【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
世界経済は、新型コロナウイルス感染症が収束段階に入り経済活動の正常化への期待の高まりが見られますが、一方、ウクライナ情勢の長期化やエネルギー価格高騰、インフレリスク対応のための各国の政策金利引き上げの影響等、依然として先行き不透明な状況にあります。
我が国経済についても、インバウンド需要の回復によりコロナ以前の水準への経済復興が期待されていますが、各国の金利や物価動向を含めた地政学リスクが与える影響等、今後の見通しが難しいところです。
当社グループ製品の主要な用途市場である産業機器市場や自動車市場、光・無線通信市場、ライフサイエンス市場等は今後も成長が見込まれておりますが、半導体の需要逼迫による顧客の在庫調整やサプライチェーンの一時的な混乱が見られています。
このような経営環境のもと、当社グループの主力製品である産業機器市場の高出力半導体レーザー装置向けの高性能ヒートシンク製品は、当期上期において、中国主要顧客においてゼロコロナ政策と電力不足の影響で取引先工場の稼働が制限され、各社の生産調整の影響による当社グループ製品の引取時期を後倒しする動きが相次いだほか、市場取引価格の低下による影響を受けました。2023年1月以降は、中国主要顧客の生産調整も一巡して後倒しとなっていたヒートシンク製品の出荷ベースは回復し、これに新規取引先からの受注増加の動きが加わり、市場取引価格の底打ちの傾向もあることから、ヒートシンク製品市場の好転の動きが見えました。一方ガラス製品は、海外のライフサイエンス市場向けを中心に検査用の消耗部品の需要が増加しており、売上高が増加しました。
生産状況については、当期上期において中国取引先工場の生産調整の影響を受け当社広島工場の稼働率が一時的に低下したことや、今後の事業拡大に向けた人員増加や生産体制増強のための設備投資の影響等により、利益率は前年より減少となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高5,347,037千円(前年同期比2.4%減)、営業利益273,140千円(同55.9%減)、経常利益329,351千円(同62.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益222,341千円(同72.3%減)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べて130,608千円増加し、8,271,390千円となりました。これは主に、原材料及び貯蔵品が97,409千円増加、建設仮勘定が155,814千円の増加であった一方で、商品及び製品が150,504千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて90,388千円減少し、4,531,845千円となりました。これは主に、長期借入金が1,193,242千円の増加であった一方で、支払手形及び買掛金が240,636千円減少、短期借入金が682,146千円減少、未払法人税等が187,899千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて220,997千円増加し、3,739,544千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は1.99ポイント増加して45.21%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益、減価償却費の計上等の要因があったものの、仕入債務の減少、有形固定資産の取得による支出等により、前連結会計年度末に比べ106,360千円減少し、当連結会計年度末には729,487千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動の結果得られた資金は361,148千円(前年同期は1,042,504千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益294,935千円、減価償却費541,118千円、仕入債務の減少422,380千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は792,779千円(前年同期は634,366千円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出115,992千円、有形固定資産の取得による支出654,672千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動の結果得られた資金は416,066千円(前年同期は247,852千円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額972,193千円、長期借入れによる収入2,025,000千円、長期借入金の返済による支出609,777千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは精密加工部品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
セグメントの名称
金額(千円)
前年同期比(%)
精密加工部品事業
6,788,236
100.6
合計
6,788,236
100.6
(注)金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当社グループは精密加工部品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
精密加工部品事業
3,453,039
52.3
1,662,388
47.0
合計
3,453,039
52.3
1,662,388
47.0
c.販売実績
当社グループは精密加工部品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
セグメントの名称
金額(千円)
前年同期比(%)
精密加工部品事業
5,347,037
97.6
合計
5,347,037
97.6
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年7月1日
至 2022年6月30日)
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
Wuhan Raycus Fiber Laser Technologies Co., Ltd.
1,108,714
20.2
1,364,829
25.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
ヒートシンク製品群については、産業機器市場向け高性能ヒートシンクが中国向け並びに欧州向けの需要は引続き旺盛ながら、当連結会計年度上期における中国主要取引先からの注文品の引取時期の後倒し要請や市場取引価格の低下の影響があり、売上高は3,054,433千円(前期比7.2%減)となりました。ガラス製品群については、国内市場ではライフサイエンス市場用並びに自動車市場用の製品の売上が大幅に増加し、米国市場や中国市場向けも増加したことから、売上高は1,438,272千円(前期比18.0%増)となりました。全体としては、売上高は5,347,037千円(前期比2.4%減)となりました。
(売上総利益)
売上原価については、広島工場において、製造効率の向上によるコストダウン活動は継続しているものの、製品構成の変化により金などの貴金属を使用する工程が増加したことや水道光熱費の高騰などの影響等から、売上原価は3,397,135千円(前期比3.7%増)となり、売上総利益は1,949,902千円(前期比11.6%減)、売上総利益率は3.8ポイント減少しました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費については、コロナ感染症による行動制限解除により海外出張費が増加したことや、戦略製品であるシルバーダイヤ製品の販売促進用サンプル他広告宣伝費の増加などにより1,676,762千円(前期比5.7%増)となり、営業利益は273,140千円(前期比55.9%減)となりました。
(経常利益)
営業外損益については、主に為替差益の計上により56,211千円の収益(純額)になったことで、経常利益は329,351千円(前期比62.9%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益については、TECNISCO(SuZhou)CO.,Ltd.の工場移転方針に伴い今後の使用が見込まれなくなった固定資産に関連する減損損失33,885千円を計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は222,341千円(前期比72.3%減)となりました。
当社グループは、精密加工部品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、運転資金、設備投資資金についてはまず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について必要な資金を銀行等の金融機関から借入により調達しております。これらの自己資金は、機動的な事業経営、柔軟な研究開発活動を目的として、会社の対応力向上のために活用しており、設備投資の計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
なお、事業拡大に向けて急激な資金需要が生じる場合に備え、一部の金融機関と当座貸越契約を締結しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える可能性のある見積り及び仮定は、以下のとおりであります。
(固定資産の減損)
減損損失の認識において使用される将来キャッシュ・フロー、割引率等の前提条件については、一定の仮定に基づき設定しております。これらの仮定は、経営者が最善と判断した見積りに基づいて決定しておりますが、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更が生じた場合には、固定資産の減損を行い、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産は、将来の課税所得の見積額及び実行可能なタックス・プランニング等を踏まえ、経営者が最善と判断した見積りに基づいて金額を算定しておりますが、将来の課税所得の見積額は業績等により変動するため、実際の課税所得の金額が見積りと異なった場合やタックス・プランニング等に変更が生じた場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について
当社グループでは、売上総利益率の向上と経常利益の拡大を経営において重視しています。売上高は、主に産業機器市場の高出力半導体レーザー装置向けの高性能ヒートシンク製品は、当期上期において中国主要顧客における生産調整の影響を受けたものの、2023年1月以降は生産調整も一巡して後倒しとなっていたヒートシンク製品の出荷ベースは回復しました。生産状況については、中国主要顧客の生産調整の影響を受け当社広島工場の稼働率が一時的に低下したことや、今後の事業拡大に向けた人員増加や生産設備増強等による結果、第55期連結会計年度の数値については、次のとおりとなっております。
第54期連結会計年度
第55期連結会計年度
売上総利益率
40.3%
36.5%
経常利益
887,583千円
329,351千円
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。