【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の状況
① 資産
当第1四半期会計期間末における総資産の残高は、前事業年度末比21.8%減の3,044,442千円となりました。これは主に、仕掛品が446,185千円増加したものの、売掛金、契約資産(純額)が917,821千円減少したことによるものであります。
② 負債
当第1四半期会計期間末における負債の残高は、前事業年度末比14.5%減の2,275,596千円となりました。これは主に、買掛金が102,215千円、未払金が171,130千円、長期借入金が100,000千円減少したことによるものであります。
③ 純資産
当第1四半期会計期間末における純資産の残高は、前事業年度末比37.7%減の768,846千円となりました。これは主に、四半期純損失を470,629千円計上したことによるものであります。
(2) 経営成績の状況
当社は、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を経営理念に掲げ、創業以来の研究開発・事業活動で得たバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活かし、主に希少疾患・難病及び小児疾患領域に対して、新薬のみならず新たな医療の研究開発・提供を通して、患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアの実現を目指しています。
現在、当社は、乳歯歯髄幹細胞(SHED: Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)を活用した再生医療等製品の実用化を目指す細胞治療事業(再生医療)、より安価で高品質な治療薬を提供するバイオシミラー事業、これまでにない新たなメカニズムの抗体創製を目指したバイオ新薬事業の3つを主要事業としております。特にバイオシミラー事業においては、既存3製品による販売収益等が、会社の研究開発費を除いた一般管理費、すなわち固定費を上回る利益を生み出す規模に成長したことから、創薬事業に研究開発投資を行う一方で、バイオシミラー事業で安定的且つ継続的に収入を得る、バイオベンチャーとしては特長的な「成長と安定の両立」を支える重要事業との位置付けであります。
また、将来の企業価値を飛躍的に向上させるための成長ドライバーとして、当社は2019年より、こどもの歯から採取できる細胞(乳歯歯髄幹細胞(SHED))を活用した治療薬の創出を目的に細胞治療事業(再生医療)をスタートさせ、主に再生医療領域での医薬品開発の取り組みを開始しております。間葉系細胞の1つとして知られる乳歯歯髄幹細胞(SHED)は、世界的にも研究の歴史が浅く他社にない大変ユニークなシーズ(医薬品の種)であり、これまで当社が実施した基礎研究においては、他の間葉系幹細胞とは異なり、細胞自体の活性が高く増殖能も優れていること、SHEDは発生学的に神経系由来であるため特に神経系および筋骨格系の疾患に適性があることがわかっており、これらを踏まえて当社が創薬ターゲットとしている希少疾患・難病及び小児疾患領域において、これまでにない画期的な治療薬・治療法を創出できるポテンシャルがあると考えており、当社は世界初となるSHED由来の再生医療等製品として実用化することを目指しています。
以上から、当社は、バイオシミラー事業で収益の安定化を図りつつ、細胞治療事業(再生医療)及びバイオ新薬事業で、更なる企業価値向上に向け、その成長性を追求しております。当社は、2022年5月12日に公表しました中期経営計画-KWB2.0-を推進しながら、上述の各事業における今後の具体的な戦略方針と成果目標をコミットし、さらなる成長に向けて活動を強化しております。
当第1四半期累計期間における当社の業績につきましては、売上高45,979千円(前年同四半期比 92.5%減)、研究開発費312,535千円(前年同四半期比 196.3%増)、営業損失455,049千円(前年同四半期は37,991千円の営業損失)、経常損失470,326千円(前年同四半期は80,652千円の経常損失)、四半期純損失470,629千円(前年同四半期は80,954千円の四半期純損失)となりました。売上高につきましては、GBS-007(ラニビズマブバイオシミラー)を含む上市済み製品による売上高への貢献が2024年3月期の下期に集中していることから、前年同四半期に比べ当四半期は減少となりました。また、損益につきましては、研究開発費において乳歯歯髄幹細胞(SHED)の研究開発、特に後述の臨床研究開始に向けた順調な事業推進、及び東京研究所の設立に伴う費用の発生を主な理由として、前年同四半期よりも増加したこと等により、営業損失、経常損失、四半期純損失ともに前年同四半期比で赤字幅が増加となりましたが、開発活動を含めた事業全般は順調に推移しております。
当第1四半期累計期間における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。
① 細胞治療事業(再生医療)
当社は、2019年に導入しました乳歯歯髄幹細胞(SHED)について、これまで自社研究及びアカデミアとの共同研究を行っていく中で、乳歯歯髄幹細胞(SHED)の医薬品としての可能性を見出すと共に、医薬品開発において重要な製造についても、GMP省令(Good Manufacturing Practice:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)を遵守した世界初となる乳歯歯髄幹細胞(SHED)のマスターセルバンクを2022年8月に完成させ、マスターセルバンクのGMP製造を行うまでの一連の体制(S-Quatre®)を基盤とした乳歯歯髄幹細胞(SHED)の創薬プラットフォームを確立しました。また、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との間で進めている脳性麻痺に対する取り組みに関しても、世界で初めて慢性期脳性麻痺モデルの運動障害の改善を乳歯歯髄幹細胞(SHED)の投与で確認したことを基に、2023年内に名古屋大学が主導する脳性麻痺患児を対象とした臨床研究(乳歯歯髄幹細胞(SHED)のファーストインヒューマン試験)が開始される見込みであり、現在投与開始に向けた準備が進められています。
以上から、2019年に乳歯歯髄幹細胞(SHED)を導入して以来、SHEDの有効性を検証する探索・基礎研究のステージから、将来的に医薬品の原料となるマスターセルバンクの構築、そしてヒトへの投与を行う“臨床”へと、着実に開発ステージを上げてきたことにより、SHEDの医薬品としてのポテンシャルの実証のみならず、その製造体制をも含めた一連のプロジェクトの評価獲得を通して、これまで協議を重ねてきました開発パートナー候補先との契約締結の蓋然性が高まってきています。
また、そのほか、海外展開を見据えた将来の成長戦略として、より高い治療目標を達成するために乳歯歯髄幹細胞(SHED)への遺伝子導入や培養法改変によって乳歯歯髄幹細胞(SHED)の機能を強化した第二世代SHED(次世代型細胞治療「デザイナー細胞」)の研究開発を推進しております。特に、脳腫瘍に対する新規治療法の基礎研究を、国立大学法人浜松医科大学を中心に進めており、着実に研究データが得られつつあります。
以上の試みを通して、当社における再生医療等製品の研究開発活動並びにアカデミアや企業との連携による研究・開発パイプラインの強化をさらに一層加速させると共に、当社の中期経営計画-KWB2.0-(2022年5月公表)に掲げております乳歯歯髄幹細胞(SHED)を活用した治療薬の実用化を実現させるための成長戦略を推進してまいります。
② バイオシミラー事業
当社は、2012年11月に共同開発先である富士製薬工業株式会社によって好中球減少症治療薬「フィルグラスチムバイオシミラー(当社開発コード:GBS-001)」の製造販売承認を取得し、2019年9月には共同開発先の株式会社三和化学研究所と持続型赤血球造血刺激因子製剤「ダルベポエチンアルファバイオシミラー(当社開発コード:GBS-011)」の製造販売承認を取得してまいりました。これら製品に加え、2021年9月においては、千寿製薬株式会社と共同開発を進めた眼科領域で初となる「ラニビズマブバイオシミラー(当社開発コード:GBS-007)」の製造販売承認を取得し、当社として第3製品目となるバイオシミラーの上市を実現させました。当社は、これらの上市済み製品によってバイオシミラー事業を確実に成長させ、現在においては会社の固定費を上回る収入を継続的に得られていることから安定的な収益基盤を確立することができております。
さらに、上述の3製品に続く、第4製品目となるバイオシミラーについても順調に開発活動が進捗しており、2023年内に上市が予定されております。これにより、今後更なる収入の増加とともに中期経営計画-KWB2.0-(2022年5月公表)にて掲げている2025年度の業績目標達成に向け、着実に前進する見込みとなりました。
③ バイオ新薬事業
次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、2020年1月にがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約をそれぞれ締結しました。また、2022年5月には㈱カイオム・バイオサイエンスとの抗体医薬品開発に関する共同研究契約を締結し、当社が保有するがん領域の抗体医薬品の開発候補品について、両社の技術・知見を組み合わせて共同研究を行うことを目的に開発活動をスタートさせております。その他、2022年12月に特許査定を受けた新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する抗RAMP2抗体に関して、現在、開発パートナー企業への導出活動を鋭意推進しております。
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4) 経営方針・経営戦略等
当第1四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期累計期間における研究開発活動の金額は、312,535千円であり、各パイプラインの研究開発状況については、概ね計画どおりに進捗しております。
(7) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、バイオシミラー事業において既存3製品による販売収益等が安定的に計上されており、継続的に収入を得る体制を構築しております。しかしながら、2021年12月より販売を開始した「ラニビズマブバイオシミラー(当社開発コード:GBS-007)」は、上市後の好調な販売実績により想定を上回る程の成長段階にあり、パートナー企業からの受注に基づく製剤を供給するため相応の運転資金が必要な状況にあり、直接及び間接金融等を通して係る資金の確保に努めております。これは、当該製品が成長する際の初期的な運転資金であると認識しており、この成長時期における製造、販売、収入が一巡することで、これまで以上に安定的な収益サイクルを生み出し、当社の収益基盤強化に貢献するものと見込んでおります。
一方、研究開発投資の観点では、当社が業を営む医薬品業界には、研究開発投資を行ってからリターンを生み出すまでの期間が長く、また、そのリターンが実現するリスクや採算性に関するリスクも高いという特質があります。当社は、細胞治療事業及びバイオ新薬事業については多額の研究開発費がかからないよう、早期導出、パートナリングによるコスト分担等を推進し、リスクを低減しております。一方、バイオシミラーについても、既存バイオ医薬品の特許期間の満了時期から逆算して機を逸することのないよう、パートナーの選定を行い、当社は製造プロセスの開発に経営資源の集中的な投入を行うことで、リスク分散を図っております。
このような状況の下、当社は、上述のバイオシミラー事業の運転資金に充当することを目的に2023年7月には第三者割当による新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、未行使である新株予約権を除いて総額約1億円規模の資金を調達いたしました。また、今後の研究開発資金については、バイオシミラー事業からの継続的な収入を一部充当しながらも、依然として間接金融による必要な開発資金の調達は難しく、直接金融による資金調達が基本になりますが、開発品の優先順位を考慮しつつ財務会計面及び管理会計面からも検討を加えた上で意思決定を行っていくことで、パイプラインの充実と安定的な収益基盤の確立につながるものと考えております。
なお、当社は、当第1四半期会計期間末で現金及び預金並びに売掛金を合わせて795,458千円の残高を有しております。これに加えて、今後中長期的には原価低減施策に基づく、高い利益率を持ったバイオ後続品の販売による売掛債権の回収及びロイヤリティ収益、並びに上述の新株予約権行使による増資で必要十分な資金調達がされることが見込まれますので、これら資金を基に研究開発費を含めた販売費及び一般管理費を適切に管理してまいります。
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