【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
なお、第1四半期会計期間より非連結決算に移行したことから、前年四半期累計期間との比較分析は行っておりません。
(1) 財政状態の状況
① 資産
当第2四半期会計期間末における総資産の残高は、前事業年度末比22.8%増の4,259,946千円となりました。これは主に、仕掛品が284,308千円減少したものの、現金及び預金が713,584千円、売掛金が188,842千円、前渡金が259,746千円増加したことによるものであります。
② 負債
当第2四半期会計期間末における負債の残高は、前事業年度末比44.9%増の2,560,196千円となりました。これは主に、受注損失引当金が475,243千円、契約負債が216,000千円減少したものの、長期借入金(1年内返済予定含む)が975,000千円、転換社債型新株予約権付社債が500,000千円増加したことによるものであります。
③ 純資産
当第2四半期会計期間末における純資産の残高は、前事業年度末比0.2%減の1,699,749千円となりました。これは主に、資本金が12,353千円、資本剰余金が12,353千円、新株予約権が14,822千円増加したものの、四半期純損失を42,687千円計上したことによるものであります。
(2) 経営成績の状況
当社は、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。上述の目標を達成するために、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業、細胞治療事業(再生医療)の3つを主要事業とした研究開発活動を推進しております。バイオ後続品事業においては、安定的な収益基盤を確立させると共に、我が国の医療費削減を目的としたジェネリック医薬品の普及政策を背景に、患者様へ新たな治療の選択肢と、より安価な治療を届けられるよう事業展開を図っております。バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)においては、未だ世にない画期的な治療法の開発を目的に、新たな医薬品を創出するというチャレンジを鋭意推進し、その成長性を追求しております。このような状況の中、当社は2022年5月12日に新たに中期経営計画-KWB2.0-を公表し、上述の各事業における今後の具体的な戦略方針と成果目標をコミットし、さらなる成長に向けて活動を強化しております。
当第2四半期累計期間における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。
① バイオ後続品事業
富士製薬工業㈱と持田製薬㈱による好中球減少症治療薬「フィルグラスチムBS」の原薬販売及び2019年11月27日より販売が開始された㈱三和化学研究所と共同開発を行っていたダルベポエチンアルファバイオ後続品の売上高に応じたロイヤリティによる収益を安定的に計上しております。また、千寿製薬㈱と共同開発を行ってきたラニビズマブバイオ後続品について、2021年9月27日付で、同社が国内での製造販売承認を取得し、2021年12月9日に上市されました。上市後の売上高は順調に推移しておりますが、想定を超える受注により、さらなる売上増が見込まれることから今後の経営基盤を支える収益源としての役割が期待されます。その他、開発中のパイプラインについても着実に開発活動を推進しております。
② バイオ新薬事業
次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、2020年1月にがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約をそれぞれ締結しました。また、2022年5月には㈱カイオム・バイオサイエンスとの抗体医薬品開発に関する共同研究契約を締結し、当社が保有するがん領域の抗体医薬品の開発候補品について、両社の技術・知見を組み合わせて共同研究を行うことを目的に開発活動をスタートさせております。その他、開発中のパイプラインについても着実に開発活動を推進しております。
③ 細胞治療事業(再生医療)
当社は、再生医療事業の研究開発において、重要な研究ソースとして、主に乳歯歯髄幹細胞(SHED)を活用したプロジェクトの推進、アカデミア及び企業との共同研究又は提携を推進しております。
SHEDについては、SHEDの疾患に対する適性を見極め、骨及び神経疾患といった分野で新たな治療法を提供できる可能性を複数のアカデミア及び企業に評価いただき、それぞれ研究開発活動を推進しております。複数のアカデミア及び企業と研究開発を進めていく中で、SHEDを基盤とした治療法開発の可能性に関して着実に成果が得られつつあり、当社の成長ドライバーであるSHEDを活用した世界初の細胞治療・遺伝子治療製品等の創出を目指してまいります。
そのほか、将来の成長戦略として、高い治療目標を達成するために強化型細胞治療「デザイナー細胞」の具体的な進捗として、2021年9月8日にナノキャリア㈱と共同研究契約を締結、さらには同12月6日には㈱バイオミメティクスシンパシーズと疾患指向性のあるSHEDを取得可能とする新規培養法の開発に係る委託開発契約をそれぞれ締結し、開発活動を本格化させております。
また、再生医療分野での事業を進展させていくための重要なステップとして、SHEDを再生医療等製品として製品化するための基盤として開発を進めてきたSHEDマスターセルバンク(MCB)が2022年8月に完成しました。これにより、SHED製造の原料となる乳歯を提供頂く体制構築のための「ChiVo Net 未来医療子どもボランティアネットワーク」、東京大学医学部附属病院、昭和大学歯科病院、それぞれとの連携から、㈱ニコン・セル・イノベーションのGMP/GCTP対応製造施設において細胞培養、MCBのGMP製造を行うまでの一連の体制(S-Quatre®)を構築することができました。加えて、2022年9月には、昭和電工マテリアルズ㈱と再生医療等製品の製法開発及び治験薬製造に関する基本取引契約を締結し、上述の体制下において製造された信頼性の高い高品質なSHEDマスターセルバンクを活用した治験薬製造に向けて、開発活動を加速させております。以上の試みを通して当社における再生医療等製品の研究・開発活動をさらに一層加速すると共に、アカデミアや企業との連携による研究・開発パイプラインの強化をより確実に進めてまいります。
なお、これまでSHEDと共に取り組んでまいりました心臓内幹細胞(CSC)に関するパイプライン(JRM-001)については、将来の上市を目指したパートナリング活動を継続する中で、心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う当社の完全子会社である㈱日本再生医療の全株式譲渡を2022年4月4日付で決議し、実行いたしました。今後も当社による開発活動の支援を継続いたします。
これらの結果、当第2四半期累計期間における売上高は1,116,111千円、営業利益は11,137千円、経常損失は42,082千円、四半期純損失は42,687千円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,874,518千円となりました。
当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は709,001千円となりました。これは主に、棚卸資産の減少270,537千円があったものの、受注損失引当金の減少475,243千円、売上債権の増加188,842千円、前渡金の増加259,746千円、契約負債の減少216,000千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は23,745千円となりました。これは主に、関係会社貸付金の回収による収入が26,254千円あったものの、投資有価証券の取得による支出50,000千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は1,446,330千円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出25,000千円があったものの、長期借入れによる収入970,000千円、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入499,720千円があったことによるものであります。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5) 経営方針・経営戦略等
当第2四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7) 研究開発活動
当第2四半期累計期間における研究開発活動の金額は、251,787千円であり、各パイプラインの研究開発状況については、概ね計画どおりに進捗しております。
(8) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社が業を営む医薬品業界には、研究開発投資を行ってからリターンを生み出すまでの期間が長く、また、そのリターンが実現するリスクや採算性に関するリスクも高いという特質があります。
当社は、バイオ新薬事業及び細胞治療事業については多額の研究開発費がかからないよう、早期導出、パートナリングによるコスト分担等を推進し、リスクを低減しております。一方、バイオ後続品についても、既存バイオ医薬品の特許期間の満了時期から逆算して機を逸することのないよう、パートナーの選定を行い、当社は製造プロセスの開発に経営資源の集中的な投入を行うことで、リスク分散を図っております。
2019年10月、2020年4月には第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、加えて2019年12月に㈱みずほ銀行より借入れを実行し、未行使である新株予約権を除いて総額約18億円規模の資金を調達いたしました。その後、2021年12月より販売開始されたラニビズマブバイオ後続品の販売が想定以上に順調に推移していることを受け、原薬の増産供給に対応するため、2022年6月に㈱みずほ銀行より追加の長期借入金として10億円、そして2022年7月に中長期的な安定供給のための設備増強資金として第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債(行使価額修正条項付)及び新株予約権の追加発行を行い、未行使である新株予約権を除いて約5億円の調達を実施いたしました。今後の研究開発資金の調達については、依然として間接金融による資金調達は難しく、直接金融による資金調達が基本になりますが、開発品の優先順位を考慮しつつ財務会計面及び管理会計面からも検討を加えた上で意思決定を行っていくことで、パイプラインの充実と安定的な収益基盤の確立につながるものと考えております。
なお、当社は、当第2四半期会計期間末で現金及び預金並びに売掛金を合わせて2,525,215千円の残高を有しております。これに加えて、今後中長期的には原価低減施策に基づく、高い利益率を持ったバイオ後続品の販売による売掛債権の回収及びロイヤリティ収益、並びに上述の新株予約権行使による増資で必要十分な資金調達がされることが見込まれますので、これら資金を基に研究開発費を含めた販売費及び一般管理費を適切に管理してまいります。
#C4584JP #キッズウェルバイオ #医薬品セクター