【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローならびに財政状態(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。(1)
経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行などに伴い、経済活動が徐々に正常化し、緩やかな景気回復が続いております。一方で、中国を中心とした海外の景気減速や、燃料や原材料価格の高騰などによる物価高、及び地政学的リスクの高まり等により、先行きは依然として不透明な状況となっております。このような情勢の下、当社グループにおきましては、企業価値の向上に向け、中期経営計画「Create the Future ~新たな可能性へのチャレンジ~」(2021年10月期~2023年10月期)にて策定した重点施策の遂行に全力で取り組んでまいりました。
この結果、売上高は、161,002百万円となり、前連結会計年度と比べて15,699百万円(10.8%)の増加となりました。また、利益面では、次のとおりとなりました。営業利益は、14,089百万円となり、前連結会計年度と比べて1,416百万円(11.2%)の増加となりました。経常利益は、24,115百万円となり、前連結会計年度と比べて545百万円(2.3%)の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、18,024百万円となり、前連結会計年度と比べて1,694百万円(10.4%)の増加となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。 1) 農薬及び農業関連事業農薬及び農業関連事業の売上高は129,466百万円となり、前連結会計年度と比べて17,036百万円(15.2%)の増加となりました。営業利益は14,805百万円となり、前連結会計年度と比べて1,740百万円(13.3%)の増加となりました。
2) 化成品事業化成品事業の売上高は22,472百万円となり、前連結会計年度と比べて2,532百万円(10.1%)の減少となりました。営業利益は528百万円となり、前連結会計年度と比べて372百万円(41.3%)の減少となりました。
3) その他その他全体の売上高は9,064百万円となり、前連結会計年度と比べて1,195百万円(15.2%)の増加となりました。営業利益は848百万円となり、前連結会計年度と比べて211百万円(33.2%)の増加となりました。
② 財政状態の状況当連結会計年度末の総資産は226,939百万円で、前連結会計年度末と比べ22,334百万円の増加となりました。流動資産が9,158百万円増加し、固定資産が13,176百万円増加しました。流動資産の増加は商品及び製品ならびに現金及び預金の増加が受取手形、売掛金及び契約資産の減少を上回ったこと等によるもの、固定資産の増加は投資有価証券ならびに建物及び構築物の増加等によるものです。負債は87,094百万円で、前連結会計年度末と比べ4,485百万円の増加となりました。流動負債が8,819百万円増加し、固定負債が4,334百万円減少しました。流動負債の増加は短期借入金の増加が支払手形及び買掛金ならびに未払法人税等の減少を上回ったこと等によるもの、固定負債の減少は長期借入金の減少等によるものです。純資産は139,845百万円で、前連結会計年度末と比べ17,850百万円の増加となりました。この結果、自己資本比率は58.6%、1株当たり純資産額は1,105円55銭となりました。
③ キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは、4,762百万円の増加(前年同期は1,159百万円の減少)となりました。これは、税金等調整前当期純利益23,320百万円及び売上債権の減少14,087百万円等の資金の増加に対し、棚卸資産の増加16,422百万円、持分法による投資利益8,664百万円及び法人税等の支払額8,224百万円等の資金の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、10,099百万円の減少(前年同期は7,823百万円の減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出8,692百万円及び投資有価証券の取得による支出1,178百万円等の資金の減少によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、6,864百万円の増加(前年同期は5,615百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の増加15,243百万円の資金の増加に対し、長期借入金の返済による支出4,280百万円及び配当金の支払額3,835百万円等の資金の減少によるものです。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末残高に比べ4,500百万円増加し、26,572百万円となりました。
④生産、受注及び販売の状況1) 生産実績 当連結会計年度における生産実績を各セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
農薬及び農業関連事業
50,627
101.6
化成品事業
19,703
95.2
その他
1,553
101.9
合計
71,883
99.8
(注)1.生産金額は販売価格をもって算出しております。 2.各セグメントの区分に基づき開示しております。
2) 受注状況 当連結会計年度におけるその他事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
その他
2,874
57.9
1,135
47.0
3) 販売実績 当連結会計年度における販売実績を各セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
農薬及び農業関連事業
129,466
115.2
化成品事業
22,472
89.9
その他
9,064
115.2
合計
161,002
110.8
(注)1.各セグメントの区分に基づき開示しております。 2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
全国農業協同組合連合会
24,265
16.7
24,723
15.4
BASF AGROCHEMICAL PRODUCTS B.V.
15,542
10.7
22,909
14.2
FMC Corporation
-
-
20,184
12.5
3.前連結会計年度のFMC Corporationの販売実績については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。当社グループは、連結財務諸表を作成するに当たり、繰延税金資産の回収可能性について、特に重要な見積りを行っております。この連結財務諸表作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しており、繰延税金資産の回収可能性につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容1) 経営成績(売上高)売上高は、農薬の海外輸出及び国内販売が好調に推移した結果、161,002百万円(前連結会計年度比10.8%の増加)となりました。(営業利益)売上総利益も農薬及び農業関連事業が好調に推移したことにより36,661百万円(前連結会計年度比7.2%の増加)となりました。また、販売費及び一般管理費は、人件費の増加や新化学研究所への移転費用の発生等により22,572百万円(前連結会計年度比4.8%の増加)となりました。以上の結果、営業利益は14,089百万円(前連結会計年度比11.2%の増加)となり、増益となりました。なお、営業利益率は8.8%で前連結会計年度比0.1ポイントの増加となりました。(経常利益)経常利益は、一過性要因の持分法による投資利益等により24,115百万円(前連結会計年度比2.3%の増加)となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益)親会社株主に帰属する当期純利益は、18,024百万円(前連結会計年度比10.4%の増加)となりました。
(セグメント別の状況) (農薬及び農業関連事業)国内向けは、水稲用殺菌剤「ディザルタ」を含む箱処理剤、水稲用除草剤「エフィーダ剤」の販売が好調に推移しましたが、販売先の在庫調整の影響により前連結会計年度並みとなりました。海外向けは、畑作用除草剤「アクシーブ剤」がアルゼンチンでの外貨不足による輸入制限により、同国向けの出荷が減少したものの、北米を中心にその除草効果の高さと良好な市場環境による需要の増加から出荷が大幅に伸長し、前連結会計年度の業績を大幅に上回りました。以上の結果、農薬及び農業関連事業の売上高は129,466百万円、前連結会計年度比17,036百万円(15.2%)の増加となりました。営業利益は14,805百万円、前連結会計年度比1,740百万円(13.3%)の増加となりました。 (化成品事業)半導体の需要回復の遅れにより、主力のビスマレイミド類や一部のクロロキシレン系化学品の出荷が減少しました。以上の結果、化成品事業の売上高は22,472百万円、前連結会計年度比2,532百万円(10.1%)の減少となりました。営業利益は売上高の減少に加え、原燃料価格の高騰や減価償却費の増加等により、528百万円、前連結会計年度比372百万円(41.3%)の減少となりました。 (その他)物流事業が堅調に推移したことに加え、建設業において前期からの繰越工事の進捗により大幅な売上増となった結果、その他の売上高は、9,064百万円、前連結会計年度比1,195百万円(15.2%)の増加となりました。営業利益は848百万円、前連結会計年度比211百万円(33.2%)の増加となりました。
2) 財政状態当連結会計年度末の総資産は226,939百万円で、前連結会計年度末に比べ22,334百万円の増加となりました。流動資産が9,158百万円増加し、固定資産が13,176百万円増加しました。流動資産の増加は商品及び製品ならびに現金及び預金の増加が受取手形、売掛金及び契約資産の減少を上回ったこと等によるもの、固定資産の増加は投資有価証券ならびに建物及び構築物の増加等によるものです。負債は87,094百万円で、前連結会計年度末に比べ4,485百万円の増加となりました。流動負債が8,819百万円増加し、固定負債が4,334百万円減少しました。流動負債の増加は短期借入金の増加が支払手形及び買掛金ならびに未払法人税等の減少を上回ったこと等によるもの、固定負債の減少は長期借入金の減少等によるものです。純資産は139,845百万円で、前連結会計年度末に比べ17,850百万円の増加となりました。この結果、自己資本比率は58.6%、1株当たり純資産額は1,105円55銭となりました。
3) キャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、4,762百万円の増加(前年同期は1,159百万円の減少)となりました。これは、税金等調整前当期純利益23,320百万円及び売上債権の減少14,087百万円等の資金の増加に対し、棚卸資産の増加16,422百万円、持分法による投資利益8,664百万円及び法人税等の支払額8,224百万円等の資金の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、10,099百万円の減少(前年同期は7,823百万円の減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出8,692百万円及び投資有価証券の取得による支出1,178百万円等の資金の減少によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、6,864百万円の増加(前年同期は5,615百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の増加15,243百万円の資金の増加に対し、長期借入金の返済による支出4,280百万円及び配当金の支払額3,835百万円等の資金の減少によるものです。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末残高に比べ4,500百万円増加し、26,572百万円となりました。
4) 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、原燃料調達や価格の動向、為替動向、市場動向、国内外の法令や政治・経済動向、ESG課題への対応、人的資本に係る対応の影響等があります。資材調達につきましては、サプライチェーンの安定化と適正な在庫管理、委託先・調達先との関係強化等、生産と販売のバランスの調整、物流体制の最適化に努め、為替の影響によるリスクヘッジを含めた安定的な調達に取り組んでおります。また、当社グループをはじめサプライチェーン全体のホワイト物流推進運動への協力のため、発注の早期化を含めた資材調達計画の立案、実行を進めます。市場の変化に対しましては、国内販売部門において、市場動向の把握によるマーケティング戦略に基づく新規導入剤の早期最大化を行うとともに、「エフィーダ剤」や「ベンスルフロンメチル剤」等の自社原体含有剤の拡販を進めます。海外販売部門においては、畑作用除草剤「アクシーブ剤」の混合剤開発支援による販売拡大に取り組んでおります。研究開発部門では、新規高性能殺ダニ剤「バネンタ剤」、果樹やバラの根頭がん腫病防除用の微生物農薬「エコアーク」の開発のほか、「バイオスティミュラント」の開発等を推進しております。また、「みどりの食料システム戦略」やEUの「Farm to Fork戦略」への対応として、環境や省力化に配慮した新たな製品・パッケージの開発や技術の創出に取り組んでおります。化成品の開発では、グループ化成品事業の連携強化による高付加価値の新規事業の創生と新技術の事業化に取り組んでおります。国内外の法令や政治・経済動向等につきましては、情報入手に努めるとともに、関係会社や開発・販売提携会社と連携し情報共有を図ることで対応を行っております。ESG課題への対応につきましては、気候変動・環境負荷の低減のため、当社グループの温室効果ガス排出量を2030年度に2019年度比30%減とすることを目標に取り組んでおります。人的資本に係る対応につきましては、期待する人財像を確保するための人事課題を深掘りし、人財戦略ビジョンを明確に打ち出すとともに、課題別に人事施策を策定し、取り組みを進めております。なお、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスクにつきましては、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。
5) 資本の財源及び資金の流動性当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等に係る研究開発費や開発途中の剤の生産設備の設置及び既存剤の生産効率化に係る設備投資であります。これらを主に自己資金ならびに金融機関からの借入金により調達しております。金融機関からの借入金については、取引金融機関との間でコミットメントライン契約(シンジケート方式)を締結し、安定的な資金調達の体制を構築しております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は、46,579百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は26,572百万円であり、資金の流動性を確保しております。
6) 目標とする経営指標の達成状況等当社グループは、2020年12月に2021年10月期を初年度とする中期経営計画「Create the Future ~新たな可能性へのチャレンジ~」(2021年10月期~2023年10月期)を策定し、各事業において「研究領域、事業領域の拡大」「販売ルートの多様性確保」「コスト競争力の確保」「ESGを重視した企業活動」の4つの重要方針に基づく重点施策の遂行に取り組んでまいりました。最終年度となる当連結会計年度の売上は、農薬及び農業関連事業が好調に推移した結果、161,002百万円となり、中期経営計画の売上目標126,000百万円を達成することができました。営業利益は、増収に伴う利益増等により14,089百万円となり、中期経営計画の営業利益目標9,800百万円を達成いたしました。自己資本利益率(ROE)は14.5%となり、中期経営計画の目標として設定した7.3%を大きく上回りました。
2024年10月期は、当社グループの中期経営計画に基づく施策を着実に実行し、連結売上高167,000百万円、営業利益12,000百万円の達成、さらには経営基本方針にある「社会の持続的発展に貢献できる企業集団」の実現を目指してまいります。また、業績や目標達成だけでなく、全てのステークホルダーの幸せを追求し、社会貢献や環境対策なども含めたサステナビリティ経営を推進してまいります。