【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は7,192,886千円となり、前連結会計年度末に比べ5,294,581千円減少いたしました。これは主に、現金及び預金が2,950,606千円、ミッション1の打上実施等により前渡金及び長期前渡金の合計額が2,656,531千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は9,540,493千円となり、前連結会計年度末に比べ5,884,575千円増加いたしました。これは主に、2022年7月において各取引金融機関との間で締結したシンジケートローン契約に基づき、長期借入金が4,715,573千円増加したこと及びペイロードサービス及びパートナーシップサービスの進捗に伴い契約負債が1,156,878千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は前連結会計年度末に比べて11,179,156千円減少し、2,347,606千円の債務超過となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上(11,398,248千円)により利益剰余金が減少したことによるものであります。なお、2022年6月30日開催の定時株主総会の決議により、2022年6月30日付で資本準備金を4,210,385千円減少し、その他資本剰余金に振り替えております。また、振り替えたその他資本剰余金を繰越利益剰余金に振り替え、欠損填補を行っております。
② 経営成績の状況
当社グループは、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続的な世界を実現するべく、「Expand our planet. Expand our future」をビジョンに掲げ、月面開発の事業化に取り組んでいる次世代の民間宇宙企業です。
当連結会計年度における世界経済は、一部で回復の兆しはあるものの、引き続き新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により不確実な状況が継続しております。
かかる環境下の中ではあるものの、当社グループが属する宇宙資源開発の分野では、NASAが推進する有人月探査計画であるアルテミス計画において、月面における平和的・友好的かつ透明性ある活動のガイドラインとなる「Artemis Accords(アルテミス協定)」に、日本と米国を含む全23カ国(2023年3月末時点)が調印するなど、引き続き活発な進捗が見られております。
日本政府においても画期的な進展があり、2021年6月15日には「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」が国会において可決され成立しました。当法律は、日本の民間事業者が月その他の天体を含む宇宙空間に存在する水、鉱物、その他の天然資源である宇宙資源の探査及び開発に従事することを認めることを規定したものです。民間企業による宇宙資源利用を認める法律を制定した国としては、世界でも米国、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦に続く4番目の国となり、引き続き宇宙開発及び月面探査が大きく推進されることが期待されます。
このような状況の中、当社グループは、引き続きミッション1の月面着陸船(以下「ランダー」という。)開発を進捗させ、2022年9月までにランダーフライトモデルの最終的な機能試験を実施し、10月には打上予定地である米国フロリダまでの輸送を完了しました。米国への輸送後は、ロケットへの搭載作業、燃料充填等の最終準備を完了させ、2022年12月11日(日)16時38分(日本時間)に米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地 40射点より打上を実施しております。これらミッション1の重要なマイルストーンの進捗のみならず、ミッション2及びミッション3についても、ランダー開発を進捗させるとともに、ペイロードサービスの新規顧客獲得を推進しております。また、当社グループの活動をコンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマーク露出、データ利用権等をパッケージとして販売し技術面や商品開発面での協業を行うパートナーシップ事業においても、既存パートナー企業とのパートナーシップ関係を推進するとともに、ミッション2までを対象とする「HAKUTO-R」の新規顧客獲得を推進いたしました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は989,241千円(前期比46.7%増)、営業損失は11,023,904千円(前期は4,056,667千円の営業損失)、経常損失は11,378,300千円(前期は4,039,154千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は11,398,248千円(前期は4,059,896千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
なお、当社グループの事業は月面開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,950,606千円減少し、当連結会計年度末には3,381,935千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は7,322,198千円(前連結会計年度は5,405,563千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失11,378,647千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は90,086千円(前連結会計年度は90,330千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出54,919千円、無形固定資産の取得による支出29,678千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は4,364,028千円(前連結会計年度は7,463,817千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入4,750,000千円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
サービスの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
受注高
(千円)
前年同期比
(%)
受注残高
(千円)
前年同期比
(%)
ペイロードサービス
-
-
2,763,663
97.1
その他
696,135
255.7
517,312
287.2
合計
696,135
28.3
3,280,975
108.4
(注)1.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度のペイロードサービスにおきまして、大型案件を受注したことによるものです。
2.パートナーシップサービスについては、その事業の性質上、受注生産形態になじまないため、受注実績は記載しておりません。
3.当社グループは単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは、月面開発事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載はしておりません。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
月面開発事業(千円)
989,241
146.7
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
European Space Agency
100,856
15.0
363,243
36.7
Mohammed Bin Rashid Space Centre
197,732
29.3
278,248
28.1
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積もりを必要としております。経営者は、これらの見積もりについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べて315,100千円(46.7%)増加し、989,241千円となりました。これは主に、2021年4月以降順次顧客獲得を進捗させているペイロードサービスの売上に加え、研究受託開発売上が増加したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて96,920千円(28.5%)増加し、436,468千円となりました。これは主に、ミッション1の開発が進捗したことに加え、後続ミッションであるミッション2の開発も並行して進めたことによるものであります。この結果、売上総利益は前連結会計年度に比べて218,180千円(65.2%)増加し、552,773千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて7,185,417千円(163.6%)増加し、11,576,677千円となりました。これは主に、2022年12月11日にミッション1の打上げを完了したこと、また後続ミッションであるミッション2及びミッション3の開発も並行して進めたことにより研究開発費の計上額が増加したことによるものであります。
その結果、営業損失は△11,023,904千円(前年同期は△4,056,667千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べて31,865千円(43.7%)増加し、104,785千円となりました。これは主に、為替差益83,481千円を計上したことによります。
営業外費用は、403,773千円(728.7%)増加し459,181千円となりました。これは主に、借入金増加による支払利息196,155千円の計上(前期支払利息は24,948千円)及び支払手数料250,000千円の計上によるものであります。
その結果、経常損失は△11,378,300千円(前年同期は△4,039,154千円)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失)
特別利益は、計上しておりません。また、特別損失は、固定資産除却損347千円を計上しております。
その結果、税金等調整前当期純損失は△11,378,647千円(前年同期は△4,044,178千円)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純損失)
法人税等は、主に法人税、住民税及び事業税12,721千円を計上したことにより3,882千円(24.7%)増加し、19,600千円となりました。
その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は△11,398,248千円(前年同期は△4,059,896千円)となりました。
b.財政状態
主な増減内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、安定的な事業収益化を目指す上で将来的に継続的なミッションの実現が必要であり、2022年12月11日に打上げを実施したミッション1だけでなく、後続ミッションであるミッション2及びミッション3のランダー開発も既に着手しており、今後も積極的に開発活動を推進してまいります。当社の資金需要として主なものは、ランダー開発のための部材調達費用、事業の拡大に伴う人件費、打上げ費用等です。必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
現預金保有残高については、2023年3月期末における現金及び現金同等物が3,381,935千円であり、必要な流動性を確保しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。
⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
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