【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況近年では、SDGs(※1)に始まり、世界中で廃棄ロス問題が大きくクローズアップされています。日本では年間約22兆円(平成28年度法人企業統計(財務省)などを基に当社試算)の商品が、そして世界では年間100兆円の商品が廃棄されております。この課題に対して、当社グループは正面から向き合い解決すべく、「RE-INFRA COMPANY」と自身を再定義しました。「RE」とは、すでにあるものを捉え直し、より良く組み替え、再構成するという意味を含んでおり、当社グループは「RE」に関する様々な機能を繋げ統合することで、モノとそれに関わるヒトの価値を、再配分・最適配分し、廃棄ロスという社会問題を解決することに挑んでおり、祖業である価格比較メディア(aucfan.com)の運営から、BtoBの卸プラットフォーム(NETSEA)、EC一括運営効率化ツール(タテンポガイド)、寄付型ショッピングサイト(Otameshi)など事業拡大してまいりました。2020年10月からは海外展開も本格的に開始しております。事業においては、創業来培った売買データとAI技術により商品の時価を可視化し、企業在庫の価格と販路を最適化する予測モデルを構築した在庫価値ソリューション事業(※2)、中小企業・副業/個人事業主を中心とした小売・流通業向け流通を支援する商品流通プラットフォーム事業(※2)により、トータルEC支援ソリューションを展開することにより、中長期的には、各サービスが担う「RE」に関する様々な機能をつなげ統合することで、企業在庫の価値算定から再流通までをワンストップで可能にするインフラを構築し、巨大な廃棄ロス問題の解決に挑んでまいります。「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、当社グループが相対する市場である消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、2019年に10兆515億円(前年比8.1%増、物販系分野のみ)、EC化比率(※3)6.76%(前年比0.54ポイント増)、BtoB-EC市場は2019年に353兆円(前年比2.5%増)、EC化比率は31.7%(前年比1.5ポイント増)、このうち卸売事業におけるEC化比率は28.8%(前年比1.1ポイント増)と市場成長が継続しており、今後も市場の成長だけではなくECを活用したEC化比率に関しても「巣ごもり消費」等による影響を受け、BtoCのみならずBtoB市場双方で上昇するものと想定され、今後もますます当社グループの関連市場の拡大が予想されます。このような事業環境の中、当連結会計年度は在庫価値ソリューション事業及び商品流通プラットフォーム事業において、当社グループの最大の強みである膨大な商品実売データとそこから得られる解析知見をベースとし、今後期待される関連市場の強い成長以上に事業成長を実現させるべく積極的に投資を行ってまいりました。在庫価値ソリューション事業は、企業が保有する在庫価値の可視化・最適化等を推進するソリューションを主として提供する当社グループの基盤の一つとなるセグメントであり、AIにより在庫の時価を可視化し、企業が持つ在庫に関する課題を特定し販売価格・品揃えを最適化するサービス「zaicoban」の開発・サービスインや、複数のEマーケットプレイスへの同時出品・在庫連動等が可能なASPサービス「タテンポガイド」や「aucfan.com」に関連したツール類の追加機能開発を積極的に実施しました。一方で、顧客ユーザー獲得のためのプロモーション活動等の広告宣伝費を積極的に投下した結果、売上高1,932,311千円(前年同期比0.8%増)、営業利益367,824千円(前年同期比8.6%減)となりました。商品流通プラットフォーム事業は、企業の滞留在庫・商品等の流通を支援しており、複数のマーケットプレイスの運営や、流通を加速させる人材育成スクールの運営等を実施しております。国内最大級のBtoB仕入れサイト「NETSEA」、寄付型ショッピングサイト「Otameshi」、法人向け商品流動化支援事業「リバリューBtoBモール」及びオークション教育・個別サポートサービス「オークファンスクール」それぞれにおいて商品流通量の増加、認知度の向上を目的とした積極的な広告宣伝費の投下など、成長に向けた施策を継続的に実施しております。2020年4月には「NETSEA」で月間流通額の過去最高流通額(月間12.6億円)を記録、「リバリューBtoBモール」では過去最高益を記録した後も継続的に好調を維持するなど、いわゆる「巣ごもり消費」に関連して、BtoC、BtoBを問わずインターネットを介した売買がこれまでにない勢いで活性化しており、今後においてもこの潮流は変わることなく一層強いトレンドになるものと想定しており、引き続き流通量を増加させるための施策及び認知度向上の施策を実施しております。
「オークファンスクール」においては、新型コロナウイルス感染症に伴う3密を回避するべく、セミナー開催などを一時的に自粛したことにより業績に影響を受けたものの、オンライン開催への早期転換によりオンラインノウハウを一層早く蓄積することができ、早期業績回復につなげることができました。また、今後もこれらの知見を活用することにより一層の成長が出来るものと考えております。また連結子会社である株式会社SynaBizにおいて企業の在庫再流通を促進することを目的に中古品を中心とした仕入れ・販売事業を新たに開始いたしました。これらの結果、売上高4,384,142千円(前年同期比11.8%増)、営業利益282,895千円(前年同期比487.7%増)となりました。インキュベーション事業は、事業投資活動を通じて当社が中長期に亘り競合優位性を構築・維持していくための知見とネットワークを得ることを目的とした事業セグメントであります。営業投資有価証券の売却及び投資先企業へのコンサルティング等を実施した結果、売上高1,270,084千円(前年同期比57.2%増)、営業利益503,625千円(前年同期比12.1%減)となりました。以上の結果、当連結会計年度における売上高は7,437,424千円(前年同期比13.8%増)、営業利益は779,528千円(前年同期比18.2%増)、経常利益は803,414千円(前年同期比23.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は423,120千円(前年同期比38.0%増)となりました。当連結会計年度の自己資本当期純利益率に関しましては7.5%(前年同期比2.9ポイント減)となりました。
※1 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。2015年に国連で採択された2030年までに達成すべき目標※2 2020年9月期より、在庫価値ソリューションの提供及び流通の最適化を目的とした組織運営・経営管理体制の構築に伴い、これまでの「メディア事業」「マーケットプレイス事業」「ソリューション事業」「インキュベーション事業」の4セグメントから、「在庫価値ソリューション事業」「商品流通プラットフォーム事業」「インキュベーション事業」の3セグメントへ変更いたしました。そのため、前連結会計年度比については、前連結会計年度の数値を報告セグメント変更後の数値に組み替えて比較を行っております。※3 EC化比率とは、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指します。
② 財政状態の状況資産の部(流動資産)当連結会計年度末における流動資産は、11,918,031千円(前連結会計年度末は4,023,070千円)となりました。主な要因といたしましては、現金及び預金が1,350,498千円増加、受取手形及び売掛金が377,674千円増加、投資先である株式会社サイバーセキュリティクラウド(証券コード:4493)の上場に伴う株式の時価評価による影響により営業投資有価証券が6,048,473千円増加した結果であります。(固定資産)当連結会計年度末における固定資産は、1,213,044千円(前連結会計年度末は1,472,093千円)となりました。主な要因といたしましては、ソフトウエアが40,262千円増加、繰延税金資産が114,105千円減少、のれんが115,135千円減少した結果であります。(繰延資産)当連結会計年度末における繰延資産の計上はありませんでした(前連結会計年度末は931千円)。要因といたしましては、社債発行費が931千円減少した結果であります。
負債の部(流動負債)当連結会計年度末における流動負債は、2,651,702千円(前連結会計年度末は1,717,945千円)となりました。主な要因といたしましては、短期借入金が833,332千円増加、未払法人税等が289,571千円増加、買掛金が73,991千円減少、1年内償還予定の社債が125,000千円減少、1年内返済予定の長期借入金が61,878千円減少した結果であります。
(固定負債)当連結会計年度末における固定負債は、2,389,861千円(前連結会計年度末は576,670千円)となりました。主な要因といたしましては、投資先株式の時価評価により繰延税金負債が1,685,454千円増加、長期借入金が126,226千円増加であります。
純資産の部当連結会計年度末における純資産は、8,089,511千円(前連結会計年度末は3,201,480千円)となりました。主な要因といたしましては、投資先株式の時価評価によりその他有価証券評価差額金が4,419,610千円増加、利益剰余金が423,120千円増加、資本金が22,925千円増加、資本剰余金が22,925千円増加した結果であります。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より1,350,498千円増加し、2,704,994千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)税金等調整前当期純利益709,328千円、減価償却費242,021千円、のれん償却額115,135千円、営業投資有価証券の減少額354,199千円などの計上に対し、売上債権の増加額377,146千円、たな卸資産の増加額184,720千円、仕入債務の減少額78,488千円、法人税等の支払額148,072千円などにより、営業活動の結果獲得した資金は788,225千円(前年同期は6,607千円の使用)となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)差入保証金の回収による収入13,893千円、貸付金の回収による収入10,185千円の計上に対し、有形固定資産の取得による支出7,519千円、無形固定資産の取得による支出300,842千円などにより、投資活動の結果使用した資金は287,410千円(前年同期は322,253千円の使用)となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)短期借入れによる収入1,700,000千円、長期借入れによる収入500,000千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入45,780千円などの計上に対し、短期借入金の返済による支出866,668千円、長期借入金の返済による支出435,652千円、社債の償還による支出125,000千円などにより、財務活動の結果獲得した資金は849,145千円(前年同期は411,065千円の使用)となりました。
なお、当社グループの運転資金及び設備投資資金は自己資金並びに借入金等により充当しております。当連結会計年度末の有利子負債残高は2,176,603千円となり、前連結会計年度末に比べ772,471千円増加しておりますが、自己資本比率は61.5%と依然として高い水準を維持しております。資金の流動性に関しましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は2,704,994千円と十分な流動性を確保しております。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績当社グループの主たる事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績当社グループでは概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
c.販売実績当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自
2019年10月1日至
2020年9月30日)
前年同期比(%)
在庫価値ソリューション(千円)
1,789,412
99.8
商品流通プラットフォーム(千円)
4,377,928
112.3
インキュベーション(千円)
1,270,084
157.2
合計(千円)
7,437,424
113.8
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度(自 2018年10月1日至 2019年9月30日)
当連結会計年度(自 2019年10月1日至 2020年9月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
GMOペイメントゲートウェイ株式会社(注)2.3
799,376
12.2
―
―
株式会社SBI証券(注)3.4
―
―
1,231,246
16.6
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。2.回収代行契約を締結しており、上記金額は一般顧客に対する回収代行依頼金額を記載しております。3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。4.営業投資有価証券の売却による売上金額を記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析当連結会計年度における売上高は7,437,424千円(前年同期比13.8%増)、営業利益は779,528千円(前年同期比18.2%増)、経常利益は803,414千円(前年同期比23.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は423,120千円(前年同期比38.0%増)となりました。なお、詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性について当社グループにおける運転資金需要の主なものは、仕入費用、販売費及び一般管理費の営業費用による営業資金及び設備投資資金であります。当社グループの資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達となります。
③ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループの事業に関連するEC市場規模については、消費者向け(BtoC-EC)及び企業間(狭義BtoB-EC)市場規模においても好調な拡大が今後も継続的に見込まれるものと思われます。近年SDGs(※1)に始まり、世界中で大きくクローズアップされている廃棄ロス問題(※2)に対して正面から向き合い解決すべく「RE-INFRA COMPANY」と自身を再定義した上で、当社グループの継続的かつ飛躍的な事業成長に取り込むため、2020年9月期においても、積極的かつ重点的な投資計画を推進しております。当社グループの成長モデルとして、在庫価値ソリューション領域、商品流通プラットフォーム領域の2領域及びこれら領域の基礎となる購買データの蓄積並びにインキュベーション領域において、売上・KPI目標を定め、各々を伸ばしてまいります。具体的には、在庫価値ソリューション領域、商品流通プラットフォーム領域共に商品の流通額が重要なKPIであります。今後もサプライヤー成長コンサルティング、海外バイヤーとの連携による新市場の開拓、物流関連業務の提供、グループ間シナジーの強化及びトータルソリューションサービスの提供により、更なる成長を図ります。また、創業来オークファンが蓄積し続けてきた膨大な商品実売データも活用し、企業のもつ滞留在庫・余剰在庫の価値を可視化し、より積極的に市場再流通を促すことで、当社グループ経由の流通額の拡大を図ってまいります。在庫価値ソリューション領域におけるメディア『aucfan.com』においてはUV(ユニーク・ビジター)及び会員数がKPIであります。今後も引き続きプロモーション強化施策、SEO対策、ECサイト各社とのアライアンス強化などによるユーザー(オークファンプロPlus会員数含む)の拡大、運営ノウハウの提供により更なる成長を図ります。商品流通プラットフォームにおきましては各サービスにおける流通高の増加をKPIとしており、掲載商品数の増加(サプライヤーの開拓)を図るべく各種プロモーション強化施策を展開することにより、更なる成長を図ります。各種商品関連データ蓄積においては、取得件数と対応マーケットプレイス数がKPIであります。今後も引き続きクローリング/スクレイピング技術、データマイニング技術、機械学習などを活かした分析ツールの提供により、更なる成長を図ります。インキュベーション領域では投資利回り及び情報収集がKPIであります。今後もベンチャー企業を中心とした投資を進めるとともに、当社グループを取り巻く市場環境の最新テクノロジー等の情報を収集してまいります。
④ 経営者の問題認識と今後の方針について当社グループは、近年SDGs(※1)に始まり、世界中で大きくクローズアップされている廃棄ロス問題(※2)に対して正面から向き合い解決すべく「RE-INFRA COMPANY」と自身を再定義しました。「RE」とは、すでにあるものを捉え直し、より良く組み替え、再構成するという意味を含んでおり、当社グループは「RE」に関する様々な機能を繋げ統合することで、モノとそれに関わるヒトの価値を、再配分・最適配分し、廃棄ロスという深刻な社会問題を解決することにより、当社グループのサービス利用者及び顧客の満足度向上を図り、企業価値・株主価値の向上を目指しております。※1 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。2015年に国連で採択された2030年までに達成すべき目標※2 日本では年間約22兆円(平成28年度法人企業統計(財務省)などを基に当社試算)の商品が、そして世界では年間100兆円の商品が廃棄されております。
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