【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う行動制限が緩和され、徐々に社会経済活動の正常化に向かい始めているものの、ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料やエネルギー価格の高騰、世界的な金融引き締めによる海外景気の下振れ懸念等、依然として先行きは不透明な状況であります。
このような経済情勢の下、当社グループに関連するITサービス業界を取り巻く環境は、企業のIT投資意欲は総じて高く、働き方改革及び在宅勤務(テレワーク)の浸透並びに業務プロセスの効率化等、DX(注1)の推進を背景にITサービスの需要は堅調に拡大しております。
これらの状況において、当社グループといたしましては、クリエーション事業(コンテンツサービス、ビジネスサポートサービス等)及びソリューション事業(システム開発・運用サービス)を推進し、事業規模及び収益拡大に努めてまいりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
<クリエーション事業>
自社で保有する権利や資産を活用したサービスを提供する当事業は、一般消費者向け「コンテンツサービス」においては、通信キャリアが運営するプラットフォームで提供する定額制コンテンツの拡大傾向が継続したものの、月額コンテンツ及び通信キャリア以外が運営するプラットフォームで提供するコンテンツの減少を補えず減収となりました。
法人向け「ビジネスサポートサービス」においては、企業による業務効率化やクラウド活用が進む中、音声・交通情報等については引き続き伸長いたしましたが、キッティング支援において、前第1四半期連結累計期間における特需の剥落や第2四半期連結累計期間におけるサプライチェーンの停滞によるスマートフォンやタブレット等新規端末不足の影響等に伴い、減収いたしました。
以上の結果、クリエーション事業の売上高は16億35百万円(前連結会計年度比10.7%減)、セグメント利益は4億14百万円(同6.6%減)となりました。
<ソリューション事業>
法人向けシステムの受託開発・運用を主な業務とする当事業は、「システム開発・運用サービス」においては、 働き方改革及び在宅勤務(テレワーク)の浸透並びに業務プロセスの効率化等、需要が高まっているDXの促進により、AI(注2)やIoT(注3)等、様々な技術を組み合わせたシステム開発の需要が増大する中、スマートフォンアプリ及びサーバ構築の豊富なノウハウと実績が評価され、スクラッチ開発(注4)を中心としたアプリ開発、WEB構築、サーバ構築、システム運用・監視、デバッグ、ユーザーサポート、販売促進等クリエーション事業で培ったノウハウを活かした受託開発が大きく増進いたしました。
人手不足問題にマッチした業務支援サービスは、大手通信キャリアを中心に積極的な営業強化及び高度人材によるチーム編成と拠点間連携に注力し、既存顧客への深耕と新規顧客の獲得を推し進めた結果、増勢に推移いたしました。
今後拡大が見込まれる端末周辺サービスは、パートナー企業との連携を推し進め、増勢に推移いたしました。特に、中古端末(スマートフォン等)買取販売においては、第3四半期連結会計期間から新規端末不足が回復基調に推移する中、企業のIT投資意欲と持続可能な社会構築への意識の高まりを背景に増進した他、新型コロナの感染リスクの低減・拡大防止・予防に対する社会的ニーズが引き続き高い中、対策商材の拡販に注力してまいりました。
以上の結果、ソリューション事業の売上高は25億74百万円(前連結会計年度比17.6%増)、セグメント利益は3億18百万円(同23.9%増)となりました。
<連結決算の概況>
当連結会計年度における売上高は42億10百万円(前連結会計年度比4.7%増)、営業利益は1億80百万円(同75.7%増)、経常利益は1億90百万円(同23.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億3百万円(同44.1%増)となりました。
売上高については、キッティング支援(ビジネスサポートサービス)やコンテンツサービス等クリエーション事業が減少したものの、受託開発、業務支援サービス、端末周辺サービス等ソリューション事業が増勢に推移した結果、増収いたしました。
営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益については、売上高の増収の他、販管費の低減に努めた結果、増益いたしました。
(注1)「Digital Transformation」の略
「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念。
(注2)「Artificial Intelligence」の略
人間の知的営みをコンピューターに行わせるための技術。いわゆる「人工知能」。
(注3)「Internet of Things」の略
モノをインターネットに接続して制御・認識などを行う仕組みを意味する。
(注4)システム開発で、特定のパッケージ製品のカスタマイズや機能追加などによらず、すべての要素を個別
に最初から開発すること。
②財政状態
当連結会計年度末における資産、負債、純資産の状況は以下のとおりです。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して53百万円増加し、57億17百万円となりました。流動資産は、主に現金及び預金の増加額1億16百万円、売掛金及び契約資産の増加額20百万円により前連結会計年度末と比較して1億41百万円増加し、50億93百万円となりました。固定資産においては、主に有形固定資産の減少額27百万円、ソフトウェアの減少額37百万円及び繰延税金資産の減少額14百万円により前連結会計年度末と比較して87百万円減少し、6億24百万円となりました。
負債につきましては、主に買掛金の増加額29百万円、未払消費税等の増加額9百万円及び長期借入金の減少額23百万円により前連結会計年度末と比較して20百万円増加し、7億91百万円となりました。また、純資産につきましては、剰余金の配当がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1億3百万円、非支配株主持分の増加額7百万円により前連結会計年度末と比較して33百万円増加し、49億26百万円となりました。
なお、安全性に関する指標は、自己資本比率83.7%、流動比率895.7%、固定比率13.0%となり健全な水準を維持しております。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益1億92百万円(前連結会計年度比22.2%増)、減価償却費1億9百万円(同12.3%減)、仕入債務の増加額29百万円(前連結会計年度は仕入債務の減少額12百万円)等による資金の増加が、売上債権の増加額20百万円(同68.3%減)、法人税等の支払額59百万円(同50.9%減)等の資金の減少を上回ったことにより、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2億68百万円の資金の増加(前連結会計年度は11百万円の資金の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
無形固定資産の売却による収入3百万円がありましたが、クリエーション事業に係るソフトウエア開発を中心に無形固定資産の取得による支出46百万円(同38.8%減)、有形固定資産の取得による支出4百万円(同75.0%減)等により、当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは47百万円の資金の減少(前連結会計年度は96百万円の資金の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
株主の皆様への利益還元といたしまして配当に76百万円(同36.1%減)を支出したことに加え、長期借入金の返済による支出23百万円等により、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは1億8百万円の資金の減少(前連結会計年度は4億35百万円の資金の減少)となりました。
以上のとおり、当連結会計年度は営業活動で増加した資金を効果的な設備投資に投入するとともに、株主の皆様への利益還元として配当に充当いたしました。これにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末比1億12百万円増加し、42億99百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、自社で保有する権利や資産を活用するサービスや、受託開発等のITソリューションの提供により、クライアントのニーズに合った価値を提案し、新たなライフスタイル、ビジネススタイルを創造する事業を主体とする企業であり、生産設備を保有していないため生産実績の記載はしておりません。
b.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2022年6月1日
至2023年5月31日)
仕入実績(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
165,042
97.5
ソリューション事業
64,682
307.5
合計
229,724
120.7
(注)1.上記の仕入実績は、情報等使用料及び商品仕入であります。
2.情報等使用料とは、当社グループが配信する画像、ゲーム、音楽著作物及びソフトウェアの権利保持者及び代理人に支払う料金であります。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2022年6月1日
至2023年5月31日)
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
1,626,950
88.4
2,800
23.7
ソリューション事業
2,543,505
120.7
39,011
56.0
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2022年6月1日
至2023年5月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
1,635,950
89.3
ソリューション事業
2,574,151
117.6
合計
4,210,102
104.7
(注)主な販売先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
会計期間
相手先
金額(千円)
割合(%)
前連結会計年度
(自2021年6月1日
至2022年5月31日)
株式会社NTTドコモ
株式会社ドコモCS
トレンドマイクロ株式会社
1,109,036
146,315
125,644
27.6
3.6
3.1
当連結会計年度
(自2022年6月1日
至2023年5月31日)
株式会社NTTドコモ
トレンドマイクロ株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社
997,091
184,639
105,091
23.7
4.4
2.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表] [注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」及び「第5 「経理の状況」 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表] [注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等に関する認識及び分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」及び「②財政状態」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループ経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 [事業の状況] 3[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 [事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費、外注費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、新規及び機能の追加等によるソフトウェアの開発費用等によるものであります。
当社グループにおける現在の現預金残高を考慮しますと、当面の運転資金は自己資金で賄う予定でありますが、将来の収益に繋がる設備投資や利益成長が見込める分野への投資につきましては、当座勘定借越契約を活用した銀行借入金など、資金需要に合った対応を図ってまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は42億99百万円となっております。
d.経営者の問題認識と今後の方針
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 [事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」に記載のとおりであります。
e.中長期的な会社の経営戦略
ウクライナ情勢等による資源価格・国際金融資本市場の動向等引き続き不確実性が極めて高いものの、非接触型サービスの需要拡大、一般消費者の生活様式の変化、企業におけるコスト削減・事業効率化等、社会におけるDXが一層加速していくことが予想されます。
このような状況下、当社グループは、既存サービスの強化はもちろん、新サービスの創出を積極的に推進してまいります。
<クリエーション事業>
自社IPを活用したサービスの提供を通じて新しいライフスタイルを創造するスマートフォンアプリを中心としたコンテンツサービスについては、通信キャリアが運営するプラットフォームで提供する月額コンテンツ市場が縮小する中、引き続き定額制コンテンツの拡大に注力することで増収を図る他、自社保有資産を活用したコンテンツ開発や他社とのアライアンスによる新たなビジネスモデルによる事業領域への拡大等、各種施策を実施し積極的にサービス展開を推し進めてまいります。
また、自社で保有する権利や資産を活用した法人向けサービスの提供を通じて新しいビジネススタイルを創造するビジネスサポートサービスについては、キッティング支援、交通情報、音声、調達支援等を積極的に推進してまいります。特に、キッティング支援については、既存顧客への深耕と新規顧客の開拓による事業の拡大とともに、新たなビジネスモデルによるサービス提供態勢を整えてまいります。
<ソリューション事業>
法人向けシステムの受託開発・運用を主な業務とするシステム開発・運用サービスについては、AI、IoT関連システムなど企業によるIT投資意欲は総じて高いため、総合的な技術と顧客業務へのコンサルティングが求められるDX関連開発に対し、クリエーション事業で培ったノウハウを活かしたトータルソリューションサービスを通じて、お客様のビジネスに新しい価値を提供してまいります。
また、人手不足問題にマッチした業務支援サービスについては、大手通信キャリアを中心に積極的な営業強化及び高度人材の継続的な獲得・育成に注力し、引き続き既存顧客への深耕と新規顧客の獲得を推し進めてまいります。
その他、端末周辺サービスについては、中古端末(スマートフォン等)買取販売において、企業のIT投資意欲の高まりを背景に増進を図ってまいります。
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