【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況当連結会計年度の経済環境を顧みますと、米国では、個人消費は堅調に推移しているものの、高インフレ・政策金利上昇による下押し圧力により、景気は減速傾向にあります。欧州では、ウクライナ情勢を受けた資源価格の高騰や物価上昇等が長期化していることにより、個人消費・企業の経済活動の低迷を招き、景気後退に入る見通しであります。アジアにおいて、中国では、政府がゼロコロナ政策を大幅に緩和したことにより、景気悪化に歯止めがかかる見込みであります。しかしこの行動制限の突然の解除により、新規感染者急増・医療体制の逼迫に直面しており、景気回復は先行き不透明の状況となっております。その他のアジア各国では、ウィズコロナ政策のもとで景気回復が持続しており、特にASEAN・インドの成長率が高く、アジア景気の支えとなっております。日本では、行動制限の緩和にともなう個人消費・インバウンドを含めたサービス需要がけん引役となって景気持ち直しをみせております。このような状況下、当社の当連結会計年度の業績は、売上高は2,770億3千1百万円と前連結会計年度に比べて501億9千8百万円の増加(22.1%増)となりました。利益面では、営業利益は89億2千9百万円と前連結会計年度に比べて39億7千4百万円の増加(80.2%増)となり、経常利益は83億3千7百万円と前連結会計年度に比べて24億2百万円の増加(40.5%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は47億3千3百万円となり、前連結会計年度に比べて1億7千2百万円の増加(3.8%増)となりました。なお、当連結会計年度における当社の主要通貨の平均為替レートは、米ドルが131.22円(前連結会計年度比19.3%円安)、ユーロが138.05円(前連結会計年度比6.2%円安)、中国元が19.48円(前連結会計年度比14.3%円安)、タイバーツが3.74円(前連結会計年度比8.7%円安)であります。また、当連結会計年度における業績の分析等については、セグメント別の業績および要因に記載しております。
セグメント別の業績および要因は次のとおりであります。本文中の「セグメント利益」および「セグメント損失」は、連結損益計算書の営業利益を基礎としております。(日本)産業機器用部材および車載関連機器用部材の出荷が増加したことにより、当セグメントの売上高は992億9千8百万円と前連結会計年度に比べて66億6千3百万円の増加(7.2%増)となりました。利益面では、売上高が増加したこと等により、セグメント利益は11億6千2百万円と前連結会計年度に比べて10億3千6百万円の増加(823.8%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、従来の方法に比べて、当連結会計年度の当セグメントの売上高は116億8千1百万円減少したものの、売上原価が116億8千1百万円減少したため、セグメント利益への影響はありません。
(中華圏)車載関連機器用部材および産業機器用部材の出荷が増加したことに加えて、主に中国元に対する円安の影響もあり、当セグメントの売上高は966億9千3百万円と前連結会計年度に比べて136億4千1百万円の増加(16.4%増)となりました。利益面では、人件費・荷造運賃が増加したこと等により、セグメント利益は15億3千3百万円と前連結会計年度に比べて1億9千7百万円の減少(11.4%減)となりました。
(東南アジア)情報機器用部材および車載関連機器用部材の出荷が増加したことに加えて、主に米国ドルに対する円安の影響もあり、当セグメントの売上高は1,089億9千5百万円と前連結会計年度に比べて248億9千3百万円の増加(29.6%増)となりました。利益面では、売上高が増加したこと等により、セグメント利益は48億5千6百万円と前連結会計年度に比べて15億3千8百万円の増加(46.4%増)となりました。
(欧州)産業機器用部材の出荷が増加したこと等により、当セグメントの売上高は173億3千2百万円と前連結会計年度に比べて16億9千2百万円の増加(10.8%増)となりました。利益面では、半導体や電子部品のサプライチェーンの混乱による生産効率の低下やウクライナ侵攻による資源価格等の高騰もあり、6億3千2百万円のセグメント損失(前連結会計年度は1億2千3百万円のセグメント損失)となりました。
(米州)車載関連機器用部材および産業機器用部材の出荷が増加したことに加えて、主に米国ドルに対する円安の影響もあり、売上高は628億6千6百万円と前連結会計年度に比べて174億5百万円の増加(38.3%増)となりました。利益面では、売上高が増加したこと等により、セグメント利益は22億7千6百万円と前連結会計年度に比べて18億9千万円の増加(490.4%増)となりました。
② 財政状態の状況(資産)総資産は、前連結会計年度末に比べて352億4千9百万円増加(20.7%増)し、2,051億7千万円となりました。流動資産は、主要通貨の円安影響もあり、現金及び預金43億9百万円の増加(45.4%増)および棚卸資産151億8千7百万円の増加(26.1%増)等により、前連結会計年度末に比べて274億7千8百万円増加(22.4%増)し、1,502億7千5百万円となりました。固定資産は、主要通貨の円安影響および各海外生産拠点での設備投資にともなう機械装置の増加もあり、有形固定資産75億9千3百万円の増加(20.1%増)等により、前連結会計年度末に比べて77億7千万円増加(16.5%増)し、548億9千4百万円となりました。
(負債)負債合計は、前連結会計年度末に比べて242億2千8百万円増加(23.4%増)し、1,277億8千万円となりました。流動負債は、主要通貨の円安影響もあり、買掛金44億3千5百万円の増加(11.9%増)および短期借入金45億7千5百万円の増加(14.5%増)等により、前連結会計年度末に比べて167億6千4百万円増加(21.0%増)し、965億9千8百万円となりました。固定負債は、長期借入金66億7千8百万円の増加(79.1%増)等により、前連結会計年度末に比べて74億6千3百万円増加(31.5%増)し、311億8千2百万円となりました。
(純資産)純資産は、為替レートの変動にともなう為替換算調整勘定78億7千2百万円の増加(122.9%増)および利益剰余金33億1千5百万円の増加(5.8%増)等により、前連結会計年度末に比べて110億2千万円増加(16.6%増)し、773億8千9百万円となりました。この結果、自己資本比率は38.8%から37.5%に減少いたしました。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度において、現金及び現金同等物 (以下「資金」という。) は、前連結会計年度末に比べて43億3千6百万円増加(46.6%増)し、当連結会計年度末における資金は136億5千2百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況および要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果増加した資金は、55億6千7百万円(前連結会計年度は81億6百万円の減少)となりました。これは主に、棚卸資産の増加額92億1千3百万円および売上債権及び契約資産の増加額38億5千9百万円の資金減少要因に対し、税金等調整前当期純利益79億6千万円、減価償却費77億1千4百万円および契約負債の増加額28億3千3百万円の資金増加要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果減少した資金は、88億9千2百万円(前連結会計年度は77億6千5百万円の減少)となりました。これは主に、各海外生産拠点において行われた設備投資にともなう有形固定資産の取得による支出86億7千1百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果増加した資金は、66億7千6百万円(前連結会計年度は8億6千9百万円の増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出62億5千7百万円の資金減少要因に対し、長期借入れによる収入127億2千8百万円の資金増加要因によるものであります。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2018年12月期
2019年12月期
2020年12月期
2021年12月期
2022年12月期
自己資本比率 (%)
40.5
40.3
38.8
38.8
37.5
時価ベースの自己資本比率 (%)
49.1
50.2
50.5
39.4
29.4
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (年)
27.2
4.0
3.2
-
10.3
インタレスト・カバレッジ・レシオ (倍)
3.2
18.3
34.9
-
7.6
(注)各指標の算出方法・ 自己資本比率 : 自己資本÷総資産・ 時価ベースの自己資本比率
: 株式時価総額÷総資産・ キャッシュ・フロー対有利子負債比率
: 有利子負債((期首+期末)÷2)÷営業キャッシュ・フロー・ インタレスト・カバレッジ・レシオ
: 営業キャッシュ・フロー÷利払い
1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。3 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。4 利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。5 2021年12月期は営業キャッシュ・フローがマイナスのため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率およびインタレスト・カバレッジ・レシオは記載しておりません。
(2) 生産、受注及び販売の状況
① 仕入実績当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(百万円)
前年同期比(%)
日本
94,704
+4.6
中華圏
94,478
+15.9
東南アジア
107,644
+28.6
欧州
17,676
+8.8
米州
59,075
+19.4
合計
373,579
+16.2
(注)
1 金額については、仕入価格により表示しております。2 金額については、セグメント間の内部仕入高または振替高を含んでおります。
② 受注実績該当事項はありません。
③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
日本
99,298
+7.2
中華圏
96,693
+16.4
東南アジア
108,995
+29.6
欧州
17,332
+10.8
米州
62,866
+38.3
合計
385,187
+20.0
(注) 金額については、セグメント間の内部売上高または振替高を含んでおります。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。
① 経営成績等の分析当社事業の中心であるエレクトロニクス分野におきましては、CASE、IoT、DXなど大きな技術革新が起こっております。また技術革新のみならず、脱炭素社会に向けた需要も高まっており、このような市場環境の変化に柔軟に対応していくため、当社はグローバルベースで顧客の様々なニーズに対応することを主眼に電子部品の調達、基板実装、成形事業などワンストップソリューションの提供を進めております。このような状況下、当社の当連結会計年度の業績は、売上高は2,770億3千1百万円と前連結会計年度に比べて501億9千8百万円の増加(22.1%増)となりました。営業利益は89億2千9百万円と前連結会計年度に比べて39億7千4百万円の増加(80.2%増)となりました。当連結会計年度の業績と当初予想との差異要因につきましては、ウクライナ侵攻に端を発した欧州経済の低迷、資源価格の高騰、また、前年から続く半導体を中心とした電子部品の供給不足の改善が進まないこと等により、主に欧州セグメントに属するハンガリー工場および中華圏セグメントに属する中国・湖北工場において収益が押し下げられました。一方、東南アジアセグメントにおいては情報機器および車載関連機器の出荷が好調であったこと、また日本セグメントにおいても産業機器および車載関連機器の出荷が好調であったこと等が収益の増加に貢献いたしました。今後につきましては、不透明感が続く環境下ではありますが、当社事業の主力である車載関連機器の市場は世界の自動車需要の回復を背景に堅調に推移すると見込まれます。東南アジアセグメントにおいて、第1期拡張工事が完了するタイ工場において車載関連顧客の需要増に対応した量産を進めて参ります。また、中華圏セグメント、欧州セグメントにおいても新規顧客向けの量産を開始し、それぞれのエリアにおける収益性の改善を図って参ります。その他の地域においても、世界各地でCASEやIoT、DXの広がりを背景に日系・非日系を問わず大手グローバル企業との取引を拡大させて参ります。各経営指標は、以下のとおりであります。
連結経営指標
2022年度実績(百万円)
2022年度計画(百万円)
2022年度計画比(百万円)
2021年度実績(百万円)
2021年度実績比(百万円)
売上高
277,031
240,000
+37,031(+15.4%)
226,833
+50,198(+22.1%)
営業利益
8,929
8,000
+929(+11.6%)
4,954
+3,974(+80.2%)
② 資本の財源および資金の流動性当社グループの主な資金需要としては、短期的なものとして商品等の仕入、製造費用および販管費等の運転資金、長期的なものとして、生産能力増強および合理化等のための設備投資資金があります。これらの事業運営上必要な資金については、資金の流動性および源泉を安定的に確保することを基本とし、運転資金については、自己資金および金融機関からの短期借入、設備投資資金については、金融機関からの長期借入等の要否を検討し、資金調達を行っております。なお、当連結会計年度の資金調達について、特記すべき事項はありません。また、当連結会計年度における設備投資等の概要ならびに重要な設備投資計画の予定金額とその資金調達方法については、「第3 設備の状況」をご参照ください。
③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって用いた重要な会計上の見積りおよび当該見積りの仮定は、以下のとおりであります。なお、これらの見積りは過去の実績や連結財務諸表作成時点で入手可能な外部情報等にもとづき合理的に行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
(固定資産の減損)当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、回収可能価額を事業計画にもとづく将来キャッシュ・フローや割引率、固定資産の時価等により見積り、その額が帳簿価額を下回る場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識します。 減損の兆候の認識および減損損失の測定にあたっては、慎重に検討を行っておりますが、事業計画や経済環境等、見積りの前提条件に変更があった場合においては、認識される減損損失の金額に影響を及ぼす可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(棚卸資産の評価)当社グループは、棚卸資産について、需要動向および市況の変化にもとづく過剰または長期滞留や陳腐化を考慮した上で、適正な価値で評価いたします。取得日から一定期間を経過している棚卸資産については、収益性の低下にともなう正味売却価額を見積り、帳簿価額との差額を評価損失として認識します。メーカー間の競争激化等にともなう市況変動や製品ライフサイクルの変化等により収益性が変動し、棚卸資産の評価額に影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)当社グループでは、事業計画にもとづいて将来の課税所得の見込みを算定し、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を認識します。なお、当該回収可能性は将来の課税所得の見積りにもとづいて判断するため、見積りの前提とした事業計画とのかい離や想定外の経済環境の悪化等により課税所得が減少した場合、繰延税金資産の減額にともなう税金費用を計上する可能性があります。
(新型コロナウイルス感染症の影響)新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」をご参照ください。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因当社グループの経営業績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。