【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
※第1四半期連結会計期間から、セグメントを変更しています。
また、前年同期との比較数値については、前年同期の数値を新たなセグメントに組み替えて表示しています。
なお、「調整後営業損益」は、営業損益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標です。また、「親会社の所有者に帰属する調整後四半期損益」は、親会社所有者に帰属する四半期損益から営業損益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。
(1)財政状態および経営成績の状況
世界経済は、欧米の急速なインフレや金融政策の引き締め、中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う行動制限等の影響により減速しました。日本経済は、エネルギー価格上昇や急速な為替変動で物価上昇が続いたものの、個人消費を中心に行動制限緩和に伴う国内需要の回復で底堅く推移しました。
このような事業環境のもと、当第3四半期連結累計期間の売上収益は、2兆2,693億円と前年同期に比べ1,729億円(8.2%)増加しました。これは、社会公共事業を除くすべての事業で増収となったことによるものです。
収益面につきましては、営業損益は、前年同期に比べ98億円改善し、571億円の利益となりました。これは、ネットワークサービス事業が悪化したものの、売上収益の増加等によりエンタープライズ事業や社会基盤事業などが改善したことなどによるものです。また、調整後営業損益は、前年同期に比べ75億円改善し、834億円の利益となりました。
税引前四半期損益は、営業損益が改善したことなどにより、前年同期に比べ85億円改善し、576億円の利益となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期損益は、税引前四半期損益が改善したことなどにより、前年同期に比べ14億円改善し、264億円の利益となりました。また、親会社の所有者に帰属する調整後四半期損益は、前年並みの443億円の利益となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。なお、セグメント別の売上収益については、外部顧客への売上収益を記載しています。
a.社会公共事業
社会公共事業の売上収益は、地域産業向けや公共向けは増加したものの、メディア向けや消防・防災向けが減少したことなどにより、前年同期に比べ42億円(1.5%)減少し、2,861億円となりました。
調整後営業損益は、費用の効率化などにより、前年同期に比べ9億円改善し、125億円の利益となりました。
b.社会基盤事業
社会基盤事業の売上収益は、航空宇宙・防衛向けや連結子会社の売上が増加したことなどにより、前年同期に比べ353億円(8.5%)増加し、4,497億円となりました。
調整後営業損益は、売上の増加に加え、不採算案件の抑制などにより、前年同期に比べ73億円改善し、381億円の利益となりました。
c.エンタープライズ事業
エンタープライズ事業の売上収益は、製造業向けや流通・サービス業向けが増加したことなどにより、前年同期に比べ178億円(4.3%)増加し、4,315億円となりました。
調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前年同期に比べ77億円改善し、421億円の利益となりました。
d.ネットワークサービス事業
ネットワークサービス事業の売上収益は、5G事業の増加に加え、特許のライセンス収入があったことなどにより、前年同期に比べ109億円(3.1%)増加し、3,610億円となりました。
調整後営業損益は、海外5Gの戦略的受注案件を含む一過性の費用計上、5G関連の投資費用の増加などにより、前年同期に比べ164億円悪化し、6億円の損失となりました。
e.グローバル事業
グローバル事業の売上収益は、サービスプロバイダー向けの増加に加え、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンス、海洋システムが増加したことなどにより、前年同期に比べ683億円(19.3%)増加し、4,228億円となりました。
調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前年同期に比べ34億円改善し、215億円の利益となりました。
f.その他
その他の売上収益は、前年同期に比べ449億円(16.4%)増加し、3,181億円となりました。
調整後営業損益は、前年同期に比べ57億円改善し、71億円の利益となりました。
財政状態につきましては、当第3四半期連結会計期間末の総資産は、3兆8,892億円と前年度末に比べ1,275億円増加しました。流動資産は、売上債権の回収があったものの、棚卸資産の増加などにより、前年度末に比べ1,012億円増加し、1兆9,379億円となりました。非流動資産は、為替変動に伴うのれんの増加などにより、前年度末に比べ263億円増加し、1兆9,513億円となりました。
負債は、2兆903億円と前年度末に比べ1,152億円増加しました。これは、資材費の支払等による営業債務及びその他の債務の減少や賞与の支払い等による未払費用の減少などがあったものの、社債の発行等による社債及び借入金の増加などによるものです。有利子負債残高は、前年度末に比べ1,673億円増加の7,647億円となり、デット・エクイティ・レシオは0.50倍(前年度末比0.11ポイント悪化)となりました。また、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前年度末に比べ1,925億円増加の3,591億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は、0.24倍(前年度末比0.13ポイント悪化)となりました。
資本は、配当金の支払や自己株式の取得があったものの、在外営業活動体の換算差額の増加に伴うその他の資本の構成要素の増加があったことなどにより、前年度末に比べ122億円増加し、1兆7,989億円となりました。
この結果、親会社の所有者に帰属する持分は1兆5,185億円となり、親会社所有者帰属持分比率は39.0%(前年度末比1.2ポイント悪化)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、595億円の支出で、運転資本の悪化などにより、前年同期に比べ648億円の悪化となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、321億円の支出で、前年同期に比べ6億円の改善となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、916億円の支出となり、前年同期に比べ642億円の悪化となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出や、リース負債の返済による支出などがあったものの、短期借入金の増加や社債の発行による収入などにより、598億円の収入となりました。
現金及び現金同等物に係る為替変動による影響は、67億円の増加となりました。
上記の結果、現金及び現金同等物は、4,056億円となり、前年度末に比べ251億円減少しました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、NECグループが定めた経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、NECグループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループの主な研究開発活動の成果は、次のとおりです。
・人工知能(AI)技術を活用した建設現場・工場における安全・安心な作業環境の実現に貢献するため、AIが学習するデータに曖昧な情報を活用できる「弱ラベル学習」技術を発展させ、曖昧な情報に起因する学習の不安定さを克服することで、AIを活用した画像認識・対象物の検知を行う際に必要となる学習データの作成作業を大幅に簡素化できる技術を開発(その他)
(注)本技術は、国立研究開発法人理化学研究所と共同で開発したものです。
・AIの世界的な開発競争が激化する中で当社の競争優位性を維持・強化し、顧客やパートナーとの共創により先進的な社会価値を創出していくため、最新のハイエンドGPUサーバと先進的なソフトウェア群を密に結合する独自の構築技術を活用することで、高性能かつ利便性の高いAI研究用スーパーコンピュータを開発し、一部システムの利用を開始(その他)
(注)2023年3月までに本システムの構築を完了させ、AI研究用スーパーコンピュータとしては国内企業で最大規模の計算能力を有するシステムとなる予定です。
・インフラ施設管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた取り組みの一環として、衛星レーダによるリモートセンシングで得られた変位データと橋の構造や気温の変化を学習させたAIを用いて橋の状態を遠隔から解析し、従来発見が困難であった橋の「異常なたわみ」をミリ単位の精度で検知することで、橋の崩落につながる重大損傷を早期に発見することができる技術を開発(社会基盤事業)
・労働力不足の課題を抱える作業現場などにおいて現場全体の作業内容をデジタル化し働き方改革や生産性向上に貢献する技術として、作業現場に設置したカメラの映像から、人物の姿勢特徴、使用している道具等の種別情報、位置情報、周辺環境など表現形式の異なる多様な特徴を認識し、その関係性を深層学習の手法を用いて統合的に解析することで、多人数が行き交う環境においても多種多様な作業内容をリアルタイムで高精度に認識する技術を開発(エンタープライズ事業)
・テーマパークの入口や鉄道の自動改札などでの混雑緩和を実現する技術として、服装の特徴で照合する人物照合技術と動きの特徴で追跡する技術を併用しリアルタイムに多人数を追跡しながら高精度な顔認証を行うことで、多人数が自然に歩いて入場している状態でも1台のカメラで1分間に100人以上認証可能な「ゲートレス生体認証システム」を開発(グローバル事業)
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループ全体の研究開発費は、87,171百万円であり、セグメントごとの内訳は、次のとおりです。
社会公共事業
6,944百万円
社会基盤事業
7,300百万円
エンタープライズ事業
8,484百万円
ネットワークサービス事業
27,220百万円
グローバル事業
16,105百万円
その他
21,118百万円