【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う各種制限の緩和により、個人消費や企業収益等が緩やかに持ち直し、アフターコロナに向けた社会経済活動の正常化の動きが本格化しました。景気の先行きについては、ウクライナ情勢や世界的な金融引き締めによる企業経営コストの上昇等、インフレや景気後退への懸念は強く、依然として不透明な状況が続いております。
石油製品販売業界においては、原油価格は第2四半期以降に落ち着きを見せた一方で、急激な円安が日本の石油元売会社の円建て原油コストを上昇させました。国内石油製品価格は、2022年1月に開始された政府の激変緩和措置により、主にガソリン価格の安定化策等が需要の下支えと回復に寄与しました。国内石油製品需要は、ガソリンの場合、2020、2021年度を底として、2022年度は僅かにプラスに転じました。一方、わが国では2050年の脱炭素社会実現に向けた政府による諸政策が継続しており、自動車販売市場で6月に発売された軽自動車タイプのEVが市場をけん引しています。当連結会計年度のEV販売台数は前年度比3.1倍の約7万7千台に達し、EVが乗用車販売全体に占める割合は2.1%(前年度0.72%)となりました。
このように脱化石燃料による中長期的な石油需要減の見通しは変わらず、当社グループは社会経済の脱石油化に対応すべく引き続き事業ポートフォリオの選択と集中を継続するとともに、再生可能エネルギー事業において当連結会計年度にマレーシア国内にこれまでの設備に加え、新たなバイオマス燃料の輸出用出荷拠点(ストックヤード)を開設し、次期連結会計年度からの本格的な運用を予定しています。
当社はこのような状況下、長期ビジョン「nissin Vision 2030」のフェーズⅠにあたる2022年3月期からの3ヵ年を実施期間とした中期経営計画の2年目として、その基本方針のもと、次のとおり取組みました。成長事業への積極投資につきましては、再生可能エネルギー関連事業におけるバイオマス発電燃料の営業活動の強化と安定出荷のため、ストックヤードを増設した結果、販売数量が増加しました。コア事業である石油関連事業の強化につきましては、直営SSの運営におけるサービス強化や、法人向け営業において販売価格の適正化等を行い、事業の強化を一層推進しました。一方で、事業ポートフォリオを見直し、連結子会社である日新レジン株式会社の2023年度中の事業停止を決議しました。経営基盤の強化につきましては、人事戦略においてスキル研修や人材確保・定着のための施策を実施、コーポレートガバナンスにおいて国内子会社における規程類の整備、グローバル・コンプライアンスに関するルール整備や教育等を推進しました。SDGs経営の推進につきましては、サステナビリティへの取組みにおいて、マテリアリティへの取組み推進や経営幹部への教育実施、ツールを用いた社内周知により、全社的な意識向上を図りました。
当連結会計年度の当社グループ業績は、主に石油関連事業全体で原油価格の上昇や円安の影響に伴う販売価格の上昇等により、売上高は38,897,187千円(前期比6.7%増)となりました。また、石油関連事業における販売価格の適正化や、バイオマス発電燃料の販売数量の増加等により、営業利益は640,338千円(前期比49.7%増)、経常利益は952,906千円(前期比41.3%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、当第4四半期において、連結子会社である日新レジン株式会社の事業停止に伴う特別損失の計上等により、286,824千円(前期比41.5%減)となりました。
セグメント別及び部門別の状況は次のとおりであります。
<石油関連事業>
石油関連事業全体につきましては、燃料油において原油価格の上昇や円安の影響に伴う販売価格の上昇等により、売上高は前期比6.7%増の35,494,591千円となりました。セグメント利益は、燃料油における販売価格の適正化等により、前期比58.1%増の742,393千円となりました。
(直営部門)
直営部門につきましては、燃料油において販売価格の上昇等により、売上高は前期比5.8%増の29,840,060千円となりました。なお、直営SS数は前期末と同じく53SSとなりました。
(卸部門)
卸部門につきましては、販売店SSの閉鎖等により燃料油の販売数量が減少したものの、販売価格が上昇したこと等により、売上高は前期比52.4%増の374,281千円となりました。なお、販売店SS数は前期末と比べ、5SS減少し、56SSとなりました。
(直需部門)
直需部門につきましては、燃料油において販売価格の上昇等により、売上高は前期比13.4%増の3,687,291千円となりました。
(産業資材部門)
産業資材部門につきましては、石油化学製品の販売価格の上昇等があったものの、売上高は前期並みの1,255,180千円となりました。
(その他部門)
その他部門につきましては、LPガスの販売数量等が減少したものの、CP価格の上昇に伴う販売価格の上昇等により、売上高は前期比5.3%増の337,777千円となりました。
<再生可能エネルギー関連事業>
再生可能エネルギー関連事業につきましては、PKS(Palm Kernel Shell:パーム椰子殻)の販売等により、売上高は前期比56.9%増の2,753,169千円となりました。セグメント損失は、連結子会社であるNISSIN BIO ENERGY SDN.BHD.における在庫評価の影響等により13,699千円(前期はセグメント利益46,052千円)となりました。
<不動産事業>
不動産事業につきましては、一部物件の賃貸借契約の終了等により、売上高は前期比1.0%減の649,426千円となりました。セグメント利益は、オフィスビルの修繕費増加や賃貸借契約の終了等により前期比5.4%減の343,725千円となりました。
②生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメント
事業部門
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
金額(千円)
前連結会計年度比(%)
石油関連事業
産業資材
387,363
17.9
(注)1 金額は、製造原価によっております。
2 日新レジン株式会社が化成品の生産を行っております。
b. 受注実績
受注生産は行っておりません。
c. 仕入実績
セグメント
事業部門
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
金額(千円)
前連結会計年度比(%)
報告セグメント
石油関連事業
直営
25,218,107
5.6%
卸
176,225
479.9%
直需
2,334,917
8.1%
産業資材
749,706
0.1%
その他
230,678
5.1%
小計
28,709,635
6.2%
再生可能エネルギー関連事業
1,961,483
44.4%
不動産事業
–
–
合計
30,671,118
6.5%
(注) 前連結会計年度において、ケンタッキーフライドチキン店の運営を事業譲渡したことに伴い、当連結会計年度より「外食事業」の報告セグメントを廃止しております。
d. 販売実績
セグメント
事業部門
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
金額(千円)
前連結会計年度比(%)
報告セグメント
石油関連事業
直営
29,840,060
5.8
卸
374,281
52.4
直需
3,687,291
13.4
産業資材
1,255,180
△0.7
その他
337,777
5.3
小計
35,494,591
6.7
再生可能エネルギー関連事業
2,753,169
56.9
不動産事業
649,426
△1.0
合計
38,897,187
6.7
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 前連結会計年度において、ケンタッキーフライドチキン店の運営を事業譲渡したことに伴い、当連結会計年度より「外食事業」の報告セグメントを廃止しております。
e. 主要な販売先
該当事項はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成に当たって会計上の見積りが必要となる事項については、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、連結財務諸表作成に当たって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 固定資産の減損
減損を認識する際の将来キャッシュ・フローは、資産又は資産グループの使用状況や経営計画に基づく合理的な使用計画等を考慮し見積り、減損の要否を判定しております。判定の結果、減損が必要と判断された場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。
b. 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や経営計画等を用いた合理的な見積りを行っており、将来において回収が見込めない部分については評価性引当額を計上しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、SS・店舗の来店客数減少や法人向け営業活動の停滞等による業績低下の懸念がありますが、「新しい生活様式」に則った各種対策を講じることにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に与える影響は限定的であるとの仮定のもと、会計上の見積りを行っております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
a. 経営成績の分析
(営業利益)
営業利益につきましては、石油関連事業における販売価格の適正化や、バイオマス発電燃料の販売数量の増加等により、前連結会計年度と比較し212,600千円増益の640,338千円となりました。
(経常利益)
経常利益につきましては、為替差益の増加等により、前連結会計年度と比較し278,364千円の増益となり、952,906千円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、当第4四半期において、連結子会社である日新レジン株式会社の事業停止に伴う特別損失の計上等により、前連結会計年度と比較して203,509千円の減益となり、286,824千円となりました。
b. 財政状態の分析
(総資産)
総資産は、前連結会計年度末に比べ、1,137,168千円増加し、35,062,076千円となりました。これは、売掛金が549,257千円、機械装置及び運搬具が171,267千円減少したものの、現金及び預金が464,546千円、商品及び製品165,174千円、建設仮勘定671,197千円、投資有価証券及び関係会社株式が512,918千円増加したことなどによるものです。
(負債)
負債は、前連結会計年度末に比べ、668,135千円増加し、15,004,315千円となりました。これは、社債が112,000千円減少したものの、借入金が385,770千円、未払法人税等が157,950千円、事業整理損失引当金が136,000千円増加したことなどによるものです。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べ、469,032千円増加し、20,057,760千円となりました。これは、利益剰余金が153,295千円、その他有価証券評価差額金が347,456千円増加したことなどによるものです。
この結果、1株当たり純資産は前連結会計年度末と比べ、67.95円増加し、2,961.71円となりました。
c. キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローにおいて資金が増加したものの、投資活動によるキャッシュ・フローにおいて資金が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ464,546千円増加し、3,841,098千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローでは、1,626,184千円の資金の増加となりました。これは、棚卸資産の増加額165,174千円などにより資金が減少したものの、税金等調整前当期純利益586,595千円、減価償却費の計上546,421千円、減損損失の計上152,973千円、売上債権の減少額507,267千円などにより資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローでは、1,294,625千円の資金の減少となりました。これは、有形固定資産の取得による支出1,185,285千円、有形固定資産の除却に伴う支出45,168千円、資産除去債務履行による支出25,700千円などにより資金が減少したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローでは、140,241千円の資金の増加となりました。これは、短期借入金の減少額1,400,000千円、長期借入金の返済による支出414,229千円、社債の償還による支出112,000千円などにより資金が減少したものの、長期借入れによる収入2,200,000千円などにより資金が増加したことによるものです。
(キャッシュ・フローの指標)
項目
第75期
2019年3月期
第76期
2020年3月期
第77期
2021年3月期
第78期
2022年3月期
第79期
2023年3月期
自己資本比率
(%)
54.5
55.4
58.1
56.9
56.4
時価ベースの自己資本比率
(%)
17.5
15.9
19.4
17.4
17.3
キャッシュ・フロー対有利子
負債比率 (年)
9.7
7.6
5.7
-
6.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ (倍)
7.4
8.1
10.0
-
11.1
(注) 自己資本比率 ・・・自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 ・・・株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
・・・有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ・・・営業キャッシュ・フロー/利払い
ア.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
イ.株式時価総額は、期末株価終値×発行済株式数(自己株式数控除後)により算出しております。
ウ.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
エ.第78期は、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオを記載しておりません。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
また、当社グループの運転資金需要の主なものは、石油製品の仕入や販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、主に再生可能エネルギー関連の設備やSSの機械装置等の設備投資によるものであります。
なお、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債の残高は9,820,535千円、現金及び現金同等物の残高は3,841,098千円となっております。