【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は3,471,976千円となり、前連結会計年度末に比べ836,152千円減少しました。これは主に、賃貸用資産が281,126千円、賃貸用資産仮勘定が382,028千円それぞれ増加した一方で、現金及び預金が1,676,535千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は1,271,164千円となり、前連結会計年度末に比べ356,862千円減少しました。これは主に、契約負債(前連結会計年度は前受収益)が69,372千円増加した一方で、未払金が48,264千円減少したこと、及び長期借入金(1年内返済予定のものを含む)が343,320千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は2,200,812千円となり、前連結会計年度末に比べ479,290千円減少しました。これは主に、非支配株主持分が59,515千円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失578,171千円を計上したことによるものであります。
② 経営成績の状況
当社グループは、「つながるモノづくりで感動体験を未来に組み込む」を企業ミッションに掲げ、世の中の物理鍵とそれに伴う様々な制約から人々を解放し、扉で分断されたあらゆる場所や空間に人々が自由にアクセスできる「キーレス社会®」の実現を目指しております。具体的には、スマートロック等のIoT機器及びクラウド型認証プラットフォームを活用したサービスを開発し、サブスクリプションモデルにより提供しております。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症による影響が継続する一方、オフィス領域でオフィス回帰と呼ばれる出社を前提とした企業活動が再び活発化するなど、企業内のコミュニケーションやイノベーションの促進にオフィスが果たす役割が改めて見直された1年となりました。また、マクロ経済環境では、2022年初めからの外国為替相場における円安が著しく進行したことで、当社グループにおいても製品の開発や生産のための部材原価や物流のコストが上昇するなど、当社を含む製造業を取り巻く事業環境として厳しい1年となりました。なお、これらの市場環境及び動向は、2023年以降も当面の間は大きな改善は見込めないものと見ており、引き続き予断を許さない状況にあると考えております。
この事業環境のもと、主力サービスである「Akerun入退室管理システム」を通じたセキュリティの強化に加え、物理鍵のデジタル化やクラウド型入退室管理による利便性や管理性の向上と、勤怠管理や予約管理等の外部サービスとの連携を含む入退室データの利活用等の価値提供を通じて、新規及び追加での導入が引き続き促進されました。特に、「Akerun入退室管理システム」の主要顧客である中小規模企業への導入が堅調に進捗したことに加え、これまでに培った実績や信頼性等が評価され、大規模企業や大型ビルでの導入も拡大しております。さらに、フィットネスジムや室内ゴルフ練習場等の会員制スポーツ施設や小売店舗等を中心とした、無人・省人の店舗運営への旺盛なニーズ等を受けて、従来のオフィス利用だけにとどまらない、様々な業種や用途における継続的な問い合わせや導入も促進されております。
当連結会計年度における当社グループの事業活動の主な進捗としては、新規事業として住宅領域におけるスマートロック等の普及を担うMIWA Akerun Technologiesに加え、エンジニア等の採用や研究開発費への積極的な投資を通じて、新規事業及び「Akerun入退室管理システム」のさらなる利用体験の向上のためのアップデートやシステムの安定性の向上を継続的に実施しております。
特に、新規事業を担うMIWA Akerun Technologiesでは、3月に発表したヤマト運輸株式会社との集合住宅における置き配の推進を目的とした「マルチ デジタルキー プラットフォーム」との連携に加え、7月には賃貸物件の管理の効率化とスマートな居住体験を実現する「Akerun.Mキーレス賃貸システム」も発表しております。これらの取り組みを通じて、住宅における標準設備としてのスマートロックの普及を引き続き目指してまいります。
また、「Akerun入退室管理システム」でも、積極的な営業活動やマーケティング活動を通じて、セキュリティや入退室管理だけにとどまらない、外部パートナー企業の提供する勤怠管理、会員管理、決済等のサービスとのAPI連携により、新規需要の獲得及びARPUの増加も推進されております。加えて、規模を問わない多くの企業のビジネスにおける日常のインフラとして活用される「Akerun入退室管理システム」の信頼性の向上を目的に、安定的なサービス提供のためのシステム基盤の強化だけでなく、新たに最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer、CISO)を創設するなど、サービス基盤の強靭化に継続的に注力してきました。
これらの事業活動の進展や取り組みの結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は1,994,272千円(前年同期比24.6%増)、営業損失は609,129千円(前年同期は営業損失848,695千円)、経常損失は600,073千円(前年同期は経常損失869,952千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は578,171千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失866,498千円)となりました。
なお、当社グループは、Akerun事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,646,535千円減少し、当連結会計年度末には1,853,805千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、426,205千円(前連結会計年度は574,986千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失610,154千円、減価償却費71,331千円、売上債権の減少額65,646千円、契約負債(前連結会計年度は前受収益)の増加額69,372千円、未払金の減少額70,089千円によるものであります。
当社グループのビジネスモデルは、サブスクリプションモデルのHESaaSで顧客にサービスを提供し、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルである一方で、顧客獲得費用や開発費用が先行して計上される特徴があり、税金等調整前当期純損失から生じる営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる状況が継続しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、946,774千円(前連結会計年度は372,765千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出705,196千円及び無形固定資産の取得による支出267,752千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、273,556千円(前連結会計年度は2,853,295千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出343,320千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は次の通りであります。なお、当社グループは、Akerun事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
1,994,272
124.6%
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表作成に当たり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。
(固定資産の減損損失の認識の要否)
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 財政状態に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載の通りであります。
③ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高、売上原価、売上総利益)
売上高は、主に新規顧客獲得及び既存顧客からの追加受注獲得等により1,994,272千円(前年同期比24.6%増)となりました。なお、当連結会計年度末時点での契約負債は、538,499千円となっております。
売上原価は、Akerun入退室管理システムの稼働台数増加等により253,896千円(前年同期比23.5%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の売上総利益は1,740,375千円(前年同期比24.8%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
販売費及び一般管理費は2,349,505千円(前年同期比4.7%増)となりました。これは主に、知名度向上及び潜在顧客獲得のための広告宣伝費が減少した一方、年間平均人員数増加にともない給料及び手当が増加したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の営業損失は609,129千円(前年同期は営業損失848,695千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
営業外損益については、営業外収益は26,314千円(前年同期比58.5%増)、営業外費用は17,258千円(前年同期比54.4%減)となりました。営業外収益は主に、助成金収入16,524千円及び違約金収入5,687千円によるものであります。営業外費用は主に、支払利息10,427千円、譲渡制限付株式報酬償却損2,851千円及び消費税等差額3,978千円によるものであります。
この結果、当連結会計年度の経常損失は600,073千円(前年同期は経常損失869,952千円)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失)
特別利益は発生しておりません。特別損失は10,080千円(前年同期比2608.8%増)となりました。これは、固定資産除却損4,230千円及び減損損失5,850千円によるものであります。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は610,154千円(前年同期は税金等調整前当期純損失870,324千円)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純損失)
法人税等は6,501千円(前年同期比20.2%増)となりました。
以上より、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は578,171千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失866,498千円)となりました。
④ キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、継続的な受注獲得及び顧客による継続的なサービスの利用のための人件費や、知名度向上及び潜在顧客獲得のための広告宣伝費、製品機能や提供サービスの拡充及び品質の向上のためのエンジニア等の人件費や研究開発費であります。これらの資金需要に対しては、自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
⑦ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社グループは、中長期的に安定した売上収益を拡大させることが重要であると考えております。そのため、当社グループは達成状況を判断するための経営上の指標としてARRを重視しております。
当該指標について、第7期事業年度末(2020年12月31日)は1,208百万円、第8期連結会計年度末(2021年12月31日)は1,650百万円、第9期連結会計年度末(2022年12月31日)は2,028百万円となっております。
今後も、サービスの機能強化や適用領域の拡大、そしてプラットフォームとしてのさらなる価値提供を通じて、新規受注の獲得、アップセル及びクロスセル、解約率の抑制により、ARRを増加させてまいります。
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