【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、雇用、所得環境、企業の資金繰り等の厳しさが続いており、依然として先行きは不透明な状況であります。
このような経済情勢の下、当社グループに関連するITサービス業界を取り巻く環境は、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の感染防止対策としての在宅勤務(テレワーク)の浸透や業務プロセスの効率化等のDXの推進によりIT需要は堅調に推移しているものの、今後の不確実性の高い景況感を背景に投資判断に慎重さがみられております。
これらの状況において、当社グループといたしましては、コンシューマ向けスマートフォンアプリ、システム開発、デバッグ、クラウド、業務効率化アプリ、モバイルキッティング、音声ソリューション、電子商取引(eコマース)、業務支援などのサービスを推進し、事業規模及び収益拡大に努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度における売上高は43億46百万円(前連結会計年度比21.1%増)、営業利益は3億38百万円(同26.6%増)、経常利益は3億55百万円(同14.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億34百万円(同23.8%減)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業績への影響につきましては、法人向け「ビジネスサポートサービス(クリエーション事業)」及び「ソリューション事業」において、感染拡大防止のための緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の度重なる発出に伴う企業活動の停滞により、一部の案件において遅延が生じておりますが、企業のIT投資意欲は総じて高く、当社グループの業績に与える影響は軽微な状況となっております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
<クリエーション事業>
自社で保有する権利や資産を活用したサービスを提供するクリエーション事業では、一般消費者向け「コンテンツサービス」においては、通信キャリアが運営するプラットフォームで提供する月額コンテンツが減少する中、引き続き、定額制コンテンツに注力し、伸長させてまいりました。また、鮮魚eコマース『いなせり市場』においては、外出自粛に伴う「巣ごもり消費」を契機に利用者が増加いたしました。
法人向け「ビジネスサポートサービス」においては、企業による業務効率化やクラウド活用が進む中、キッティング支援、交通情報・音声・調達・観光・教育等の各種サービスの他、自社開発のサービスを活用した受託開発に注力いたしました。特にキッティング支援においては、引き続き社会のDX化に伴い、企業におけるスマートフォンやタブレット等端末の買い替え需要が増加する中、増勢に推移いたしました。
また、一般消費者向け鮮魚eコマース『いなせり市場』の利用者が大幅に増加している一方で、飲食事業者向け鮮魚eコマース『いなせり』においては、時短や休業要請の影響を受けた飲食事業者からの注文が低調に推移いたしました。
以上の結果、クリエーション事業の売上高は21億55百万円(前連結会計年度比5.3%増)、セグメント利益は6億96百万円(同9.4%増)となりました。
<ソリューション事業>
法人向けシステムの受託開発・運用を主な業務とするソリューション事業では、「システム開発・運用サービス」においては、企業におけるDX化の促進により、AIやクラウド、ビッグデータ(注1)など、様々な技術を組み合わせたシステム開発の需要が増大する中、スマートフォンアプリ及びサーバ構築の豊富なノウハウと実績が評価され、スクラッチ開発(注2)を中心としたアプリ開発、WEB構築、サーバ構築、システム運用・監視、デバッグ、ユーザーサポートなどクリエーション事業で培ったノウハウを活かした受託開発を推進してまいりました。
また、深刻化している人手不足問題にマッチした業務支援サービスは、大手通信キャリアを中心に積極的な営業強化及び高度人材の継続的な獲得・育成に注力し、既存顧客への深耕と新規顧客の獲得を推し進めた結果、大幅に伸長いたしました。
更に、今後拡大が見込まれる端末周辺事業は、中古端末(スマートフォン等)買取販売において、コロナ禍に伴う企業の端末需要が増加する中、取引先の拡大により取扱台数を大幅に増加させた他、新型コロナ対策商材においては、顧客のニーズに対応した商品を迅速に提供し、拡販してまいりました。
以上の結果、ソリューション事業の売上高は21億91百万円(前連結会計年度比42.2%増)、セグメント利益は2億29百万円(同23.2%増)となりました。
(注1)一般的なデータ管理・処理ソフトウェアで扱うことが困難なほど巨大で複雑なデータの集合を意味する。
(注2)システム開発で、特定のパッケージ製品のカスタマイズや機能追加などによらず、すべての要素を個別に最初から開発することを意味する。
②財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して67百万円減少し、61億32百万円となりました。流動資産は、主に現金及び預金の増加額23百万円、受取手形及び売掛金の増加額68百万円及び仕掛品の減少額46百万円により前連結会計年度末と比較して30百万円増加し、53億95百万円となりました。固定資産においては、主にソフトウェアの減少額75百万円により前連結会計年度末と比較して97百万円減少し、7億36百万円となりました。
負債につきましては、主に買掛金の増加額39百万円、未払法人税等の増加額21百万円、未払消費税等の増加額21百万円及び退職給付に係る負債の減少額24百万円により前連結会計年度末と比較して77百万円増加し、9億50百万円となりました。また、純資産につきましては、剰余金の配当がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1億34百万円及び非支配株主持分の減少額1億89百万円により前連結会計年度末と比較して1億44百万円減少し、51億82百万円となりました。
この結果、1株当たり純資産額は126円6銭となり、安全性に関する指標は、自己資本比率82.5%、流動比率778.0%、固定比率14.6%となり健全な水準を維持しております。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益2億69百万円(前連結会計年度比6.2%減)、減価償却費1億56百万円(同11.4%減)、減損損失69百万円(同157.8%増)、たな卸資産の減少額51百万円(前連結会計年度はたな卸資産の増加額10百万円)、仕入債務の増加額39百万円(前連結会計年度は仕入債務の減少額18百万円)、その他の流動負債の増加額50百万円(同23.0%増)等による資金の増加が、売上債権の増加額68百万円(前連結会計年度は売上債権の減少額1億17百万円)、法人税等の支払額86百万円(同14.4%増)等の資金の減少を上回ったことにより、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは4億83百万円(同23.5%減)の資金の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
定期預金の払戻による収入50百万円(同53.9%減)がありましたが、クリエーション事業に係るソフトウェア開発を中心に無形固定資産の取得による支出1億10百万円(同23.7%減)、定期預金の預入による支出51百万円(同3.6%増)等により、当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは1億30百万円(同53.1%増)の資金の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
株主の皆様への利益還元といたしまして配当に80百万円(同0.2%増)を支出したことに加え、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出2億20百万円、長期借入金の返済による支出25百万円(同18.2%増)等により、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは3億30百万円(同183.3%増)の資金の減少となりました。
上記のとおり、当連結会計年度は営業活動で増加した資金を効果的な設備投資に投入するとともに、株主の皆様への利益還元として配当に充当いたしました。これにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末比22百万円増加し、47億8百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、自社で保有する権利や資産を活用するサービスや、受託開発等のITソリューションの提供により、クライアントのニーズに合った価値を提案し、新たなライフスタイル、ビジネススタイルを創造する事業を主体とする企業であり、生産設備を保有していないため生産実績の記載はしておりません。
b.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2020年6月1日
至2021年5月31日)
仕入実績(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
171,196
106.2
ソリューション事業
255,673
10,598.8
合計
426,869
261.0
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の仕入実績は、情報等使用料及び商品仕入であります。
3.情報等使用料とは、当社グループが配信する画像、ゲーム、音楽著作物及びソフトウェアの権利保持者及び代理人に支払う料金であります。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2020年6月1日
至2021年5月31日)
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
2,152,047
105.0
2,600
41.3
ソリューション事業
2,228,177
143.2
150,384
132.5
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2020年6月1日
至2021年5月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
2,155,737
105.3
ソリューション事業
2,191,257
142.2
合計
4,346,995
121.1
(注)1.主な販売先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
会計期間
相手先
金額(千円)
割合(%)
前連結会計年度
(自2019年6月1日
至2020年5月31日)
株式会社NTTドコモ
株式会社ドコモCS
KDDI株式会社
922,788
177,696
171,845
25.7
5.0
4.8
当連結会計年度
(自2020年6月1日
至2021年5月31日)
株式会社NTTドコモ
大阪府
KDDI株式会社
1,144,093
275,100
213,765
26.3
6.3
4.9
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表] [注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」及び「第5 「経理の状況」 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表] [注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等に関する認識及び分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」及び「②財政状態」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループ経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 [事業の状況] 2[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 [事業の状況] 3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費、外注費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、新規及び機能の追加等によるソフトウェアの開発費用等によるものであります。
当社グループにおける現在の現預金残高を考慮しますと、当面の運転資金は自己資金で賄う予定でありますが、将来の収益に繋がる設備投資や利益成長が見込める分野への投資につきましては、当座勘定借越契約を活用した銀行借入金など、資金需要に合った対応を図ってまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は47億8百万円となっております。
d.経営者の問題認識と今後の方針
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 [事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」に記載のとおりであります。
e.中長期的な会社の経営戦略
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により世界経済全体が停滞しているものの、同時に、社会におけるDXが一層加速していくことが予想されます。
このような状況下、当社グループは、社会全体のデジタル化に対し、既存サービスの強化はもちろんのこと、新サービスの創出を積極的に推進してまいります。
<クリエーション事業>
自社IPを活用したサービスの提供を通じて新しいライフスタイルを創造するスマートフォンアプリを中心としたコンテンツサービスについては、通信キャリアが運営するプラットフォーム向けサービス市場が縮小する中、定額制コンテンツに引き続き注力することで、増収を図ってまいります。
一方、通信キャリア以外が運営するプラットフォーム市場においては、自社保有資産を活用したコンテンツ開発や新たなビジネスモデルによる事業展開等、各種施策を実施し積極的にサービス展開を推し進めてまいります。
また、自社で保有する権利や資産を活用した法人向けサービスの提供を通じて新しいビジネススタイルを創造するビジネスサポートサービスについては、キッティング支援、交通情報サービス、音声テクノロジーサービス、調達支援、ECサービス等を積極的に推進してまいります。特に、キッティング支援については、社会のDX化に伴うスマートフォン端末の買い替え需要の拡大に合わせて引き続き増進させるとともに、パソコン向けのキッティング支援にも参入し、更なる成長を図ってまいります。
<ソリューション事業>
法人向けシステムの受託開発・運用を主な業務とするシステム開発・運用サービスについては、5GやDXを背景とした、AI、IoT、セキュリティ関連システムなど企業によるIT投資が加速する中、クリエーション事業で培ったノウハウを活かし、受託事業を中心としたITソリューションや業務支援サービスを通じて、お客様のビジネスに新しい価値を提案してまいります。
また、次なる事業の柱を創造するべく、当社が有する様々なノウハウや資産を活かし、デバイス周辺サービスの拡大の拡大を図ってまいります。
#C4829JP #日本エンタープライズ #情報通信業セクター