【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による行動制限の緩和により、経済活動の正常化が進み、景気に持ち直しの動きが見られました。しかしながら、資源価格や原材料の高騰、円安の影響による物価の上昇等、先行きは不透明な状況が続いています。このような状況の中、当社グループは『社員の多様な個性を生かしたお客さま中心の経営』への進化を目指してきました。2021年4月に策定した中長期経営ビジョン『ONWARD VISION 2030』の実現に向けて、コア事業であるアパレル事業においては、リアル店舗の運営に加えて、グループECサイト「ONWARD CROSSET (オンワード・クローゼット)」を通じた積極的なEC戦略を推進してきました。特に、リアル店舗とオンラインストアで提供するサービスを融合したOMO(Online Merges with Offline)型店舗の展開が強化され、利用者数が高水準で推移したことにより、リアル店舗での販売の拡大に貢献しました。また、グローバル事業構造改革の成果に加え、値引き販売の抑制に努めたことにより、売上総利益率が2.9%向上し、販管費率が0.7%低減しました。この結果、営業利益を含むすべての利益段階で黒字となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に不動産売却益の計上があり、その反動から減益となりました。以上の結果、連結売上高は1,760億72百万円(前年同期比4.5%増)、連結営業利益は52億14百万円(前年同期は営業損失10億79百万円)、連結経常利益は53億19百万円(前年同期比948.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は30億61百万円(前年同期比64.3%減)となりました。
セグメント別の状況は、次のとおりです。
[アパレル関連事業]国内事業は、リアル店舗への来客数が増加したことに加え、中核事業会社である株式会社オンワード樫山の基幹ブランド『23区』『ICB』『自由区』などの売上が好調に推移し、D2Cブランド『UNFILO (アンフィ―ロ)』がヒット商品を創出するなどにより増収となりました。また『KASHIYAMA』を展開する株式会社オンワードパーソナルスタイルでは、直営店舗に加えフランチャイズ店舗展開も加速し、増収となりました。海外事業は、グローバル事業構造改革による不採算事業の撤退等により、既存事業の収益性は、大幅に改善されました。以上の結果、売上高は1,347億61百万円(前期比4.4%増)、営業利益は23億89百万円(前期は営業損失32億79百万円)となりました。
[ライフスタイル関連事業]ウェルネス事業を展開するチャコット株式会社は、主力のバレエ、フィットネス用品および『チャコットコスメ』『チャコットバランス』が堅調に推移し、新型コロナウイルス感染症の影響前と同水準まで売上が回復しました。ペット・ホームライフ事業を展開する株式会社クリエイティブヨーコは、リアル店舗の出店施策が奏功し、売上高が好調に推移しました。以上の結果、売上高は413億10百万円(前期比4.8%増)、営業利益は37億56百万円(前期比56.3%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減損損失、棚卸資産の増加、仕入債務の増加等により56億85百万円の収入(前年同期は78億14百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却および連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入等により43億90百万円の収入(前年同期は216億85百万円の収入)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増減および長期借入金の返済による支出が主なもので119億55百万円の支出(前年同期は361億73百万円の支出)となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて14億3百万円減少し、137億95百万円となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。なお、ライフスタイル関連事業セグメントについては、生産実績を定義することが困難なため、「生産実績」は記載していません。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
アパレル関連事業
13,654
77.7
(注) 金額は製造原価です。
b. 受注実績当社グループは、ほとんどが受注生産ではなく見込生産を行っています。また、受注生産についても、同一品目において受注生産と見込生産を行っており、区分して算出することが困難なため、記載を省略しています。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
アパレル関連事業
国 内
121,337
107.6
海 外
13,424
82.6
計
134,761
104.4
ライフスタイル関連事業
41,310
104.8
合 計
176,072
104.5
(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 経営成績の分析a. 売上高および売上総利益売上高は、中核事業会社の株式会社オンワード樫山を中心に主力のブランド事業の復調が鮮明になったこと、OMOサービス「クリック&トライ」を導入した店舗の販売が好調に推移したことなどから、前連結会計年度に比べ76億18百万円増加し、1,760億72百万円となりました。売上総利益は、在庫コントロールの徹底や値引き販売の抑制に努めたことにより売上総利益率が2.9%向上、前連結会計年度に比べ91億39百万円増加し、967億51百万円となりました。
b. 営業利益および経常利益販売費及び一般管理費は、グローバル事業構造改革の成果等により販管費率が低下し、前連結会計年度から28億45百万円増加の915億37百万円となりました。その結果、営業利益は前連結会計年度から62億93百万円増加の52億14百万円となり、経常利益は前連結会計年度から48億12百万円増加の53億19百万円となりました。
c. 税金等調整前当期純利益および親会社株主に帰属する当期純利益特別利益は、投資有価証券売却益および関係会社株式売却益等により18億78百万円となりました。特別損失は、減損損失等により33億88百万円となりました。税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ101億2百万円減少し、38億9百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ55億5百万円減少し、30億61百万円となりました。
② 財政状態の分析a. 資産資産の部は、前連結会計年度末に比べ14億71百万円増加し、1,591億98百万円となりました。流動資産は、商品及び製品、原材料及び貯蔵品の増加等により17億46百万円増加しました。固定資産は、有形固定資産の売却等により2億75百万円減少しました。
b. 負債負債の部は、前連結会計年度末に比べ63億45百万円減少し、741億25百万円となりました。流動負債は、借入金の減少等により26億37百万円減少し、固定負債は、長期借入金の減少等により37億8百万円減少しました。
c. 純資産純資産の部は、前連結会計年度末に比べ78億16百万円増加し、850億73百万円となりました。株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益、剰余金の配当、会計方針の変更による期首利益剰余金の減少等により、6億90百万円増加しました。その他の包括利益累計額は、その他有価証券評価差額金の増加等により71億70百万円増加しました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりです。
(4) 資本の財源および資金の流動性についての分析当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、主に新規出店および既存店舗の改装等の設備投資や、システム投資によるものです。これらの運転資金や投資資金は、基本的に自己資金により充当していますが、必要に応じて資金調達を行っています。また、当社グループの資金の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(5) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。
(6) 経営者の問題意識と今後の方針について
① 会社の経営の基本方針当社グループは、「人々の生活に潤いと彩りを与えるおしゃれの世界」を事業領域に定め、「ファッション」を生活文化として提案することによって新しい価値やライフスタイルを創造し、人々の豊かな生活づくりへ貢献することを経営理念としてきました。また、2021年4月に策定した当社グループの中期経営ビジョン『ONWARD VISION 2030』の中で、今までの経営理念のうえに、地球環境の潤いと彩りを大切にするサステナブル経営の理念を重ね合わせた、「ヒトと地球(ホシ)に潤いと彩りを」という新しいミッションステートメントを定めました。当社グループを取り巻く経営環境が構造的に大きく変化する中、「社員の多様な個性を生かしたお客さま中心の経営」を日々実践し、「お客さまにとっての価値をお客さま自身と共創できる企業」へと進化するために、グループ社員一丸となって努力を続けていきます。
② 目標とする経営指標当社グループは、成長性と収益性を高め、継続的・安定的に企業価値の向上をはかることが株主重視の経営と認識し、売上の拡大と効率的な経営をより推進して、中長期的には売上高や各利益率指標の更なる向上を目指すとともに、資本の投資効率を高め、ROE8%を早期に実現した上で、将来的にROE10%以上の水準を目指します。また、当社グループでは、新規事業の創出やM&A等を活用した事業基盤の強化・拡大による成長を加速していく中で、会計基準の差異にとらわれることなく企業比較を容易にすることを目的とし、EBITDA(営業利益+減価償却費およびのれん償却費)を経営指標としています。なお、当連結会計年度のEBITDAは103億73百万円(前年同期比165.0%増)となりました。
③ 中長期的な会社の経営戦略当社グループは、「社員の多様な個性を生かしたお客さま中心の経営」への進化を目指し、「アパレルセグメントのビジネスモデル改革」「ライフスタイルセグメントの成長の加速」「法人ビジネスの強化」「多様で個性的な人財が活躍できる企業への進化」「地球と共生するサステナブル経営の推進」を2030年度に向けた5つの戦略とし、事業規模の拡大と経営基盤を強化し、企業価値の一層の向上をはかっていきます。