【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1)経営成績の分析
2022年第3四半期の世界経済は、COVID-19収束後の経済活動の再開で個人消費が下支えしているものの、世界的なインフレや金利の上昇によって景気回復のペースが鈍化しています。ウクライナ情勢、インフレによる家計の逼迫、中国の景気減速などが重くのしかかり、経済の先行きは大変に不透明な状況です。当社グループにとっても、エネルギー関連などの事業機会が拡がる一方で、原材料・部品などの調達リスクは前年からさらに高まっており、経営環境はより一層先行きが不透明な状況となっています。
インダストリアル事業は、世界的なエネルギー価格高騰を受けてエネルギー確保や脱炭素化への投資が引き続き旺盛で、半導体や自動車関連の投資も活発だったことから受注は拡大しています。航空宇宙事業は、小型機(単通路機)を中心とした航空機需要の回復により主力のカスケードの生産・出荷が増加しています。しかしながら、中・大型機の需要回復が遅れていることに加えて、コロナ禍による航空機需要の激減から大きな打撃を受けた部品製造のサプライチェーンの再構築にも時間を要すると見られていることから、航空機産業は当面厳しい状況が続くとの見方が強まっており、当社の航空宇宙事業の本格的な回復には時間を要すると考えられます。メディカル事業は、足元では血液透析装置需要は旺盛、受注は堅調ながら、国内市場全体で部品不足による納期調整が継続したことで、国内向け血液透析装置販売が減少し、収益面でも、半導体など原材料・部品の予想を上回る供給不足と想定を上回る価格高騰が継続したことなどによって大きく減益となりました。また、ヘルスケア事業は、当第2四半期において据置型装置の販売低迷に伴う棚卸資産の評価損を1,516百万円計上しましたが、想定よりも販売が低迷していることから、当第3四半期において完成品在庫と一部部材についての評価損を2,339百万円追加計上しました。
なお、2022 年8月1日付「(開示事項の経過)連結子会社の異動(株式譲渡)完了に関するお知らせ」のとおり、2022年8月1日に当社連結子会社である LEWA GmbH(以下、LEWA社) 及び Geveke B.V. (以下、Geveke社)の全株式譲渡を完了しました。本株式譲渡により、連結決算において約368億円の株式譲渡益を、セグメント上の調整額(全社費用等)に計上しています。
この結果、当第3四半期連結累計期間の当社グループ業績は、受注高 155,855百万円(前年同期比13.8%増)、売上収益 131,204百万円(同10.5%増)、営業利益 35,330百万円(前年同四半期は4,183百万円)、税引前四半期利益 34,755百万円(前年同四半期は4,647百万円)、親会社の所有者に帰属する四半期利益 14,923百万円(前年同四半期は983百万円)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
工 業 部 門
<インダストリアル事業>
経済活動の正常化に加え、ロシア・ウクライナ情勢による資源価格の高騰が続くなか、エネルギー確保や脱炭素化によるLNGや水素関連への投資に加え、半導体や自動車関連の投資が進んでいます。
Clean Energy & Industrial Gasグループ(以下、CE&IGグループ)は、水素ステーション関連やLNG液化プラントの大口受注を獲得するほか、LNG燃料船向けの燃料供給装置や産業ガス関連の受注も好調に推移し、売上収益も前年から増加しましたが、人件費の上昇や旺盛な受注に対応するための体制整備等の先行費用の増加で、前年からは減益となりました。また、国内のポンプ・システム事業は、半導体製造工場やEVへの投資などが活況で、受注を大きく伸ばしており、宮崎インダストリアル工場は高い稼働を維持しています。
なお、LEWA社及び Geveke社は、2022年8月1日付でこれらの株式譲渡を完了し、以降は当社の連結範囲から除外されています。その他、電子部品製造機器事業は、スマートフォン向けの半導体需要は低調のなか、EV等の半導体需要は堅調で、ハイエンドMLCC用装置の受注は好調に推移しています。
<航空宇宙事業>
民間航空機需要は、中・大型機(双通路機)の回復は依然時間を要すると見込まれるものの、小型機(単通路機)の需要回復に伴い、宮崎航空宇宙工場のカスケードの生産はほぼフル稼働の状況で、収益性は回復傾向にあります。航空機産業におけるコロナ後のサプライチェーンの再構築・見直しが進んでいることから、従来、中・大型機向けの部品生産を主力としていたベトナム・ハノイ工場においてエアバス製小型機 A220向けの新規部品の受注を獲得する等、足元の事業環境の変化に応じた取組みを進めています。次世代交通手段eVTOLや水素を燃料とする航空機の実用化、商業用小型人工衛星といった新市場創出へ向けた取り組みも本格化しており、事業領域の拡大と技術力、生産体制の強化による航空関連部品メーカーとしての地位の向上を図ってまいります。
以上の結果、工業部門の受注高は98,063百万円(前年同期比18.2%増)、売上収益は76,637百万円(同14.0%増)、セグメント利益は2,818百万円(同3.4%減)となりました。
医 療 部 門
<メディカル事業>
血液透析事業は、国内市場では、血液透析装置の買い替え需要は旺盛で受注は堅調に推移していますが、国内市場全体で半導体等の部品不足による納期調整が継続していることから、装置販売は減少しました。消耗品販売は粉末型人工腎臓透析用剤の需要が引き続き堅調です。一方、海外市場は、中国が引き続き好調を継続、他市場は装置販売が前年を下回ったものの、消耗品販売は血液回路を中心に堅調に推移しました。収益面では、国内市場の血液透析装置の減収、想定を上回る原材料・部品価格の高騰、物流費、欧州等の血液回路の緊急空輸費などで、事業全体としては大きく減益となりました。原材料・部品不足や価格高騰にともなう販売価格への転嫁が厳しい市場環境のなか、コスト削減に向けた施策等の見直しを進めています。
CRRT事業は、中国のコロナ再拡大に伴う装置、消耗品需要の急拡大で、好調に推移しました。また、深紫外線LED技術を活用したヘルスケア事業は、据置型装置の販売が、厳しい競争環境や需要の減退により大幅な減少となり、当第3四半期の売上収益は前年同期比648百万円減少の749百万円となりました。こうした環境下、今後の販売予測を再度精査し見直した結果、当第3四半期に完成品在庫と一部部材についての評価損を2,339百万円追加計上しています。今後は、足元では引合いの好調なマンションやオフィス等の不動産向け、交通機関向けの組込型装置や水除菌装置などのBtoBビジネスに注力し収益の安定化に取り組んでまいります。
以上の結果、医療部門の受注高は58,166百万円(前年同期比4.9%増)、売上収益は54,929百万円(同3.0%増)、セグメント利益は△1,470百万円(前年同四半期は4,402百万円)となりました。
(2)財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は301,126百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,163百万円増加しました。関係会社株式の売却に伴い、現金及び現金同等物が増加した一方、のれん及び無形資産等が減少したことが主な要因です。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は176,357百万円となり、前連結会計年度末に比べて28,405百万円減少しました。借入金の返済による減少が主な要因です。
当第3四半期連結会計期間末の資本合計は124,769百万円となり、前連結会計年度末に比べ30,569百万円増加しました。利益剰余金の増加及び在外営業活動体の換算差額の影響が主な要因です。
(3)キャッシュ・フローの分析
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて31,867百万円増加し、60,894百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは+7,301百万円となりました。これは主に減価償却費及び償却費の計上及び前受金の増加による増加要因があった一方、たな卸資産の増加による減少要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは+80,204百万円となりました。連結範囲の変更を伴う関係会社株式等の売却による収入が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは△56,635百万円となりました。借入金の返済による支出が借入れによる収入を上回ったことが主な要因です。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(6)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は1,607百万円です。