【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2021年11月1日から2022年10月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に係るまん延防止等重点措置が2022年3月に終了し、感染症対策としてワクチン接種が進んだものの、新たな変異株(オミクロン株)による感染拡大など、前期に引き続き厳しい状況が続きました。また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化によるエネルギー価格や原材料価格の上昇に急激な円安の進行も加わり、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
海外につきましては、台湾において新型コロナウイルス感染拡大による一時的な人流の減少がみられたものの、社会経済活動への影響は軽微にとどまりました。米国は力強い景気回復のもと好調な経済を継続いたしました。
店舗開発につきましては、日本において33店舗、米国8店舗、台湾8店舗を出店し、当連結会計年度に計49店舗を出店いたしました。
この結果、当連結会計年度末の店舗数は、全て直営で614店舗(「無添蔵」4店舗、「くら天然魚市場」1店舗、米国40店舗、台湾48店舗を含む)となりました。
引き続き日本国内に加え米国、台湾とも積極的な出店を行い、日本の食文化の海外発信に努めてまいります。
以上の結果、売上高は日米台3地域全てで過去最高を更新し、当連結会計年度の売上高は1,830億53百万円(前年同期比23.9%増)となりました。また、経常利益は24億57百万円(同22.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億44百万円(同60.8%減)となりました。
セグメント業績は次の通りであります。
<日本>
2022年1月~3月の「まん延防止等重点措置」の適用や7月~9月の新型コロナウイルス感染症オミクロン株による「第7波」の影響による人流の減少から客数減少などの影響を受けました。
また、円安に伴う食材価格やエネルギー価格の上昇に加え、飲食店営業正常化に伴う飲食店人材需要の高まりからアルバイト時給が上昇する等引き続き厳しい状況が続きました。
このような状況のもと、当社グループは、2021年12月にお客様が従業員と接することなくくら寿司をご利用いただける「スマートくら寿司」を全店舗に導入、お客様の利便性を向上させるとともに感染症の感染リスクを低減、さらにフロア業務の大幅な効率化を行いました。また、様々なコストアップ要因に対応するため、10月1日より、創業以来守り続けてきた1皿110円(税込)をやむを得ず115円(税込)に改定させていただく一方、2皿220円(税込)の商品の一部を165円(税込)に値下げするなど、多様なニーズに対応するための価格改定を実施いたしました。
引き続き、お客様の満足度を高めるべくさまざまな商品提案を行いました。販売促進におきましては、「まぐろ」「生サーモン」「かに」など定番商品を中心としたフェアを毎月実施し、7月には当社の「オーダーレーン」の特性を生かした揚げたての天ぷらやパリパリの海苔などが特徴の「できたてシリーズ」をラインアップいたしました。また、フェアに合わせて「ビッくらポン!」で人気アニメ「ワンピース」や「BT21」などのグッズが当たるキャンペーンを実施いたしました。
この結果、既存店売上高昨対比は107.7%、新型コロナ感染症拡大前の2019年10月期比108.1%と堅調に推移いたしました。
店舗開発につきましては、他の外食企業の閉店跡地など優良物件を中心に積極的な出店を継続いたしました。今後期待されるインバウンド需要の回復を見据え、引き続き都市部にも積極的に出店してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の日本における売上高は1,499億38百万円(前年同期比13.9%増)、経常利益11億64百万円(前年同期比73.8%減)となりました。
<北米>
米国子会社 Kura Sushi USA,Inc.(KSU)におきましては、経済環境の好転に伴い消費全般が回復したことから好調な売上高となりました。米国外食産業におきましては賃金インフレと人材不足から時短営業やデリバリー中止など通常営業が出来ない飲食店が多いなか、KSUにおきましては本部社員のトレーニングサポートを強化し、全店舗で通常営業を行いました。
当連結会計年度のKSU下半期につきましては、優良物件を中心に積極的に出店した効果や人件費の急上昇に対応した商品価格の改定に加え、客席までドリンク類を配送するロボットの活用などによりコスト削減に努めたところ、新型コロナウイルス感染拡大以降初めて半期での営業黒字に回復致しました。また、店舗開発におきましては、新たな州としてマサチューセッツ州、バージニア州に出店し、米国におきまして特別区(ワシントンD.C.)と12州に展開いたしました。
インフレの影響が強かった上半期の損失を下半期で挽回いたしましたが、すべてを吸収することは難しく、売上高は171億73百万円(前年同期比147.0%増)、経常損失82百万円(前年同期は経常損失10億79百万円)となりました。
<アジア>
台湾子会社 亞洲藏壽司股份有限公司(KSA)におきましては、2022年5月以降急速に新型コロナウイルス感染症の拡大がみられ、5月~6月にかけ人流の減少から客数に一定の影響を受けましたものの、人気アニメ「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」などのコラボキャンペーンが好評をいただき、当連結会計年度を通じて堅調な売上高となりました。また、引き続き店舗オペレーションの改善などによりコスト削減に努めました。
店舗開発におきましては、台中の大規模商業施設「台中大遠百店」など都心部に出店するとともに、台湾中南部の嘉義市や台南市にロードサイド店を出店するなど積極的に出店いたしました。
この結果、売上高159億41百万円(前年同期比75.6%増)、経常利益14億38百万円(前年同期は経常損失1億36百万円)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが99億44百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが121億5百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが46億96百万円の支出となりました。この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)残高は、131億69百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は99億44百万円(前年同期比109.9%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が19億5百万円であったことに加えて、減価償却費が76億31百万円、助成金収入31億29百万円の内、前期申請分を含め助成金の受取額が50億42百万円あった一方で、未払法人税等の支払額が23億23百万円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は121億5百万円(前年同期比27.7%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が101億29百万円、貸付けによる支出が4億84百万円、差入保証金の差入による支出が5億63百万円あったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は46億96百万円(前年同期は24億58百万円の収入)となりました。これはリース債務の返済による支出が31億72百万円、短期借入金の純減額が8億60百万円、配当金の支払が7億92百万円あったこと等によるものであります。
(3)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当社グループは、最終消費者へ直接販売する飲食業を行っておりますので、生産実績は記載しておりません。
②仕入実績
当連結会計年度の仕入実績は、次のとおりであります。
品目
当連結会計年度
(自 2021年11月1日
至 2022年10月31日)
前年同期比(%)
魚介類(百万円)
49,817
24.0
穀類・麺類(百万円)
5,284
12.8
調味料(百万円)
5,394
16.9
野菜・果物類(百万円)
3,289
18.4
酒類・飲料(百万円)
2,236
49.7
その他(百万円)
10,312
28.5
合計(百万円)
76,333
23.6
③受注実績
当社グループは、最終消費者へ直接販売する飲食業を行っておりますので、受注実績は記載しておりません。
④販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
事業部門別
当連結会計年度
(自 2021年11月1日
至 2022年10月31日)
前年同期比(%)
回転すし(百万円)
183,053
23.9
合計(百万円)
183,053
23.9
(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
①経営成績
(売上高)
国内におきましては、新型コロナウイルス感染症によるまん延防止等重点措置が2022年3月に終了し、感染症対策としてワクチン接種が進んだものの、新たな変異株(オミクロン株)による感染拡大などや、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化によるエネルギー価格や原材料価格の上昇、また急激な円安の進行も加わり、不透明な状況が続きました。海外につきましては、台湾において新型コロナウイルス感染拡大による一時的な人流の減少がみられたものの、社会経済活動への影響は軽微にとどまりました。米国は力強い景気回復のもと好調な経済を継続いたしました。不安定な経済状況ではあるものの、日本、米国、台湾それぞれで、店舗開発を積極化した結果、日米台3地域全てで過去最高を更新し、当連結会計年度の売上高は1,830億53百万円(前年同期比23.9%増)となりました。
(営業利益)
2022年1月~3月の「まん延防止等重点措置」の適用や7月~9月の新型コロナウイルス感染症オミクロン株による「第7波」の影響による人流の減少から客数減少などの影響を受けました。また、円安に伴う食材価格やエネルギー価格の上昇に加え、飲食店営業正常化に伴う飲食店人材需要の高まりからアルバイト時給が上昇等により、営業損失は11億13百万円(前年同期は営業損失24億15百万円)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、前連結会計年度に比べ20億19百万円減少し、38億22百万円となりました。これは主に営業時間短縮に伴う助成金収入を31億29百万円計上したこと等によるものです。
この結果、経常利益は24億57百万円(前年同期比22.6%減)となりました。
(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別損失は、前連結会計年度に比べ3億円増加し、5億51百万円となりました。これは主に減損損失5億6百万円及び固定資産除却損45百万円を計上したことによるものです。また、親会社株主に帰属する当期純利益は7億44万円(前年同期比60.8%減)となりました。
②財政状態
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産額は1,096億21百万円となり、前連結会計年度末と比較して106億32百万円増加となりました。これは主に現金及び預金が55億79百万円減少した一方で、売掛金が10億87百万円、連結子会社における使用権資産の増加等により有形固定資産が155億25百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
(負債の部)
負債につきましては、前連結会計年度末と比較して63億22百万円増加し、506億54百万円となりました。これは主に買掛金が5億23百万円、流動負債のリース債務が13億20百万円、固定負債のリース債務が60億47百万円それぞれ増加した一方で、未払法人税等が20億89百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産の部)
純資産につきましては、為替換算調整勘定が17億57百万円、非支配株主持分が18億56百万円増加したこと等により、前連結会計年度末と比較して43億9百万円増加し、589億67百万円となりました。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(資金調達及び流動性)
取引銀行1行と貸出コミットメントライン契約(総額15億円)を締結しております。本契約における当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
加えて、リスク管理の一環として、大規模な天災等の不測の事態に備え、流動性を確保するためのバックアップラインとして総額20億円の長期コミットメントライン契約を取引銀行2行との間で締結しております。本契約における当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成しております。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画において2024年10月期の連結経常利益率5%以上の達成を目標としております。
なお、当連結会計年度における連結経常利益率は1.3%であり、前連結会計年度と比較して、0.8%減少いたしました。まん延防止等重点措置の適用や新型コロナウイルス感染症オミクロン株による「第7波」の影響による人流の減少による影響を受けました。加えて円安に伴う影響により、食材価格やエネルギー価格の上昇の影響を受けました。また飲食店営業正常化に伴う飲食店人材需要の高まりからアルバイト時給が上昇した影響を受けたことにより、2024年10月期の目標利益率には届かない結果となりました。柔軟かつ魅力的な価格戦略や海外を含めた新規出店の強化等を進め、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。