【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における経済環境について、米国では、景気拡大ペースが鈍化しているものの、生産、個人消費、雇用は増勢基調が保たれており、全体として景気は堅調に推移しております。欧州では、物価高騰や天然ガスの供給不足の影響により景気は鈍化傾向にあり、今後もこのトレンドが続くと見込まれます。わが国では、緩やかに景気の持ち直しの動きが続いているものの、物価上昇や金融資本市場の変動、海外景気の下振れがわが国の景気に与える影響を注視する必要があります。
このような状況のもと、当社グループは2021年を起点とする5ヵ年の中期計画「中計’21」を策定し、その中で掲げた各種経営指標を実現するため、これまで培ってきた得意分野や独自性、研鑽してきた機能別組織機能、変革・強化を図ってきたガバナンスやコンプライアンス体制をベースに置きながら、取り巻く変化に迅速、かつ柔軟に適応する力を当社グループ全体で強化することに取り組みました。
この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は350,430百万円(前年同期比67,622百万円増、23.9%増)、営業利益は31,391百万円(前年同期比8,272百万円減、20.9%減)、経常利益は45,288百万円(前年同期比3,506百万円増、8.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は44,768百万円(前年同期比15,901百万円増、55.1%増)となりました。
セグメントの経営成績を示すと、次のとおりであります。
① タイヤ事業
北米市場における市販用タイヤについては、OPEN COUNTRY A/T Ⅲ(オープンカントリー・エーティースリー)、NITTO RECON GRAPPLER A/T(ニットー リコングラップラー・エーティー)、今年から販売開始した新商品NITTO NOMAD GRAPPLER(ニットーノマドグラップラー)など当社が強みとしている大口径ライトトラック用タイヤやSUV用タイヤ等の重点商品を中心とした販売に注力したことなどにより、販売量は前年度を上回りました。また、売上高は値上げや重点商品の拡販による商品ミックスの改善もあり、販売量以上に前年度を大きく上回りました。
欧州市場における市販用タイヤについては、欧州各国での需要回復や物流状況改善により販売増の効果が見られたものの、ロシア・ウクライナ情勢に伴うロシアや周辺地域への販売停止の影響を受けて、販売量は前年度を大きく下回りました。一方、売上高においては、欧州各国での値上げや商品ミックス改善がロシア及び周辺地域向けへの販売停止の影響を補い、前年度並みとなりました。
国内市場における市販用タイヤについては、新型コロナウイルスに関する行動制限の緩和に伴い需要が回復しつつあること、OPEN COUNTRY(オープンカントリー)など重点商品を中心とした販売に注力したことにより、販売量は前年度を上回りました。売上高も値上げや重点商品の拡販による商品ミックスの改善により、前年度を上回りました。
新車用タイヤについては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足や半導体不足による自動車メーカーの減産の影響を受けたものの、販売量は前年度を上回りました。また、売上高は原材料市況高騰の一部を価格に反映できたため、前年度を大きく上回りました。
その結果、タイヤ事業の売上高は320,114百万円(前年同期比66,145百万円増、26.0%増)、営業利益は33,738百万円(前年同期比7,422百万円減、18.0%減)となりました。
② 自動車部品事業
自動車部品事業については、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足や半導体不足による自動車メーカーの減産の影響を受けたものの、原材料市況高騰の一部を価格に反映できたため、自動車部品事業の売上高は30,249百万円(前年同期比1,433百万円増、5.0%増)と前年度を上回り、営業損失は2,346百万円(前年同期は1,497百万円の営業損失)となりました。
③ 当社免震ゴム問題に係る製品補償対策費及び製品補償引当金繰入額の状況
2015年12月期において、出荷していた製品の一部が国土交通大臣認定の性能評価基準に適合していない等の事実が判明いたしました。
当第3四半期決算において、製品補償対策費352百万円(主として、免震ゴム対策統括本部人件費等)を特別損失として計上しております。
現時点で合理的に金額を見積もることが困難なもので、今後発生する費用(主として、営業補償や遅延損害金等の賠償金、追加で判明する改修工事費用の金額が既引当額を超過する場合の費用等)がある場合には、翌四半期連結会計期間以降の対処進行状況等によって、追加で製品補償引当金を計上する可能性があります。
(2)財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末の総資産は626,634百万円となり、前連結会計年度末に比べ95,404百万円増加しました。これは、主として、受取手形及び売掛金や棚卸資産等が増加したことによります。
また、負債は293,051百万円となり、前連結会計年度末に比べ41,977百万円増加しました。これは、主として、コマーシャル・ペーパーや未払法人税等が増加したことによります。なお、有利子負債は153,312百万円となり、前連結会計年度末に比べ24,528百万円増加しました。
当第3四半期連結会計期間末の純資産は333,583百万円となり、前連結会計年度末に比べ53,427百万円増加しました。これは、主として、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により利益剰余金、円安の影響により為替換算調整勘定が増加したことによります。
この結果、自己資本比率は53.2%となりました。
(3)経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等に重要な変更及び新たに定めたものはありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、当第3四半期連結累計期間において、その内容に重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は8,329百万円であります。
当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の状況の重要な変更は、次のとおりであります。
〔タイヤ事業〕
当社は、2017年よりタイヤと路面の間に働く表面凹凸と摩擦力の評価法について大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻の田中展准教授と共同研究を実施していました。この度「タイヤゴム摩耗面の高精度スペクトル解析法の構築」の研究課題で2021年度機械学会関西支部賞研究賞を受賞し、3月16日の機械学会関西支部総会で表彰されました。本研究成果により、摺動試験後のゴム表面の粗さの情報を高精度に解析することが可能になりました。
国内市販用タイヤについては、SUV用タイヤブランド「OPEN COUNTRY」が2023年に40周年を迎えることを記念し、「OPEN COUNTRY 785(オープンカントリー・ナナハチゴ)」を10月より国内市場で復刻発売を開始しました。OPEN COUNTRY 785は、1983年5月末より同時発売されたOPEN COUNTRYブランド4商品のうちの1商品で、トレッドパターンは当時のデザインをそのまま再現し、アウトドアなどのアクティブなシーンにおける、舗装されていない凹凸路面や泥濘路面でも走行可能なトラクション性能を有した商品となっています。タイヤのサイド部は、レトロデザインとモダンデザインの両面のデザインから、ユーザーの好みや車種に合わせて外観を自由に選択できるデュアルサイドデザインとなっています。
トラック・バス用タイヤについては、通年での使用を考慮して開発したコミュニティバス専用スタッドレスタイヤ「M937(エムキュウサンナナ)」を9月1日より国内市場で発売しました。導入事例数が増加傾向のコミュニティバスは、その使用環境から摩耗性能が求められる一方で、降雪が少ない地域であっても、突然の積雪に備えてスタッドレスタイヤを装着する事例が増えています。M937は、タイヤが路面に接地するトレッド面の構成により推定摩耗ライフを当社従来品(M935)比で38%向上させるとともに、積雪や凍結した路面における走行性能を確保した商品となっています。なお、M937はそのデザイン性と機能性が評価され2022年度グッドデザイン賞を受賞しました。