【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況当連結会計年度における経済環境は、新型コロナウイルスの感染再拡大があったものの、ワクチン接種の普及や感染拡大防止策の取組みにより行動制限が緩和され、一部持ち直しの動きが見られました。しかしながら、エネルギー及び原材料価格の高騰や急激な為替の変動等により、依然として先行き不透明な状況となりました。このような厳しい経営環境においても、当社グループは、中期方針「未知の可能性への挑戦!」に基づき、変化し続けるお客様ニーズに応え、安定した収益確保と継続的な成長を果たすため、“イノベーションと顧客開発”及び“企業体質の再建”を柱とした事業戦略を推進しております。併せて、企業の潜在力である人材力、開発力、環境対応力を高める経営を継続し、企業体質の強化に取り組んでおります。当連結会計年度の連結業績は、売上高1,323億64百万円(前連結会計年度比20.6%増)、営業利益128億31百万円(同17.7%増)、経常利益153億45百万円(同28.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益110億23百万円(同28.9%増)となりました。売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高を更新しました。
当連結会計年度のセグメントの概況は、次のとおりであります。(車輌資材事業)国内事業では、世界的な半導体不足による自動車減産の影響を受けましたが、新規商権の立ち上げがあったことや、前年に比べ受注が回復したことにより、増収となりました。利益面では、エネルギー及び原材料価格の高騰が影響したものの、業務の効率化をはじめとする経費削減活動により増益となりました。海外事業(2022年1~12月)では、売上面で上海ロックダウンによる自動車減産の影響を受けた一方で、アジアにおいて合成皮革「クオーレ®」の販売が堅調に推移し、増収となりました。利益面では、原材料価格の高騰、更には海上輸送費高騰の影響を大きく受けたものの、国内同様、業務の効率化をはじめとする経費削減により増益となりました。当事業の売上高は820億85百万円(前連結会計年度比27.4%増)、営業利益は91億8百万円(同19.3%増)となりました。(ハイファッション事業)アウトドア人口増加の影響により、スポーツアパレルは順調に推移し、ファッションアパレルにおいても、一部百貨店ブランドにおいてコロナ禍からの回復が見られ、特に環境に配慮した商品への関心の高まりにより、再生PETや生分解性商品の売上が拡大しました。また、KBセーレン㈱における裏地事業が底堅く推移したとともに、制電衣料用「ベルトロン」の売上が増加しました。当事業の売上高は215億42百万円(前連結会計年度比15.6%増)、営業利益は7億63百万円(同328.6%増)となりました。(エレクトロニクス事業)上海ロックダウンや中国市場の景況感悪化の影響を受け、スマートフォンやゲーム機関連商材の売上が減少した一方で、タブレット、ヘッドフォン等向け素材の販売が順調に推移しました。KBセーレン㈱においては、エンプラ繊維の売上が増加しましたが、HDD用ワイピングテープや光ファイバー向け「ザヴィーナ」が一部客先の在庫調整の影響を受け、伸び悩みました。セーレンKST㈱においては、各種センサー用SOIウェーハ、並びに電子機器の開発や製品テスト向け酸化膜ウェーハが好調となりました。当事業の売上高は110億43百万円(前連結会計年度比4.8%増)、営業利益は18億96百万円(同14.7%増)となりました。(環境・生活資材事業)ハウジング資材関連は戸建て住宅着工戸数減少の影響を受けたものの、新規商権の獲得や環境対応商材が好調に推移したことにより、売上が増加しました。また、住生活資材関連は病院・介護向けに機能性を高めた製品の販売増加等が売上に貢献したほか、オフィスパーテーション等、感染症対策関連商材が好調となりました。当事業の売上高は97億3百万円(前連結会計年度比13.7%増)、営業利益は9億98百万円(同8.6%増)となりました。
(メディカル事業)化粧品事業は上海ロックダウンの影響を受け、海外向けの売上が大幅に減少しましたが、医療向け消臭関連商材が順調に推移したことや、KBセーレン㈱の貼付材と「エスパンシオーネ」の絆創膏用途が拡大したことにより、売上が増加しました。しかしながら、利益面ではエネルギー及び原材料価格高騰の影響を受け、減益となりました。当事業の売上高は71億11百万円(前連結会計年度比5.6%増)、営業利益は10億66百万円(同22.9%減)となりました。(その他の事業)㈱ナゴヤセーレンの不動産賃貸管理事業等が堅調に推移しました。当事業の売上高は8億78百万円(前連結会計年度比1.7%減)、営業利益は5億10百万円(同1.0%減)となりました。
② 財政状態
(資産の部) 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して123億1百万円増加の1,677億95百万円となりました。流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産や棚卸資産が増加し、前連結会計年度末と比較して75億55百万円の増加となりました。固定資産は、設備投資に加え、海外子会社の財務諸表の換算レートが円安になったことにより、有形固定資産が増加し、前連結会計年度末と比較して47億46百万円の増加となりました。
(負債の部)負債の部は、支払手形及び買掛金が増加した一方で、借入金が減少したことにより全体で16億39百万円減少し、620億9百万円となりました。
(純資産の部)純資産は、為替換算調整勘定の変動、利益剰余金の増加などにより、全体で139億40百万円増加し、1,057億85百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況キャッシュ・フローの状況につきましては、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は341億41百万円となり、前連結会計年度末より13億9百万円減少しました。「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、129億43百万円の収入(前連結会計年度は97億12百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益149億57百万円、減価償却費53億13百万円があった一方で、売上債権の増加による支出28億23百万円や棚卸資産の増加による支出12億24百万円があったことによるものです。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、96億14百万円の支出(前連結会計年度は86億52百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出83億19百万円があったことによるものです。「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、70億9百万円の支出(前連結会計年度は66億23百万円の支出)となりました。これは主に、借入金の返済による支出37億97百万円、配当金の支払による支出23億6百万円があったことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(百万円)
前年同期比(%)
車輌資材
39,328
36.4
ハイファッション
12,323
9.8
エレクトロニクス
7,087
1.4
環境・生活資材
2,196
6.3
メディカル
3,848
6.1
合計
64,785
22.8
(注) 1. 当社企業集団の各事業は、素材の支給を受けて委託加工を行う事業と素材を仕入れて加工を行い販売する事業から成り、各々の加工高を生産実績としております。2. セグメント間の取引については、内部振替前の数値によっております。
b. 受注状況当社及び連結子会社は、受注生産形態をとらない製品が多いため、セグメントごとに受注状況は記載しておりません。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(百万円)
前年同期比(%)
車輌資材
82,085
27.4
ハイファッション
21,542
15.6
エレクトロニクス
11,043
4.8
環境・生活資材
9,703
13.7
メディカル
7,111
5.6
その他
878
△1.7
合計
132,364
20.6
(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。2. 相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える相手先がいないため、主な相手先に対する販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載は省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 経営成績の分析(売上高と営業利益)当連結会計年度の売上高と営業利益の分析につきましては、「(1)経営成績等の概要① 経営成績の状況」に記載のとおりであり、売上高原価率は72.2%と前連結会計年度比1.5ポイントの上昇、また、売上高営業利益率は9.7%と前連結会計年度比0.2ポイントの低下となりました。
(営業外損益と経常利益)当連結会計年度の営業外損益は25億13百万円の利益となり、前連結会計年度の10億26百万円の利益から14億87百万円の増加となりました。これは、雇用調整助成金が89百万円減少した一方で、為替差損益が15億9百万円増加したことなどによります。この結果、経常利益は153億45百万円と、前連結会計年度比34億17百万円(28.7%)の増益となりました。
(特別損益)当連結会計年度の特別損益は3億87百万円の損失となり、前連結会計年度の2億22百万円の損失から1億65百万円の損失拡大となりました。これは、固定資産処分損が1億80百万円減少した一方で、子会社事業構造改善費用が1億37百万円、投資有価証券評価損が2億14百万円増加したことなどによるものです。
(親会社株主に帰属する当期純利益)経常利益の153億45百万円に特別損益の損失3億87百万円を減じた結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は149億57百万円となりました。ここから税金費用38億74百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益59百万円を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は110億23百万円となり、前連結会計年度比24億70百万円(28.9%)の増益となりました。この結果、1株当たり当期純利益は205円43銭となり、前連結会計年度の159円43銭から46円増加しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 財政状態の分析
当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の概要 ② 財政状態」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの分析当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いた当連結会計年度のフリー・キャッシュフローは33億29百万円となりました。
b.資本の財源及び資金の流動性係る情報当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製商品仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、海外子会社を中心とした生産能力増強のための設備投資であります。当社グループは、事業の拡大や新規事業構築のための戦略的設備投資、グローバル化投資、研究開発投資及びM&A等に資金を機動的に活用するとともに、リスクを許容できる十分な株主資本の水準を保持することを基本方針としております。これに従い、営業活動によるキャッシュ・フローの確保に努めるとともに、不足分については、基本的に銀行借り入れによる調達を実施しております。なお、キャッシュ・フロー等に関する主要指標の推移は、下記のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
58.5
62.0
55.0
58.2
62.3
時価ベースの自己資本比率(%)
72.4
57.0
72.1
76.8
74.4
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
2.0
1.1
2.7
3.1
2.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ
123.1
176.7
260.1
310.9
340.4
(注)自己資本比率:自己資本/総資産時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い 1. 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
2. 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しています。3. 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、短期借入金、長期借入金及び新株予約権付社債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しています。
④ 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの会計方針のうち、見積り等の重要性が高いものは以下のとおりです。
(固定資産及びのれんの減損会計における将来キャッシュ・フロー)固定資産及びのれんのうち減損の兆候がある資産または資産グループにつき、将来の収益性が著しく低下した場合には、固定資産及びのれんの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。この回収可能価額については、事業計画に基づく将来キャッシュ・フローによる見積りに依存するため、経営環境の変化等によりその見積り額が減少した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。なお、減損会計に係る会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(繰延税金資産の回収可能性)将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を評価した上で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得は過去の業績及び事業計画等に基づいて見積っておりますが、税制改正や経営環境の変化等によりその見積り額が減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用を計上する可能性があります。繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」に記載のとおりです。当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の収束時期の見通しは困難であるものの、固定資産の減損や繰延税金資産の認識の見積りを要する会計処理に際して、2020年より生じている国内外の経済活動への悪影響は、ワクチン普及等により緩やかに正常化が進むものと仮定しております。なお、新型コロナウイルス感染症の収束時期等の見通しには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの仮定と異なる可能性があります。
⑤ 目標とする経営指標の達成状況等当社及び当社グループは、グループトータルの企業価値を最大にするための連結経営を基本としております。その目標とする連結経営指標は、売上高営業利益率10%以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目標としております。さらには、ROA(総資産事業利益率)、自己資本比率、キャッシュ・フローなどを念頭に、企業価値を高めるための経営を行ってまいります。なお、当連結会計年度の連結売上高営業利益率は9.7%(前連結会計年度9.9%)、ROEは11.3%(同10.1%)でした。