【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における世界経済は、依然としてロシアによるウクライナ侵攻等の諸問題の先行き不透明感があるものの、ゼロコロナ政策を続けていた中国がウィズコロナへ方針転換をするなど世界的に経済活動正常化へ向かいつつあります。その一方で、記録的なインフレを抑制するため、各国の中央銀行が利上げを行っており、世界的に景気悪化懸念が強まっております。
このような環境下、国内株式市場において、日経平均株価は期初27,624.11円で始まりました。為替市場での円安・ドル高を背景に輸出採算の改善期待などから日経平均株価は上昇し、6月9日に高値28,389.75円まで上昇する場面がありました。その後、各国中央銀行の利上げ発表が相次いだことから景気減速懸念が強まり、日経平均株価は6月20日に25,520.23円まで下落しました。8月半ばにかけては米国FRBによる利上げ加速への警戒感が後退したことから株価は大きく上昇。日経平均株価は8月17日には29,222.77円を付けました。その後も、米国の利上げ鈍化や世界的な景気後退懸念等を織り込みながら、広めのレンジ内を推移する展開となりました。期末にかけては、12月20日に日銀が大方の予想に反し金融緩和政策の一部を修正したことで円高が進み、輸出関連企業を中心に株価が下落。12月末の日経平均株価は26,094.50円で取引を終了しました。
米国株式市場においては、主要株価指数であるダウ工業株30種平均は期初34,740.89米ドルで始まりました。4月21日に高値35,492.22米ドルを付けて以降、インフレ抑制を目指すFRBの利上げにより米国10年債利回りが上昇し、ダウ工業株30種平均は下落基調となり、10月13日に安値28,660.94米ドルを付けました。その後は、底堅い7~9月期決算を受けて戻りを試す展開となりましたが、CPI上昇率の減速で利上げ減速観測が優勢となり米国10年債利回りは低下傾向になったため底堅く推移し、12月末のダウ工業株30種平均は33,147.25米ドルで取引を終了しました。
当社が注力している中国・香港株式市場において、主要株価指数であるハンセン指数は期初21,693.10ポイントで始まりました。5月18日に中国人民銀行が最優遇貸出金利5年物を引き下げ、6月1日には上海市がロックダウンを解除したことを受け投資家心理が好転し、ハンセン指数は6月28日に22,449.31ポイントの高値を付けました。その後は新型コロナの感染再拡大による行動規制や中国の住宅ローン不払い問題などへの懸念から上値の重い展開となりました。8月2日のペロシ米下院議長の台湾訪問をきっかけにした米中対立の激化やゼロコロナ政策を続ける中国景気への懸念、米国の利上げを背景とした中国からの資金流出懸念も高まり、ハンセン指数は10月31日に14,597.31ポイントの安値を付けました。その後は、米国の利上げ鈍化の思惑から米ドル安・人民元高が進行。中国当局の新型コロナ対策の一部緩和、首脳会談を受けた米中の緊張緩和や不動産業界への支援策などを背景に11月初めから買戻しの動きが強まり、12月末のハンセン指数は19,781.41ポイントで取引を終了しました。
このような状況のもと、当第3四半期連結累計期間の当社グループの業績は、地政学上のリスク、インフレの進行や利上げ等によるリセッションリスクが投資家の投資マインドを低下させ、投資信託や外国証券の手数料が減少したため、営業収益は62億10百万円(前年同四半期比29.5%減)、経常損失は11億98百万円(前年同四半期は10億19百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失は12億34百万円(前年同四半期は9億2百万円の親会社株主に帰属する四半期純利益)になりました。
なお、主な内訳は以下のとおりであります。
① 受入手数料
受入手数料の合計は53億12百万円(前年同四半期比23.5%減)になりました。科目別の概況は以下のとおりであります。
(委託手数料)
当第3四半期連結累計期間の東証の1日平均売買代金は3兆4,992億円(前年同四半期比13.5%増)になりました。当社の国内株式委託売買代金は5,243億円(前年同四半期比0.6%減)、外国株式委託売買代金は313億円(前年同四半期比54.5%減)になりました。その結果、当社グループの委託手数料は20億36百万円(前年同四半期比16.8%減)になりました。
(引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料)
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は株式の引受高の減少等により17百万円(前年同四半期比84.7%減)になりました。
(募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料)
主に証券投資信託の販売手数料で構成される募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は株式投資信託の募集金額が605億円(前年同四半期比38.4%減)に減少したため16億90百万円(前年同四半期比38.4%減)になりました。
(その他の受入手数料)
証券投資信託の代行手数料が中心のその他の受入手数料は株式投資信託の預り資産の平均残高が2,564億円(前年同四半期比11.7%減)に減少したため15億67百万円(前年同四半期比4.4%減)になりました。
② トレーディング損益
トレーディング損益は米国株店頭取引売買代金の減少により株券等が5億26百万円(前年同四半期比55.3%減)、地方債の売却損等の計上により債券等が△17百万円(前年同四半期は11百万円)、中国株取引に係る為替手数料の減少等によりその他が1億72百万円(前年同四半期比66.6%減)で合計6億81百万円(前年同四半期比60.1%減)になりました。
③ 金融収支
金融収益は受取利息の増加等により1億77百万円(前年同四半期比9.6%増)、金融費用は支払利息の増加等により90百万円(前年同四半期比44.4%増)で差引金融収支は87百万円(前年同四半期比12.2%減)になりました。
④ 販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、業績の低迷により冬季賞与や賞与引当金繰入等が減少したため人件費が38億13百万円(前年同四半期比9.1%減)、外国証券保管手数料の減少等により事務費が13億19百万円(前年同四半期比7.6%減)となったため合計で77億29百万円(前年同四半期比5.3%減)になりました。
⑤ 営業外損益
営業外収益は投資事業組合運用益の増加等により5億6百万円(前年同四半期比14.5%増)、営業外費用は投資事業組合運用損の増加等により42百万円(前年同四半期比168.1%増)で差引損益は4億63百万円(前年同四半期比8.7%増)になりました。
⑥ 特別損益
特別利益は投資有価証券売却益により64百万円(前年同四半期比19.7%増)、特別損失は投資有価証券売却損により11百万円(前年同四半期の計上はありません)で差引損益は53百万円(前年同四半期比1.0%減)になりました。
⑦ 資産
資産合計は788億9百万円と前連結会計年度末に比べ15億64百万円の減少になりました。主な要因は、現金・預金が18億89百万円増加したものの、顧客分別金信託が25億91百万円減少したことによるものであります。
⑧ 負債
負債合計は423億43百万円と前連結会計年度末に比べ4億6百万円の増加になりました。主な要因は、短期借入金が33億円、顧客からの預り金が21億27百万円減少したものの、その他の預り金が35億円、有価証券貸借取引受入金が32億42百万円増加したことによるものであります。
⑨ 純資産
純資産合計は364億65百万円と前連結会計年度末に比べ19億71百万円の減少になりました。主な要因は、利益剰余金が17億34百万円減少したことによるものであります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期累計期間における現金及び現金同等物の四半期末残高は281億37百万円と前年同四半期末に比べ125億65百万円の減少になりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、有価証券担保借入金の増減額32億42百万円(前年同四半期比23億87百万円の増加)、税金等調整前四半期純利益又は税金等調整前四半期純損失(△)△11億45百万円(前年同四半期比22億18百万円の減少)、立替金及び預り金の増減額11億30百万円(前年同四半期比45億52百万円の減少)等により54億41百万円(前年同四半期比13億3百万円の減少)になりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出△21億77百万円(前年同四半期の計上はありません)等により△23億7百万円(前年同四半期比36億52百万円の減少)になりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減額△33億円(前年同四半期比3億円の減少)、前年同四半期に計上した長期借入れによる収入40億円がなくなったこと等により△36億99百万円(前年同四半期比42億6百万円の減少)になりました。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」中の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更はありません。
(6)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(7)研究開発活動
該当事項はありません。
(8)従業員数
著しい増減はありません。
(9)生産、受注及び販売の実績
当社グループの主たる事業区分は、「投資・金融サービス業」という単一の事業セグメントに属しており、当該箇所において記載できる情報がないことから、当該業務の収益の状況等については、「(1)財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
(10)主要な設備
著しい変更はありません。
(11)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの営業収益は、中核事業が金融商品取引業であることから国内外の金融商品取引市場の変動に大きく影響を受けるため、不安定な状況にあります。そのため、現在、預り資産の残高拡大を中心に顧客基盤の拡充を通して得られる安定的な収益の確保を目指しております。
(12)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが、有価証券担保借入金の増加等により54億41百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが、定期預金の預入等により23億7百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが、短期借入金の減少等により36億99百万円の支出となりました。
この結果、当社グループの現金及び現金同等物の四半期末残高は前連結会計年度末に比べ1億49百万円減少の281億37百万円となりましたが、十分に資金の流動性が確保されております。
また、不測の事態に備えるため、当社は取引銀行11行それぞれと当座貸越契約、連結子会社は取引銀行1行と当座貸越契約を締結しております。このほか、緊急時対応についてもコンティンジェンシープランを策定し、全社的な緊急時対応体制を構築しております。
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