【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年10月1日~2023年6月30日)の世界経済は、総じてみれば、コロナ危機前に比べて低い成長ペースが続きました。欧米経済は、根強い高インフレや急激な金融引き締め、銀行の貸出姿勢の慎重化などを背景に減速傾向にあります。中国経済は、ゼロコロナ政策が解除され経済活動が持ち直しつつありますが、輸出環境の悪化や不動産市況の低迷、雇用・所得環境の弱さなどを背景に回復ペースは緩やかにとどまっています。
わが国経済は、物価高が継続する中でも、経済活動の正常化を背景に内需を中心に持ち直しています。企業は、コロナ禍のもとで先送りしてきた投資の実施や、DX・GX(*1)関連の投資強化を背景に23年度も強気の投資計画を立てており、設備投資に対する姿勢を積極化しています。政府は、2023年4月に「防災DX官民共創協議会」の第1回全体会合開催し、防災サービスのデジタル化に向けた官民共創が本格的にスタートしました。また、2023年5月にはGX推進法・GX脱炭素電源法が成立しました。こうした動きは企業のデジタル関連投資の追い風ともなり、当社グループのエネルギー分野の事業やDX事業などにプラスに寄与することが期待されます。
このような社会情勢・事業環境を踏まえつつ、当社は経営理念「豊かで持続可能な未来の共創を使命として、世界と共に、あるべき未来を問い続け、社会課題を解決し、社会の変革を先駆ける」を掲げ、事業を展開しています。
当連結会計年度は「中期経営計画2023」(中計2023)の最終年(3年目)であり、過去2年間の成果と課題を踏まえ、さらなる成長に向け取り組んでいます。具体的には、当社グループの基盤事業であるリサーチ・コンサルティング事業、金融ソリューション事業の価値提供力に磨きを掛けるとともに、シンクタンクとしての政策提言機能の強化、成長領域であるDX事業、ストック型事業、海外事業などへの先行投資を進めています。また、人財、都市・モビリティ、エネルギー、ヘルスケア、情報通信、循環、食農、レジリエンスなどの分野で、研究・提言から社会実装に至るバリューチェーン(価値創造プロセス:VCP(*2))を一貫して手掛けるVCP経営を展開、新たな事業の柱や収益源の獲得に注力しています。
国内では新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日から5類感染症に移行し、社会・経済活動がポストコロナの「新常態」の流れへと加速しています。当社では、かねてより「新常態」を見据えた取り組みを進めており、社会・経済活動の回復や企業の設備投資強化の動きなどを事業機会として着実に捉えるべく、活動しております。
成長事業の牽引役と位置づけたDX事業では、民間、公共、金融の3つの分野を設定して展開を図っています。ま た、当社及びITサービスセグメントの中核を担っている三菱総研DCSとの連携を一層強化し、営業・コンサルティ ング活動面でも双方の組織を結び付け、一体的に取り組んでいます。民間向けには、DXコンサルティングとクラウ ド移行を組み合わせた支援や、ビッグデータ分析を採り入れたデジタルマーケティング、公共向けには行政DXの推 進、金融向けには事業領域や顧客層の拡大などを積極的に展開しています。
また、AI等先端技術活用については、生成AIの動向をいち早く捉え研究開発を進めています。2023年4月には、 ウェブからの情報収集・レポーティングを自動化するAIツールに、生成された文章に含まれる誤情報を検知・削除 する機能を実装したAIサービスの提供を開始しました。
取り組みの成果は、当第3四半期連結累計期間では、政府関係のクラウドや5G関連事業、デジタル技術を活用した防災関連事業等、民間企業のDX推進支援やスマートモビリティ関連事業等の受注実績として顕在化しました。
こうした結果、当社グループの当第3四半期連結累計期間における業績は、売上高は96,878百万円(前年同期比5.7%増)となりました。一方、将来成長のための先行投資を積極的に進めたことから、営業利益は8,386百万円(同10.2%減)、経常利益は9,519百万円(同8.7%減)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期に投資有価証券売却益を計上していたこと等により、5,934百万円(同24.1%減)となりました。
(*1)GX :グリーン・トランスフォーメーションの略。化石燃料中心の経済・社会、産業構造を再生可能エネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体を変革すること。
(*2)VCP:価値創造プロセス(Value Creation Process)の略。社会課題を起点に、その解決と未来社会の実現を ゴールとして、お客様や社会への提供価値の向上と持続的成長を目指す、当社グループの価値連鎖の展 開過程を意味する。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(シンクタンク・コンサルティングサービス)
当第3四半期連結累計期間は、官公庁分野のガバメントクラウドや公共安全用の無線システムの実証事業を含む大型案件や5G関連の実証案件、再生エネルギー関連の調査・実証案件、運輸業や通信業向けシステム実装や経営コンサルティング案件の伸長により、売上高(外部売上高)は42,666百万円(前年同期比4.5%増)となりました。一方、大型実証事業における外注費や将来成長のための人財投資、提言・発信機能強化の先行コストが増加し、経常利益は4,819百万円(同22.4%減)となりました。
(ITサービス)
当第3四半期連結累計期間は、金融機関向けシステム基盤更改案件などが売上に貢献し、売上高(外部売上高)は54,211百万円(前年同期比6.7%増)、経常利益は4,691百万円(同11.2%増)となりました。
(2)財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,731百万円増加し、116,384百万円(前年度末比1.5%増)となりました。内訳としては、流動資産が70,457百万円(同4.7%減)、固定資産が45,926百万円(同12.8%増)となりました。流動資産は、季節要因により、現金及び預金が4,571百万円増加したものの、受取手形、売掛金及び契約資産が3,454百万円減少したこと、また、金銭信託償還により有価証券が5,000百万円減少したことによるものであります。固定資産の増加は、建設仮勘定の計上や投資有価証券の購入等によるものであります。
負債は、未払金が1,522百万円、未払費用が2,943百万円それぞれ増加したものの、未払法人税等が2,987百万円、賞与引当金が2,952百万円それぞれ減少したこと等により、前連結会計年度末と比べて783百万円減少し、42,717百万円(同1.8%減)となりました。
純資産は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末と比べて2,515百万円増加し、73,667百万円(同3.5%増)となりました。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発費は1,265百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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