【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第2四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営成績の状況
当第2四半期累計期間における世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰が継続している影響等により、インフレ傾向が各国で強まってきました。これに対応するため、米国連邦準備制度理事会(FRB)等が次々に政策金利の引き上げを行い、このことによって景気後退の観測が強まりました。株式市場は利上げに対して反応しましたが、米国においては雇用情勢が比較的堅調に推移したこともあり、大きく下落することはありませんでした。
2023年3月期第4四半期において、当社製品の主要なビジネス分野であるLGD(Laboratory Grown Diamond:人工ダイヤモンド宝石、以下「LGD」という。)の市場が大きく変化し、小型宝石を中心に生産過剰の状況になりました。LGDの卸売価格(ブローカー間取引価格)の大幅な低下により、LGD生産者は、生産を縮小したり、生産設備の増強を停止するなど、防衛策を採りました。この状況のために、当社種結晶の受注は減少しました。
また、輸出貿易管理令の一部を改正する政令が2022年12月6日に施行され、半導体材料としてのダイヤモンドが規制対象となりました。当社は当局とコミュニケーションを取り、法令に適合した輸出を行うべく、対応等について確認を行ってきましたが、当局から見解を得られていなかったので、2023年4月下旬から輸出を全面的に保留することとしました。
その後も、当局と継続的にコミュニケーションを取り、2023年5月下旬からは、1,000千円/件以下の輸出案件は、輸出許可申請をせずに出荷できるようになりました。さらに、2023年6月下旬からは、1,000千円/件超の輸出案件について、改正後の法令に基づく輸出許可申請を行うことで輸出が可能となりました。2023年7月中旬から下旬にかけて、申請しておりました輸出許可を得ることができ、滞っていた受注製品の出荷を開始しました。
しかし、この当社による自主的な輸出保留期間は、ユーザーにとっては、当社から生産用の種結晶を確保できないこととなり、当社が2023年4月以前に得ていた受注の一部がキャンセルとなりました。また、当第2四半期累計期間においては、小型宝石を中心とした在庫調整も行われたようで、種結晶の受注は低調に推移しました。
一方、基板については、多数のユーザーから引き合いがあり、前年同期比で売上を増加することができました。電気自動車などへの適用をにらんだパワーデバイスや、量子コンピューター関連の開発が、世界中で活発に行われています。
特にパワーデバイスへの応用を考えると、そのデバイス構造上、低抵抗の基板が必要になると見られています。
当社は2023年8月10日に、このような応用に対応するボロンを高濃度にドーピングした基板を発表しました。さらに、LGDの大型化や、デバイス開発での大型基板の利用が必要とされていることから、2023年8月24日に13x13mmや14x14mmの種結晶や基板を発売いたしました。これ等の新しい製品は、市場において高い評価を得ており、既に受注を頂いております。
これら成果はあったものの、上記のように種結晶の受注が大幅に減少したことから、当社業績は前年同期比で大きく後退しました。一部設備の稼働を止めることによる動力費の減少や、外注費や補修費の大幅な節減等の緊急策を講じており、これ等の効果によって、製造原価は大幅に低減しました。また、販売費及び一般管理費の削減に取り組んだほか、円安に振れたことで大幅に為替差益が発生しました。
以上の結果、当第2四半期累計期間の経営成績は、売上高292,644千円(前年同期比76.9%減)、営業損失は128,034千円(前年同期は597,231千円の営業利益)、経常損失は22,499千円(前年同期は649,679千円の経常利益)、四半期純損失は6,838千円(前年同期は460,156千円の四半期純利益)となりました。また、当第2四半期累計期間の製品種類別の売上高は、種結晶209,412千円(前年同期比83.0%減)、基板及びウエハは55,186千円(前年同期比417.1%増)、光学系及びヒートシンクは19,145千円(前年同期比1.4%増)、工具素材は8,900千円(前年同期比15.1%減)となりました。
なお、当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をしておりません。
②財政状態の状況
(資産)
当第2四半期会計期間末における流動資産は2,096,524千円となり、前事業年度末に比べ865,719千円減少いたしました。これは主に、一時的に製品等の輸出取引を保留にしたことにより、現金及び預金が1,091,286千円、売掛金が202,446千円減少したものの、製品が322,852千円、仕掛品が63,788千円、貯蔵品が27,601千円増加したこと等によるものであります。固定資産は3,445,114千円となり、前事業年度末に比べ390,900千円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が378,252千円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は5,541,638千円となり、前事業年度末に比べ474,819千円減少いたしました。
(負債)
当第2四半期会計期間末における流動負債は282,047千円となり、前事業年度末に比べ458,498千円減少いたしました。これは主に、未払法人税等が358,026千円、役員賞与引当金が25,000千円減少したこと等によるものであります。固定負債は304,438千円となり、前事業年度末に比べ40,970千円減少いたしました。これは主に、長期借入金が43,452千円減少したものの、退職給付引当金が2,111千円増加したこと等によるものであります。
この結果、負債は586,485千円となり、前事業年度末に比べ499,469千円減少いたしました。
(純資産)
当第2四半期会計期間末における純資産は4,955,153千円となり、前事業年度末に比べ24,650千円増加いたしました。これは主に、譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行により資本金が15,744千円、資本準備金が15,744千円増加したこと、四半期純損失計上により利益剰余金が6,838千円減少したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当第2四半期累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,148,284千円となり、前事業年度末に比べ1,091,286千円減少いたしました。
当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期会計期間末における営業活動の結果使用した資金は506,786千円(前年同期は472,852千円の獲得)となりました。これは主に税引前四半期純損失が11,713千円、減価償却費が218,850千円の計上、売上債権の減少額が202,446千円、棚卸資産の増加額が414,242千円、法人税等の支払額が337,102千円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期会計期間末における投資活動の結果使用した資金は604,131千円(前年同期は509,591千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が634,321千円あったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期会計期間末における財務活動の結果使用した資金は75,025千円(前年同期は1,887,957千円の獲得)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出が74,377千円あったこと等によるものであります。
(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3)経営方針・経営戦略等
当第2四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当社の研究開発活動は、(ⅰ)生産技術に関する研究開発、(ⅱ)新製品に関する研究開発、(ⅲ)製造装置及び方法に関する研究開発の3つのカテゴリーにおいて、優先順位を考慮して実施しております。
開発テーマは審査会を経て選定され、年度計画の下で開発作業を行っています。また、半期単位で開発報告会を開催して、進捗状況を社内に周知しています。
当第2四半期累計期間における研究開発費の総額は、66,755千円であります。
また、当第2四半期累計期間における研究開発活動の状況の変更内容は、次のとおりであります。
研究開発活動の結果、当第2四半期累計期間において、①宝石原石の成長条件の開発、②大型単結晶の開発、③研磨速度の高速化、について成果がありました。
研究開発活動の結果の具体的な内容は、以下に示すとおりです。
なお、当社は、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(ⅰ) 生産技術に関する研究開発
当第2四半期累計期間において、引き続き製作するダイヤモンドの品質向上に取り組んできました。当社のダイヤモンド結晶は、微量の窒素不純物や欠陥があるために、薄茶色を呈しています。種結晶や基板として利用する場合に、これが問題となる応用もあります。色をほとんどなくすには、窒素不純物量を減少することで可能となりますが、成長速度の低下や、多結晶の発生などの問題が出てくる場合があります。これらの問題が生じずに成長できる条件の検討を開始しています。この中では、どのような親結晶を使用するかも重要であり、合わせて検討を行っております。
(ⅱ) 新製品に関する研究開発
当社が想定している新製品は、応用分野によって分かれており、以下のとおりであります。
①ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発
a.ウエハの開発
ダイヤモンド半導体デバイス等の製作において必須の素材であり、2インチウエハの実用化を目指しています。
単結晶サイズの大型化の研究を継続的に進めておりますが、その成果をもとにして大型のモザイク結晶を開発する計画です。このための接続技術や研磨技術等の周辺技術の開発も、同時並行で検討してまいります。
b.低抵抗基板の開発
ダイヤモンドのパワーデバイスにおいては、縦型デバイス構造が重要であり、これに使用する抵抗値の低いボロンドープ基板を開発してきました。縦型デバイスでは、デバイスの底面から上面(または逆方向)へ電流を流すため、抵抗値の低い基板が必要で、高濃度のボロンをドーピングすることで実現できます。
当社は以前よりこのような低抵抗のダイヤモンドが成長する条件を開発しており、2023年8月10日に0.2mm厚の自立基板と、従来結晶上に薄膜を形成したエピ基板の両者の製品発表を行いました。この低抵抗ダイヤモンドは、生産部に技術を移管して、本格的な生産を開始しております。この製品を効率的に生産するため、ウォータージェットレーザーを2023年11月に導入する計画で、設置場所の整備を行いました。
②光学部品として必要な高品質結晶の開発
研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(ⅲ) 製造装置及び方法に関する研究開発
2022年11月に稼働しました島工場に、産総研などとの共同研究の成果である、新型成長装置を導入しました。この装置によって、成長面積が拡大出来ることが判明しました。さらに成長面積の拡大や、成長速度の増大を期して、成長装置内のホルダー等の部品について、検討を継続しています。
(6)主要な設備
当第2四半期累計期間において、主要な設備及び主要な設備計画等の著しい変動はありません。
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