【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
COVID-19のパンデミックによる混乱、インフレの高まり、そして円安の進行に加えての資本市場の動揺など様々な難題が続く中、当社グループにとって2022年度第3四半期連結会計期間は堅調でした。
当社グループの第3四半期連結会計期間の売上収益は12,761,031千円となり、前年同期比で33.8%増加いたしました。営業利益は1,494,197千円で、前年同期比23.8%減となりました。営業利益の減少は、販売費及び一般管理費(前年同期比36.2%増)と研究開発費(前年同期比28.3%増)双方の増加によるものです。当社グループの税引前四半期利益は1,223,079千円、前年同期比22.0%減となりました。2020年のCullgen Inc.(以下Cullgen)の優先株による資金調達に関連する現金支出を伴わない支払利息(609,000千円)と北京コンチネント薬業有限公司(以下、北京コンチネント)が予定していたものの現在遅れている香港証券取引所への上場申請に関する一時的な費用(125,000千円)が引き続き発生し、税引前四半期利益を押し下げました。結果、四半期利益および親会社の所有者に帰属する四半期利益は、それぞれ前年同期比62.9%減および16.8%減の324,416千円および1,076,065千円となりました。(注:上記の現金支出を伴わない支払利息がなければ、前年同期比に比べ、当社グループの税引前四半期利益は16%増、四半期利益は26%のみの減少になっておりました。)
北京コンチネントは、COVID-19によるロックダウンと中国経済の減速にもかかわらず、引き続き好調でした。当社グループとしましても、第4四半期も中国でのCOVID-19感染者数や、パンデミックをコントロールするための中国政府による厳格なロックダウンの状況を注意深くモニターして参ります。北京コンチネントの臨床試験は、ロックダウンの中で着実に進捗しており、スケジュールとおりとなっております。北京コンチネントの香港証券取引所への上場は、世界中における資本市場と資金調達環境の逆風により遅れております(8月に香港証券取引所の上場審査委員会から承認は取得しております)。最新情報は、適宜ご提供いたします。
米国のBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下BAB)も、第3四半期は堅調でした。現地通貨ベースでの第3四半期売上収益は昨年と同等でしたが、第4四半期は受注残高を解消し、伸長する見込みです。当社グループ独自の生体材料事業を美容分野での応用と海外市場へと拡大する戦略を実現するために、効率的な方策を検討しております。これらの方策を通じて、売上収益および利益の成長を加速させるため、当社グループ内に生体材料の事業ユニットを形成してゆく所存です。
Cullgenは、アンメット・メディカル・ニーズ(満たされていない医療ニーズ)が存在するがんに焦点を当て、標的蛋白質分解誘導薬創薬に引き続き特化しております。米国では、第3四半期累計期間の研究開発費が現地通貨ベースで前年同期比38%増加いたしました。Cullgenは、上海の研究所を通じて、最初のがん治療薬候補の第I相臨床試験を開始すべく、中国の医師や病院と協力しております。
なお、2022年におけるドルおよび人民元の日本円に対する為替レートの急激な変動により、当社グループの主要子会社における現地通貨での業績を注意深くモニターしております。収益を上げている2つの子会社である北京コンチネントとBABは、いずれも好調な業績を上げております。ただし、北京コンチネントに関しましては、中国でのCOVID-19による移動制限などの課題が継続することが想定され、第4四半期は更に厳しくなることが予想されます。
①セグメント別の経営成績
医薬品事業
当社グループの中核連結子会社である北京コンチネントの主力製品であるアイスーリュイの中国市場での売上収益は、中国でのロックダウンが引き続き行われたにもかかわらず、現地通貨ベースでも引き続き堅調に推移しました。日本円ベースでは、医薬品事業セグメント全体の売上収益は、前年同期比36.9%増の11,046,069千円となりました。一方、セグメント利益は795,584千円(前年同期比43.7%減)となりました。この減少は、北京コンチネントが、予定していたものの遅れている香港証券取引所への上場申請に関する一時的な費用や、売上収益増加に伴う中国における営業力・マーケティング機能の強化、米・中における研究開発体制の拡充によるものです。
医療機器事業
米国における医療機器事業セグメントは、現地通貨ベースではほぼ前年同期比で同等の業績となりました。
円ベースでは、円安の影響もあり、当第3四半期連結累計期間の売上収益は1,714,961千円(前年同期比16.5%
増)となりました。また、セグメント利益は、698,613千円(前年同期比27.6%増)となりました。
②販売費及び一般管理費並びに研究開発費
(単位:千円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
差額
販売費及び一般管理費
△5,503,838
△7,498,561
△1,994,723
人件費
△2,080,213
△2,733,706
△653,493
研究開発費
△1,417,656
△1,819,132
△401,476
注:人件費には役員報酬は含みません。
当第3四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、7,498,561千円(前年同期比36.2%増)となりました。この販売費及び一般管理費の増加は、米・中双方の人件費および主に中国における営業・マーケティング費用の増加と北京コンチネントの一時的な上場準備費用によるものです。
当第3四半期連結累計期間の研究開発費は、1,819,132千円(前年同期比28.3%増)となりました。主要要因は、中国及び米国に於ける研究開発費の増加によります。
③金融収益及び金融費用
(単位:千円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
差額
金融収益
69,554
347,752
278,198
金融費用
△461,276
△618,870
△157,594
金融収益
当第3四半期連結累計期間において、当社グループは347,752千円(前年同期比400.0%増)の金融収益を計上いたしました。この収益の増加は、主に円安傾向による為替差益の増加です。
金融費用
当第3四半期連結累計期間において、当社グループは618,870千円(前年同期比34.2%増)の金融費用を計上いたしました。この費用は、主にCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない支払利息609,000千円となります。
(2)財政状態に関する分析
連結財政状態
(単位:千円)
前連結会計年度
当第3四半期連結会計期間
差額
資産合計
30,296,980
36,456,893
6,159,913
負債合計
11,030,734
14,441,225
3,410,491
資本合計
19,266,246
22,015,668
2,749,422
資産合計
当第3四半期連結会計期間における資産合計は、36,456,893千円(前連結会計年度末比20.3%増)となりました。主な要因は、中国での工場拡張に係る有形固定資産、資産計上開発費等の無形資産の取得、円安に伴うのれん等評価額の増加および中国・米国での事業活動の活発化による運転資本の増加によるものです。
負債合計
当第3四半期連結会計期間における負債合計は、14,441,225千円(前連結会計年度末比30.9%増)となりました。この増加は、主にCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない支払利息の追加計上によるものです。
資本合計
当第3四半期連結会計期間における資本合計は、22,015,668千円(前連結会計年度末比14.3%増)となりました。主な要因は、在外営業活動体の換算差額と利益剰余金の増加です。
連結キャッシュ・フロー
(単位:千円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
差額
営業活動によるキャッシュ・フロー
755,120
△162,928
△918,048
投資活動によるキャッシュ・フロー
△884,057
△2,909,505
△2,025,448
財務活動によるキャッシュ・フロー
3,176,682
△299,280
△3,475,962
営業活動によるキャッシュ・フロー
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、162,928千円の支出(前年同期は、755,120千円の収入)となりました。主な減少要因は、中国における法人所得税支払額、マーケティングおよび研究開発費用の増加です。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、2,909,505千円(前年同期比229.1%増)の支出となりました。主な要因は、中国での工場拡張に係る有形固定資産、資産計上開発費等の無形資産の取得、および中国における長期性譲渡預金の取得に伴う支出です。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、299,280千円の支出(前年同期は3,176,682千円の収入)となりました。主な減少理由は、前年同期は複数の資金調達を行ったものの、当第3四半期連結累計期間は資金調達活動を行っていないためです。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありま
せん。また新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
〔研究活動〕
当社グループの創薬活動はCullgenを中心に、新しい創薬基盤技術であるuSMITE™(ユビキチン化を介した標的タンパク質分解誘導技術)を活用した、革新的な新規化学物質(NCE)の開発を目指しています。
Cullgenは、がん、痛み、及び自己免疫疾患の適応症に対する酵素及び非酵素タンパク質の両方を標的とした複数の新規分解剤を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。
Cullgenの新しいE3リガンドプログラムの開発は、タンパク質分解誘導の将来を担う技術で、毒性の低減、薬剤耐性の緩和、組織・腫瘍・細胞内コンパートメントの選択性の提供、基質スペクトルの拡大を実現させるNCEの開発の可能性があると考えられております。
〔開発活動〕
■アイスーリュイ〔中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)〕-北京コンチネント
糖尿病腎症(DKD)
アイスーリュイの3番目の適応症であるDKDは、Ⅰ型糖尿病またはⅡ型糖尿病により引き起こされる慢性腎臓病です。中国では9,240万人が糖尿病に脅かされており、このうち20~30%がⅠ型糖尿病またはⅡ型糖尿病を患い、腎機能障害を引き起こすと言われております。北京コンチネントは、次フェーズ臨床試験の規制上の方向性を決めるため、クラス2会議(臨床試験に関する技術的な会議)の申請を中国のCDE(Center for Drug Evaluation、医薬品評価センター)に提出いたしました。
結合組織疾患を伴う間質性肺疾患(SSc-ILDおよびDM-ILD)
2016年9月、北京コンチネントは、SSc-ILDおよびDM-ILDの治療に対するアイスーリュイの4番目の適応症のNMPA(National Medical Products Administration、中国国家薬品監督管理局)承認を受けました。このIND(Investigational New Drug、臨床試験開始申請)の承認により、全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と皮膚筋炎(DM-ILD)の2つの適応症について、直接第Ⅲ相臨床試験に移行することが承認されました。
2018年6月には、強皮症(SSc-ILD)及びDM-ILDの治療を対象とした第Ⅲ相臨床試験の各段階において、無作為、二重盲検、プラセボ・コントロール、52週間の試験に第1期被験者を登録しました。強皮症(SSc-ILD)には144名、DM-ILDには152名の被験者が登録される予定です。
じん肺治療薬(Pneumoconiosis, PD)
2019年5月、北京コンチネントは、アイスーリュイの5番目の適応症として、じん肺治療薬のIND申請に対する承認をNMPAより取得しました。じん肺疾患は、肺に炎症や瘢痕化(線維化)を引き起こす慢性的な肺疾患で、吸い込まれた粉塵や微粒子が、肺の細胞に蓄積することによって引き起こされます。北京コンチネントは、2022年1月にアイスーリュイのじん肺疾患適応のための第Ⅲ相臨床試験の承認を倫理委員会から取得し、2022年6月13日に当社グループから「北京コンチネント薬業有限公司によるピルフェニドンカプセル(F647)のじん肺疾患適応のための第Ⅲ相臨床試験の最初の被験者登録についてのお知らせ」にて開示いたしましたとおり、最初の被験者を登録しており、第Ⅲ相臨床試験を遂行しております。
■F351(肝線維症等治療薬)-北京コンチネント
F351(一般名:ヒドロニドン)は肝繊維症向け治療薬であり、北京コンチネントの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、他の世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めております。
F351は、アイスーリュイの誘導体である新規開発化合物であり、内臓の線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の増殖及び、TGF-β伝達経路を阻害します。北京コンチネントが中国における主要特許を保持しており、日本、豪州、カナダ、米国及び欧州各国を含む主要な国でのF351の特許権は、当社グループが保有しております。
2020年8月、当社は肝線維症の候補薬であるF351の中国における第Ⅱ相臨床試験の初期段階分析の良好な結果について発表しました。この試験は、中国における慢性ウイルス性B型肝炎患者の肝線維症に対するF351の安全性と有効性を評価する、無作為化、二重盲検、プラセボ・コントロール、多施設、用量逓増試験で、プラセボと比較して52週の治療で肝線維症スコアが統計的に有意に改善するという主要評価項目を満たしました。
なお、中国のCDEとの協議を経て、2021年3月にF351はNMPAより肝線維症の画期的治療薬に指定されました。これにより、F351についてのCDEとの協議が優先的、かつ有利な臨床試験を進めることが可能となっております。その後、2021年7月29日に中国において第Ⅲ相臨床試験許可申請承認がされ、2022年1月17日、当社グループからも開示いたしましたとおり、第Ⅲ相臨床試験の最初の被験者登録が行われました。現時点では、臨床試験は順調に進捗しております。
F351のNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に起因する肝線維症に対する米国における第Ⅱ相臨床試験については、米国の当局と協議を継続しており、その推進のために業務および会社組織上の様々な方策を検討しております。
■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全急性時(ACLF)治療薬)-北京コンチネント
F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを阻害する可能性を持つ強いジペプチド化合物であり、急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性憎悪(ACLF)に関連して発生するアポトーシスや炎症反応に重要な化合物です。F573は、2022年1月20日に第Ⅰ相臨床試験の最初の被験者への投与が行われましたが、第Ⅰ相臨床試験は順調に進んで参りました。北京コンチネントは、2022年末ないし2023年頭までに第Ⅰ相臨床試験を完了し、第Ⅱ相臨床試験に移行することを目指しております。
■CG001419(TRK分解薬)- Cullgen
当社グループから2022年8月9日に「連結子会社CullgenのTRK分解剤に関するIND申請承認のお知らせ」で開示いたしましたとおり、Cullgenは中国のNMPAから固形腫瘍治療用のTRK分解薬であるCG001419のIND承認を取得いたしました。CG001419は、神経栄養性チロシン受容体キナーゼ(NTRK)融合遺伝子陽性およびTRK過剰発現のがん(非小細胞肺がんや乳がん、膵臓がんを含む多くの固形腫瘍に見られる)の治療に使用される、業界初の選択的で強力な経口用標的蛋白質分解誘導薬です。Cullgenは、中国の医師や病院と緊密に協力しながら、第Ⅰ相臨床試験の準備をしております。米国側では、Cullgenは将来の臨床試験の準備を続けており、臨床試験前の協議を米国FDA(食品医薬品局)と積極的に行っております。
#C2160JP #ジーエヌアイグループ #医薬品セクター