【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。(1)財政状態及び経営成績の状況当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による行動制限が緩和され、徐々に経済活動が正常化に進むことが期待されました。一方、国際情勢に起因する金融資本市場の変動や物価上昇により、個人消費の停滞は依然として続き、総じて先行きが不透明な状況となりました。また、諸資源の価格変動が続き、世界的な原燃料価格の高騰や原燃料の供給不安があるなど、注視すべき状況にあります。国内需要については、新型コロナウイルス感染症の影響は依然継続しているものの、行動制限の緩和による外出機会の増加がみられましたが、食料品をはじめとする相次ぐ値上げにより節約意識が高まっており、消費マインドは完全には戻らない状況であります。海外需要については、サービス消費の回復が見られましたが、ウクライナ情勢の影響によるエネルギー価格の高騰を受け、個人消費は停滞しているものとみられます。このような事業環境のもと、当社グループでは、海外向けの拡販に注力し、特に欧州および北米向け衣料が伸びを見せたことに加えて、中東向け民族衣装分野が順調に推移した結果、昨年同期比で約4割増となりました。なお、国内においても衣料ファブリックをはじめとして堅調に推移した結果、繊維事業は総じて大幅な伸びを見せました。一方で、当社グループを取りまくコスト上昇圧力は避けられず、原燃料・資材価格の高騰に加え、金融資本相場の変動により、当初の想定を上回るコストアップを抑えられない事業環境下に置かれました。これに対し当社グループでは企業コスト上昇対策として、省エネ、安価な燃料への転換、不良ロス削減、生産性向上といったトータルコストダウンを推し進めてまいりました。更に、新品種投入による高付加価値化などにより、販売価格への転嫁及び拡販によるコスト吸収策を図るなど、収益確保のためのあらゆる施策を実行いたしました。当第3四半期連結累計期間では、急激に変化する市場ニーズにおいて、技術開発を加速させ、2つの新素材を上市いたしました。当社グループは、ポリエステルの糸づくりの加工工程で物理的にその作用を変化させ、低温で早く染まる速染効果を持つ素材を開発し、これを「WS」と名付け、事業化を進めてまいりました。従来の染色工程と比べ、二酸化炭素が31.7%削減できるという、環境負荷を大幅に低減できる特長が市場で高く評価され、様々な用途で引き合いをいただいております。この度、さらなる環境負荷の低減を目指し、ポリエステルとは染着の仕組みが全く異なるナイロン糸においても分子構造解析を進めた結果、ポリエステルとは異なる新たな糸加工条件を見出し「WS」の技術を確立いたしました。ナイロン版「WS」は従来より、15℃温度を下げての染色が可能となります。これにより染色におけるエネルギー使用量が節約でき、二酸化炭素の排出量は10.6%削減可能となります。また、生産性についても6%の向上が見込まれます。ナイロンの染色加工においても、「WS」の技術を活用し加工できる素材の幅が広がるため、より広い分野・用途への展開が期待されます。加えて、当社は、新たな素材ブランド「テクノビンテージKK」を、テクノビンテージシリーズにラインナップいたしました。先んじて、TECHNOVINTAGE(テクノビンテージ)®シリーズの核となる「テクノビンテージBJ」を2007年に発表しており、「テクノビンテージBJ」は、直近10年間の加工累計で約600万mにもおよぶ人気商品となりました。この間、糸のリサイクル化が進む環境の変化をうけ、ポリエステル100%の素材での検討を続け、長年の検討の結果、糸使い、設計と後加工の組み合わせを最適化することで、ポリエステル100%の素材で高い形状記憶性を発揮し、「テクノビンテージKK」の開発を実現しました。以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は266億25百万円(前期比15.3%増)となり、営業利益は13億89百万円(前期比22.2%増)となりましたが、年末にかけて円高が進んだ影響を受けて、為替予約評価損を計上した結果、経常利益は14億48百万円(前期比8.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は10億2百万円(前期比38.1%減)となりました。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
① 繊維事業衣料ファブリック部門に関しては、国内外において、高感性・高機能素材、環境配慮型素材の開発と市場導入を進めてまいりました。特に、欧州ラグジュアリ―ブランドおよび北米向けカジュアルウェアが牽引したことに加え、中東向け民族衣装分野においては市場回復とともに機能商品を積極的に導入し、前期比大幅増となりました。また国内向けについても堅調に推移したことから、当部門全体として増収となりました。資材ファブリック部門については、リビング分野が不採算事業の見直しにより減少したものの、生活関連資材および電材が収益をカバーしたことにより、当部門全体としては、微増となりました。製品部門におきましては、自社製品ブランドの市場への浸透を図る一方、衛生関連商品の需要低迷により総じて減収となりました。以上の結果、当第3四半期連結累計期間の当事業の売上高は262億71百万円、セグメント利益(営業利益)は13億14百万円となりました。
② その他の事業物流分野の当第3四半期連結累計期間の売上高は3億53百万円、セグメント利益(営業利益)は64百万円となりました。
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、473億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億97百万円減少しました。負債は、115億87百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億73百万円減少しました。純資産は、357億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億23百万円減少しました。
(2)研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は4億68百万円であります。