【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類相当に移行したことに伴う個人消費の回復や、外国人によるインバウンド消費の回復等により、緩やかな回復基調となりました。堅調な企業業績を背景に日経平均株価もバブル後の最高値を更新する等、株式市場は活況を呈した一方で、欧州や中東の地政学的な問題に代表されるグローバリゼーションの減速や、少子高齢化による国内活力の低下等、今後の動向は依然として不透明な状況が続いております。
保険業界においては、ITや医療技術の進歩を背景として、引き続き保険商品の多様化と高度化が進むと同時に、真にお客さまの役に立つ情報の提供並びにコンサルティングの実施等、お客さま本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の実現が求められております。
このような状況下、当社グループは「人とテクノロジーを深化させ進化する会社」を標榜し、あらゆる保険ニーズに対応できる「保険業界のプラットフォーム」と、OMO(Online Merges with Offline.=オンラインとオフラインの融合)時代に相応しいエコシステム(ビジネス生態系)を構築すべく、日々新たな挑戦を行っております。
具体的には、自社開発のビデオ通話システム「Dynamic OMO」により、対面と非対面の垣根をなくし、オフラインと同等のオンライン保険相談を実現してまいります。2022年7月からは、大阪大学の石黒浩教授が代表を務めるスタートアップ企業「AVITA」と提携し、同社が開発したアバターを活用して、お客さまのご相談にアバターコンサルタントがお答えするサービスを展開しております。「Dynamic OMO」とアバターを組み合わせた結果、オンライン保険相談におけるコンサルタント指名予約ではアバターが最も支持されております。
保険会社や保険代理店向けには、アバターの販売も行っており、既に複数社でアバターを導入いただく等、保険業界全体のDX化にも貢献しております。また、2023年6月にChatGPTを用いた「AI アバター接客トレーニングサービス(β)」を導入し、AIによる社員教育を開始する等、先進的な技術の活用にも取り組んでおります。
保険業界初となるオンライン専門の営業拠点「保険市場 スマートコンサルティングプラザ」や、お客さまがコンサルタントを指名して相談予約できる「コンサルタント指名予約サービス」は、当社グループが提供する保険相談の幅広い選択肢のひとつとして定着し、多くのお客さまからご好評をいただいております。当社グループは今後も、オンライン保険相談のさらなる利便性向上を追求し、保険募集プロセスのDX化を推進することで、収益力のさらなる向上を図ってまいります。
また、自動車保険をはじめとする損害保険分野についても取り組みの強化を継続し、生命保険に限らず、多様な収益チャネルを確立することで、安定的な経営基盤の構築を目指してまいります。
保険業界の共通プラットフォームシステム「Advance Create Cloud Platform」(以下「ACP」という。)の開発についても、引き続き推進してまいります。ACPは保険会社と乗合保険代理店、お客さまの情報を相互に連携し、保険商品の検討からお申し込み、保全手続きまでを一括して管理・運用できるシステムです。ACPの普及により、ペーパーレス化と事務負担の大幅な軽減が期待できます。ACPの主要機能である顧客管理システム「御用聞き」、申込共通プラットフォームシステム「丁稚(DECHI)」、保険証券管理アプリ「folder」、ビデオ通話システム「Dynamic OMO」は、いずれも導入したお客さまからご好評をいただいており、さらなる機能拡充を進めております。特に「Dynamic OMO」については、保険代理店や保険会社をはじめ、クレジットカード会社など他業種のお客さまにも導入いただいております。これらのシステムの販売により、サブスクリプションモデルとしてのストック収入の確保及び協業事業の拡大を目指します。
さらに、当社グループはLINE、SMS等のテキストコミュニケーションツールの活用により、お客さまとのよりスムーズなコンタクトを実現しております。このようなノウハウを、他の保険会社や保険代理店の顧客に対する保全業務を請け負うBPO事業にも活用し、業容の拡大及び保険業界の課題であるCRMの継続・改善にも取り組んでいきたいと考えております。これらの施策を拡充するとともに、ガバナンス体制及びコンプライアンス体制の一層の充実や、情報セキュリティ体制の強化を継続し、保険業法や個人情報保護法等の関係法令に適応した保険募集管理体制の強化に全社的に取り組み、管理体制面において積極的に経営資源を投下してまいります。
当社グループは2019年9月期より新会計基準を適用し、保険契約ごとの残存有効契約期間の将来手数料収入を、解約率や無リスク利子率等で割り引いて、現在価値(PV)を算定し、売上として計上しております。当連結会計年度におきましては、円安の急速な進行に伴う外貨建保険の解約、失効の増加に加え、株高等を背景とした貯蓄性保険の解約、失効の増加により、解約が想定を上回って推移いたしました。現在価値を計算する際には最新の解約率を用いるため、解約率の上昇により現在価値が減少し、この減少分が売上から差し引かれたことが、今回の大きな減収要因となりました。それに加え、一過性の要因として、コロナのみなし入院給付金の支払いに伴う再保険事業の赤字、コールセンターへの投資、デジタル施策への投資等が利益を押し下げる要因となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は10,163百万円(前期比14.3%減)、営業損失は2,020百万円(前期は2,061百万円の利益)、経常損失は2,190百万円(前期は2,015百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,769百万円(前期は1,312百万円の利益)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(保険代理店事業)
ANP(新契約年間残保険料)は前期を上回った一方で、上述の一過性の減収要因とコールセンターへの投資などにより減収減益となりました。
この結果、保険代理店事業におきましては、当連結会計年度の売上高は7,660百万円(前期比19.8%減)、営業損失は2,540百万円(前期は1,395百万円の利益)となりました。
(ASP事業)
乗合保険代理店等へのACPの新規販売が堅調に推移し、増収増益となりました。
この結果、ASP事業におきましては、当連結会計年度の売上高は258百万円(前期比25.3%増)、営業利益は94百万円(前期比65.1%増)となりました。
(メディア事業)
保険選びサイト「保険市場(ほけんいちば)」への広告出稿が堅調に推移し、増収増益となりました。
この結果、メディア事業におきましては、当連結会計年度の売上高は2,202百万円(前期比22.6%増)、営業利益は466百万円(前期比11.4%増)となりました。
(メディアレップ事業)
保険選びサイト「保険市場(ほけんいちば)」の運営を通じて蓄積したWEBマーケティングのノウハウをベースに、保険専業の広告代理店としてさまざまなサービスの提供に努めた結果、増収となりました。一方、利益面では、粗利率の低い案件を受注したことなどから、減益となりました。
この結果、メディアレップ事業におきましては、当連結会計年度の売上高は1,283百万円(前期比9.0%増)、営業利益は77百万円(前期比45.2%減)となりました。
(再保険事業)
売上高が引き続き堅調に推移した一方、新型コロナウイルス感染症の影響で再保険金の支払いが増加したことから、増収減益となりました。
この結果、再保険事業におきましては、当連結会計年度の売上高は1,110百万円(前期比7.8%増)、営業損失は121百万円(前期は46百万円の利益)となりました。
②財政状態の状況
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,978百万円減少し10,512百万円(前連結会計年度末は12,491百万円)となりました。
流動資産は、前連結会計年度末比2,821百万円減少しましたが、これは主に、未収入金の減少1,496百万円並びに現金及び預金の減少1,035百万円等によるものです。
固定資産は、前連結会計年度末比847百万円増加しましたが、これは主に、繰延税金資産の増加678百万円及びソフトウエアの増加273百万円等によるものです。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ523百万円増加し5,868百万円(前連結会計年度末は5,345百万円)となりました。
流動負債は、前連結会計年度末比895百万円増加しましたが、これは主に、短期借入金の増加900百万円等によるものです。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,501百万円減少し4,643百万円(前連結会計年度末は7,145百万円)となりました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失1,769百万円の計上、剰余金の配当による減少789百万円等によるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローの支出206百万円、投資活動によるキャッシュ・フローの支出668百万円及び財務活動によるキャッシュ・フローの支出217百万円により、1,078百万円減少し、1,191百万円となりました。
当連結会計年度中における各キャッシュ・フローは、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は、税金等調整前当期純損失2,242百万円(前連結会計年度は1,974百万円の利益)、減価償却費577百万円(前連結会計年度は450百万円)、売上債権の増減額507百万円(前連結会計年度は△824百万円)、未収入金の増減額1,496百万円(前連結会計年度は195百万円)及び法人税等の支払額748百万円(前連結会計年度は862百万円)等により、206百万円の支出(前連結会計年度は364百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、無形固定資産の取得による支出607百万円(前連結会計年度は483百万円)、及び保険積立金の解約による収入311百万円等により、688百万円の支出(前連結会計年度は391百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、短期借入れによる収入900百万円、社債の償還による支出200百万円(前連結会計年度は200百万円)及び配当金の支払額789百万円(前連結会計年度は675百万円)等により、217百万円の支出(前連結会計年度は956百万円の支出)となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.売上実績
当連結会計年度の売上実績は、次のとおりです。
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年10月1日
至 2022年9月30日)
当連結会計年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
前年同期比
(%)
保険代理店事業(千円)
8,206,678
5,958,218
72.6
ASP事業(千円)
206,738
258,988
125.3
メディア事業(千円)
1,795,551
2,202,118
122.6
メディアレップ事業(千円)
621,234
633,676
102.0
再保険事業(千円)
1,030,424
1,110,512
107.8
合計(千円)
11,860,628
10,163,514
85.7
(注)1.セグメント間の取引は相殺消去しております。
2.保険代理店事業は円安の急激な進行に伴う外貨保険の解約、失効が想定を上回って推移したことなどにより、減収となりました。
3.主な相手先別の売上実績及び総売上実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年10月1日
至 2022年9月30日)
当連結会計年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
メットライフ生命保険株式会社
2,703,921
22.8
2,169,507
21.3
東京海上日動あんしん生命保険株式会社
1,277,562
10.8
-
-
チューリッヒ生命保険株式会社
-
-
1,671,619
16.4
(注)1.当該割合が100分の10未満の相手先は記載を省略しております。
2.当連結会計年度における東京海上日動あんしん生命保険株式会社の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため記載を省略しております。
3.前連結会計年度におけるチューリッヒ生命保険株式会社の販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため記載を省略しております。
b.仕入(外注)実績
当連結会計年度の仕入(外注)実績は、次のとおりです。
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年10月1日
至 2022年9月30日)
当連結会計年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
前年同期比(%)
保険代理店事業(千円)
1,554,558
2,703,008
173.9
ASP事業(千円)
40,831
51,778
126.8
メディア事業(千円)
2,844
3,938
138.5
メディアレップ事業(千円)
1,039,656
1,206,002
116.0
合計(千円)
2,637,890
3,964,727
150.3
(注)1.セグメント間の取引は相殺消去しております。
2.保険代理店事業はコールセンターへの投資、デジタル施策への投資などにより仕入(外注)が増加しました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、将来事象の結果に影響されるため不確実な金額におきましては、予測・情報の適切性及び正確性に注意しながら、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
連結財務諸表の作成にあたって実施した会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度の財政状態につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
2)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は10,163百万円(前期比14.3%減)となりました。これは、円安の急速な進行に伴う外貨建保険の解約などにより、保険代理店事業の売上から現在価値(PV)の減少分が差し引かれたことが主な要因です。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の売上原価は、3,964百万円(前期比50.3%増)となりました。主な増加要因としましては、テストマーケティング費用の増加によるものであります。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、8,219百万円(前期比14.8%増)となりました。主な増加要因としましては、保険代理店事業におけるコールセンターの増員による人件費および間接費の増加、コロナのみなし入院給付金に伴う再保険事業の費用増加等によるものであります。
(営業利益)
当連結会計年度の営業損失は、2,020百万円(前期は2,061百万円の利益)となりました。主な減少要因としましては、保険代理店事業において前述の要因により売上高が減少したことによるものです。
(経常利益)
当連結会計年度の経常損失は、2,190百万円(前期は2,015百万円の利益)となりました。主な減少要因としましては、保険代理店事業において前述の要因により売上高が減少したことによるものです。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は1,769百万円(前期は1,312百万円の利益)となりました。主な減少要因としましては、保険代理店事業において前述の要因により売上高が減少したことによるものです。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況
3 事業等のリスク」に記載しております。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金は、主にWEBプロモーションコスト、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備投資及び改修等に支出しております。これらの必要資金につきましては営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金のほか、金融機関からの借入等による資金調達にて対応していくこととしております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが目標としている経営指標における当連結会計年度の実績値は下表のとおりであります。
経営指標
目標数値
当連結会計年度実績(連結)
自己資本利益率
20%以上
△30.0%
売上高経常利益率
20%以上
△21.6%
配当性向
50%以上
-%
自己資本比率
80%以上
44.2%
自己資本利益率は△30.0%(前期は18.9%)、売上高経常利益率は△21.6%(前期は17.0%)、配当性向は当期純損失のため表示しておらず(前期は54.2%)、自己資本比率は44.2%(前期比13.0ポイント減少)となりました。
自己資本利益率、売上高経常利益率、配当性向及び自己資本比率について、当社グループが目標としている数値に達しておりません。当社グループは引き続き、「お客様が最適・快適な購買環境で、簡単便利に保険を購入いただく」という基本理念に基づき、お客様のニーズやマーケット動向に機敏に対応し、業績の向上に努めるとともに、自己資本の充実を図ってまいります。
(3)保険代理店事業に係る売上計上について
保険代理店手数料について
保険代理店事業の主たる収入は保険代理店手数料収入であります。当社グループは、保険契約の媒介及び代理行為に伴い、各保険会社との契約及び手数料規程に基づき保険代理店手数料を受領しております。
保険代理店手数料の受領形態は、保険商品の種類(生命保険・損害保険、契約期間(1年・複数年)、保険料支払方法(年払い・月払い)、その他)、保険会社毎の契約及び規程により様々な形態があり、保険契約成立時に受領するもの(初回手数料)及び保険契約継続に応じて受領するもの(2回目以降手数料)等、これらについて一括又は分割ならびにその受領割合等が異なるものが存在しております。
当社グループは、初回手数料については保険契約成立時に受領する手数料額を売上計上しているほか、2回目以降手数料の一部については、複数年にわたる期間を対象とする保険契約のうち保険会社より計算結果確認書面の受領が可能である等の条件の下、顧客との契約における履行義務が充足した額を収益として認識しております(一方で、将来発生する解約相当額を収益額の算定において控除しております)。
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