【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
経営成績等の状況の概要
(1)経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大防止策としての海外渡航客向け水際対策の緩和や、国内向け旅行支援策の開始の決定等により、観光関連の業種を中心として、一定の盛り上がりが見受けられるものの、長期化しているロシアのウクライナへの侵攻をはじめとする地政学リスクの高まりや、それらに伴うエネルギー価格・資源価格の高騰、円安による物価上昇等の影響を受け、国内経済の見通しについては依然として不透明な状況であります。
このような経営環境のもと、当社グループの主たる顧客層である学生の動向におきましては、大学(大学院を含む)の学生数は293.1万人と前年より1.3万人増加(文部科学省「令和4年度学校基本調査(速報値)」)しており、当社グループを取り巻く市場環境につきましては引き続き追い風となる状況となっております。
このような環境の中で、当社グループにおきましては、中期経営計画『GT01』(2021年10月期~2023年10月期)の2年目にあたる当連結会計年度において、主力の不動産賃貸管理事業では、新規物件開発の積極展開を通じて収益基盤となる物件管理戸数が堅調に増加するとともに、オンラインによる非対面での営業活動の定着もみられ、前年に引き続き高水準の入居率を確保するに至り、好調な経営成績で推移いたしました。また、投下資本の回収を意図した自社所有物件の売却に伴う固定資産売却益の計上も経営成績に寄与し、中期経営計画2年目におきましても、当初計画を上回る高水準で推移することとなりました。
中期経営計画の最終年度である次年度につきましても、計画の超過達成を通じてより一層の成長を目指し、積極的な新規物件開発による収益基盤の底上げや、高水準の入居率確保へ向けた募集力、斡旋力の強化に努めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度の連結売上高は57,922百万円(前年同期比9.7%増)、経常利益は6,189百万円(同19.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,303百万円(同32.3%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用により、売上高は727百万円、売上原価は719百万円それぞれ減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益は7百万円それぞれ減少しております。
セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりであります。
① 不動産賃貸管理事業
物件管理戸数は順調に増加し当初計画を上回りました。(前期比4,665戸増 80,611戸 ※4月末現在)また、オンラインによる非対面での営業活動の定着もみられ、入居率は前年に引き続き高水準を確保しました。(99.9% ※4月末現在)この結果、学生マンションの家賃収入をはじめとする各種不動産賃貸関連サービスにおける売上高は順調に推移しました。
費用面では、借上物件の管理戸数増加による保証家賃の増加、人員数の増加による人件費の増加、自社所有物件の増加に伴う減価償却費の増加、食事付き学生マンションの積極展開による食材仕入等、当社グループの業容拡大に伴う費用負担がそれぞれ増加しております。
また、下期におきまして、当社グループ従業員へ利益の一部を還元するとともに、昨今の急激な物価上昇を受け、グループ従業員の生活支援とモチベーション向上を目的に、一時金としてインフレ特別手当を計上しました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、前連結会計年度に引き続き、当連結会計年度における当セグメントの経営成績に対して直接的に大きな影響はありません。
以上の結果、売上高54,433百万円(前期比9.9%増)、セグメント利益7,780百万円(同17.1%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は678百万円、売上原価は670百万円それぞれ減少し、セグメント利益は7百万円減少しております。
② 高齢者住宅事業
当連結会計年度におきましては、2021年10月にオープンした『グランメゾン迎賓館豊中刀根山』による売上高の増加はあったものの、第1四半期連結会計期間における新型コロナウイルス感染症の感染拡大傾向への懸念から、高齢者施設に入居する時期を先延ばしにするといった一時的に入居を控える動き等の影響が尾を引き、当社の運営する高齢者施設の稼働率は足もとの状況では改善がみられましたが、全体的に弱含みの状態で推移いたしました。
費用面では派遣社員の利用増加に伴い人件費が増加しました。
また、2022年8月30日付で株式会社京都銀行の社会的課題の解決に資する事業へ充当することを目的とした「ソーシャルローン」の枠組みを利用した資金調達を行い、当社の運営する『グランメゾン迎賓館京都桂川』を取得いたしました。これにより社会的課題の解決に貢献することはもとより、従来の一括借上契約による運営から自社所有物件としての運営へ移行することにより、運営体制の効率化を図り、利益率の向上へ向けた取り組みも進めております。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響について、当連結会計年度における当セグメントの経営成績に対して直接的に大きな影響はありません。引き続き、入居者、施設スタッフへのワクチン接種をはじめ、感染防止を徹底した各種取り組みを継続的に行ってまいります。
以上の結果、売上高2,866百万円(前期比2.3%増)、セグメント利益260百万円(同26.3%減)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は49百万円減少しておりますが、売上原価が同額減少しているため、セグメント利益への影響はありません。
③ その他
当連結会計年度におきましては、日本語学校事業では、新型コロナウイルス感染症の断続的な感染再拡大に伴う入国制限の長期化の影響を受け、待機留学生の発生、受け入れ時期の遅延から事業収益は低調な状況で推移しておりましたが、政府による水際対策の緩和等を受け、ようやく留学生の受け入れも再開する運びとなり、特に第3四半期連結会計期間において事業収益は大幅に改善いたしました。
一方では、留学生の入国時に係る隔離費用等のコスト負担もあったため、前連結会計年度に比べ改善はみられたものの、依然として弱含みの状況となっております。
第0新卒事業を運営する株式会社スタイルガーデンは、年間を通じて当初計画を上回る順調なペースで推移しました。今後につきましても、より一層、学生支援に係る当社グループの従来事業とのグループシナジーの発揮に努めてまいります。
その結果、売上高622百万円(前期比33.5%増)、セグメント損失59百万円(前期はセグメント損失172百万円)となりました。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度末に比べて1,950百万円増加し、14,633百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、資金の増加は6,043百万円(前年同期4,910百万円 資金の増加)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益6,475百万円、非資金項目である減価償却費1,228百万円及び法人税等の支払額2,037百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は7,089百万円(前年同期7,221百万円 資金の使用)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出7,250百万円、敷金及び保証金の差入による支出704百万円及び有形固定資産の売却による収入738万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、資金の増加は2,996百万円(前年同期5,694百万円 資金の増加)となりました。これは、主に長期借入れによる収入5,700百万円、長期借入金の返済による支出2,038百万円、自己株式の取得による支出399百万円及び配当金の支払額367百万円によるものです。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
該当事項はありません。
② 受注実績
該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2021年11月1日
至 2022年10月31日)
前年同期比(%)
不動産賃貸管理事業(千円)
54,433,312
109.9
高齢者住宅事業(千円)
2,866,999
102.3
報告セグメント計(千円)
57,300,311
109.5
その他(千円)
622,646
133.5
合計(千円)
57,922,958
109.7
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づき分析した内容であります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであり、実際の経営成績等は異なることがあります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析
当連結会計年度の経営成績の分析につきましては前述の「(1)経営成績の状況」をご参照ください。
2030年長期ビジョン『Grow Together 2030』に基づく中期経営計画『GT01』(2021年10月期~2023年10月期)に掲げる経営数値目標と実績との比較分析は以下のとおりとなっております。
『GT01』の計画策定時点において、主力の不動産賃貸管理事業では、新型コロナウイルス感染症感染拡大による、学生の動向や大学等教育機関の動向を考慮の上、全国各エリアにおいて一定の入居率の低下を見込んでおりました。しかしながら、計画実践初年度である2021年10月期の賃貸入居需要の繁忙期に当たる第2四半期連結会計期間(2月~4月)において、当初の見込みを一転し、前年実績を上回る入居水準に達するといった好調な状況となりました。また、その後の入居状況についても底堅く推移したことに加え、オンラインを通じ非対面を中心とした営業戦略推進による運営効率化によって、コスト圧縮も想定以上に進んだこともあり、初年度における当初の計画数値を大幅に超過するに至りました。
さらに、2021年7月26日の取締役会決議に基づき、新株式の発行及び株式売出しといった資本政策を実施し、調達資金による成長投資の加速と、投資家層の拡大、市場株式の流動性向上を図りました。
以上のことから、2021年12月14日の取締役会において、『GT01』における2023年10月期目標数値の一部について引き上げることを決定いたしました。
■ 『GT01』2023年10月期 経営数値目標
売上高
622億円
(当初目標:619億円)
営業利益
67億円
(当初目標:60億円)
経常利益
65億円
(当初目標:58億円)
親会社株主に帰属する当期純利益
43億円
(当初目標:38億円)
資本効率
ROE
15%以上
(変更なし)
ROIC
8%以上
(変更なし)
財務安全性
自己資本比率
40%以上
(変更なし)
流動比率
120%以上
(変更なし)
入居関連指標
管理戸数
85,000戸
(変更なし)
契約決定件数
30,000件
(変更なし)
成長投資
自社物件
250億円
(当初目標:200億円)
システム投資
7億円
(当初目標:6億円)
■ 実績及び達成率
GT01
2021年10月期
達成率
(%)
2022年10月期
達成率
(%)
2023年10月期
達成率
(%)
売上高
(千円)
62,255,647
52,787,978
(52,017,025)
101.5
57,922,958
(57,290,107)
101.1
-
(63,181,144)
-
営業利益
(千円)
6,743,437
5,337,935
(4,268,167)
125.1
6,312,419
(5,881,160)
107.3
-
(6,783,470)
-
経常利益
(千円)
6,564,473
5,203,523
(4,123,011)
126.2
6,189,807
(5,741,181)
107.8
-
(6,639,370)
-
親会社株主に帰属する当期純利益
(千円)
4,358,213
3,252,963
(2,698,673)
120.5
4,303,897
(3,817,684)
112.7
-
(4,421,899)
-
(注)1.( )内は単年度計画
2.2021年10月期及び2022年10月期( )内は、前連結会計年度策定時点の当初単年度計画を表示
3.2023年10月期( )内は、当連結会計年度(2022年10月期)策定の単年度計画を表示(GT01の超過達成を見込む)
4.達成率は各連結会計年度の単年度計画に対する比率を表示
■ 資本効率
GT01
2021年10月期
(実績)
2022年10月期
(実績)
2023年10月期
(実績)
ROE
(%)
15%以上
16.1
17.2
-
ROIC
(%)
8%以上
10.5
10.0
-
■ 財務安全性
GT01
2021年10月期
(実績)
2022年10月期
(実績)
2023年10月期
(実績)
自己資本比率
(%)
40%以上
46.0
45.4
-
流動比率
(%)
120%以上
155.4
158.6
-
■ 入居関連指標
GT01
2021年10月期
(実績)
進捗率
(%)
2022年10月期
(実績)
進捗率
(%)
2023年10月期
(実績)
進捗率
(%)
管理戸数
(戸)
85,000
75,946
89.3
80,611
94.8
-
-
契約決定件数
(件)
30,000
29,146
97.2
29,454
98.2
-
-
(注)1.管理戸数は4月末現在の不動産賃貸管理事業に係る数値
2.契約決定件数は11月~10月決定数値
■ 成長投資
GT01
2021年10月期
(実績累計)
進捗率
(%)
2022年10月期
(実績累計)
進捗率
(%)
2023年10月期
(実績累計)
進捗率
(%)
自社物件 (千円)
25,000,000
6,736,301
26.9
13,697,896
54.8
-
-
システム投資(千円)
700,000
249,499
35.6
470,259
67.2
-
-
(注)1.自社物件の実績累計は連結貸借対照表計上額を集計
2.システム投資の実績累計は連結貸借対照表計上額に同投資に係る維持管理費用を加算
b. 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は58,938百万円となり、前連結会計年度末の50,335百万円から8,602百万円の増加(前期比17.1%増)となりました。
(流動資産)
流動資産につきましては、16,607百万円となり、前連結会計年度末の14,371百万円から2,236百万円の増加(前期比15.6%増)となりました。これは、主として現金及び預金が1,950百万円、営業未収入金及び契約資産が653百万円(前連結会計年度末は「営業未収入金」647百万円として表示)それぞれ増加したことによるものであります。
なお、収益認識会計基準等の適用により、前連結会計年度において「流動資産」に表示していた「営業未収入金」は、当連結会計年度より「営業未収入金及び契約資産」に含めて表示しております。
(固定資産)
固定資産につきましては、42,330百万円となり、前連結会計年度末の35,964百万円から6,366百万円の増加(前期比17.7%増)となりました。これは、主として有形固定資産が5,760百万円、敷金及び保証金が394百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(流動負債)
流動負債につきましては、10,469百万円となり、前連結会計年度末の9,245百万円から1,224百万円の増加(前期比13.2%増)となりました。これは、主として前受金、営業預り金及び契約負債が5,958百万円(前連結会計年度は「前受金及び営業預り金」4,326百万円、「前受収益」902百万円としてそれぞれ表示)、未払法人税等が248百万円それぞれ増加したことによるものであります。
なお、収益認識会計基準等の適用により、前連結会計年度において「流動負債」に表示していた「前受金及び営業預り金」、「前受収益」は当連結会計年度より「前受金、営業預り金及び契約負債」に含めて表示しております。
(固定負債)
固定負債につきましては、21,665百万円となり、前連結会計年度末の17,890百万円から3,774百万円の増加(前期比21.1%増)となりました。これは、主として長期借入金が3,562百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
純資産につきましては、26,803百万円となり、前連結会計年度末の23,199百万円から3,603百万円の増加(前期比15.5%増)となりました。これは、主として親会社株主に帰属する当期純利益の計上と配当金の支払いにより利益剰余金が3,936百万円増加したこと、また、自己株式の取得により自己株式が399百万円増加したことによるものであります。
c. キャッシュ・フローの状況の分析
前述の(2)キャッシュ・フローをご参照ください。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。また、これらの連結財務諸表の作成にあたって、一部見積り数値を利用しておりますが、これらの見積り数値の妥当性については、継続的に評価を行っております。しかしながら、見積り特有の不確実性のため、実際の結果と異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(減損会計における回収可能価額)
減損損失は、減損の兆候が見られる資産グループについて減損損失の認識を判定し、当該資産グループから得られる将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を計上することとしています。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては決算時点で入手可能な情報に基づき合理的に判断していますが、経営環境の変化や地価の変動等、前提とした条件や仮定に変更が生じ回収可能価額が減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
なお、固定資産の減損につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の回収可能性は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性に基づき、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかにより判断しています。
当該見積り及び仮定について、外部環境の変化等により見直しが必要となった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(5)資本の財源及び資金の流動性
健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出に努めるとともに、当社グループの成長戦略推進に不可欠となる新規物件開発等に係る設備投資などの長期的な資金需要については、自己資金及び金融機関からの借入金でまかなうことを基本方針としております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は19,600百万円となっており、また、現金及び現金同等物の残高は14,633百万円となっております。
なお、設備投資の概要及び重要な設備の新設の計画については、「第3 設備の状況」をご参照ください。