【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(業績等の概要)
(1) 業績 当連結会計年度(2021年11月1日〜2022年10月31日)における世界経済は、多くの国が感染症の影響から回復へ向かう一方、長期化するロシア・ウクライナ情勢に伴うエネルギー価格高騰によるインフレ圧力の高まりとそれを受けた欧米諸国の金融引き締めなどにより、景気減速に対する警戒感が強まりました。日本経済においては、当連結会計年度の初めは新規感染者数が低水準で推移したことから経済活動の持ち直しが見られましたが、2022年1月から新規感染者数が再拡大し、抑制のためのまん延防止等重点措置(以下、重点措置)が全国的に適用されたことにより回復が鈍化しました。その後、3月に重点措置が解除されて以降は回復基調となったものの、急速な円安による物価上昇圧力等の経済への悪影響が引き続き懸念材料となり、先行きの見通しにくい経営環境が続いています。 このような環境のもと、当社グループは、当連結会計年度も一定程度感染症の影響は継続する前提としながらも、絶対黒字化を目標に掲げ、こうした状況下でも収益化が可能な事業基盤の強化と、将来の成長に向けた基盤整備を進めました。 営業概況といたしましては、国内外事業ともに第2四半期連結会計期間に感染症による行動制限等の影響を大きく受けましたが、第3四半期連結会計期間以降は感染症の影響は軽微であり、全ての事業が緩やかながらも順調に回復しました。 これらの結果、当連結会計年度の当社グループ業績は、売上高は2,902億53百万円(前期比15.6%増)、営業利益は206億72百万円(前期営業損失80億39百万円)、経常利益は169億70百万円(前期経常損失116億19百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は、モビリティ事業を運営するタイムズモビリティ株式会社(以下、TM社)において、繰延税金資産の一部取り崩しに伴う税金費用として法人税等調整額35億40百万円を計上した結果、24億76百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失116億58百万円)となりました。
報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。
① 駐車場事業国内 当連結会計年度の初めは新規感染者数が継続的に減少したことにより交通量も感染症流行前の水準に近づき、駐車場の稼働は順調に推移しました。2022年1月中旬の感染症拡大に伴い、全国的に重点措置の適用がなされたことから、交通量が減少し駐車場の稼働も低下しましたが、3月に重点措置が解除されて以降回復しました。その後、7月上旬から再度感染症が拡大したことで、行動制限等が実施された場合に比べて軽微ではあるものの駐車場の稼働は鈍化しましたが、9月以降は再び回復基調となりました。 このような中、引き続き不採算駐車場の縮小に向けた取り組みを行うとともに、感染症の影響下でも収益化が可能な駐車場を厳選して開発することにより事業の筋肉質化を推進しました。また、今後の収益性向上に向けた取り組みとして、アプリケーション等を用いた決済手段の多様化や、より簡単に入出庫が可能な次世代駐車場サービスの構築を進めました。 この結果、国内におけるタイムズパーキングの運営件数は17,399件(前連結会計年度末比2.7%減)、運営台数は552,042台(同1.8%減)、月極駐車場及び管理受託駐車場を含めた総運営件数は25,246件(同1.2%減)、総運営台数は732,868台(同1.7%減)となり、当事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は1,588億57百万円(前期比5.6%増)、営業利益は342億22百万円(同60.2%増)となりました。
② 駐車場事業海外 当連結会計年度における海外各国の連結対象期間は2021年10月1日~2022年9月30日となりますが、主要な展開国における状況につきましては、英国は2021年12月に在宅推奨等の行動規制がありましたが、2022年2月のイングランド地方における規制撤廃以降、人流の回復に合わせ駐車場の稼働は回復いたしました。豪州においては、当連結会計年度の初めに発令されていたロックダウンや行動制限が段階的に緩和され、2月以降の駐車場の稼働は堅調に推移しました。その後、7月に新規感染者数の増加を受けた在宅推奨等の行動規制がありましたが、影響は軽微でした。その他の国につきましては、一部の地域で感染症の再拡大影響が見られたものの、海外全体としては、堅調に推移いたしました。 このような中、事業構造改革の一環として、駐車場の新規開発においては、日本国内におけるタイムズパーキングの特長である「小型・分散・ドミナント化」をベースとし、海外各国の事情に合わせた短期契約型駐車場「各国版タイムズパーキング」の開発を推進しました。また、英国では、土地オーナー様との個別の話し合いを通じた解約や賃料改定によるコスト構造の見直しや、その他の国においても管理・メンテナンスの効率化等の駐車場運営コスト削減を積極的に推進し、事業の筋肉質化を進めました。 この結果、海外の駐車場の総運営件数は2,363件(前連結会計年度末比6.8%増)、総運営台数は559,891台(同5.3%減)となり、日本を含む全世界における駐車場の総運営件数は27,609件(同0.6%減)、総運営台数は1,292,759台(同3.3%減)となり、当事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は579億83百万円(前期比50.6%増)、営業損失は50億49百万円(前期営業損失165億95百万円)となりました。
③ モビリティ事業 タイムズカー(カーシェアとレンタカーの融合サービス)については、駐車場事業国内と同様、当連結会計年度の初めはモビリティ車両の稼働は堅調に推移しましたが、2022年1月中旬の感染症再拡大に伴う全国的な重点措置適用の影響を強く受け、稼働は低水準で推移し、3月に重点措置が解除されて以降回復しました。その後、7月上旬から再度感染症が拡大したことで、行動制限等が実施された場合に比べて軽微ではあるものの、主に法人の稼働に影響がありましたが、旺盛な個人需要に下支えされ、全体としては順調に推移しました。 このような中、当連結会計年度においては、中古車市場の環境を鑑み予定より前倒しで車両売却を実施したほか、より柔軟に需要を取り込むための運用体制構築に取り組みました。具体的には、モビリティサービス「タイムズカー」の可変モデル(1車室から複数台を貸し出すモデル)により、需要に応じた最適な車両提供を行う運用システムの構築を進めております。さらに、貸出場所であるステーションを743カ所開設し、ネットワーク強化を進めるとともに、タイムズカー公式アプリの機能追加により予約から鍵の解施錠、決済までを会員カードを取り出すことなく利用できるようにする等、利便性の向上に努めております。また、利用促進による車両1台当たりの収益力の最大化を図るため、法人営業強化やサービスチケットの配布、各種キャンペーン施策に取り組みました。 この結果、モビリティ車両台数は53,062台(前連結会計年度末比1.0%増)、会員数は2,040,639人(同18.3%増)となりました。車両台数については、当連結会計年度は2021年10月期末の水準を維持し、車両1台当たりの稼働を高めることに注力いたしました。当事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は782億88百万円(前期比17.2%増)、営業利益は47億72百万円(前期営業損失41百万円)となりました。 なお、当連結会計年度に計上した法人税等調整額につきまして、2022年10月期におけるTM社の業績については、事業年度の当初において感染症による行動制限がない前提に基づき、黒字の計画を立てておりました。実際に7月以降、感染症による新規感染者数は高い水準で推移しましたが、行動制限等がないことや季節的に旺盛な個人需要に下支えされ、業績は堅調に推移しました。しかしながら1月から3月にかけて全国的に実施された重点措置適用の影響は大きく、その間の損失を埋めるまでには至らず3期連続の赤字となりました。当該状況を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、TM社においてその一部を取り崩すとともに税金費用として法人税等調整額35億40百万円を計上いたしました。
今後につきまして、2023年10月期は、感染症影響のさらなる軽減が期待される中、事業成長に重点を置きながら費用構造の改革を進めることで、TM社においても持続的な利益創出は可能であり、モビリティ事業全体として確実に成長していく見込みです。
(2) キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べて67億30百万円減少し、850億65百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動により得られたキャッシュ・フローは、293億69百万円(前連結会計年度末比54億48百万円の減少)となりました。主な内訳といたしましては、減価償却費を加えた税金等調整前当期純利益448億96百万円があった一方、未払費用の減少額57億36百万円、未払金の減少額52億64百万円、利息の支払額33億23百万円があったことなどによるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動に使用したキャッシュ・フローは、173億57百万円(同50億7百万円の支出の増加)となりました。これは主として、タイムズパーキングへの設備投資やモビリティ車両の取得などによるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、201億16百万円の資金の支出(同332億83百万円の支出の増加)となりました。これは主に株式の発行による収入があった一方、長期借入金及びリース債務の返済による支出があったことなどによるものです。
(受注及び販売の状況)
(1)
生産実績当社グループは、国内と海外における駐車場事業及びモビリティ事業を行っており、生産実績として表示すべき適当な指標はありません。これにかえて、セグメントの売上高及び事業規模と比較的関連性が強いと認められる国内及び海外における駐車場数・駐車能力(駐車台数)及び営業所数・車両数(台数)を次のとおり示しております。
セグメント
当連結会計年度末(2022年10月31日現在)
前連結会計年度末比増減(%)
駐車場事業国内
駐車場数(ヵ所)
17,399
△2.7
駐車能力(駐車台数)
552,042
△1.8
駐車場事業海外
駐車場数(ヵ所)
2,363
+6.8
駐車能力(駐車台数)
559,891
△5.3
モビリティ事業
営業所数(ヵ所)
230
△2.1
車両数(台数)
53,062
+1.0
(2)
販売実績セグメントごとにおける販売実績は以下のとおりであります。
区分
当連結会計年度(自 2021年11月1日 至 2022年10月31日)
前期比増減(%)
駐車場事業国内(百万円)
154,114
+5.6
駐車場事業海外 (百万円)
57,983
+50.6
モビリティ事業(百万円)
78,155
+17.2
合計
290,253
+15.6
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。また、連結財務諸表の作成にあたっては、固定資産の減損、繰延税金資産の計上等の重要な会計方針に関する見積り及び判断を行っております。これらの見積りは、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法に基づき行い、必要に応じて見直しを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性によって異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2)
当連結会計年度の経営成績の分析
(売上高と営業利益)当連結会計年度の売上高は前期比391億51百万円増加の2,902億53百万円(前期比15.6%増)、営業利益は206億72百万円(前期営業損失80億39百万円)となりました。これは、国内外事業ともに第2四半期連結会計期間に感染症による行動制限等の影響を大きく受けましたが、第3四半期連結会計期間以降は感染症の影響は軽微であり、全ての事業が緩やかながらも順調に回復したことによるものです。売上高及び営業利益の内訳は「(業績等の概要) (1)業績」をご参照ください。
(営業外損益と経常利益)営業外収益は助成金収入やリース解約益が減少したこと等により前期比17億83百万円減少し、8億84百万円となりました。営業外費用は支払手数料が減少したこと等により同16億61百万円減少し、45億85百万円となりました。この結果、経常利益は169億70百万円(前期経常損失116億19百万円)となりました。
(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)英国子会社において不採算駐車場の解約や契約条件の変更等を行い、リース契約解約補償金、賃料減免益等をリース契約関連損失として特別損失に計上したこと等により、税金等調整前当期純利益は146億23百万円(前期税金等調整前当期純損失99億50百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は24億76百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失116億58百万円)となりました。
(3)
財務状態の分析
(資産)総資産は、前連結会計年度末比120億1百万円減少し、3,076億26百万円となりました。主な増減といたしましては、増加でのれんを含む無形固定資産が28億81百万円、減少で機械装置及び運搬具を含む有形固定資産が101億69百万円、繰延税金資産を含む投資その他の資産が36億42百万円となっております。
(負債)負債合計は、同356億11百万円減少し、2,675億84百万円となりました。主な減少といたしましては、長・短期借入金が288億48百万円、未払費用が51億2百万円となっております。
(純資産)純資産は、同236億9百万円増加し、400億42百万円となりました。主な増減といたしましては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加24億76百万円、海外募集による新株式発行に伴う資本金及び資本剰余金の増加251億36百万円、為替換算調整勘定の減少31億62百万円となっております。
<海外募集による新株式発行について>当社グループは、感染症拡大前から中長期事業方針として、人・クルマ・街・駐車場の「4つのネットワークの拡大とシームレス化」を掲げており、感染症禍にあっても当方針は維持しております。当社グループの業績は、感染症の拡大により甚大な影響を受けましたが、2021年10月期第4四半期連結会計期間からは四半期毎に黒字化しており、全事業が回復傾向にあります。今後の全事業の本格回復を見据え、機動的な成長投資を実行し、中長期的な成長を確実に推進するため、2022年4月12日に海外募集による新株式発行を決議いたしました。資金使途としては、「シームレス化」に必要な当社グループサービスの利便性向上や業務効率改善のためのアプリ等の開発、事業基盤システムの刷新等のデジタル投資として約100億円、さらに、「4つのネットワークの拡大」のうちモビリティサービスの拡大に必要なモビリティ車両(EV含む)の購入に約150億円を充当する予定です。なお、当連結会計年度末における株主資本は527億58百万円、株主資本比率は17.2%となっております。
(4) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況は、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(5) 資本の財源及び資金の流動性当社グループは、事業活動に必要な資金を営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入金や新株予約権付社債により調達しておりましたが、2022年4月に将来の成長戦略の確実な推進を目的として、新株式発行による251億円の資金調達を実行しております。この資金については、当社グループサービスの利便性向上や業務効率改善のためのアプリ等の開発、事業基盤システムの刷新等のデジタル投資の確保、グループの事業拡大に必要なモビリティ車両購入投資の資金需要に対して充当してまいります。