【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー
(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、消費税率引き上げの影響が徐々に緩和され、個人消費などに持ち直し
の動きもみられていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、情勢は大きく変化し、国内
外経済への影響や金融資本市場の変動等の懸念から、先行き不透明な状態で推移いたしました。
このような経済情勢の下、当社グループに関連するITサービス業界を取り巻く環境は、ビジネスの成長を目的
としたIoTやAI等の活用拡大、企業の生産性向上に向けた業務プロセスの効率化、自動化等のRPAへの投資意欲の
高まりを背景に、同環境は堅調に推移してまいりました。一方、今後の企業の投資動向につきましては、新型コ
ロナウイルス感染症の感染拡大の影響によるIT投資計画の見直し・抑制などについて十分に注視していく必要が
ございます。
これらの状況において、当社グループといたしましては、コンシューマ向けスマートフォンアプリ、システム
開発、デバッグ、クラウド、業務効率化アプリ、モバイルキッティング、音声ソリューション、電子商取引(e
コマース)、業務支援などのサービスを推進し、事業規模及び収益拡大に努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度における売上高は35億88百万円(前連結会計年度比5.1%増)、営業利益は2億67
百万円(同10.3%増)、経常利益は3億10百万円(同6.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億76百
万円(同80.5%増)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業績への影響につきましては、法人向け「ビジネスサポー
トサービス(クリエーション事業)」及び「ソリューション事業」の案件は、総じて新型コロナウイルス感染症
の感染拡大による影響が深刻化する前に受注した案件、もしくはその兆候が見られてからもキャンセルや大幅な
縮小が少なかったこと、また、一般消費者向け「コンテンツサービス(クリエーション事業)」についても、在
宅での消費活動や在宅勤務によるいわゆる「巣ごもり消費」が活況となる中、需要が期待できる環境であったこ
と等、当社グループの業績に与える影響は軽微な状況となっております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
<クリエーション事業>
自社で保有する権利や資産を活用したサービスを提供する当事業は、一般消費者向け「コンテンツサービス」
においては、通信キャリアが運営するプラットフォーム市場が縮小する中、引き続き、定額制コンテンツでの効
率的な運用で収益確保を図るとともに、App StoreやGoogle Playなどの通信キャリア以外が運営するプラットフ
ォームでのコンテンツの利用促進及び新タイトルの投入の結果、ゲームを中心とするエンターテインメントコン
テンツが増進いたしました。また、鮮魚eコマース『いなせり市場』において、外出自粛に伴う外食を控える動
きの中、利用者増加に取り組んでまいりました。
法人向け「ビジネスサポートサービス」においては、企業による業務効率化やクラウド活用が進む中、交通情
報・教育・観光・調達・音声などの各種サービスの他、自社開発のサービスを活用した受託開発が堅調に推移い
たしました。特に、キッティング支援においては、企業におけるスマートフォンをはじめとした端末の買い替え
需要に伴い同マーケットが拡大する中、キッティングRPAツール『Kitting-One』等の支援ツールの導入を大手企
業中心に促進させた結果、大きく伸長し、2018年5月期のセグメント変更以降、当連結会計年度において最高の
売上高を更新いたしました。
一方、飲食事業者向け鮮魚eコマース『いなせり』においては、東京魚市場卸協同組合と連携し、出品数の増
大、飲食事業者開拓に取り組んでまいりましたが、外食を控える動きの影響を受けた飲食事業者からの注文が減
少いたしました。その他、引き続き、ブロックチェーン(注1)を活用した電力取引等の実証事業に継続して取
り組んでまいりました。
以上の結果、クリエーション事業の売上高は20億47百万円、セグメント利益は6億36百万円となりました。
(注1)データを「ブロック」に格納し、鎖(チェーン)のように連結して保管する、改ざんが極めて困難な
データベースを意味する。
<ソリューション事業>
法人向けシステムの受託開発・運用を主な業務とする当事業は、「システム開発・運用サービス」において
は、企業のIT投資による市場拡大の状況下、スマートフォンアプリ及びサーバ構築の豊富なノウハウと実績が評
価され、スクラッチ開発(注2)を中心としたアプリ開発、WEB構築、サーバ構築、システム運用・監視、デバ
ッグ、ユーザーサポートなどクリエーション事業で培ったノウハウを活かした受託開発を推進してまいりまし
た。
また、深刻化している人手不足問題にマッチした業務支援サービスが伸長した他、新たな事業領域であるAI、
IoT、セキュリティ関連サービスの開拓を推し進めてまいりました。
一方、今後拡大が見込まれる端末周辺事業を創出するべく、クリエーション事業で注力しているキッティング
支援を核に、中古端末(スマートフォン等)買取販売の拡大とともに更なるビジネスモデルの構築に努めてまい
りました。
以上の結果、ソリューション事業の売上高は15億40百万円、セグメント利益は1億86百万円となりました。
(注2)システム開発で、特定のパッケージ製品のカスタマイズや機能追加などによらず、すべての要素を個別
に最初から開発することを意味する。
②財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して1億64百万円増加し、62億円となりまし
た。流動資産は、主に現金及び預金の増加額3億70百万円及び受取手形及び売掛金の減少額1億17百万円により
前連結会計年度末と比較して2億11百万円増加し、53億65百万円となりました。固定資産においては、主にソフ
トウエアの減少額40百万円により前連結会計年度末と比較して46百万円減少し、8億34百万円となりました。
負債につきましては、主に未払法人税等の増加額6百万円及び未払消費税等の増加額40百万円により前連結会
計年度末と比較して51百万円増加し、8億73百万円となりました。また、純資産につきましては、剰余金の配当
がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1億76百万円及び非支配株主持分の増加額16百万円に
より前連結会計年度末と比較して1億13百万円増加し、53億26百万円となりました。
この結果、1株当たり純資産額は124円91銭となり、安全性に関する指標は、自己資本比率80.9%、流動比率
948.0%、固定比率16.6%となり健全な水準を維持しております。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益2億87百万円(前連結会計年度比6.4%増)、減価償却費1億76百万円(同8.9%
減)、減損損失26百万円(同40.0%減)、売上債権の減少額1億17百万円(前連結会計年度は売上債権の増加額
89百万円)、和解金の受取額64百万円等による資金の増加が、貸倒引当金の減少額33百万円(同3,186.1%
増)、法人税等の支払額75百万円(同29.8%減)等の資金の減少を上回ったことにより、当連結会計年度の営業
活動によるキャッシュ・フローは6億32百万円(同118.5%増)の資金の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
定期預金の払戻による収入1億9百万円(同8.2%減)、投資有価証券の売却による収入9百万円(同84.5%
減)がありましたが、クリエーション事業に係るソフトウエア開発を中心に無形固定資産の取得による支出1億
44百万円(同13.2%増)、定期預金の預入による支出49百万円(同58.5%減)等により、当連結会計年度の投資
活動によるキャッシュ・フローは85百万円(同82.0%増)の資金の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
株主の皆様への利益還元といたしまして配当に79百万円(同0.1%減)を支出したことに加え、長期借入金の
返済による支出21百万円(同8.3%減)等により、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは1億
16百万円(同2.4%減)の資金の減少となりました。
上記のとおり、当連結会計年度は営業活動で増加した資金を効果的な設備投資に投入するとともに、株主の皆
様への利益還元として配当に充当いたしました。これにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、
前連結会計年度末比4億30百万円増加し、46億85百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、自社で保有する権利や資産を活用するサービスや、受託開発等のITソリューションの提
供により、クライアントのニーズに合った価値を提案し、新たなライフスタイル、ビジネススタイルを創造
する事業を主体とする企業であり、生産設備を保有していないため生産実績の記載はしておりません。
b.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2019年6月1日
至2020年5月31日)
仕入実績(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
161,159
98.1
ソリューション事業
2,412
32.7
合計
163,571
95.3
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の仕入実績は、情報等使用料及び商品仕入であります。
3.情報等使用料とは、当社グループが配信する画像、ゲーム、音楽著作物及びソフトウエアの権利保持者及び代理人に支払う料金であります。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2019年6月1日
至2020年5月31日)
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
2,049,931
110.6
6,290
161.3
ソリューション事業
1,555,522
100.1
113,464
115.0
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自2019年6月1日
至2020年5月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
クリエーション事業
2,047,541
110.4
ソリューション事業
1,540,715
98.8
合計
3,588,257
105.1
(注)1.主な販売先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
会計期間
相手先
金額(千円)
割合(%)
前連結会計年度
(自2018年6月1日
至2019年5月31日)
株式会社NTTドコモ
KDDI株式会社
株式会社サイバード
899,313
187,556
88,838
26.3
5.5
2.6
当連結会計年度
(自2019年6月1日
至2020年5月31日)
株式会社NTTドコモ
株式会社ドコモCS
KDDI株式会社
922,788
177,696
171,845
25.7
5.0
4.8
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま
す。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されてお
ります。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用
の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や
現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積
りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等]
(1)[連結財務諸表] [注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しており
ますが、特に以下に示す重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考
えております。
・無形固定資産(自社利用ソフトウエア)
当社グループは、自社利用ソフトウエアの耐用年数は社内における使用可能期間(2~5年)で減価償却を
行っております。自社利用ソフトウエアについて、サービス開始後に当初見込んだ収益の獲得が困難であるこ
とが判明した場合は、減損処理が必要となる可能性があります。
・繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられ
る部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実
行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で
繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の経営成績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が
発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性
があります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響等については、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等]
(1)[連結財務諸表] [注記事項](追加情報)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等に関する認識及び分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」及び「②財政状態」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループ経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 [事業の状況] 2[事業等のリスク]」に記
載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 [事業の状況] 3[経営者による財
政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・
フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費、外注費や販売費及び一般管理費等の営業費用で
あります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、新規及び機能の追加等によるソフトウエアの開発費用
等によるものであります。
当社グループにおける現在の現預金残高を考慮しますと、当面の運転資金は自己資金で賄う予定でありま
すが、将来の収益に繋がる設備投資や利益成長が見込める分野への投資につきましては、当座勘定借越契約を活用した銀行借入金など、資金需要に合った対応を図ってまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は46億85百万円となっております。
d.経営者の問題認識と今後の方針
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 [事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべ
き課題等]」に記載のとおりであります。
e.中長期的な会社の経営戦略
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により世界経済全体が下落傾向にあるものの、同時に、社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)(注1)がますます加速される環境が予想されます。
このような状況下、当社グループは、社会全体のデジタル化に対し、既存サービスの強化はもちろん、新サービスの創出を積極的に推進してまいります。
<クリエーション事業>
自社IPを活用したサービスの提供を通じて新しいライフスタイルを創造するスマートフォンアプリを中心としたコンテンツサービスについては、通信キャリアが運営するプラットフォーム向けサービス市場が縮小する中、効率運用で収益を確保する一方、通信キャリア以外が運営するプラットフォームでのコンテンツの利用促進及び新タイトルの投入の他、プラットフォームに依存しないサービス展開を推し進めてまいります。
また、自社で保有する権利や資産を活用した法人向けサービスの提供を通じて新しいビジネススタイルを創造するビジネスサポートサービスについては、キッティング支援、調達支援、教育支援の他、交通情報サービス、音声テクノロジーサービス、『いなせり』等のエスクローサービス(注2)等を積極的に推進してまいります。
<ソリューション事業>
法人向けシステムの受託開発・運用を主な業務とするシステム開発・運用サービスについては、5GやDXを背景とした、AI、IoT、セキュリティ関連システムなど企業によるIT投資が加速する中、クリエーション事業で培ったノウハウを活かし、受託事業を中心としたITソリューションや業務支援サービスを通じて、お客様のビジネスに新しい価値を提案してまいります。
一方で、次なる事業の柱を創造するべく、当社が有する様々なノウハウや資産を活かし、デバイス周辺サービスの拡大の他、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対策商材を拡販してまいります。
(注1)企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを
基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業
文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
(注2)物品などを売買する際に取引の安全性を保証する仲介サービスで、売買の当事者以外の第三者(エスク
ローエージェント)が決済を仲介して、代金を一時的に預かる仕組みを意味する。
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