【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第2四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間におきましては、引き続き世界中でインフレ率が高まり、また地政学的な不安定さや金利上昇に伴う資本市場の動揺などの不透明さがくすぶっております。バイオテクノロジー・セクターでも同様に、世界的に将来に対する不透明感を完全に払しょくするまでに至っていません。そのような環境下におきましても、株式会社ジーエヌアイグループ(以下「当社」)及びその関連会社(以下合わせて「当社グループ」)は、主要事業におきまして前年同期比で売上収益の増加を達成しました。そして、2023年6月に開示しましたとおり、米国子会社でありますCullgen Inc.(以下「Cullgen」)がアステラス製薬株式会社(以下「アステラス製薬」)と戦略的提携関係を結ぶことに至り、黒字化を達成しております。これにより、当社グループの主要子会社3社全てが、当連結会計年度におきまして、初めて黒字化を達成することとなります。
特に、当社グループ主要子会社である北京コンチネント薬業有限公司(以下「北京コンチネント」)の主力製品であるアイスーリュイの販売は、引き続き堅調さを保っております。また、次期製品の有力な候補であるF351の中国における臨床試験は、2023年5月に開示しましたとおり、第Ⅲ相臨床試験で被検者登録数が予定の半分を超え、2023年中の登録者数達成に向け順調に推移しております。
また、2022年12月に開示しました、米国ナスダック上場のCatalyst Biosciences, Inc.(以下「CBIO」)との取引は、想定より少し遅れておりますが、鋭意進めております。
米国で生体材料事業に携わるBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下「BAB」)を筆頭に、医療機器事業の業績は堅調に推移しております。
米国及び中国を中心に研究開発に特化している子会社Cullgenは、独自の標的タンパク質分解誘導技術プラットフォームuSMITE™(ubiquitin-mediated, small molecule induced target elimination)を活用した創薬に引き続き邁進しており、財務面及び研究開発面で大きな成果がありました。Cullgenは、2023年5月に開示しましたとおり、アストラゼネカ-CICCファンドをリード・インベスターとする新しい資金調達で、4,000万米ドル(一部Outward Direct Investment(海外直接投資)承認待ち)を調達しました。加えて、上記のとおり、2023年6月にCullgenはアステラス製薬と革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結し、戦略的提携を進めております。2023年6月の開示でご説明しました契約一時金は、連結損益計算書においては、当第2四半期連結累計期間において売上収益に一括計上しました。また、Cullgenは、同社最初のTRK分解剤を使用した抗がん剤候補の、中国における臨床試験を進めております。同時に、他の複数のプログラムについても、臨床試験申請を目指して開発を進めております。
①セグメント別の経営成績
医薬品事業
北京コンチネントの主力製品であるアイスーリュイの中国市場での売上収益は堅調に推移しました。また、Cullgenとアステラス製薬との戦略的提携による契約一時金による売上収益4,725,000千円を計上しました。
その結果、医薬品事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、それぞれ12,768,126千円(前年同期比82.7%増)、4,964,402千円(前年同期比936.1%増)となりました。
医療機器事業
医療機器事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、それぞれ1,328,418千円(前年同期比14.0%増)、512,073千円(前年同期比2.6%減)となりました。
②販売費及び一般管理費並びに研究開発費
(単位:千円)
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
差額
販売費及び一般管理費
△4,765,750
△6,179,184
△1,413,434
人件費
△1,892,666
△1,964,780
△72,114
研究開発費
△1,089,540
△1,253,059
△163,519
当第2四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、6,179,184千円(前年同期比29.7%増)となりました。この販売費及び一般管理費の増加は、主に医薬品事業セグメントの人件費及び営業体制の構築費用やマーケティング活動関連費用の増加によるものです。
当第2四半期連結累計期間の研究開発費は、1,253,059千円(前年同期比15.0%増)となりました。主に医薬品事業セグメントにおける研究開発費の増加によるものです。
③金融収益及び金融費用
(単位:千円)
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
差額
金融収益
175,775
306,524
130,749
金融費用
△390,055
△539,038
△148,982
金融収益
当第2四半期連結累計期間の金融収益は、306,524千円(前年同期比74.4%増)となりました。この金融収益の増加は、主に受取利息と為替差益の増加によるものです。
金融費用
当第2四半期連結累計期間の金融費用は、539,038千円(前年同期比38.2%増)となりました。この金融費用の増加は、主にCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない利息費用の増加によるものです。
(2)財政状態に関する分析
連結財政状態
(単位:千円)
前連結会計年度
当第2四半期連結会計期間
差額
資産合計
33,906,981
45,050,897
11,143,915
負債合計
14,096,013
20,252,562
6,156,548
資本合計
19,810,968
24,798,335
4,987,366
資産合計
当第2四半期連結会計期間における資産合計は、45,050,897千円(前連結会計年度末比32.9%増)となりました。この資産の増加は、主にCullgenの営業債権及び資金調達による現金及び現金同等物の増加によるものです。
負債合計
当第2四半期連結会計期間における負債合計は、20,252,562千円(前連結会計年度末比43.7%増)となりました。この負債の増加は、主にCullgenの資金調達及びそれに関する現金支出を伴わない利息費用の追加計上によるものです。
資本合計
当第2四半期連結会計期間における資本合計は、24,798,335千円(前連結会計年度末比25.2%増)となりました。主に利益剰余金の増加によるものです。
連結キャッシュ・フロー
(単位:千円)
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
差額
営業活動によるキャッシュ・フロー
389,264
872,378
483,113
投資活動によるキャッシュ・フロー
△1,496,808
△2,585,288
△1,088,479
財務活動によるキャッシュ・フロー
△267,292
3,942,881
4,210,173
営業活動によるキャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、872,378千円の収入(前年同期は、389,264千円の収入)となりました。これは主に、税引前四半期利益5,117,961千円に対して、営業債権及びその他の債権の増加4,060,271千円によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、2,585,288千円の支出(前年同期は、1,496,808千円の支出)となりました。主な支出は、中国における長期性預金の取得及び工場拡張に係る有形固定資産の取得によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、3,942,881千円の収入(前年同期は、267,292千円の支出)となりました。主な収入は、Cullgenの資金調達に伴う非支配持分からの払込によるものです。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。また新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
〔研究活動〕
当社グループの創薬研究では、Cullgenを中心に革新的な新規開発候補化合物(NCE)の開発を目指しております。Cullgenは、がん、痛み、及び自己免疫疾患に対する酵素及び非酵素タンパク質を標的とした複数の新規化合物を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。
2023年6月15日に開示しましたとおり、Cullgenはアステラス製薬と、革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結しました。同契約において、両社は新規E3リガンドを活用したCullgen独自の技術プラットフォームuSMITE™とアステラス製薬の創薬ケイパビリティを融合し、複数のタンパク質分解誘導剤の創出を目指します。Cullgenとアステラス製薬は共同研究を行い、アステラス製薬は開発及び商業化を担います。なお、Cullgenは、乳がんやその他の固形がんを対象として同社が同定したリードプログラムである細胞周期タンパク質に対する分解誘導剤候補化合物の米国における開発に伴う費用と得られた利益を両社で折半し、製品化された場合に共同販促活動(コ・プロモーション)する権利を有しております。
〔開発活動〕
■アイスーリュイ〔中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)〕-北京コンチネント
糖尿病腎症(DKD)
アイスーリュイの適応を糖尿病腎症に拡大する臨床試験は、第Ⅰ相を完了しておりますが、次フェーズ臨床試験の規制上の方向性を決めるため、クラス2会議(臨床試験に関する技術的な会議)の申請を中国のCDE(Center for Drug Evaluation、医薬品評価センター)に提出し、今後の進め方を協議しております。
結合組織疾患を伴う間質性肺疾患(SSc-ILD及びDM-ILD)
アイスーリュイの適応を全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と皮膚筋炎(DM-ILD)の2つに拡大するため、第Ⅲ相の臨床試験を継続しておりますが、現時点ではじん肺への適応拡大や、F351やF573の臨床試験を優先しております。
じん肺治療薬(Pneumoconiosis, PD)
アイスーリュイの適応をじん肺に拡大する臨床試験は、2022年6月から第Ⅲ相に入っております。2022年末から2023年初頭の中国における新型コロナウイルス蔓延の影響が多少ありましたが、現時点では被験者の登録も再開しております。
■F351(肝線維症等治療薬)-北京コンチネント
F351(一般名:ヒドロニドン)は肝線維症向け治療薬候補として、北京コンチネントの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、他の世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めております。F351は、アイスーリュイの誘導体である新規化合物であり、内臓の線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の増殖及び、TGF-β伝達経路を阻害します。
F351は、中国のCDEとの協議を経て、2021年3月にNMPAより肝線維症の画期的治療薬の指定を受けました。これにより、F351についてのCDEとの協議が優先的、かつその協議結果を生かした臨床試験を進めることが可能となっております。その後、2021年7月29日に中国において第Ⅲ相臨床試験の許可申請が承認され、2022年1月に第Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。2023年5月9日に開示しましたとおり、F351第Ⅲ相試験で被検者登録数が予定の半分を突破しました。なお、中国のCDEと協議の上、慢性B型肝炎による肝線維症の治療薬としてのF351の効果と安全性を長期で調べるため、2023年6月にF351の第Ⅲ相を拡張した第Ⅲb相臨床試験を開始いたしました。この第Ⅲb相臨床試験は、F351の上市スケジュールには直接の影響はありません。
なお、F351の権利は、中国においては北京コンチネントが保持しておりますが、日本、豪州、カナダ、米国及び欧州各国を含む中国以外におけるF351の権利は、CBIOに譲渡いたしました(この取引の詳細については、2022年12月27日の適時開示と2022年12月30日及び2023年1月18日開示のQ&Aをご参照ください)。
CBIOは、2023年後半に米国で非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬として第Ⅱ相臨床試験開始申請(IND)を行う予定です。NASHは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症型であり、肝臓の炎症と線維化を特徴とし、肝硬変、肝不全、肝細胞がん(HCC)、死へと進行することがあります。現在、NASHの治療薬として日米欧で承認された製品はありません。CBIOは、肝硬変を伴わないNASHによる、進行した肝線維化を有する成人被験者を対象に、ヒドロニドン・カプセルを1日360mg(1日3回120mg(TID)投与)、24週間経口投与した場合の安全性、忍容性、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を評価する無作為、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験の第Ⅱa相、概念実証(Proof of Concept: PoC)の臨床開発を開始することを計画しております。提案されている第Ⅱa相試験の主な目的は、本剤が奏功した場合のより包括的な第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験の基礎として、NASH線維症の被験者におけるヒドロニドンのPoC結果を早期に得ることです。本試験では、少人数の被験者(合計60名)を対象に、ヒドロニドン又はプラセボを2:1の割合で投与する予定です。本試験では、薬物服用によるNASH線維化の評価に関連する一連の非侵襲的な生化学及び画像バイオマーカーのベースラインからの変化、及びヒドロニドンの抗線維化作用の機序を評価する予定です。本試験では、採血を行い、初期集団のPK及びPK/PD関係を評価し、NASH線維症を対象とした今後の臨床試験におけるヒドロニドン開発の参考にする予定です。さらに、本試験では、疾患特有の患者報告アウトカム(PROs: Patient-reported outcomes)として、実績のある慢性肝疾患アンケート(CLDQ: Chronic Liver Disease Questionnaire)のNASH版を導入し、NASHによる線維化が進行した被験者の生活の質(QOL: Quality of Life)に対するヒドロニドン治療の影響について、患者報告データを収集する予定です。
■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全の急性増悪(ACLF)治療薬)-北京コンチネント
F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを阻害する可能性を持つ強いジペプチド化合物であり、急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性増悪(ACLF)に関連して発生するアポトーシスや炎症反応に重要な化合物です。
F573に関しましては、2023年3月28日に開示いたしましたとおり、第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。
■CG001419(TRK分解剤)- Cullgen
2022年8月9日に「連結子会社CullgenのTRK分解剤に関するIND申請承認のお知らせ」で開示いたしましたとおり、Cullgenは中国のNMPAから固形がん治療用途でのトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)分解剤開発候補化合物であるCG001419のIND承認を取得いたしました。CG001419は、非小細胞肺がんや乳がん、膵臓がん等を含む多くの固形がんで見出される神経栄養性チロシン受容体キナーゼ(NTRK)融合遺伝子にコードされるTRKタンパク質異常の進行がんの治療に使用が期待される、ファースト・イン・クラスの選択的かつ経口剤となり得る標的タンパク質分解誘導作用を持つ開発候補化合物です。
2022年末から2023年初頭にかけての中国における新型コロナウイルス流行を受け、臨床試験の開始が想定より遅れておりましたが、中国での第Ⅰ相臨床試験を開始いたしました。また、米国FDA(食品医薬品局)との米国での臨床試験前の協議は継続しております。
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