【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における当社グループを取り巻く事業環境は、欧米のインフレ加速を抑えるための金融引締め政策、ウクライナ情勢の長期化に伴う原燃料価格高騰の影響と、中国のゼロコロナ政策(ロックダウン)の影響などにより、世界経済は減速しました。一方、国内においては、原燃料価格の高騰を背景としたインフレ、金融緩和策による円安、さらには半導体などの原材料供給不足による自動車生産の回復遅れにより、経済活動の停滞感が強まりました。今後、ウィズコロナ政策、インバウンド需要の増加を背景に、国内景気は緩やかな回復が見込まれますが、世界経済の減速、燃料高などの押下げ要因もあり、不透明な状況が続くとみられます。
こうした事業環境のもと、溶剤を回収するVOC処理装置は、リチウムイオン電池の需要拡大を受けて販売が堅調に推移しました。加えて、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大によるPCR検査需要に応え、PCR検査用試薬が販売を伸ばしました。一方、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”、セラミックコンデンサ用離型フィルムは、一時的な市況の悪化により販売が減少しました。また、フィルム事業や不織布マテリアル事業などは、製品価格改定を進めましたが、原燃料価格高騰の影響が大きく、苦戦しました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は前年同期比242億円(8.8%)増の2,987億円となり、営業利益は同133億円(58.2%)減の96億円、経常利益は同113億円(61.8%)減の69億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は、火災事故の受取保険金56億円を第1四半期連結会計期間において特別利益に計上しましたが、同24億円(19.5%)減の98億円となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
(フィルム・機能マテリアル)
当セグメントは、製品価格改定を進めましたが、原燃料価格高騰と工業用フィルムの市況悪化の影響が大きく、増収減益となりました。
フィルム事業では、包装用フィルムは、原燃料価格高騰に対し製品価格の改定が追いつきませんでした。
工業用フィルムは、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”、セラミックコンデンサ用離型フィルムが、一時的な市況悪化の影響を受け、販売が減少しました。
機能マテリアル事業では、工業用接着剤“バイロン”は、中国のゼロコロナ政策の影響を受け、販売が減少しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年同期比10億円(0.8%)増の1,283億円、営業利益は同121億円(72.8%)減の45億円となりました。
(モビリティ)
当セグメントは、製品価格改定を進めましたが、原燃料価格高騰の影響が大きく、増収、営業損失拡大となりました。
エンジニアリングプラスチックは、国内は、原燃料価格高騰に対し製品価格改定が追いつきませんでした。海外は、製品価格改定を進め、円安効果もありましたが、原料価格・物流費の高騰、中国のゼロコロナ政策の影響を受けました。
エアバッグ用基布は、自動車生産が前年同期比で回復したことを受け販売は増加しましたが、原糸などの原料購入価格の上昇により、スプレッドが改善しませんでした。
この結果、当セグメントの売上高は前年同期比51億円(15.7%)増の372億円、営業損失は29億円となりました(前年同期は営業損失14億円)。
(生活・環境)
当セグメントは、環境ソリューション事業は堅調に推移しました。一方、不織布マテリアル事業は、製品価格改定を進めましたが、原燃料価格高騰の影響が大きく、増収減益となりました。
環境ソリューション事業では、世界的なEV化に伴うリチウムイオン電池の需要拡大を受けて、リチウムイオン電池セパレータ製造工程で使用されるVOC処理装置、および交換エレメントの販売が堅調に推移しました。
不織布マテリアル事業では、原燃料価格高騰に対する製品価格改定が追いつきませんでした。
高機能ファイバー事業では、“ザイロン”は建築補強用途、自転車タイヤ用途、“イザナス”は釣糸用途を中心に販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年同期比121億円(14.7%)増の945億円、営業利益は同11億円(40.5%)減の16億円となりました。
(ライフサイエンス)
当セグメントは、医薬品製造受託事業は、GMP(医薬品等の製造および品質管理基準)対応費用が増加しましたが、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大によりPCR検査用試薬の需要が強まり、増収増益となりました。
バイオ事業では、新型コロナウイルス感染症の第7波、第8波の感染拡大によるPCR検査需要に応え、PCR検査用試薬の販売が大幅に増えました。診断薬用原料酵素、遺伝子検査用試薬の原料酵素は、欧米を中心に販売が拡大し、為替の影響も加わり、堅調に推移しました。
メディカル事業では、人工腎臓用中空糸膜の販売は堅調も、原燃料価格高騰の影響を受けました。
この結果、当セグメントの売上高は前年同期比47億円(19.3%)増の293億円となり、営業利益は同16億円(24.6%)増の80億円となりました。
(不動産、その他)
当セグメントでは、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年同期比13億円(15.6%)増の94億円、営業利益は同1億円(3.6%)増の17億円となりました。
資産、負債及び純資産の状況
総資産は、前年度末比121億円(2.3%)増の5,299億円となりました。これは主として棚卸資産や設備投資による有形固定資産が増加したことによります。
負債は、前年度末比56億円(1.8%)増の3,262億円となりました。これは主として支払手形及び買掛金や借入金が増加したことによります。
純資産は、利益剰余金の増加や、為替換算調整勘定などの増加により前年度末比65億円(3.3%)増の2,036億円となりました。
(2)事業上および財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(3)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は10,729百万円です。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。