【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態および経営成績の状況
①財政状態
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べ557百万円減少して、54,137百万円となりました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産等の流動資産の減少941百万円に対し、投資有価証券等の固定資産の増加384百万円の差引合計によるものであります。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末に比べ804百万円増加して、14,243百万円となりました。これは、関係会社整理損失引当金等の流動負債の増加926百万円に対し、長期借入金等の固定負債の減少121百万円の差引合計によるものであります。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は、前連結会計年度末に比べ1,361百万円減少して、39,894百万円となりました。これは、利益剰余金等の減少によるものであります。
②経営成績
当社グループは、飛躍的な発展を目指し、中期経営計画(2022年8月期-2024年8月期)の長期事業展望に「2031年8月期の売上高1,000億円」を掲げました。中計の中間年度に当たる当期は、達成に向けた数値目標や戦略を示した「長期ロードマップ・GIKEN GOALS 2031」を公表し、各部門において具体的な取り組みを進めています。
当第3四半期連結累計期間における当社グループを取り巻く事業環境におきましては、国内の公共投資、民間建設投資ともに堅実に推移したことから、顧客の設備投資は堅調に推移しました。しかしながら、鋼材等の材料価格が高騰する中で、公共事業費の中に占める材料費の割合が大きくなり、結果として施工量が少なくなる傾向があり、本設構造物の構築に用いる製品や部品販売への影響が懸念される状況になっています。
国内における圧入市場の拡大に向けた取り組みでは、災害復旧・復興事業や防災・減災対策、国土強靭化関係を中心にインプラント工法※1の提案活動に注力しました。その結果、老朽化した漁港や臨港道路の耐震工事、橋梁の洗掘対策、防潮堤の新設工事、豪雨災害で崩落した切土斜面の本復旧に採用される等、採用数は堅調に推移しました。
※1 一本一本が高い剛性と品質を有した杭材(許容構造部材)を地中深く圧入し、地震や津波、洪水などの外力に粘り強く耐える「インプラント構造物」を構築する工法。
海外売上比率7割(2031年8月期に5割)を目指す海外市場では、圧入市場の継続的発展を目指し、市場形成が軌道に乗りつつあるヨーロッパ、アジア地域に軸足を置きつつ、北米等その他の地域はその戦略を見直すなど再構築を進めています。ヨーロッパ地域の進捗では、オランダ・アムステルダム市の「世界遺産の運河護岸改修にかかる新技術開発プロジェクト」において、グループ会社のGiken Europe B.V.(本社:オランダ)が出資する合弁会社「G-Kracht B.V.」による実証施工の圧入工程が3月に完了しました。工事は発注者の同市から高い評価を受けており、次の商業化フェーズ※2に向けた協議が始まりました。アジア地域ではシンガポールにおいて、会員ユーザーに対し、製品販売に加えて技術サービスなどのノウハウを提供して現場の生産性向上を図る「GIKENトータルサポートシステム(GTOSS)」のアジア版の運用により、顧客ロイヤリティが高まっており、このサポートサービスに対する引き合いが増加しています。今後その他の地域でも、地域ニーズに応じたサポートサービスを展開していきます。
※2 商業化フェーズでは、8年間で計3.3km区間の工事受注が保証されています。
戦略の再構築を進めている海外事業では、経営方針の違いから連結子会社であったJ Steel Group Pty Limited(本社:オーストラリア)との合弁関係の解消について5月24日に合意しました※3。それぞれの成長戦略に基づく事業運営が両社の企業価値を最大化するとの判断に基づく発展的解消であり、合弁関係の解消後も同社はオセアニア市場のユーザーとして事業を展開します。
またグローバル展開をさらに推し進めるため、4月から伊藤忠グループと人材交流を始め、同グループの広範かつ強力なグローバルチャネルを活かして海外ビジネスの基盤づくりを進めています。加えてヨーロッパ地域でも、Giken Europe B.V.と業務提携協定を結んでいるSeika Sangyo GmbH※4と圧入市場の拡大に向けた取り組みを進め、圧入事業の環境が整いつつあります。
※3 第4四半期にあたる6月7日、Bertrams Trading Pty Limited に当社保有の株式譲渡完了。これにより連結範囲から除外。
※4 西華産業株式会社のグループ会社(本社:ドイツ)。2022年6月、圧入工法の普及活動に関する業務提携協定を締結。
圧入技術を世界に発信する取り組みとして、高知県香南市赤岡町に整備していた圧入技術の情報発信基地「RED HILL 1967」を5月にオープンしました。「百聞は一見に如かず」をコンセプトに機械や工法、構造物の「実物」を展示した施設であり、開所以来多くの見学者を受け入れ、好評をいただいています。今後も世界中から「RED HILL 1967」に足を運んでいただき、圧入技術の優位性を理解、納得してもらうことで、工法革命をグローバルに推進してまいります。
このような状況のもと、当第3四半期連結累計期間における売上高は21,196百万円(前年同四半期比2.1%増)、営業利益は2,176百万円(同31.4%減)、経常利益は2,253百万円(同32.0%減)となりました。なお、連結子会社との合弁関係の解消に伴い、関係会社整理損として1,367百万円を特別損失に計上しましたので、親会社株主に帰属する四半期純利益は223百万円(同89.9%減)となりました。
セグメントの業績は次の通りです。
a. 建設機械事業
汎用機の入れ替えが順調に推移したほか、鋼矢板を硬質地盤に圧入する際のオーガ装置の掘削能力、施工効率を向上する「フライホイール式パイルオーガ」の販売が好調だったことや、同アタッチメントを標準搭載したサイレントパイラーF111(硬質仕様)の後継機「サイレントパイラーF112」の市場投入を始めたことで、売上高は14,648百万円(前年同四半期比6.9%増)となりました。一方、粗利率の高いジャイロパイラーなど大型特殊機の製品販売が少なかったことや試験研究費等の販管費の増加を受け、セグメント利益は3,317百万円(同15.3%減)となりました。
b. 圧入工事事業
工法採用が堅調に推移する中、南海トラフ巨大地震対策としての海岸堤防改修(高知県)、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)で被災した肱川流域の護岸補強(愛媛県)、老朽化した漁港護岸の補強(北海道)、高速道路延伸のための擁壁築造(京都府)、工業用水施設復旧に伴う魚道新設のための土留工(愛知県)等、工事は順調に進捗しました。しかしながら、前期に施工した海外案件の完了や粗利率の高い工事案件が減少したことにより、売上高は6,548百万円(前年同四半期比7.4%減)、セグメント利益は831百万円(同12.1%減)となりました。
(2) 会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上および財務上の課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は650百万円であり、セグメントは全額「建設機械事業」であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。