【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という))の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症による各種制限の大幅な緩和に伴う経済活動の回復が見られたものの、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う地政学的リスクの高まりと共に、エネルギー価格の高騰やインフレの兆しなどが見られ、世界的な景気後退への懸念が高まりました。わが国経済も世界経済の減速懸念を受け、円安の急速な進行や物価上昇など、依然として不透明な状況が続いております。国内IT業界におきましては、IT関連投資は堅調に推移しており、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する投資意欲は引き続き旺盛な状況が続いております。
このような事業環境の中、当社のデジタルコンサルティング事業においては、国内外における戦略的なIT活用による事業拡大や新規事業創出への需要の高まりとIT人材不足を背景に、既存顧客の継続率の向上と新規顧客開拓を目的とした積極的な事業展開を図ってまいりました。当連結会計年度度においては新たにカナダ(バンクーバー)に拠点を開設したほか、中東市場における更なる戦略的なケイパビリティ拡大の一貫として、UAEのデジタルコンサルティング企業であるGenieology社を子会社化し、加えてサウジアラビアのコンサルティング企業であるPioneers Consultingの事業を買収しております。また、営業活動に注力するAPAC、EMEA、北米の各拠点においては、上流工程におけるコンサルティングサービスの拡充に努めたことが奏功し、顧客単価の向上へ寄与いたしました。また、その他事業の大半を占めるプロダクト事業では、地方での中小企業のDX需要を背景に島根県出雲市に新たな拠点を開設する等新たな需要を取り込んだことで、受注が堅調に推移 いたしました。その結果、当連結会計年度末現在ではグループ合計で1,549名に達する体制となりました。
このような経済環境の中、当連結会計年度の売上収益は14,270,932千円(前年同期は9,346,424千円)と順調に伸ばすことができましたが、コロナ禍による年前半のEMEA地域での受注減および、採用コストやリストラコストの増加などにより営業損失は△389,677千円(前年同期は△3,222,905千円)、また当連結会計年度中に急激な為替変動の影響はありましたが税引前損失は△447,069千円(前年同期は△3,089,871千円)、親会社の所有者に帰属する当期損失は△674,767千円(前年同期は△3,053,307千円)となりました。
② 当期の財政状態の概況
当連結会計年度末の資産合計は12,921,498千円(前連結会計年度末は9,909,195千円)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物2,724,484千円(前連結会計年度末は4,241,998千円)、営業債権及びその他の債権3,073,532千円(前連結会計年度末は1,926,999千円)、のれん3,236,333千円(前連結会計年度末は1,027,189千円)等であります。
当連結会計年度末における各項目の状況は、次のとおりです。
(流動資産)
流動資産の残高は7,818,219千円(前連結会計年度末は7,205,739千円)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物2,724,484千円(前連結会計年度末は4,241,998千円)、営業債権及びその他の債権3,073,532千円(前連結会計年度末は1,926,999千円)等であります。
(非流動資産)
非流動資産の残高は5,103,278千円(前連結会計年度末は2,703,456千円)となりました。主な内訳は、のれん3,236,333千円(前連結会計年度末は1,027,189千円)、無形資産579,171千円(前連結会計年度末は933,205千円)、使用権資産350,821千円(前連結会計年度末は167,931千円)等であります。
(流動負債)
流動負債の残高は5,498,560千円(前連結会計年度末は3,727,445千円)となりました。主な内訳は、営業債務及びその他の債務1,327,415千円(前連結会計年度末は1,465,189千円)、社債及び借入金1,924,423千円(前連結会計年度末は793,114千円)等であります。
(非流動負債)
非流動負債の残高は3,330,513千円(前連結会計年度末は2,870,571千円)となりました。主な内訳は、社債及び借入金1,924,425千円(前連結会計年度末は1,769,766千円)、リース負債712,155千円(前連結会計年度末は811,943千円)等であります。
(資本合計)
資本合計は4,092,424千円(前連結会計年度末は3,311,178千円)となりました。主な内訳は、資本金1,065,754千円(前連結会計年度末は392,634千円)、資本剰余金9,708,785千円(前連結会計年度末は8,804,510千円)、利益剰余金△6,203,033千円(前連結会計年度末は△5,528,265千円)等であります。
③ 当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,724,484千円(前連結会計年度末は4,241,998千円)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は1,544,453千円の支出(前年同期は921,555千円の支出)となりました。これは主に、税引前損失(△447,069千円(前年同期は△3,089,871千円))による資金の減少、営業債権及びその他の債権の増減(△1,469,468千円(前年同期は△535,781千円))、営業債務及びその他の債務の増減(△505,770千円(前年同期は737,682千円))により資金が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は2,288,757千円の支出(前年同期は986,429千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出(△291,226千円(前年同期は△204,067千円))、無形資産の取得による支出(△557,355千円(前年同期は△267,532千円))、子会社株式の取得による支出(△619,575千円(前年同期は△454,508千円))、事業譲受による支出(△776,165千円(前年同期は該当なし))等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は2,241,103千円の収入(前年同期は2,005,109千円の収入)となりました。これは主に、長期借入による収入(1,310,709千円(前年同期は857,728千円))、長期借入金の返済による支出(△824,251千円(前年同期は△1,303,667千円))、社債の償還による支出(△137,000千円(前年同期は△147,000千円))、リース負債の返済による支出(△398,918千円(前年同期は△347,232千円))、増資による収入(1,351,335千円(前年同期は3,001,318千円))等によるものです。
④ 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、デジタルコンサルティング事業、その他事業の2つのセグメントから構成されております。当社グループの提供するサービスは、受注から販売までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ一致するため、生産、受注の状況の記載を省略しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前期比
デジタルコンサルティング事業
8,891,856
13,559,922
52.5%増
その他事業
493,800
691,188
40.0%増
合計
9,385,657
14,251,110
51.8%増
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 総販売実績に対する割合が10%を超える相手先はありません。
⑤ 経営方針・経営戦略等
当連結会計年度において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
⑥ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
全体としては、短期的な収益性の改善のみでなく、中長期的な成長の基盤を確立することを課題としており、グループの2022年度の経営方針「Update Monstar-lab Group」として、1.拠点内外でのシナジーの最大化、2.顧客に最高の体験を提供する、3.継続的な成長(sustainable growth)、を全社で共有しております。
また、リスク予防および経営効率化の観点からは、子会社管理やグループ内部統制の整備と運用が重要な課題と認識し、グループ内部統制システムの構築を視野に入れたグローバルな組織での取組にも着手しております。
デジタルコンサルティング事業においては、拡大する開発拠点の品質管理体制の継続的確保、開発拠点を有効に稼働させる売上を確保する営業体制の強化、あわせてテストサービスやコンサルティングサービスなどの商材ラインナップの拡充により、多様な需要への関与度の向上を行っております。また、それらの成長を支える人材の採用が本事業の継続的な経営テーマとなっております。また、ここ数年は特に海外M&Aにおける拡大を実施しており、それら被買収会社が当社グループに参画したことによるシナジー効果を生むプロセスをノウハウとして蓄積し、持続的な成長を可能にすることも課題となります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載しておりますが、重要なものは以下のとおりであります。
(のれん)
のれんを含む非金融資産の減損にかかる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (10)非金融資産の減損」に記載しております。非金融資産の減損損失の測定に際しては、回収可能価額を見積り計算しており、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、のれんを含む非金融資産の減損損失が増減する可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容等
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、14,270,932千円(前年同期比52.7%増)となりました。
売上収益の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、9,326,230千円(前年同期比45.3%増)となりました。
主な要因は、当社グループ全体での売上高増加に伴う人件費等の売上原価の増加、当連結会計年度に新規取得した子会社(GENIEOLOGY DESIGN DMCC)や事業(Pioneers Consulting)から生じた売上原価の増加が生じた一方、原価人員の成熟化や継続的な原価低減活動、加えて売上増加に伴う固定費の回収が進み、売上収益の増加率と比べ売上原価の増加率は相対的に低い水準に留まったことが要因です。
この結果、売上総利益は4,944,702千円(前年同期比68.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、5,627,853千円(前年同期比32.6%増)となりました。
主な要因は、企業成長に伴う販管費人員増による給料手当の増加、上場するに足る内部管理体制構築のための管理部門増員から生じた採用費と役員報酬の増加に加え、組織構造のスリム化やグループレベルでの全体最適化の一環で実施した主にEMEAグループ人員のリストラ費用の発生です。
また、その他の収益は、306,240千円(前年同期は258,692千円)となりました。主な要因は、米国子会社(Monstarlab LLC及びKoala Labs, Inc.)が政府から受けたPPPローンにかかる免除益合計155,973千円(前年同期は223,739千円)及びデンマーク当局より当期に認可を受けた税金等の免除益78,072千円です。
これらの結果、営業損失は、△389,677千円(前年同期は△3,222,905千円)となりました。
(税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益、当期利益)
上述の事象に加え、主に金融商品の公正価値測定(FVTPL)を含む金融収益が72,878千円(前年同期は208,569千円)、主に社債及び借入金とリース負債から生じる支払利息を含む金融費用が130,270千円(前年同期は75,535千円)計上された結果、税引前損失は△447,069千円(前年同期は△3,089,871千円)となりました。また、法人所得税費用が276,594千円(前年同期は1,193千円の税金収益)が計上された結果、当期損失は△723,664千円(前年同期は△3,088,678千円)となりました。なお、第3四半期連結累計期間に生じた加速的な円安傾向は、第4四半期連結会計期間に生じた急激な円高傾向によりオフセット(相殺)され、結果的に当連結会計年度における為替変動による影響は僅少となりました。
なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 当期の財政状態の概況」に、キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ 当期のキャッシュ・フローの概況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費や外注費、人員獲得のための採用費、M&A資金等であります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。必要な資金は自己資金及び金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本としております。
なお、当連結会計年度末(2022年12月31日)における社債及び借入金の残高は3,848,849千円(前連結会計年度末は2,562,881千円)となっており、現金及び現金同等物の残高は2,724,484千円(前連結会計年度末は4,241,998千円)となっております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。
これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上が5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数並びにこれらのクライアント群からの売上の増加率を重要指標としております。当連結会計年度における年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数は68社、これらのクライアント群からの売上の増加率は72.18%増となっており、売上高の継続した成長に向けて順調に推移しているものと認識しております。
なお、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標」をご参照ください。
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