【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況当社は、2023年5月1日より社名を「SCAT株式会社」に変更し、さらに10月に東京本社オフィスを移転し、新たなスタートを切っております。当連結会計年度(2022年11月1日から2023年10月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症対策の緩和により社会経済活動の正常化を背景に、景気の回復の兆しがみられました。しかし、為替市場の急激な円安、ウクライナ情勢の長期化、光熱費や原材料価格の上昇による物価高騰など、依然として先行きは不透明な状況が続いております。当社のコア事業の属する情報通信業界では、国策として推進されているDX(デジタルトランスフォーメーション)を背景に、企業競争力と情報セキュリティの強化、オンラインを前提とした業務改善等のIT活用により、企業のIT投資は中長期的に増加する傾向にあると見込まれております。当社は、「ICTの提供による中小企業支援を通じた社会貢献」をパーパス(存在意義)とし、「Plus1」の付加価値を提供しております。経済産業省より「DX認定事業者」「IT導入支援事業者」に選定され、さらに中小企業の経営力強化を支援する「経営革新等支援機関」の認定により、新たなビジネスの創造とお客様支援に寄与しております。美容サロン向けICT事業では、提供する製品やコンテンツサービスがIT導入補助金の対象になり、ユーザーのDX化需要に応えております。さらに、電子帳簿保存法やインボイス制度(2023年10月導入)等の法改正対応による需要見込み増など、追い風と言える市場環境が継続しております。中小企業向けビジネスサービス事業では、中小企業支援に関する専門知識や実務経験が評価され、国の認定を受けた「経営革新等支援機関」となりました。これにより、クライアントの経営相談や事業計画の策定及び実行支援等のコンサルティングサービスの案件が徐々に増えております。介護サービス事業では、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ5類感染症に移行されたものの、引き続き高い緊張感をもって感染症対策を継続しております。特に、当連結会計年度では、介護付き有料老人ホームにおいて持病悪化に伴う入院やご逝去による空室が増え、さらに食材や水道光熱費等の高騰により、損益に大きな影響を受けております。以上の結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高2,742,420千円(前連結会計年度比6.0%の増加)、営業利益227,866千円(同1.7%の増加)、経常利益230,837千円(同3.5%の増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は157,936千円(同56.9%の増加)となりました。なお、特別利益につきましては、旧東京本社オフィスの立ち退きに伴う家賃免除益34,956千円を計上しております。特別損失につきましては、事務所移転費用14,276千円並びに固定資産除却損3,050千円を計上したほか、減損損失5,738千円を計上しております。セグメント別の業績は、以下のとおりであります。なお、セグメント利益は、営業利益に基づいております。
a 美容サロン向けICT事業美容サロン向けICT事業では、収益の柱であるシステム販売(物販)に、保守、コンテンツ、及び新たな課金型サービス等のストック収益の上積みを進めております。今期は新型コロナウイルス感染症の影響が残るなかで販売代理店との同行販売や展示会が徐々に解禁され営業活動も活発化し、「IT導入補助金の採択率の向上」「インボイス制度対応」「DX推進」等の追い風もあり、当初見通しを上回る実績での着地となりました。システム販売(物販)では、美容サロン向け商品として、ユーザーのカスタマイズ要望にお応えするオンプレミス型POSシステムの「Sacla PREMIUM」と、マルチデバイスでSaaS型システムの「BEAUTY WORKS」の2本の基幹システムを提供しております。2023年度も「IT導入支援事業者」に継続して選定され、IT導入補助金を活用した「Sacla PREMIUM」の受注が当初見通し以上の実績で着地いたしました。また、半導体不足に伴う商品品薄により延期していた大口ユーザーの納品が計画的に進んでおります。
美容ディーラー向け販売管理システム「i-SCAP/EX」においては、クラウド型電子請求書発行システム「楽楽明細」を提供する株式会社ラクス(東証プライム:3923)とのアライアンス(販売パートナー契約)により、インボイス制度、電子帳簿保存法に対応した電子請求等のシステム提供を開始しております。これにより美容ディーラーのバックオフィス業務の改善と生産性向上と併せて、販売代理店化につなげ、新規ユーザー獲得推進による売上も増加しております。課金型ストックビジネスでは、2023年1月に新コンテンツ「LINEミニアプリ」連携がスタートしたことにより、これまで課金型ストックビジネス構築を牽引してきたスマホアプリ(Salon Appli)や「Google で予約 (Reserve with Google)」、楽天スーパーポイント連携等の、WEBコンテンツ収益で更なる積み上げをしてまいりました。また今後の事業展開に向けて、理美容業界における新たなサービスの提供に向けて、ヘアサロン「モッズ・ヘア」を運営管理する株式会社エム・エイチ・グループ(東証スタンダード:9439)との連携を進めております。一方、セグメント利益においては、円安に伴う仕入れ等の原価増や、社名変更及び東京オフィス移転等による一時的な費用負担がありましたが、好調な売上により堅調に推移いたしました。以上の結果、当連結会計年度の売上高は1,684,035千円(前連結会計年度比12.8%の増加)、セグメント利益(営業利益)は164,186千円(同13.4%の増加)となりました。
b 中小企業向けビジネスサービス事業中小企業向けビジネスサービス事業では、中小企業の経営支援のため、会計・経理業務を中心に各種サービスを提供しております。コア業務の会計サービスは、月次決算等の財務報告を中心に、資金繰りサポートや記帳及び給与計算等の事務代行(BPO)サービスの提供、並びに関連する会計・給与・販売管理ソフトのITシステム運用支援、及びリスクマネジメント(生保・損保代理店業務)を行っております。また、経済産業省より「経営革新等支援機関」に認定され、お客様の経営課題の改善のための経営力向上計画策定や事業再構築支援等のコンサルティングサービスを提供しております。これらのサービス提供により既存顧客との関係はより強固なものとなり、さらに紹介パートナー契約企業、地域の金融機関や士業とのアライアンスにより安定した新規取引先の獲得につながっております。今後も、インボイス制度や2024年1月からの電子帳簿保存法に関する各クライアントへのサポート対応のほか、事業承継や経営革新等支援機関としてのコンサルティングサービスの提供など各種サービスの拡充に努めてまいります。以上の結果、当連結会計年度の売上高は313,059千円(前連結会計年度比1.1%の減少)、セグメント利益(営業利益)は11,838千円(前連結会計年度は753千円の損失)となりました。 c 介護サービス事業介護サービス事業では、介護付き有料老人ホームを3施設(栃木県佐野市、群馬県館林市、長野県小諸市)及び在宅支援事業(通所介護・短期入所生活介護・訪問介護・居宅介護支援・健康促進事業)を1施設(長野県小諸市)運営しております。介護付き有料老人ホームでは、新規入居者は例年以上にあるものの、持病悪化によるご逝去や長期入院治療等による退去が重なったことに加え、地域の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い入居までの期間が長くなるなどの要因から空室が増え入居稼働率が低下し収入減となりました。また、在宅支援事業では、デイサービスの新規利用者が増えコロナ禍前の稼働率に戻りつつあるものの、ショートステイでは近隣の医療機関や介護施設等において新型コロナウイルス感染が断続的に発生しており、他施設の複数介護サービスを利用しているお客様によるキャンセルが増えるなどの影響がありました。さらに、光熱費の高騰、食材を含む物価上昇に伴う諸経費の増加により、収益に大きな影響がありました。以上の結果、当連結会計年度の売上高は726,021千円(前連結会計年度比4.4%の減少)、セグメント利益(営業利益)は42,427千円(同38.6%の減少)となりました。
② 財政状態の状況 a 流動資産当連結会計年度末における流動資産の残高は1,520,400千円(前連結会計年度末比527,541千円の減少)となりました。これは主として、現金及び預金の減少(同556,583千円の減少)、売掛金の増加(同25,231千円の増加)によるものであります。 b
固定資産当連結会計年度末における固定資産の残高は1,455,652千円(前連結会計年度末比33,284千円の増加)となりました。これは主として、投資その他の資産のその他に含まれる差入保証金の増加(同41,724千円の増加)、建物及び構築物(純額)の増加(同33,597千円の増加)、ソフトウエアの減少(同10,150千円の減少)、ソフトウエア仮勘定の減少(同25,482千円減少)によるものであります。
c 流動負債当連結会計年度末における流動負債の残高は523,396千円(前連結会計年度末比132,356千円の減少)となりました。これは主として、短期借入金の減少(同200,000千円の減少)、未払法人税等の増加(同44,141千円の増加)によるものであります。
d 固定負債当連結会計年度末における固定負債の残高は608,133千円(前連結会計年度末比28,976千円の減少)となりました。これは主として、長期借入金の減少(同61,680千円の減少)、資産除去債務の増加(同27,590千円の増加)によるものであります。
e 純資産当連結会計年度末における純資産の残高は1,844,522千円(前連結会計年度末比332,924千円の減少)となりました。これは主として、自己株式の増加(同462,182千円の増加)、利益剰余金の増加(同125,920千円の増加)によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末の総資産は2,976,052千円(前連結会計年度末比494,257千円の減少)となりました。
③
キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ556,583千円減少し1,209,125千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果得られた資金は339,742千円(前連結会計年度は253,204千円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益242,728千円、減価償却費152,302千円、法人税等の支払額50,532千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は135,709千円(前連結会計年度は112,321千円の獲得)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出85,109千円、差入保証金の差入による支出41,799千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動の結果使用した資金は760,616千円(前連結会計年度は326,802千円の使用)となりました。これは主に自己株式の取得による支出462,801千円、短期借入金の返済による支出200,000千円、長期借入金の返済による支出63,680千円、配当金の支払額32,082千円によるものであります。
④
生産、受注及び販売の状況
a
生産実績当連結会計年度における生産金額をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)
売上原価(千円)
前年同期比(%)
美容サロン向けICT事業
928,121
19.9
中小企業向けビジネスサービス事業
184,149
4.0
介護サービス事業
531,671
△2.2
その他
11,981
29.2
合計
1,655,924
10.1
(注) セグメント間取引については相殺消去しております。
b
販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
美容サロン向けICT事業
1,684,035
12.8
中小企業向けビジネスサービス事業
313,059
△1.1
介護サービス事業
726,021
△4.4
その他
19,303
△0.4
合計
2,742,420
6.0
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。2.主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
c
受注実績当社グループの販売品目は、受注生産形態をとらないため、該当事項はありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容当社グループの経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)
連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(固定資産の減損)当社グループでは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたって、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能性まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたって、慎重に検討を行っておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)当社グループでは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収可能額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
(のれんの評価)のれんの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
②
経営成績の分析当連結会計年度における経営成績は、売上高につきましては2,742,420千円、売上総利益1,086,495千円、営業利益227,866千円、経常利益230,837千円、親会社株主に帰属する当期純利益は157,936千円となりました。 a
売上高当連結会計年度の売上高は、2,742,420千円(前連結会計年度比6.0%の増加)となりました。売上高の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」をご参照ください。 b
売上原価当連結会計年度の売上原価は、1,655,924千円(前連結会計年度比10.1%の増加)となりました。
c
販売費及び一般管理費当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、858,628千円(前連結会計年度比0.1%の減少)となりました。
d
営業外損益当連結会計年度の営業外収益は、8,269千円(前連結会計年度比228.4%の増加)となりました。営業外費用は、5,298千円(同49.2%の増加)となりました。 e 特別損益当連結会計年度の特別利益は34,956千円(前連結会計年度比51.2%の減少)となりました。これは、旧東京本社オフィスの立ち退きに伴う家賃免除益34,956千円によるものであります。特別損失は、23,065千円(前連結会計年度比83.0%の減少)となりました。これは主として、東京本社移転に伴う事務所移転費用14,276千円、減損損失5,738千円によるものであります。 ③
財政状態の分析財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」をご参照ください。 ④
キャッシュ・フローの分析各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウエア開発に伴う製造費用の他、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。必要な資金については、自己資金及び借入金による資金調達を基本としております。資金の流動性については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑥ 経営上の目標の達成状況当社の収益目標である自己資本利益率(ROE)10%に対して、当連結会計年度における自己資本利益率(ROE)は7.9%となりました。引き続き、厳しい市場環境に屈することなく、企業価値を高め、持続的な成長を図ってまいります。
⑦ 経営成績に重要な影響を与える要因について当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、業界環境、事業内容、法的規制等様々なリスク要因があると認識しております。
⑧ 経営者の問題認識と今後の方針について当社グループが今後、持続的な成長を果たすためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。これらの課題に対し常に最大限入手可能な情報に基づき、現在及び将来の事業環境を認識し最適且つ迅速な対応に努めていく方針であります。
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