、「日経POSセレクション2020 売上NO.1ロングセラー」に選出されました。 チューハイなどのRTD分野につきましては、「NIPPON PREMIUM」シリーズや「直球勝負」シリーズ、PB商品が好調に推移し、売上高は増加いたしました。「NIPPON PREMIUM」シリーズにおきましては、期間限定商品「福岡県産あまおう」を発売した他、Instagram上で画像投稿キャンペーンを実施するなど、消費者との直接的なコミュニケーションを重視した販促キャンペーンを実施いたしました。また、平成28年熊本地震の復興支援の一環として、熊本城の修復再建に向け、「NIPPON PREMIUM 熊本県産すいかのチューハイ」の売上の一部を熊本市に寄付する取組みを実施いたしました。 清酒につきましては、純米吟醸酒でありながらお手頃な価格を実現した「福徳長 米だけのす~っと飲めてやさしいお酒 純米吟醸酒パック」が好調に推移いたしました。しかしながら、本年10月の酒税法改正による酒税減税は追い風にはならず、新型コロナウイルス感染症拡大による業務用商品の需要減退や競争激化もあり、売上高は減少いたしました。
販売用アルコールにつきましては、令和元年に増強工事が完了した清水工場のアルコール蒸留設備の稼働開始に伴い、販売活動を強化したことに加え、新型コロナウイルス感染症拡大に伴うアルコール消毒液の需要増大などにより、原料となる工業用アルコールの販売が大幅に伸張したことによって、売上高が大きく増加いたしました。 洋酒部門につきましては、家飲みが増え、家庭でも居酒屋のような本格的なチューハイを自由なアレンジで楽しみたいというニーズから、「酎ハイ専科 レモンサワーの素」や「ウイスキー 香薫」が伸張しましたが、一部不採算分野からの撤退に伴うワインの減少等により、売上高は減少いたしました。また、近年注目が集まっているクラフトジンでは、本年6月に発売した「秋田杉GIN」が“秋田らしい”県産食品を選ぶ「あきた食のチャンピオンシップ2020」の菓子・飲料部門において銀賞を受賞するなど、地域の特色を活かした商品展開が評価されております。
<加工用澱粉事業> 加工用澱粉事業につきましては、シリアル食品用やビール用が増加したものの、菓子食品用や副産物が減少したため、売上高は3,582百万円(前期比3.4%減)となりました。しかしながら、原価の低減や販売費及び一般管理費の減少もあり、営業利益は148百万円(前期比8.3%増)となりました。
<酵素医薬品事業> 酵素医薬品事業につきましては、海外向け酵素の競争激化や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う健康診断減少による診断薬の減少、生産支援ビジネスの受託件数減少により、売上高は3,293百万円(前期比17.4%減)となりました。営業利益は591百万円(前期比45.8%減)となりました。
<不動産事業> 不動産事業につきましては、売上高は351百万円(前期比3.4%増)、営業利益は186百万円(前期比2.7%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績生産実績をセグメント別アイテム(主要製品)別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
アイテム(主要製品)
当連結会計年度(自 令和2年1月1日
至 令和2年12月31日)
前期比(%)
酒類
焼酎
100,448
(KL)
99.8
チューハイ
60,753
(KL)
117.0
清酒
11,477
(KL)
90.4
合成清酒
10,160
(KL)
77.8
アルコール
117,572
(KL)
132.3
みりん
4,908
(KL)
82.8
洋酒
7,819
(KL)
110.0
その他
4,708
(KL)
95.0
計
317,845
(KL)
111.5
加工用澱粉
加工用澱粉
60,456
(T)
99.0
(注) 酵素医薬品事業については数量等の算定が困難であるため、記載しておりません。また、アルコールについては、他の酒類原料用も含んだ総生産数量であります。なお、不動産事業、その他の事業については生産実績がないため、記載しておりません。
②受注状況当社グループは一部の製品について受注生産を行っておりますがウエイトも小さく、大部分の製品は販売計画に基づく生産計画に従った見込生産を主体としております。
③販売実績販売実績をセグメント別アイテム(主要製品)別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
アイテム(主要製品)
当連結会計年度(自 令和2年1月1日 至 令和2年12月31日)(百万円)
前期比(%)
酒類
和酒
焼酎
39,357
100.8
チューハイ
10,336
119.6
清酒
3,540
87.5
合成清酒
2,066
79.9
販売用アルコール
9,642
141.3
みりん
742
87.3
65,685
105.9
洋酒
4,130
87.4
その他
595
96.2
70,412
104.5
加工用澱粉
3,582
96.6
酵素医薬品
3,293
82.6
不動産
351
103.4
その他
72
141.7
合 計
77,712
103.0
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
三井食品㈱
8,945
11.9
9,110
11.7
伊藤忠食品㈱
8,899
11.8
8,174
10.5
国分グループ本社㈱
8,675
11.5
7,964
10.2
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)財政状態 当連結会計年度の総資産につきましては、51,724百万円となり、前連結会計年度末と比較し843百万円の減少となりました。これは主に有形固定資産の減少等によるものであります。
負債につきましては、29,643百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,084百万円の減少となりました。これは主に設備関係電子記録債務の減少等によるものであります。 純資産につきましては、22,081百万円となり、前連結会計年度末と比較して240百万円の増加となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものであります。
(3)キャッシュ・フロー 当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は910百万円となり、前連結会計年度末と比較して282百万円の減少となりました。 営業活動によるキャッシュ・フローにおける資金の増加額は、4,762百万円(前期比834百万円増)となりました。これは主に仕入債務の減少額423百万円等がありましたものの、税金等調整前当期純利益1,799百万円、減価償却費1,751百万円、未払消費税等の増加額1,073百万円等を計上したことによるものであります。 投資活動によるキャッシュ・フローについては、固定資産の取得による支出3,642百万円等がありましたので、3,550百万円(前期比1,265百万円減)の資金減少となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローについては、長期借入金の返済による支出750百万円、配当金の支払額425百万円等がありましたので、1,494百万円(前期比203百万円増)の資金減少となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性の分析①キャッシュ・フロー「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フロー」に記載しております。なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。
平成30年12月期
令和元年12月期
令和2年12月期
自己資本比率(%)
35.8
37.6
38.7
時価ベースの自己資本比率(%)
39.4
45.5
47.1
キャッシュ・フロー対有利子負債率(年)
1.7
1.4
1.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
43.1
57.0
72.3
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。※営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
②資金調達当社グループは設備投資計画等に基づき、必要な資金を主に銀行借入により調達しております。一時的な余資は、預金等の流動性の高い金融資産に限定して運用し、また、短期的な運転資金を銀行等金融機関からの借入により調達しております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。なお、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりであります。
(a)繰延税金資産の回収可能性当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価する際に、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しておりますが、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、事業環境の変化などにより見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ、課税所得が減少した場合、繰延税金資産が取り崩され、税金費用を計上する可能性があります。
(b)固定資産の減損当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として事業単位を基準としてグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。