【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況ニッケグループは、中長期ビジョン「ニッケグループRN(リニューアル・ニッケ)130ビジョン(2017~2026年度)」(以下「RN130ビジョン」という)において、各事業が魅力的な事業を創造し、今後の更なる企業価値向上に向けて、永続的な成長と発展を目指すことを掲げております。当連結会計年度は「RN130ビジョン」の具現化に向けて策定した「RN130第2次中期経営計画(2021~2023年度)」の2年目であるとともに、「RN130ビジョン」の折り返し点でもありました。新型コロナウイルスの影響や急速な円安進行、資材価格・エネルギー費の高騰等、依然として先行き不透明な状況ですが、このような不確実性の高い経営環境を逆にチャンスと捉え、柔軟かつ迅速に対応して事業運営に取り組んでまいりました。この結果、当連結会計年度の経営成績は、連結売上高109,048百万円(前年同期比2.3%増)、連結営業利益10,707百万円(前年同期比8.1%増)、連結経常利益11,715百万円(前年同期比19.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,283百万円(前年同期比12.3%減)となりました。衣料繊維事業および当期から株式会社フジコー(以下「フジコー」という)の通期連結が寄与する産業機材事業の業績が好調だったこと等により、売上高は増収、営業利益は過去最高値を更新しました。
セグメントの概況は以下のとおりであります。
(a) 衣料繊維事業衣料繊維事業の当連結会計年度の売上高は29,735百万円(前年同期比0.5%減)、営業利益3,234百万円(前年同期比17.6%増)となりました。(ユニフォーム分野)学校制服用素材の販売は、前期並みでした。官公庁制服用素材の販売は、警察向けは前期並みでしたが、消防向け等は低調でした。一般企業制服用素材の販売は、コロナ禍の影響による市況悪化が継続し、新規・更改件数が伸びず低調でした。(テキスタイル分野)国内販売は、コロナ禍の影響で低調だった前期との比較では引合いが増加し好調でした。海外販売も、ウィズコロナを進める欧米からの引合いが増加し好調でした。(ヤーン分野)売糸は、ニット関連の引合いが増加し好調でした。
(b) 産業機材事業産業機材事業の当連結会計年度の売上高は23,853百万円(前年同期比17.0%増)、営業利益1,952百万円(前年同期比58.0%増)となりました。(自動車関連分野)自動車生産が半導体不足や部材調達問題等の影響を受け減産基調で推移する中、車載電装品他製造ラインのファクトリーオートメーション設備は、顧客の設備投資抑制の影響を受けて低調だった前期並みでした。車両向けの不織布や縫製糸・結束紐などは、フジコーが連結業績に寄与した影響もあり堅調でした。(環境関連分野)フジコーが連結業績に寄与した影響もあり、フィルター資材などの環境・エネルギー関連資材は、堅調でした。(その他産業関連分野)フジコーが連結業績に寄与した影響もあり、OA向け資材や工業用資材は、堅調でした。5Gやパソコンなどの需要増に伴い、半導体関連装置や画像検査装置も、堅調でした。(生活関連分野)ラケットスポーツ関連は、コロナ禍でのクラブ活動自粛や大会中止等の影響で低調でした。また、フィッシング関連は、春先新製品の販売が好調だったこともあり堅調でした。生活関連資材は、半導体不足による電子楽器減産の影響を受け楽器用フェルトの受注が低調でした。
(c) 人とみらい開発事業人とみらい開発事業の当連結会計年度の売上高は34,938百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益6,151百万円(前年同期比0.6%増)となりました。(商業施設運営分野)商業施設運営は、新型コロナウイルスまん延防止等重点措置適用による飲食業を中心とした一部店舗での時間短縮営業やコルトンプラザのリニューアル工事に伴う休業がありましたが、コルトンプラザリニューアル後の集客増加により堅調でした。自社所有外の商業施設におけるプロパティマネジメントおよびコンサルティング業務は、前期並みでした。(不動産開発分野)不動産賃貸事業は、コロナ禍で滞っていた契約が進行し堅調でした。ソーラー売電事業も好天に恵まれ堅調でした。建設関連の売上は、コロナ禍における受注の低迷や一部の工事で進捗遅れがありましたが、既に受注していた物件が完工したため、堅調でした。(ライフサポート分野)保育関連は、新設の認可保育園「ぽっかぽっかにっけ保育園朝霧(兵庫県明石市)」の入園者数が増加し、堅調でした。介護関連も、コロナ禍の影響がありましたが、昨年開業した「ニッケあすも加古川弐番館(兵庫県加古川市)」「ニッケあすも一宮弐番館(愛知県一宮市)」や、グループホーム「ニッケてとて加古川弐番館(兵庫県加古川市)」の入所者数が増加し、堅調でした。スポーツ関連は、前期並みでした。(通信及び新規サービス分野)通信関連は、手数料収入が減少し低調でした。新規サービス関連は、コロナ禍の影響で低迷していた児童向けアミューズメント施設の利用者数が回復したことや、持ち帰り商品の需要増加で菓子類販売等が好調だったことにより、堅調でした。
(d) 生活流通事業生活流通事業の当連結会計年度の売上高は16,802百万円(前年同期比10.1%減)、営業利益953百万円(前年同期比32.4%減)となりました。競争が激化しているEC事業等で、広告宣伝費等の上昇が収益を圧迫しております。(寝装品及び業務用品分野)寝装品は、EC向け販売が低調でした。業務用品は、災害用備蓄毛布や航空機内膝掛け毛布の販売がコロナ禍の影響を受けたことに加え、前期には感染防護衣の大口受注があったことからその比較では不調でした。(生活雑貨分野)100円ショップ向け等の雑貨販売は、当期より株式会社ワイワイがグループに加わり好調でした。在宅勤務向けの家具販売は、低調でした。EC向け生活家電は巣ごもり消費の需要一巡からキッチン家電の販売が不調でした。また、ゲーム用フィルム等の販売は、前期並みでした。(ホビー・クラフト分野)スタンプ販売は、新商品が牽引し前期並みでしたが、スタンプ用インクの販売は、低調でした。また、乗馬用品販売は、前期並みでした。(その他)保険代理店の経営成績は、前期並みでした。コンテナ販売は、新規設置が大幅に増加し好調でした。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動による資金の収入は、前連結会計年度に比べ、棚卸資産の増加等により、2,954百万円減少して9,449百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動による資金の支出は、前連結会計年度に比べ、有価証券の取得による支出の増加等により4,785百万円増加して6,878百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動による資金の支出は、前連結会計年度に比べ、自己株式の取得による支出の増加等により、8,015百万円増加して9,498百万円となりました。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比6,689百万円減少して34,363百万円となりました。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。
2020年度期末
2021年度期末
2022年度期末
自己資本比率(%)
63.8
62.9
65.3
時価ベースの自己資本比率(%)
51.4
37.8
43.6
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
1.8
1.7
2.1
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
132.4
147.6
102.2
(注1)各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値を用いて、以下の計算式により計算しております。 自己資本比率 :自己資本/総資産 時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い(注2)株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。(注3)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。(注4)営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。
③ 生産、受注及び販売の実績当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態・単位等は必ずしも一様でなく、また受注生産をとらない製品もあり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の状況については「①財政状態及び経営成績の状況」における、各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 財政状態の分析当連結会計年度における総資産は163,384百万円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。当連結会計年度における自己資本比率は65.3%となり、当連結会計年度における1株当たり純資産は1,508円32銭となりました。また、自己資本当期純利益率(ROE)は、7.0%(前連結会計年度比1.4ポイント減)となりました。(流動資産)当連結会計年度における流動資産は88,904百万円(前連結会計年度比2.5%減)となりました。その主な内容は、現金及び預金の減少6,656百万円や有価証券の増加3,000百万円等であります。(固定資産)当連結会計年度における固定資産は74,479百万円(前連結会計年度比2.8%増)となりました。その主な内容は、投資有価証券の増加3,430百万円や建設仮勘定の減少634百万円等であります。(流動負債)当連結会計年度における流動負債は38,239百万円(前連結会計年度比4.8%減)となりました。その主な内容は、その他流動負債の減少1,577百万円、短期借入金の減少439百万円等であります。(固定負債)当連結会計年度における固定負債は17,409百万円(前連結会計年度比7.7%減)となりました。その主な内容は、長期借入金の減少1,302百万円や繰延税金負債の増加472百万円等であります。(純資産)当連結会計年度における純資産は107,734百万円(前連結会計年度比3.0%増)となりました。その主な内容は、自己株式の減少3,161百万円、その他有価証券評価差額金の増加1,043百万円等であります。
(b) 経営成績の分析(売上高)当連結会計年度における売上高は109,048百万円(前連結会計年度比2.3%増)となりました。セグメント別の売上高につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。(営業利益)衣料繊維事業につきましては、ビジネスユニフォーム、中国事業が低調であったものの、国内スクールユニフォーム、テキスタイル、ヤーン、合繊テキスタイル分野が堅調に推移したこと等により、営業利益は増加いたしました。産業機材事業につきましては、自動車生産が半導体不足や部材調達問題等の影響を受け減産基調で推移したものの、当期から通期連結となったフジコーが連結業績に寄与した影響もあり、営業利益は増加いたしました。人とみらい開発事業につきましては、建設工事の完工が進んだことや、介護・保育施設の増加、また新規サービス関連のキッズランド事業、菓子販売が好調だったこと等により、営業利益は増加いたしました。生活流通事業につきましては、巣ごもり需要等で前期好調であったEC向け販売(寝装品、家具・生活家電等)が低調だったこと等により、営業利益は減少いたしました。以上の結果、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は22,102百万円(前連結会計年度比3.4%増)となり、営業利益は10,707百万円(前連結会計年度比8.1%増)となりました。
(経常利益)営業外損益は、前連結会計年度に持分法による投資損失を計上していたこと等により、収益増加となりました。以上の結果、当連結会計年度における経常利益は11,715百万円(前連結会計年度比19.7%増)となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益)特別損益は、前連結会計年度に段階取得に係る差損や新型コロナウイルス感染症による損失等を計上していたものの、同じく前連結会計年度に持分法適用関連会社だった㈱フジコーの完全子会社化に伴う負ののれん発生益や新型コロナウイルス感染症による助成金収入等を計上していたこと等により、収益減少となりました。以上の結果、当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は11,112百万円(前連結会計年度比1.0%増)となり、法人税等の減少等により、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は7,283百万円(前連結会計年度比12.3%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a) キャッシュ・フローの分析当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(b) 資本の財源及び資金の流動性当社グループの運転資金需要は、主に衣料繊維事業における原材料の仕入や製造経費、販売費及び一般管理費等であり、投資を目的とした資金需要は、主に保有する不動産への設備投資等によるものであります。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は19,445百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は34,363百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、以下のとおりであります。
(繰延税金資産)当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(固定資産の減損)当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位でグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、将来の利益計画に基づき慎重に検討を行っておりますが、その見積りの前提とした条件や仮定に変化が生じた場合、減損処理が必要になる可能性があります。
(退職給付会計)退職給付に係る資産及び負債のうち、確定給付制度に係る分については、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。実際の計算が前提条件と異なる場合、または制度に変化や変更が生じた場合は、将来の退職給付に係る負債、及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
(3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、「売上高」、「営業利益」、「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は109,048百万円(前連結会計年度比2.3%増)、「営業利益」は10,707百万円(前連結会計年度比8.1%増)、「自己資本当期純利益率(ROE)」は7.0%(前連結会計年度比1.4ポイント減)となりました。
なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。