【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態の状況
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a. 事業全体の状況総資産は、丸一ステンレス鋼管㈱を新規連結したこともあり、前年度比201億3千1百万円増加し3,302億5千2百万円となりました。流動資産は、1億2千6百万円減少し1,692億5千6百万円となりました。丸一ステンレス鋼管㈱の株式譲受資金137億2千4百万円の支出はあったものの、譲渡性預金の満期などから有価証券が58億7千6百万円減少し、現金及び預金の減少は19億5千万円となりました。一方、丸一ステンレス鋼管㈱の新規連結等から受取手形及び売掛金が38億7百万円、原材料及び貯蔵品が51億1千万円増加したことによります。固定資産は、202億5千8百万円増加し1,609億9千6百万円となりました。主な増減要因は、丸一ステンレス鋼管㈱の新規連結等から有形固定資産が101億1千4百万円増加、および株価の回復から投資有価証券が107億8千8百万円増加したことによります。負債は、104億3千7百万円増加し532億7千5百万円となりました。主な増減要因は、丸一ステンレス鋼管㈱の新規連結等から、短期借入金が9億5千4百万円、退職給付に係る負債が18億2千7百万円増加、また未払法人税等が18億8千5百万円増加、繰延税金負債も32億6千9百万円増加しました。純資産につきましては、96億9千4百万円増加し2,769億7千7百万円となりました。主な増減要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を138億5千7百万円確保し配当金の支払が74億9千8百万円あったことに加え、その他有価証券評価差額金が84億8千8百万円増加したことによります。なお、資本の財源および資金の流動性については、従来と大きな変動は無く、運転資金及び設備資金は自己資金を中心に充当し、国内及び海外子会社の借入金の返済の流動性は満たしておりますが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う先行き不透明感からも、引き続き当社グループ全体での円滑な事業活動の資金について留意してまいります。
b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況
(日本)当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて183億1千2百万円増加し、1,232億1千9百万円となりました。丸一ステンレス鋼管㈱を新規連結したことにより222億5百万円増加したことによるものです。
(北米)当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて33億1千6百万円減少し、171億1千5百万円となりました。在庫の圧縮が急務であったことから、鋭意削減を進めた結果、たな卸資産(製品、原材料及び貯蔵品)が減少しました。また、減価償却により固定資産は減少しました。
(アジア)当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて23億4千万円増加し、175億7千6百万円となりました。SUNSCO社において第2冷延設備の投資を進めたことにより固定資産が増加しました。
(2)経営成績の状況
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a. 事業全体の状況販売数量面では、北米4拠点合計・アジア3拠点合計ともに前年度を上回りましたが、日本国内の落ち込みが大きく、全体では1割弱の減少となりました。丸一ステンレス鋼管㈱の新規連結効果から、表面上の売上高は1,611億3千8百万円(前年度比4.0%増)と増収になりましたが、実質ベースでは約10%強の減収となりました。利益面は、国内も増益になり、北米・アジアが前年度比改善したことから、営業利益は183億3千2百万円(同24.6%増)と増益になり、丸一ステンレス鋼管㈱を除外した実質ベースでも約18%弱の営業増益となりました。営業外損益は、受取配当金が減少したことなどから、支払利息の減少や前年度に発生した為替差損が無かったものの、前年度比1億3千7百万円悪化しました。営業増益から、経常利益は205億8千7百万円(同20.4%増)と増益になりました。特別損益は固定資産売却益が減少したものの、前年度に発生した投資有価証券評価損が無かったことや減損損失が大幅減少したことから、前年度比69億6千6百万円改善しました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は138億5千7百万円(同118.1%増)と増益になりました。当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、パイプの販売価格と材料コイルの仕入価格との値差(スプレッド)の変動が最も大きなものです。当連結会計年度は、販売数量が減少したものの、スプレッドの改善が進んだことで、丸一ステンレス鋼管㈱を除外した実質ベースでも営業利益・経常利益共に増益となりました。
b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況
(日本)国内事業につきましては、単体の販売数量が需要減少から落ち込み、上期△16.8%・下期△7.0%と落ち込み幅は改善縮小したものの、年間で前年度比△11.9%に終わりました。加えて、販売単価も前半は需要低迷から低下傾向にあり、下期よりコイル価格は反転上昇し始め、当社でも製品値上げに取り組みました。期末では前年単価を上回ったものの、年間ベースでは前年度を下回りました。売上高は、丸一ステンレス鋼管㈱の新規連結効果によって1,114億7千7百万円(前年度比10.1%増)と表面上は増収となりましたが、既存売上高は実質△12.3%の減収に止まりました。セグメント利益は155億4千1百万円(同0.1%増)と増益になりましたが、丸一ステンレス鋼管㈱を除くと、上期までの材料コイル調達価格の低下によって年間のスプレッドは改善出来た一方、販売数量の減少および製造コスト負担増等から△6.4%の減益になりました。
(北米)北米事業につきましては、米国マルイチ・アメリカン・コーポレーション(MAC社)、米国マルイチ・レビット・パイプ・アンド・チューブLLC(Leavitt社)、米国マルイチ・オレゴン・スチール・チューブLLC(MOST社)の米国3拠点合計の販売数量は、鉄鋼製造業として安全保障上ロックダウン適用外で操業が継続出来たことに加え、下期は景気回復から前年同期比2桁伸長し、年間では前年度比+8.7%となりました。一方、メキシコのマルイチメックスS.A.de C.V.(Maruichimex社)はロックダウンの影響もあり、年間販売数量は前年度比△12.0%となりました。北米4拠点合計の売上高は、前年度比で販売単価の下落もあって234億9千7百万円(前年度比9.9%減)と減収になりました。一方セグメント利益は、前年度の高値のコイル在庫に起因する損失が当年度では発生しなかったことから、9千9百万円に黒字転換(前年度は15億2千7百万円のセグメント損失)しました。また、MOST社は経営環境の変化などから、のれんを含んだ企業の公正価値が帳簿価額を下回ったことから、のれんの減損損失351百万円を特別損失に計上しました。なお、Leavitt社は2期連続の営業赤字となりましたが、回収可能性のテストを行った結果、固定資産の減損損失の認識は不要となりました。
(アジア)アジア事業につきましては、ベトナムのマルイチ・サン・スチール・ジョイント・ストック・カンパニー(SUNSCO社)ではベトナム国内市場の競争激化と近隣国の輸入制限措置拡大等はあったものの、ベトナム国内販売シェア拡大などから販売数量は前年度比+1.7%を確保しました。一方、マルイチ・サン・スチール・(ハノイ)・カンパニー・リミテッド(SUNSCO(HNI)社)では、新型コロナウイルス感染症対策として二輪車ディーラーの営業停止があり、その影響から販売数量は前年度比△14.4%となりました。インドのマルイチ・クマ・スチール・チューブ・プライベート・リミテッド(KUMA社)では、4月から6月はロックダウンによる操業停止が続き販売数量が前年同期比8割減と大幅に減少しましたが、7月から12月は経済活動の再開から販売数量は一転して前年同期比4割増となり、年間では前年度比+8.0%になりました。結果、売上高は261億6千2百万円(前年度比5.2%減)と減収になりましたが、セグメント利益は前年度に固定資産を減損処理したSUNSCO社の減価償却費負担の低減やKUMA社での回収遅延債権の全額回収による貸倒引当金戻入益もあり、24億5千2百万円(同414.7%増)と増益になりました。
c. 目標とする経営指標の達成状況等第5次中期経営計画(2018年度~2020年度)の実績
第5次中計目標
2018年度実績
2019年度実績
2020年度実績
売上高(億円)
1,750
1,674
1,549
1,611
営業利益(億円)
240
192
147
183
営業利益率
13.7%
11.5%
9.5%
11.4%
ROE
6.5%
5.5%
2.4%
5.3%
株主還元率
50.0%
73.0%(3年平均)
社会への利益還元(百万円)
30(3年平均)
32(3年平均)
② 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
日本
104,858
+10.0
北米
22,543
△10.1
アジア
27,289
△1.9
合計
154,691
+4.4
(注)
1.金額は、販売価格によっております。2.上記金額は消費税等を含んでおりません。3.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは日本セグメントにおいて、丸一ステンレス鋼管株式会社を連結の範囲に含めたことにより、22,130百万円増加したことによるものです。
b. 受注状況当社グループは、主として見込み生産をしており、金額的に重要性がないため、記載を省略しております。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
日本
111,477
+10.1
北米
23,497
△9.9
アジア
26,162
△5.2
合計
161,138
+4.0
(注)
1.セグメント間取引については、相殺消去しております。 2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は当該割合が10%に満たないため記載を省略しております。3.上記金額は消費税等を含んでおりません。
(3)キャッシュ・フローの状況
① 現金及び現金同等物当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末より66億4千5百万円減少し、640億8千6百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と増減要因は以下のとおりであります。
② 営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動によって増加した資金は243億5千5百万円(前年度比53億8千3百万円の収入減)となりました。主な収入は、税金等調整前当期純利益205億9百万円、減価償却費58億2千8百万円、たな卸資産の増減額42億7千1百万円であります。主な支出は、法人税等の支払額43億5千5百万円、仕入債務の増減額39億2千1百万円であります。
③ 投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動によって減少した資金は168億4千1百万円(前年度比141億5千1百万円の支出増)となりました。主な収入は、有価証券の純増減額65億5千万円、投資有価証券の売却及び償還による収入38億5千万円であります。支出につきましては、国内での新たな商品分野への進出を目指して、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出137億1千9百万円を計上したほか、有形及び無形固定資産の取得による支出62億6千7百万円、定期預金の純増減額46億4千1百万円等によるものであります。
④ 財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動によって減少した資金は139億6千8百万円(前年度比26億3千万円の支出増)となりました。主な支出は、配当金の支払額74億9千8百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出25億8千8百万円のほか、資本効率の向上並びに機動的な資本政策の遂行を可能とするため行った、自己株式の取得による支出19億7千5百万円などであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループの運転資金及び設備資金については、主に自己資金を中心に、一部連結子会社は借入金により充当しております。当連結会計年度末における資金の残高は、前連結会計年度末より66億4千5百万円減少し、640億8千6百万円となりました。一方、当連結会計年度末の借入金残高は、短期借入金64億8千1百万円・長期借入金4億5千8百万円であり、これらの返済に必要な流動性は十分に満たしていると認識しております。従って、当社グループの財務の健全性は引き続き確保されており、第6次中期経営計画に沿った投融資・設備投資を含む当社グループの円滑な事業活動の資金には、大きな支障は無いと考えております。また、新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う先行き不透明感からも、当社グループ全体での円滑な事業活動の資金について留意してまいります。
(4)重要な会計方針上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。特に、有形固定資産および無形固定資産の減損損失については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況」(重要な会計上の見積り)に注記しております。