【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染流行の波が繰り返される中でも、ウィズコロナの下で徐々に規制が緩和され、景気は持ち直しの動きが見られました。一方で、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや物価上昇、供給面での制約並びに金融資本市場の変動の影響等、先行きの不透明感が増しております。当社グループの属する不動産業界におきましては、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢の長期化等により、資材の高騰や供給不足が見られましたが、不動産需要は堅調に推移し取引価格は上昇基調となりました。また、直近では新型コロナウイルス感染症の水際対策の緩和や円安を背景に、海外投資家の日本の不動産に対する需要が高まりつつあります。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によれば、2022年度の首都圏の中古マンション成約件数は35,429件と前年から11.0%減少しましたが、中古マンションの需要は引き続き堅調に推移しています。成約平米単価は67.24万円(前年比12.4%増)と10年連続で上昇し、この10年で76.1%上昇しております。また、成約価格も4,276万円(同10.5%増)と成約平米単価と同様に10年連続で上昇し、4千万円台に突入しました。12月の在庫件数は、前年比プラス16.6%の2ケタ増となり11ヶ月連続で前年を上回りました。このような事業環境のもと、当社グループの主力事業である不動産売買事業は、首都圏における中古住宅の需要の高まりを受けて、居住用不動産の事業拡大に注力してまいりました。居住用不動産は、前期に開設した営業所5店舗のエリア深耕及び営業活動が軌道に乗り始めたことで、仕入・販売ともに前期を上回る結果となりました。12月には6店舗目となる蒲田営業所を開設し、更なる拡大を目指しております。投資用不動産は、稼働率向上やバリューアップによる商品の付加価値を高め、販売強化することにより、在庫回転率の向上に努めたものの、収益性を重視した販売活動により売上高は前期を下回る結果となりました。一方で、仕入については資産性の高い物件の仕入活動を積極的に行った結果、件数・金額ともに前期を上回り、賃料収入も前期と比較し増加しました。不動産開発事業は、環境に優しい製品を設置した新築物件として「サイドプレイス」シリーズの竣工を進め、11月には上野に鉄骨造地上6階建のオフィスと商業店舗の複合ビルを竣工し、今期5棟の竣工を完了しました。販売は、収益性を見極めたことにより1棟のみとなりましたが、販売強化に向けリーシング・販売活動の見直しを進めました。不動産特定共同事業は、4月から販売を開始した世田谷プロジェクトの積極的な組成を行った結果、第3期までの募集を完了しました。以上の結果、当連結会計年度における売上高は312億42百万円(前期比8.0%減)、営業利益は29億76百万円(同27.1%増)、経常利益は23億9百万円(同30.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は15億64百万円(同22.6%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(不動産売買事業)不動産売買事業におきましては、投資用不動産の販売が89件(前期比38件減)、平均販売単価は1億90百万円(同14.5%増)となり、売上高は169億41百万円(同19.8%減)となりました。また、居住用不動産の販売は、289件(前期比88件増)、平均販売単価は37百万円(同19.5%減)となり、売上高は108億56百万円(同15.8%増)となりました。以上の結果、売上高は290億16百万円(前期比8.9%減)、セグメント利益(営業利益)は40億51百万円(同29.9%増)となりました。
(賃貸その他事業)賃貸その他事業におきましては、不動産賃貸収入が20億77百万円(前期比3.4%増)となりました。以上の結果、売上高は22億26百万円(前期比5.3%増)、セグメント利益(営業利益)は7億80百万円(同6.1%増)となりました。
(注)「投資用不動産」は、一棟賃貸マンション及び一棟オフィスビル等の賃貸収益が発生する物件を購入者が主に投資用として利用する不動産として区分し、「居住用不動産」は、区分所有マンションを中心に購入者が居住用として利用する不動産、及び土地等も含まれております。
② 財政状態の状況当連結会計年度末における財政状態は、総資産は774億48百万円(前期比23.4%増)、総負債は528億43百万円(同34.7%増)、純資産は246億4百万円(同4.5%増)となりました。
(資産)総資産の主な増加要因は、販売用不動産(仕掛販売用不動産も含む)が155億40百万円、現金及び預金が1億88百万円増加した一方、有形固定資産が11億84百万円減少したことによるものであります。
(負債)総負債の主な増加要因は、長期借入金(1年内返済予定を含む)が73億95百万円、社債(1年内償還予定を含む)が37億68百万円、短期借入金が12億84百万円、その他流動負債が6億38百万円増加したことによるものであります。
(純資産)純資産の主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が15億64百万円増加した一方、利益剰余金の配当により3億56百万円減少したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1億99百万円増加し、163億15百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動の結果、使用した資金は、114億91百万円(前連結会計年度は、33億7百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益22億78百万円の計上があった一方、棚卸資産の増加額148億90百万円、利息の支払額6億49百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動の結果、使用した資金は、1億57百万円(前連結会計年度は、12億18百万円の使用)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入19億39百万円があった一方、定期預金の預入による支出19億28百万円、有形固定資産の取得による支出1億45百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動の結果、獲得した資金は、118億47百万円(前連結会計年度は、6億21百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入218億27百万円、社債の発行による収入46億8百万円、短期借入金の純増額12億84百万円があった一方、長期借入金の返済による支出144億31百万円、社債の償還による支出8億82百万円があったことによるものであります。
④ 仕入及び販売の状況
(生産実績)当社グループは、中古不動産の売買事業及び賃貸その他事業を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、該当事項はありません。
(受注実績)当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
(販売実績)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
区分
当連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
セグメントの名称
販売件数
前年同期比(%)
販売高(百万円)
前年同期比(%)
不動産売買事業
380
114.8
29,016
91.1
賃貸その他事業
-
-
2,226
105.3
合計
380
114.8
31,242
92.0
(注) セグメント間取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績の分析
(売上高)当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して27億14百万円減少の312億42百万円(前連結会計年度比8.0%減)となりました。これは、不動産売買事業の売上高が28億26百万円減少の290億16百万円(同8.9%減)となったことによります。この不動産売買事業の内、投資用不動産は、底堅い需要に支えられ価格が上昇する中で、収益性を重視した販売活動を進めました。そのため、利益率は上昇したものの、売上高は41億71百万円減少の169億41百万円(同19.8%減)と前期を下回る結果となりました。一方、居住用不動産は、昨年度に開設した営業所5店舗のエリア深耕及び営業活動が軌道に乗り始めたことで、売上高は14億80百万円増加の108億56百万円(同15.8%増)と前期を上回る結果となりました。賃貸その他事業の売上高は、1億12百万円増加の22億26百万円(同5.3%増)となりました。賃貸その他事業の売上高の殆どを占める賃貸収入は、投資用不動産の仕入から販売までの保有期間中、及び当社が固定資産として保有する物件から計上されますが、仕入の強化に加え、収益性を重視した販売活動の結果、投資用不動産の在庫が増加したため、賃貸その他事業の売上高が増加しております。詳しくは「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。
(売上原価、売上総利益)当連結会計年度の売上原価は、収益性を重視した販売活動により前連結会計年度と比較して40億76百万円減少の240億92百万円(前連結会計年度比14.5%減)となりました。また、売上総利益は前連結会計年度と比較して13億62百万円増加の71億50百万円(同23.5%増)となりました。なお、売上総利益率は、5.8ポイント上昇して22.9%(前連結会計年度は17.0%)と上昇しました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して7億27百万円増加の41億73百万円(前連結会計年度比21.1%増)となりました。これは主に、仕入に係る消費税を含めた租税公課が1億91百万円、人員採用に伴う人件費及び採用教育費が4億96百万円増加したことによります。営業利益は売上高の減少したものの収益性を重視した販売活動を進めた結果、6億34百万円増加の29億76百万円(同27.1%増)となりました。なお、売上高営業利益率は2.6ポイント上昇して9.5%(前連結会計年度は6.9%)となりました。
(営業外損益、経常利益)営業外収益は、前連結会計年度と比較して28百万円増加の63百万円(前連結会計年度比82.0%増)となりました。これは主に解約違約金収入が13百万円増加したことによります。営業外費用は、前連結会計年度と比較して1億24百万円増加の7億31百万円(同20.6%増)となりました。これは主に、仕入に係る借入金の増加により、支払利息が1億36百万円増加したことによります。以上の結果、経常利益は、前連結会計年度と比較して5億38百万円増加の23億9百万円(前連結会計年度比30.4%増)となりました。なお、売上高経常利益率は2.2ポイント上昇して7.4%(前連結会計年度は5.2%)となりました
(特別利益、親会社株主に帰属する当期純利益)親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比較して2億88百万円増加の15億64百万円(前連結会計年度比22.6%増)となりました。なお、売上高当期純利益率は1.3ポイント上昇して5.0%(前連結会計年度は3.8%)となりました。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。また、当社グループにおける重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載されているとおりであります。
③ 資本の財源および資金の流動性当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、不動産買取再販事業に係る販売用不動産の仕入れであります。販売用不動産の仕入れは、個別の販売用不動産を担保とした金融機関からの借入金及び販売活動で獲得した資金によって行っております。当該販売用不動産は一年以内を目途に販売することとし、借入金は、月例約定返済を織り込みつつ、販売用不動産の販売時に一括返済することを基本方針としており、資金の流動性は十分に確保されております。 また、上記のほか資金調達の手段として、社債の発行、不動産特定共同事業の運営及びクラウドファンディングを活用したファンドの組成等を行い、資金調達の補助的な役割を担っております。これらで得た資金については、安定した賃貸家賃収入を獲得するための長期保有目的不動産の購入等に充てられております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等2022年12月期からは、新たに第2次中期経営計画を策定し、以下のとおりの計画数値・経営指標を掲げております。
第2次中期経営計画の経営指標(2022年12月期~2024年12月期)2022年12月期は、成長性を示すCAGR(売上高成長率)及びEPS成長率、効率性を示すROE、棚卸資産回転率は目標を下回る結果となりました。一方で、健全性を示す自己資本比率、ネットD/Eレシオは、目標の範囲内であり、株主還元は、計画通りの配当性向を達成し、自己株式取得も機動的に実施しました。2023年12月期は、財務健全性の維持や株主還元の充実を図りつつ、成長性及び効率性指標である売上高の拡大及び利益の確保を行う計画としております。
2023年12月期は、成長性及び資本効率性の指標に注視し事業運営を進める。
経営指標
目標数値
当連結会計年度
成長性
売上高成長率
15.0%以上
▲11.3%
EPS成長率
30.0%以上
25.0%
効率性
ROE
11.0%以上
6.5%
棚卸資産回転率
1.5回/年以上
0.6回/年
健全性
自己資本比率
30.0~35.0%
31.6%
ネットD/Eレシオ
1.2倍~1.5倍
1.2倍
株主還元
配当性向
30%以上
30.0%
自己株式取得
機動的に対応
404,600株(※)
(※)2021年11月12日開催の取締役会において自己株式取得を決議しており、2022年12月期中に取得した株式数となります。