【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の状況
当社グループの主な事業領域は、生産財と消費財であり、「設備投資」と「個人消費」の動向が業績に影響を及ぼします。
当社グループを取り巻く事業環境として、国内においては、部品・部材不足による工作機械の長納期化が依然として継続しました。伸長が続いていた半導体産業では設備投資需要が踊り場を迎え、自動車産業等においては半導体や部品の供給不足により生産設備の稼働率がやや低下する等、厳しい状況となりました。海外においては、北米では医療・航空等の分野における設備投資は堅調でしたが、高インフレと金融引き締めにより景気の減速感が見られました。中国では「ゼロコロナ政策」の終了後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が起こったことにより工場稼働率が一時低下したものの、当期末において影響はほぼ終息し、今後は経済社会活動の回復が見込まれます。ASEANでは、半導体不足に端を発するサプライチェーンの混乱等により内燃機関関連の自動車メーカーを中心に生産調整が行われる等、各地で様々な環境の変化がありました。
国内の個人消費については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う行動制限の緩和や政府の観光支援策の影響から社会経済活動に回復が見られました。一方、昨年度から続く原材料や電気・ガス価格の高騰に加え、円安が進んだことで様々な分野の商品やサービスの値上げが続き、耐久消費財に対する節約志向や商品の選別傾向が強まりました。
また、住宅産業においては、新設住宅着工戸数が持家を中心にダウントレンドであり、一部の商材では供給が滞ることもありましたが、住宅設備機器の更新需要は継続して堅調に推移しました。
このような環境の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は527,263百万円(前期比5.1%増)となりました。利益面につきましては、営業利益は16,563百万円(同、3.3%減)、経常利益は17,280百万円(同、1.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は12,527百万円(同、4.2%増)となりました。
セグメント別の概況は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメント区分の変更を行っており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
[生産財関連事業]
国内機械事業は、前期に獲得した半導体製造装置や建設機械の部品加工向け等の工作機械受注により、当期の売上は堅調な結果となりました。足元の設備投資状況としては、半導体産業の需要が鈍化し、自動車産業においても新たな投資への活発な動きが見えづらい状況ではありましたが、展示会等を通じて生産現場の自動化・省人化ニーズへのソリューション提案を精力的に行い、省エネ補助金を含む各種補助金の提案に注力する等、顧客接点を増やす様々な取組みを行いました。
国内機工事業は、測定機器や生産・物流現場等の自動化を支援するマテハン機器、メカトロ機器等の販売は堅調に推移し、補要工具、切削工具等については、下期に自動車産業における工場稼働率の低下等の影響を受けたものの、通期では前年を上回る実績となりました。営業活動においては、カーボン・ニュートラルの動きに対応し「脱炭素」をテーマにした商談会を各地で実施する等、顧客の需要喚起に努めました。また、国内機械事業・国内機工事業とも、「地域経済活性化のためのリアルプラットフォーム」として当社が企画する大型展示商談会を各地で開催することで、顧客との関係性をより深め、プラスオンの受注を獲得しました。
海外生産財事業は、北米支社では、医療・航空・EV等の分野における設備投資が堅調で、工作機械とともに、切削・補要工具の販売が底堅く推移しました。台湾支社では、EMS企業からの工作機械の受注及び販売は厳しい状況となりました。中国支社では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等によるユーザーの減産の影響により、工具等の販売が下期に低調に転じたものの、EV・半導体等の分野における工作機械の販売は底堅く推移し、通期としては堅調な結果となりました。アセアン支社では、サプライチェーンの混乱により各業界において生産調整が行われたものの、タイ・ベトナム・インドを中心に、自動車・航空・空調設備等の分野への工作機械及び工具等の販売は好調で、全体的に堅調に推移しました。(注)
その結果、生産財関連事業の売上高は353,203百万円(前期比6.7%増)となりました。
(注)営業地域及び顧客属性ごとに事業を区分したビジネスユニットを支社と称しております。
[消費財関連事業]
〔住建事業〕
住建事業は、堅調なリフォーム需要を背景に、高付加価値商材の提案に注力した結果、給湯・水廻り機器等の販売が堅調に推移しました。また、新設した「スマートエネルギー推進室」では、自家消費型のエネルギー活用提案を積極的に展開し、脱炭素化のニーズに即した営業活動に注力しました。非住宅分野においても、昨今の光熱費の高騰による企業のコスト対策意識の高まりを受け、商材と施工をセットにした設備改修提案を強化することで、太陽光発電等の新エネルギー機器等の販売が好調に推移しました。
その結果、住建事業の売上高は68,031百万円(前期比9.4%増)となりました。
〔家庭機器事業〕
家庭機器事業は、外出自粛及びテレワーク拡大による「巣ごもり」需要が一巡し、さらに、原材料や電気・ガス価格の高騰、円安の影響による値上げ等によって、耐久消費財への購買意欲が冷え込みを見せたこと等により、前期を下回る結果となりました。一方で、消費者ニーズを捉えたスピーディーな商品開発とラインアップの強化に取組み、様々なメディアを活用した情報発信を積極的に展開しYAMAZENブランドの浸透を図った結果、プライベートブランド商品の販売は堅調に推移しました。中でも扇風機・サーキュレーター・調理家電や電気毛布等、独自性のある付加価値を持った家電は前期を上回る実績となりました。
その結果、家庭機器事業の売上高は100,711百万円(前期比4.0%減)となりました。
②生産、受注及び販売の実績
当社グループは、生産財、住設建材及び家庭機器製品の販売を主たる事業としておりますので、生産実績については、記載を省略しております。
また、受注実績については、特定分野の受注実績の把握にとどまるため、記載を省略しております。
販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
生産財関連事業
353,203
106.7
住建事業
68,031
109.4
家庭機器事業
100,711
96.0
消費財関連事業
168,742
101.0
報告セグメント計
521,946
104.8
その他 (注)2
5,317
136.6
報告セグメント以外計
5,317
136.6
合計
527,263
105.1
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.事業セグメントに識別されないサービス事業であります。
3.当連結会計年度より報告セグメントの区分変更を行っております。「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析
経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における経営成績は、生産財関連事業は半導体産業やEMS企業の設備投資需要の鈍化が見られましたが、全体として堅調に推移しました。消費財関連事業においては巣ごもり消費の一巡や原材料・エネルギー価格の高騰・円安による調達コストの上昇により厳しい状況となりましたが、住宅設備機器の販売は堅調に推移しました。
売上高は、特に生産財関連事業における設備投資が伸長したことにより、527,263百万円(前期比5.1%増)となりました。なお、セグメント別の概況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況」に記載のとおりであります。
売上総利益は、売上高の増加に伴い前連結会計年度から5,541百万円増加し、78,279百万円(前年同期比7.6%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、主に人件費や新基幹システム等の稼働に伴う減価償却費の増加により、61,716百万円(前期比11.0%増)となりました。
上記の結果、営業利益は、前連結会計年度から569百万円減少し、16,563百万円(前期比3.3%減)となりました。また、売上高営業利益率は、3.1%となりました。
営業外損益(純額)は、為替差益等の発生により、717百万円となりました。
経常利益は、前連結会計年度より186百万円増加し、17,280百万円(前期比1.1%増)となりました。また、売上高経常利益率は、3.3%となりました。
特別損益(純額)は、臨時性を伴う取引が多く発生せず、53百万円となりました。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度から513百万円減少し、17,334百万円(前期比2.9%減)となり、法人税等合計額4,654百万円(税額控除の適用等により前期比18.8%減)及び非支配株主に帰属する当期純利益152百万円を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度から503百万円増加し、12,527百万円(前期比4.2%増)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ6,233百万円増加し、288,888百万円となりました。これは、売上債権(受取手形、売掛金、電子記録債権)の減少(3,895百万円)、商品及び製品の増加(8,404百万円)、リスク対応掛金の拠出や割引率の変更等による退職給付に係る資産の増加(1,775百万円)が主な要因であります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,156百万円減少し、165,130百万円となりました。これは、仕入債務(支払手形及び買掛金、電子記録債務)の減少(2,294百万円)や未払法人税等の減少(1,710百万円)が主な要因であります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ10,389百万円増加し、123,757百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加(8,521百万円)や為替換算調整勘定の増加(1,226百万円)が主な要因であります。その結果、自己資本比率は前連結会計年度末の39.9%から42.6%と2.7ポイント向上いたしました。
③キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー
7,054
7,765
710
投資活動によるキャッシュ・フロー
△2,766
△3,297
△531
財務活動によるキャッシュ・フロー
967
△5,177
△6,145
現金及び現金同等物に係る換算差額
1,418
684
△734
現金及び現金同等物の増減額
6,675
△24
△6,700
現金及び現金同等物期首残高
74,478
81,153
6,675
現金及び現金同等物期末残高
81,153
81,128
△24
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ24百万円減少し、81,128百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、償却前営業利益の計上、運転資本の増加及び法人税等の支払により、7,765百万円の収入(前年同期は7,054百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、基幹システム等の刷新事業をはじめとする有形及び無形固定資産の取得支出等により、3,297百万円の支出(前年同期は2,766百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、5,177百万円の支出(前年同期は967百万円の収入)となりました。
④目標とする経営指標の達成状況
当社グループは、3ヵ年中期経営計画「CROSSING YAMAZEN 2024」において、持続的な企業価値向上を実現するため、自己資本利益率(ROE)、基礎的営業キャッシュ・フロー※、自己資本比率を重要な経営指標と捉えております。
※基礎的営業キャッシュ・フロー:会計上の営業キャッシュ・フローから運転資本増減の影響を控除したキャッシュ・フロー
経営指標
77期(目標)
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
79期(最終年度目標)
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
77期(実績)
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
自己資本利益率(ROE)
9.0%
10.0%
10.6%
基礎的営業キャッシュ・フロー
14,000百万円
18,000百万円
14,427百万円
自己資本比率
40.0%~45.0%
42.6%
⑤資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)資金需要について
当社グループにおける主な資金需要は、運転資金及び事業の維持・拡大のための設備投資資金、そして配当金の支払等であります。これらの資金需要に対しては、主に自己資金(手元資金及び営業活動により獲得した資金)を充当しております。また、既存事業とのシナジー効果が期待できるM&Aを含め、今後においても当社グループの持続的成長につながる投資を積極的に行ってまいります。所要資金については、主に自己資金を充当する予定でありますが、本報告書提出時点においては、ウクライナをめぐる現下の国際情勢が世界経済に与える影響を考慮し、手元資金の流動性を優先し、金融機関からの借入等により調達した資金を一部充当する方針であります。
ⅱ)資金の流動性について
当社グループは、取引先からの信頼を維持・獲得するために財務の健全性をより強化し、また、事業遂行に伴う支払債務を履行するのに十分な流動性を確保することの重要性を認識しております。連結ベースの流動比率は、運転資本の最適化により、前連結会計年度末は158.4%、当連結会計年度末は165.5%と相応の水準を維持しており、十分な流動性と健全性を確保しているものと判断しております。
当社は、短期資金に関しては、複数の金融機関と当座貸越契約及び手形債権流動化契約を締結しており、金融・資本市場における不測の事態や急な資金需要が発生した場合に備えるため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結し、十分な流動性補完を確保しております。さらに、格付投資情報センター(R&I)及び日本格付研究所(JCR)の2社から発行体格付けを継続的に取得し、本報告書提出時点における、両者により付与された発行体格付は、R&I:A-、JCR:Aとなっており、中長期資金に関しても、多様な調達手段の選択が可能な環境を確保できているものと判断しております。
⑥重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。